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本編
甘い誓い②
しおりを挟むラジアーネ領にある宿屋の一室で、私はマックスと二人、互いに印をつけ合う為にベッドの上で向き合っていた。
私がマックスのシャツのボタンに指をかけると、マックスが少し照れたように瞳を泳がせた。
「アリスがそんな事しなくても……。ボタンくらい、自分で外しますから」
「ううん、外させて?私がそうしたいの」
「……アリスがそう望むなら、お願いします」
マックスのシャツのボタンを、上から3つ目まで外し、鍛えられた逞しい胸板にドキドキしながらも、私は鎖骨あたりに唇を寄せた。
ちゅっと吸ってみると、マックスから甘い吐息が漏れる。
「……くすぐったいです」
「ご、ごめんなさい。……あれ?跡つかない……も、1回」
「……っ!あ、アリス……」
もう一度吸ってみても、なかなか綺麗に跡がつかない。
え?キスマークってこんなに難しいの??全然跡がつかないんですけど。私は何度も何度もチャレンジするが、本当に難しい。
やがてマックスが、何かを必死に堪えながら、私の腰を引き寄せた。私が驚いて「ひゃっ」と声をあげると、マックスが私の耳元で甘く囁いた。
「……お手本を見せますね」
「え?……ぁ……っ!」
マックスが私のブラウスの間に顔を埋めて、ちゅっちゅっと軽く啄むようにキスをした後、少し痛いくらいにその場所をキツく吸った。
私は思わず声を上げそうになったけれど、何とか必死に両手で押さえ、甘い痛みに耐える。
思っていたよりも甘い痛みは長く続き、だんだんと頭の芯が痺れてくるような感覚に襲われた。
「はっ……」
「……痛かったですか?」
「少し……」
「すみません。でも、綺麗に印がつきましたよ」
「……ひゃっ!……んん!」
綺麗に咲いた花弁に、マックスが労るように舌を這わせる。くすぐったいのに、何故だか気持ち良くて、ゾクゾクして―――
「アリス……?」
「……ぃ」
「え」
「気持ちいい、マックス」
「~~~っ?!」
あれ。
マックスが目を見開いたと思ったら、左手で自身の顔を押さえた。
暗がりに、明かりは月明かりだけだけど、マックスは耳から首まで真っ赤になっていて、僅かに震えていた。
「マックス?」
「…………アリス。もしや、俺を煽っていませんか?」
「え?!」
「無防備どころじゃないですよ。危うく理性が吹っ飛ぶところです」
「え?あ……えっと、ごめん、なさい」
「……見本、ですからね」
「?」
「次はアリスの番です。……アリスがまた失敗したら、その度に見本を見せますから」
「で、でも、さっきは一ヶ所だけって……」
「煽ったのはアリスですからね」
「~~~っ」
その後、結局私は何度も失敗してしまい、マックスに何度も見本を見せてもらう事になってしまった。
お互いに印をつけるだけ。
だけど。
私達は印をつけ合うだけなのに、とびきり甘い夜を過ごしたのだった。
* * *
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