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俺は外に連れ出してもらえるようになった。
畑でもゆらゆら揺れながら歩く。
千鶴は時々私を見ながら畑仕事をする。
「これがキュウリっちゅうもんじゃ」
と言ったりもする。
俺は知ってるよ、と言う代わりにとびきりの笑顔を見せた。
子は、育てられた環境に合わせて育つ。
笑顔あふれる家族に生まれる子がどんな人になるかなんて、決まっているようなものだ。

それは花といった。
「私はね」と話し始める。
「ここで一人寝転ぶのが好きなんだ。あんたもやればいいのに」
私は、もうその頃は、遠出許可というか、少し離れたところで遊ぶことを許されていた。
自動車なんてないから、轢かれはしないよ。

花には木の上で出会った。
枝の上で寝ていたのだ。
俺はおーい、と言って起こしたが、花は嫌な顔をしなかった。

浮いてるんだな、って思う。
周りに友達がいるわけでもないし、本人もそれを望んでいない。
でも、別に避けているわけでなく、つまり一人好きではないのだ。
友達がいないなら、いないでいい。
友達がいるのなら、いたらいい。
そんな考えの少女は、顔が少し大人びて見えた。
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