悪役令嬢は王太子の溺愛に気付いていない

はる乃

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本編

放課後の学院と脅迫状②

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――――ガッシャアアアン!!!

放課後の学院内にけたたましい破壊音が鳴り響いた。
音の出所は生徒会室斜め向かいにある資材室。その資材室の扉を、あろうことか、この国の王太子であるリーンハルトが、勢いよく蹴破ったのだ。

「ディアナ!!」

蹴破る前に一度確かめたが、資材室には鍵が掛けられていた。

一体いつから閉じ込められていたのか。
青褪めて小刻みに身体を震わせている婚約者を前に、リーンハルトはその場を離れる事が出来ず、強硬手段を取ったのだ。

今すぐにディアナを助けなければ、と。

しかし――――

「ディアナ!怖かっただろう?もう大丈……」
「リーンハルト殿下!!そこから動かないで下さいませっ!!」
「えっ?!」


(…………なんで?)

両手を広げて走り寄る僕の横を素通りして、ディアナが慌てて資材室から飛び出して行く。

(……僕は何か選択肢を間違えたのだろうか??)

扉を蹴破ったのがまずかったのか?
両手を広げて近付いたから、気持ち悪いと思われたのか?

いや、一刻も早く助けねばと、僕が取った行動は間違っていない筈だ。
蹴破った事は、きっと問題ない……
うん、問題ない、と思う。
壊れた扉は僕の私財から弁償するし。

という事は、両手を広げて近付いたのが良くなかったのか……?

(……泣きたいっ……)

せめて両手を広げずに走り寄れば良かった。

僕はそれらをコンマ一秒程で考えた後、すぐにハッと我に返り、くるりと身体を反転させてディアナの後を追い掛けた。
ディアナが慌てて向かった先。
それは―――……

(生徒会室?)

当然と言えば当然なのだが、僕の方がディアナよりも断然足が速い。
ディアナが生徒会室の扉を開けて、足を踏み入れた瞬間、僕はディアナに追い付いて、その細い腕を掴んでいた。

「ディアナ、待ってくれ!」
「ひゃっ?!」
「何をそんなに慌てているんだい?それに、一体いつから資材室に……」
「は、離して下さいっ!!」
「?!」

ディアナが僕の手を振り払おうとぶんぶん腕を振るものだから、流石に驚いて戸惑ってしまうと、不意にディアナが何かに躓いてグラリと体勢を崩す。

「うわわっ?!」
「ディアナ?!」


――――ガッターン!

咄嗟にディアナを庇うように抱き締めながら、僕とディアナは生徒会室の床へ倒れ込んだ。
あちこちぶつけて身体が痛い。

「……うっ……」
「いててて……ディアナ、大丈夫かい?」
「は、はい。申し訳ありませ……?!」
「……ディアナ?」

急に黙り込んだディアナに、僕は怪我でもしたのかと慌てて目を開ける。すると、僕の目の前に、ディアナの顔があった。

アメジストのようなキラキラとした大きな瞳があまりにも近くて、淡い藤色の長い髪がサラリと揺れる。
その距離は、唇と唇が触れてしまいそうな程で――――

「「~~っ?!」」

お互いに茹だってしまいそうなくらい、顔が真っ赤になってしまっていた。

ディアナ、ディアナ。
僕の可愛いディアナ。
そんなに顔を赤らめて、困ったような顔をして。
全部可愛い。
ディアナが可愛すぎて、僕死ぬかもしんない。

頭の中がディアナでいっぱいになりながらも、何とか現状を把握しようと働いている僕のマトモな部分が、ディアナが何かを握り締めている事に気付いた。

封筒……?

こんな封筒、生徒会室にあっただろうか?

「ディアナ。これは……」
「はっ……!だ、だめ。これは、見ちゃ駄目です!」
「え?」

見ちゃ駄目って……

「駄目です、リーンハルト殿下。お願いです。み、見なかった事にして下さいませ……!」
 
潤んだ瞳。
上気した頬。
ディアナからの、よく分からない初めての“お願い”。
そして何より、事故とはいえディアナを抱き締めているこの状況。

(なんてことだ)

……僕の息子さんが、ガチガチに勃ってしまった。


* * *
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