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俺がそんなことを考えたら、いつの間にかジャングルに移動していた。
「?」あれ、女もいる。
『ハイハーイ!こちらMEEZです!このところ主は椅子に座ってばかりですね!そこで私が大変恐縮、アンド誠に僭越ながら対策を考えまして、無人島の中で遊びながら暮らすプランをたてました。それではごゆっくり。ルールとしては、その世界で死んでしまいますと、元の生活に逆戻りです!と、いうことです!頑張ってくださいね!』

「はあぁー?何それ!頼んでもないのに!馬鹿にしないでよ!ねえ!私帰りたい!」
『…分かりました。ではそのお隣の男の人も同じ考えなら、お帰ししましょう。どうでしょうか?』

「俺は…」女はこちらを向いてすらいない。もうなんと答えるか分かりきったように。
「ここの生活を満喫してみたい、です」

「はあ!?」女の怒りの矛先が俺に向けられる。
「あんた何言ったか分かってん…」
『ありがとうございます。ここでのご活躍はモニターに録画しておきますので、後から何度でもご覧いただけます!ご健闘をお祈りいたします!』
プツッと音が切れる。
ん、ご健闘?いや、聞いてない、聞いてない。聞き間違いだ。

女が俺に詰め寄ってくる。
「あんたいい加減にし…」
「ねえ、名前教えてよ」
「え?」
「名前」
「はあ…」
女の表情が暗くなる。

「あんた相当の変人かもよ」
「こっちのセリフだよ。せっかく用意してもらったプライベートゾーンを台無しにしちゃダメでしょ」
「あんたは知らないから…。
この『ゲーム』は以前にも行われたわ。突発的に、世界中全てのMEEZが始めることらしくてさ。内容は過酷な戦闘よ!MEEZの主人のほとんどが参加しなかったけど、あなたみたいに勇んだ人がそれに挑戦したわ。そして敗れて死んでしまった…。さて、その人はどうなったと思う?」
「どうなったの?」
「今も寝ているわ。意識が戻らないのよ」
「え…」

「生きてはいるけれど…、あなたもそうなりたいの?」
「そんなの聞いてないよ!」
「じゃあ撤回しなさい!早く戻らないと!元の世界に!」
「MEEZ!」俺は祈るように叫んだ。返事はない。
「MEEZ!!」
「ほーら、返事もしてくれない」
「そんなっ…」
「あーあ、私の人生も短かったものねえ」そう言って女はクスリと笑った気がしたが、なんなんだろう。
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