11 / 23
本編
放課後の学院と脅迫状②
しおりを挟む――――ガッシャアアアン!!!
放課後の学院内にけたたましい破壊音が鳴り響いた。
音の出所は生徒会室斜め向かいにある資材室。その資材室の扉を、あろうことか、この国の王太子であるリーンハルトが、勢いよく蹴破ったのだ。
「ディアナ!!」
蹴破る前に一度確かめたが、資材室には鍵が掛けられていた。
一体いつから閉じ込められていたのか。
青褪めて小刻みに身体を震わせている婚約者を前に、リーンハルトはその場を離れる事が出来ず、強硬手段を取ったのだ。
今すぐにディアナを助けなければ、と。
しかし――――
「ディアナ!怖かっただろう?もう大丈……」
「リーンハルト殿下!!そこから動かないで下さいませっ!!」
「えっ?!」
(…………なんで?)
両手を広げて走り寄る僕の横を素通りして、ディアナが慌てて資材室から飛び出して行く。
(……僕は何か選択肢を間違えたのだろうか??)
扉を蹴破ったのがまずかったのか?
両手を広げて近付いたから、気持ち悪いと思われたのか?
いや、一刻も早く助けねばと、僕が取った行動は間違っていない筈だ。
蹴破った事は、きっと問題ない……
うん、問題ない、と思う。
壊れた扉は僕の私財から弁償するし。
という事は、両手を広げて近付いたのが良くなかったのか……?
(……泣きたいっ……)
せめて両手を広げずに走り寄れば良かった。
僕はそれらをコンマ一秒程で考えた後、すぐにハッと我に返り、くるりと身体を反転させてディアナの後を追い掛けた。
ディアナが慌てて向かった先。
それは―――……
(生徒会室?)
当然と言えば当然なのだが、僕の方がディアナよりも断然足が速い。
ディアナが生徒会室の扉を開けて、足を踏み入れた瞬間、僕はディアナに追い付いて、その細い腕を掴んでいた。
「ディアナ、待ってくれ!」
「ひゃっ?!」
「何をそんなに慌てているんだい?それに、一体いつから資材室に……」
「は、離して下さいっ!!」
「?!」
ディアナが僕の手を振り払おうとぶんぶん腕を振るものだから、流石に驚いて戸惑ってしまうと、不意にディアナが何かに躓いてグラリと体勢を崩す。
「うわわっ?!」
「ディアナ?!」
――――ガッターン!
咄嗟にディアナを庇うように抱き締めながら、僕とディアナは生徒会室の床へ倒れ込んだ。
あちこちぶつけて身体が痛い。
「……うっ……」
「いててて……ディアナ、大丈夫かい?」
「は、はい。申し訳ありませ……?!」
「……ディアナ?」
急に黙り込んだディアナに、僕は怪我でもしたのかと慌てて目を開ける。すると、僕の目の前に、ディアナの顔があった。
アメジストのようなキラキラとした大きな瞳があまりにも近くて、淡い藤色の長い髪がサラリと揺れる。
その距離は、唇と唇が触れてしまいそうな程で――――
「「~~っ?!」」
お互いに茹だってしまいそうなくらい、顔が真っ赤になってしまっていた。
ディアナ、ディアナ。
僕の可愛いディアナ。
そんなに顔を赤らめて、困ったような顔をして。
全部可愛い。
ディアナが可愛すぎて、僕死ぬかもしんない。
頭の中がディアナでいっぱいになりながらも、何とか現状を把握しようと働いている僕のマトモな部分が、ディアナが何かを握り締めている事に気付いた。
封筒……?
こんな封筒、生徒会室にあっただろうか?
「ディアナ。これは……」
「はっ……!だ、だめ。これは、見ちゃ駄目です!」
「え?」
見ちゃ駄目って……
「駄目です、リーンハルト殿下。お願いです。み、見なかった事にして下さいませ……!」
潤んだ瞳。
上気した頬。
ディアナからの、よく分からない初めての“お願い”。
そして何より、事故とはいえディアナを抱き締めているこの状況。
(なんてことだ)
……僕の息子さんが、ガチガチに勃ってしまった。
* * *
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
ヒロインがいない。
もう一度言おう。ヒロインがいない!!
乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。
※ざまぁ展開あり
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
私はざまぁされた悪役令嬢。……ってなんだか違う!
杵島 灯
恋愛
王子様から「お前と婚約破棄する!」と言われちゃいました。
彼の隣には幼馴染がちゃっかりおさまっています。
さあ、私どうしよう?
とにかく処刑を避けるためにとっさの行動に出たら、なんか変なことになっちゃった……。
小説家になろう、カクヨムにも投稿中。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる