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本編
甘い誓い①
しおりを挟む転移魔法陣を使用し、マックスは私をお姫様抱っこしたまま、ラジアーネ領にある宿屋へとやって来た。
一応マックスは伯爵令息なのに、宿屋に対して何の抵抗もなさそうで、どう見ても部屋を借りるのに慣れている。私は不思議に思ったが、すぐにお店の人の言葉で何故なのか理由が分かった。
「マックス、久しぶりだね。伯爵の討伐隊なら、昨日のうちに森に入ったって聞いたよ。また追いかけに…………って、その女の子はどうしたんだい?」
「俺の婚約者のアリスです」
「婚約者?!マックス、まさかあんた。この子をうちの宿屋に連れ込んで……」
「違います!!ちょっと事情がありまして。今日は一人にさせたくないんです」
「あら……」
私の格好を見て、訳ありだと分かった宿屋の女主人は、マックスに部屋の鍵を渡した。
「ありがとうございます」
「礼には及ばないよ。それにあんたは、いつも討伐隊と一緒に、私達領民を守ってくれているからね。その婚約者さん、大事にするんだよ」
「はい。勿論、一番大事にします」
……マックスは子供の頃から、伯爵家の討伐隊に交じって、魔物を倒していたようだ。その際に平民が使う宿屋に泊まったり、果ては野宿をしたり、自炊や洗濯まで経験していた。
だから貴族っぽくなかったんだ。
初めて出会った時から、マックスは既に『騎士』って感じだったもの。
マックスの新たな一面を知ることが出来て、こんな時だけれど、私は嬉しくなった。
宿屋の女主人が貸してくれた部屋は二階の奥にある部屋だった。平民向けの宿屋なので広さはないけれど、カントリー調で統一されている、綺麗で落ち着いた雰囲気の部屋だった。
マックスは部屋に入ると、真っ直ぐにベッドへと向かった。ゆっくりと私をベッドに降ろし、頬にチュッと優しくキスをしてくれる。
「マックス?」
「お湯を持って来ます。少し待っていて下さいね」
「……はい」
そう言ってマックスは、すぐにお湯の入った桶と、タオルを持って来てくれた。タオルをお湯に浸し、ぎゅっと絞る。
「……拭きますね」
「ま、マックス。私、自分で……」
「あの男がした事を、全部消してしまいたいんです。俺にやらせてもらえませんか?」
マックスの瞳があまりに真剣で、逆に私の方が恥ずかしくなってしまった。マックスはイチャイチャしたくて言ってる訳じゃないのに、私ってば不謹慎過ぎる。
私はマックスに借りていた上着を脱いで、赤くなってしまった顔を隠すように俯いてから「分かりました」と答えた。
「全部、消して下さい」
「はい。……全部、俺が消します」
温かなタオルが、私の首筋に当てられた。マックスは優しく丹念に拭いてくれて、心地好くて、私は少しボーッとしてしまう。
首筋が終わると、鎖骨まで下りて、そのまま更に下へと下りて、ギルバートに外されたブラウスの間も、マックスが丁寧に拭いてくれた。
「手を出して下さい」
「手?」
「手首を掴まれていたでしょう?」
「ああ……」
確かに、両方の手首掴まれて、拘束されていた。私は両方の手を前へと出すと、マックスが腕から手首、手の平、手の甲と拭いてくれて、両方拭き終わると、優しく手首キスをした。
「あ……」
私がビクリと肩を震わせると、マックスは「大丈夫ですよ」と言った。
待って待って。何が大丈夫なの?
「拭き終わったので、今から消毒していきます。……優しくしますから」
「……っ」
?!
や、優しくしますって何??
私が内心盛大にパニクっていると、マックスは私の右手首に何度も優しくキスを落とし、次は左手首にも、同じ様に優しく、触れるだけのキスを繰り返し落としていく。
次第に、手首だけじゃなく、手の平や手の甲にもキスを落とした後、マックスはギシッとベッドの音を鳴らし、私との距離を縮めた。
「ここも、消毒します」
「……はい……」
私の首筋に、マックスの唇が優しく触れていく。チュッチュッと音がして、何だかとても恥ずかしい。
さっきタオルで拭いたところを道標に、マックスの優しいキスがブラウスの間まで下りてきた。
「ひ、ぁ……」
「アリス。何もしません、他に何もしませんから……」
「……マックス?」
「印をつけさせて下さい。一ヶ所だけでいい。アリスが俺のものだという、印をつけたい」
「…………」
「駄目ですか?」
今までの私なら、駄目って言ってた。だけど、私……
私はやっぱりマックスが好き。
だから、駄目じゃない。
「印を、つけて。私は、マックスのものだから」
「……っ」
「その代わり、私もマックスに印をつけたい。マックスは…………私のもの?」
私がそう問いかけると、マックスは目元を朱に染めながら、蕩けるような瞳で愛おしそうに私を見つめた。
私の心臓が、早鐘のように高鳴る。
「いくらでも印をつけて下さい。俺はアリスのものですから。俺は生涯、アリスだけを愛すと誓いましょう。……アリス、愛してる」
* * *
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