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本編
人ではないもの①
しおりを挟む学園にある訓練場の裏手。
そこにはアリスを襲おうとしてマクシミリアン沈められたギルバートが倒れていた。そのギルバートの元へ、一人の少女が近付いていく。
ギルバートの妹である、ミシュリー・デラクールだ。
「ギルバートお兄様には困ったものだわ。いくらアリスが大好きでも、勝手に動かれては困ります」
そう言って、ミシュリーは両手を前に出し、ヒールを唱えた。次の瞬間、ギルバートは温かな光に包まれて、みるみる怪我が綺麗に治っていく。
全て治ったところで、ギルバートが目を覚ました。
「ミシュリー?」
「はい、ギルバートお兄様。ミシュリーはここに居ます。お怪我は治しましたわ」
むくりとギルバートが上体を起こすと、雪のように白く美しいギルバートの髪がサラリと揺れた。
ルビーのような赤い瞳には、マクシミリアンへの怒りが満ちている。
「くそっ!後少しで聖女様を手に入れる事が出来たのに!!」
「ギルバートお兄様。焦ってはなりませんと、あれほど言ったでしょう?」
「しかしミシュリー!!こんな訓練場の裏手で偶然出会うなんて、もはや運命としか……」
「運命などではありませんわ」
「何……?」
ミシュリーはにこりと笑った。
可愛らしい笑顔なのに、どこか歪に感じて、ギルバートは眉根を寄せる。
「運命なんてものに従ってしまえば、お兄様は即退場ですわよ?私は運命をねじ曲げに来たのですから」
「……ミシュリー?」
昔から、時々ミシュリーの事を恐いと感じた。何故かは分からないが、ギルバートがそう感じる時、彼女は大抵笑っていて―――
薄っすらと、キラキラと光る何かを、その身に纏っているように見えた。
「さぁ、ギルバートお兄様。家にお帰り下さい。私は少し、挨拶をしなければならない人がおりますので」
「……分かりました」
ギルバートがミシュリーを気にしつつも、その場を去っていく。
姿が見えなくなったところで、ミシュリーは背後に向けて声をかけた。
「そんな恐い顔をなさらないで下さいな。でも、やっぱり貴方が一番素敵です」
「私に気付いていたなんて、流石ですね」
「貴方に褒めていただけるなんて光栄です。ニール先生」
木の影から殺気を迸らせつつ現れたのは、アリスの元家庭教師にして学園の現魔法特別講師である、ニール・コドウェルだった。
* * *
もう日は沈み、空に星が瞬き始めた頃。
学園の訓練場の裏手では、学園の特別講師であるニールたんこと、ニール・コドウェルがミシュリー・デラクールを見て、冷ややかに笑った。
「探し物は見つかりましたか?」
「そんな冷たい笑顔も最高です!!」
「…………貴女に褒められても嬉しくありません」
「あはっ!その呆れた感じも素敵です!!」
「………………」
ミシュリーの言動に、ニールはいつも辟易していた。彼女は学園に入学して以来、授業中は大人しくしているけれど、何故だか休憩の時など、よく二人きりになる瞬間があり、その時はいつもこんな感じに、ニールをベタ褒めしてくるのだ。
「もしや、先に先生が見つけちゃいましたか?」
「ええ。もう自作の聖水かけちゃったので、探しても無駄ですよ」
「ええー?!先生、光属性持ってないのに?」
「身近に神々しいまでの光属性の使い手がいらっしゃいますからね」
「彼女が協力を?」
「いえ。私が勝手に溜め込んでいただけです。魔法の練習中なら、もらう機会が沢山ありますから」
「そうですか。そちらこそ流石ですね、ニール先生」
「どうも。……デラクール伯爵令嬢。貴女はアレを、何に使うつもりだったのですか?」
「再利用しようかなって」
「再利用?」
「だって。私はこの世界にアリスしか呼んでないのに、なんでかくっついて来たんだもの。マリアーノはあのままで立派な悪役令嬢になったのに、あんな余計なものが入り込んだせいで予定がどんどん前倒しですよ」
「…………」
「だけど、せっかくだから使おうと思って。違う令嬢の中に入れて引っ掻き回してもいいし、あんな魂でも吸収すれば力が少し増えるかもしれないですし!」
ミシュリーは楽しそうに、意気揚々とニールに話した。まるで悪戯を思い付いた子供のように、嬉々として、1ミリの罪悪感さえ感じていない。
「………やはり貴女は、人間ではないみたいですね」
「正解です!」
「貴女は、何者ですか?」
* * *
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