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本編
耳がああああ!!!
しおりを挟むまず結果を言うならば、私の唇は何とか無事に死守出来た。
しかし。
引き換えに私の耳が死んだ……!!
* * *
パーティー会場近くの休憩室と思われる部屋。何故かそこで迫られていた私は、自身の両手で唇を覆い隠し、迫ってくる相手―――レジナルド様もとい思春期野郎を必死に睨み付けた。
「……魅了の魔法なんてものを使うくらいだ。いいカモには喜んで唇を差し出すと思ったんだが」
人をビッチみたいに言うな!!!
大体今世の年齢はまだ10歳なんですけど?!
「成程。確かに、何か事情があるようだ」
分かったのなら、とっとと離れて!!
「だが、それなら尚更味見がしたい」
私は料理じゃありません!!
味見って何?!というか、この人魅了の魔法にかかってないんだよね?!
魅了の魔法にかかってない奴が一番恐いってどうゆう事?!!
「……そのままじっとしていろ」
「?!」
ペロリ。
次の瞬間、私はぞわぞわする感覚に全身が粟立った。
ぎゃあああああああああ!!!!!
こ、こ、こいつっ
耳っ私の耳があああああ!!!!
「うぐっ!」
「震えている。……アリス嬢は本当に可愛いな」
やばい。
このままでは色々な事がやばい。
騎士団長の息子とかテンプレ的に堅物かと思ってたのに、僅か11歳にしてとんでもないエロガキだった!!
騙されたっ!!!
未だ震える私を見て、レジナルド様の瞳に獰猛な熱が宿りかけた、その時―――
バァン!!
扉が勢いよく開いた。
「アリス姉さま!!」
「アル?!」
「ちょ、アルフォンス君?!そんなに急がなくても……」
「フィリップ殿下!」
部屋に入ってきたのは、私の天使アルフォンスとフィリップ殿下だった。アルはその勢いのまま私に駆け寄り、ヒシッと私を抱き締めてくれた。
あ、フィリップ殿下が固まってる。
「ごめんなさい、アリス姉さま!!無事でしたか?誰かに変なことされませんでしたか?!」
「アル……私のこと、捜しに来てくれたの?」
「当たり前じゃないですか!!」
くぅ!
魅了の魔法の効果だと分かっていても嬉しく思ってしまう!!なんて優しい天使なの!!
「レジー、私はすぐに戻ると言った筈だ。なのに、何故待たなかった?何かあったのか?」
「…………」
思春期野郎が一瞬チラリと私の方を見た。やばい。こいつから殿下にバラされたら、処刑台一直線じゃね?
お願いだから黙ってて!!もう二度と思春期野郎なんて言わないから!!
私がヒヤヒヤハラハラしていると、レジナルド様は少し目を細めてから、にっこりと爽やかに微笑んだ。
「申し訳ありません、殿下。会場の熱気に当てられたのか、アリス嬢の気分が優れず、別室にて休憩していたのです」
私は急いで首を縦に振った。
なんかよく分からんが、今は黙っててくれるらしい!素直に乗っかっとこ!!
「そうだったのか。レジー、疑うような事を言ってすまないな。アリス、体調の方はもう大丈夫かい?」
「は、はい!もう全然なんと、むぐ?!」
ちょ、天使?!
何故私の口を塞ぐ?!
「アリス姉さまはまだ気分が優れないようなので、僕達は今日はもう帰らせてもらいますね!!」
成程!!
流石私のアル!!賢過ぎ!!
「で、では、私達はこれで御前を失礼致します」
「あ、アリス……!」
フィリップ殿下の悲痛な声が聞こえるけれど、今はさっさとこの場を去りたい。アルと一緒に、そそくさと部屋から退室しようとした所で、私の腕が軽く掴まれた。
掴んできたのは、やっぱりレジナルド様で、私にだけ聞こえるように耳元で小さく囁いた。
「後日、事情を伺いに参ります。宜しければまた、二人きりで」
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………宜しいわけあるかあああああああああ!!!!!
* * *
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