悪役令嬢は王太子の溺愛に気付いていない

はる乃

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本編

放課後の学院と脅迫状③

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「ディアナ」
「お……」


(――――男はケダモノ男はケダモノ男はケダモノ男はケダモノ男はケダモノ男はケダモノ男はケダモノ男はケダモノ男はケダモノ男はケダモノ男はケダモノ男はケダモノ男はケダモノ男はケダモノ男はケダモノ男はケダモノ男はケダモノ男はケダモノ男は……っ!!!!!)


ディアナは未だかつてない程に動揺していた。
実際、目の前にいる見た目完璧王子なリーンハルトの下半身は、この時まさにケダモノと化していた訳で、ディアナの心の叫びは正しく真実だった訳だが。

目の前には最推しであるリーンハルトの秀麗なご尊顔。
そしてディアナが前世で尤も尊いと思っていた某声優様と同じ声で、至近距離から名前を呼ばれて。

ディアナの許容量は既に限界を超えていた。

(だ、駄目よ!惑わされちゃ……!今はとにかく、この封筒(脅迫状)を見せないように死守しなくちゃ!こんなものを見たら、この世界のリーンハルト殿下も傷付いてしまうかもしれないもの!)

最終的にはヒロインが幸せにしてくれるだろうけど、無駄に傷付く必要なんて無い。

ディアナはそう思いながら、ぎゅうっと封筒を握り締め、リーンハルトに再び“お願い”した。

「こここの封筒は間違って届いてしまったもので、しょっ、処分は私にお任せ下さいませ!!」
「間違って……?」
「か、欠片も残さずに燃やし尽くしますからっ!!」
「……よく分からないけど、少し落ち着いて、ディアナ」

ぎゅうっ。

「ひぅっ?!」
「ごめんね。嫌かもしれないけど、その、こうしてると落ち着くと思うんだ。(僕が)」
「え?!いや、あの、逆に落ち着かな……」
「ディアナ」
「ひゃんっ」
「少しだけ、このままでいさせて?」
「っっ!!」


リーンハルトにがっちりとホールドされて、身動きの取れないディアナは、ただただ顔を真っ赤にさせたまま固まってしまう。
そんな状態のディアナを見て、リーンハルトは必死に自身の息子に鎮まれと念を送りながらも、愛しさを募らせていく。

(どうしよう。僕の婚約者、可愛すぎないか。理性が焼き切れそうだ。頑張れ僕。鎮まれ息子。お前の出番はまだ早いっ)

本当に残念なイケメンである。
しかし、必死に理性を働かせて暴走しないようギリギリ堪えているところは、なかなかの忍耐力だと褒めてやっても良いだろうと思う。

(な、な、なんてことなの?!何この良い匂い!!惑わされちゃ駄目よ、ディアナ!男は皆ケダモノだから!目の前にいらっしゃるこの方は、リーンハルト殿下の顔をしたリーンハルト殿下で……………………え?!それってどういうこと?!もう訳分かんないっ!!)

ディアナがぐるぐると頭の中でよく分からない事ばかり考えている内に、何とかリーンハルトの方は落ち着いたようだ。(下半身の方が)

そうしてディアナは、漸くリーンハルトの腕の中から解放されたのだが…………

「ディアナ?」
「も、申し訳ありません、リーンハルト殿下。あの、私……」
「まさか、怪我でもしたのかい?」
「いえ、その。腰が……」
「腰が?」
「腰が……………………………………………………………………抜けちゃいました」
「…………」

漸く解放されたディアナだったが、腰が抜けて動けなくなってしまった為に、今度はリーンハルトにお姫様抱っこされる羽目になってしまったのだった。

そうして――――


(……やばい。幸せ過ぎて、僕、今日死んでしまうかもしれないっ)


ディアナが怪我をしていない事に安堵しつつ、リーンハルトは幸せで死にかけていた。


* * *
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