婚約破棄?いいですよ。ですが、次期王を決めるのは私ですので

水中 沈

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せっかくのお祝いパーティーは葬式の様な雰囲気で幕を閉じた。

「サインをしただけなのに、疲れたわ」

自室の椅子に深く座り込む。
私は窓際にそっと目をやった。

(今日は来ていないのね)

怪我をした小鳥を助けたら、翌日手紙を持ってきた。
気まぐれで返事を返せば、小鳥は翌日も私の元に手紙を運び、それからずっと見知らぬだれかとの文通が続いている。

妃教育に疲れた時、優しく励ましてくれたり、たまに、季節の花やアクセサリーなんかをプレゼントしてくれた。
気まぐれで始めたのに、いつの間にか、手紙が届くのが楽しみで仕方がなくなってしまっていたのだ。

空は既に暗く、小鳥が飛ぶには難しいだろう。

(手紙を楽しみにしていたんだけれど…仕方ないわね)


真実の愛を見つけた。と叫んだエドワード様が羨ましい。

私もこの秘密の文通相手のような人と結婚したかった…。
けれど、私は恋愛結婚をする事は無いだろう。後悔はしていないけれど、少し寂しかった。

涙が一つポロリと落ちた時、ノックの音がした。

「夜分遅くにすみません、僕です、シオンです」

慌てて涙を拭き扉へと向かう。
第二王子のシオン様。こんな夜遅くに一体どうしたというのだろうか?

扉の向こうの彼は、酷く慌てた様子だった

「どうしたの?」

「…手紙より、こちらの方が早いと思ったので」

手紙という言葉に固まる。
シオン様と手紙のやり取りをしていた記憶はない。
エドワード様の婚約者である私がシオン様と文通するのはルール違反だからだ。

それに、彼の肩にはいつもの小鳥が羽を休めている。

「まあ!…まさかあなたが手紙の主だったのね!」

「黙っていてすみません。それから、今日のパーティーの時も…」

相手が兄のエドワードでなければぶん殴ってやったのに。と悔しそうにシオン様は言った。

パーティの最中に物騒な事を考えていたなんて…。思わずくすりと笑みがこぼれる。

「良かった。笑ってくれましたね」

シオン様がくしゃりと人懐っこそうな笑みを浮かべる。

「あなたはいつも私を笑顔にしてくれるわ」

感謝してるの。と答えると、突然シオン様が私の前にひざまずいた。

「婚約破棄をしてお辛い時期にすみません。ですが、どうか聞いてください

…僕の花嫁になってくださいませんか?」

ずっと…ずっと前からお慕いしていました。

祈る様にそう言って私の手を取る。

ずっと夢に見ていた手紙の主との結婚。

それに、幼いころから見ていたから知っている。
シオン様は聡明で優しく次期王にも相応しい方。
でも、私は、素直にその手を取って良いものか迷った。



「でも、私はシオン様より年を取っているわ」

言い訳が口をついて出る。

「それがなんだと言うのでしょうか」

「モニカみたいな愛嬌も無いし…」

「まさか!それは兄の力不足です」

それに、それに。と言い訳を続ける私に彼は言った。

「あなたじゃないと、嫌なんです」

今まで遠くからただ見つめる事だけしか出来ませんでした。
婚約破棄で傷ついたあなたの隙を付くのは申し訳ないと思っていますが、僕には今しかチャンスがありません。

熱を帯びた表情でシオン様が私を見つめる。

「本当に私で良いのね。後悔しない?」

用心深く私は問う。

「勿論。後悔なんてするはずがありません」

「…分かったわ。降参よ」

「やったー!!」

子供みたいな声を上げてシオン様が私の体を持ち上げる。
ちょっと待って、いくら何でも喜びすぎじゃない?

「父上に報告します!」
「え?ちょっと、私を下ろしてからぁぁぁああ!!」

そのまま私を横抱きにして、シオン様は廊下を走っていく。
すれ違う侍女と執事が目を丸くしていた。
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