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第1部 第3章「村の繁栄」
第16話「町への昇格、そして新たな責任」
第16話「町への昇格、そして新たな責任」
グランベル町から戻った翌日、僕は緊急の村民集会を開いた。
中央広場に、村民全員が集まっている。約200人。
みんな、何の話か気になっているようだ。
「みなさん、大事な報告があります」
僕は前に出た。
「昨日、グランベル町の代表、カール・フォン・グレイ様とお会いしました」
村民たちがざわつく。
「そこで…僕たちの村を、正式に『町』に昇格させたいという提案を受けました」
一瞬の沈黙。
そして――
村民たちが歓声を上げた。
「町に!?」
「本当か!?」
「すごい!」
ゲオルグさんが前に出てくる。
「アレン、それは本当か?」
「はい。一ヶ月後、正式に昇格します」
ゲオルグさんの目から涙が溢れる。
「わしが村長だった何十年間、貧困に苦しんできたこの村が…町に…」
彼が声を詰まらせる。
村民たちも涙を流している。
「ありがとう、アレン!」
「お前のおかげだ!」
「ヴァルトハイム家万歳!」
僕は手を上げて、静かにするように促す。
「みなさん、ありがとうございます。でも、これはみんなの努力の結果です」
「冒険者になって頑張ってくれた人たち、クラフト魔法を学んでくれた人たち、みんなが協力してくれたから、ここまで来られたんです」
村民たちが静かに聞く。
「これから、町への昇格に向けて、準備が必要です」
僕は説明する。
「まず、町の名前を決めなければなりません」
その夜、僕は家族とゲオルグさんと、数人の村の有力者を屋敷に招いて、会議を開いた。
「町の名前…どうしましょうか」
僕が問いかけると、一人の老人が言った。
「やはり、ヴァルトハイムという名前を入れるべきではないか」
「ヴァルトハイム…」
別の人が言う。
「ヴァルトハイムは『森の守り』という意味だったな」
ゲオルグさんが言う。
「この村は、森に囲まれている。そして、お前たち家族が守ってくれた」
母さんが言う。
「でも、家の名前だけというのは…」
ソフィア姉さんが提案する。
「じゃあ、『新しい』とか『希望』とか、そういう意味の言葉を加えるのはどう?」
マルク兄さんも言う。
「確かに、この村は新しく生まれ変わったからね」
ノエルが言う。
「『ノイヴァルトハイム』はどうかな? 『ノイ』は『新しい』という意味だよ」
僕は考えた。
ノイヴァルトハイム。
新しい森の守り。
この村…いや、町の歴史に相応しい名前だ。
「いいですね。ノイヴァルトハイムにしましょう」
全員が賛成してくれた。
「では、明日村民に提案します」
翌日の集会で、町の名前を発表した。
「町の名前は、『ノイヴァルトハイム』にしたいと思います」
村民たちがざわつく。
「ノイヴァルトハイム…」
「新しい森の守り…」
「いい名前だ!」
全員が賛成してくれた。
こうして、町の名前が決まった。
次は、町の組織体制を整える必要があった。
町になれば、行政の仕事が増える。
僕一人では対応しきれない。
「ゲオルグさん、相談があります」
「何だ?」
「町の行政を手伝ってくれる人が必要です。役職を作りたいんです」
ゲオルグさんが頷く。
「そうだな。では、こうしてはどうか」
彼が提案する。
「お前が町の代表。わしが副代表として補佐する」
「それから、財政担当、治安担当、建設担当、教育担当…それぞれに責任者を置く」
「いいですね。じゃあ、それぞれの担当者を決めましょう」
僕たちは、適任者を選んでいった。
財政担当:村で一番計算が得意な商人、ハンス
治安担当:元兵士で冒険者のベテラン、オットー
建設担当:クラフト魔法チームのリーダー格、エーリッヒ
教育担当:学校の先生、ゲルハルト
そして、各担当の下に、数人ずつの補佐を置く。
「これで、組織体制は整いました」
一週間後、町への昇格に向けて、最後の準備が進んでいた。
町の入口に、大きな門を建設する。
クラフト魔法で、立派な石造りの門。
門の上には、「ノイヴァルトハイム」という文字を刻む。
そして、町の広場には、新しい建物を建てた。
町役場だ。
二階建てで、一階は町民が利用できるスペース、二階は行政のオフィス。
「これで、町としての体裁が整ったね」
ノエルが嬉しそうに言う。
「うん。あと二週間で、正式な昇格式だね」
昇格式の一週間前、グランベルの町から使者が来た。
「アレン代表、領主様がお会いになりたいとのことです」
「領主様…?」
「はい。この地域を治めるフリードリヒ・フォン・シュタイン男爵様です」
使者が説明する。
「町への昇格を正式に認めるためには、領主様の承認が必要です」
「わかりました。いつお会いすればいいですか?」
「明日、領主の館にお越しください」
翌日、僕は母さんとソフィア姉さん、マルク兄さん、ノエルと共に、領主の館に向かった。
双子は、また泣いて付いてきた。
領主の館は、グランベルの町から少し離れた、丘の上にある立派な建物だった。
石造りの壁、高い塔、広い庭園。
「すごい…お城みたい…」
双子が目を丸くする。
門番に案内されて、館の中に入る。
広い謁見の間に通された。
そこには、立派な椅子に座った男性がいた。
四十代くらいだろうか。厳格そうな顔つきだが、目には優しさがある。
フリードリヒ・フォン・シュタイン男爵だ。
「ようこそ、アレン・ヴァルトハイム」
男爵が立ち上がって、僕を迎えてくれた。
「初めまして。アレン・ヴァルトハイムです」
僕は丁寧に頭を下げる。
家族も同じように挨拶する。
「座ってください」
男爵が勧めてくれる。
椅子に座ると、男爵が口を開いた。
「貴殿の噂は、かねがね聞いております」
「ありがとうございます」
「七歳にして、村を町に変えた少年。盗賊団を壊滅させ、魔法建築屋ギルドを立ち上げた英雄」
男爵が微笑む。
「最初は信じられませんでした。でも、グランベルの町代表、カール殿から詳しく聞き、そして実際に貴殿の町…ノイヴァルトハイムを視察させていただきました」
「視察…ですか?」
「ええ。変装して、こっそりと」
男爵が少し照れたように言う。
「驚きました。あの貧しい辺境の村が、立派な城壁に囲まれ、美しい家々が並び、活気に満ちている」
「それに、村民…いや、町民の表情が、明るい。希望に満ちている」
男爵が真剣な表情になる。
「これは、本物だと確信しました」
彼が立ち上がる。
「アレン・ヴァルトハイム。私は、貴殿の町への昇格を、正式に承認します」
「ありがとうございます!」
僕も立ち上がって、深々と頭を下げる。
「ただし」
男爵が続ける。
「町になれば、責任も増えます。税の徴収、治安の維持、交易の管理…様々な義務が生じます」
「覚悟しています」
「それと、年に一度、領主である私に報告する義務があります」
「承知しました」
男爵が微笑む。
「では、一週間後の昇格式を楽しみにしています」
領主の館を出ると、家族みんなが安堵の表情を浮かべた。
「緊張した…」
ソフィア姉さんが深く息を吐く。
「でも、優しい領主様だったね」
マルク兄さんが言う。
「うん。厳格そうに見えたけど、町のことを本当に心配してくれてる感じがした」
母さんが言う。
「これで、正式に町になれるのね」
ノエルが嬉しそうに微笑む。
「私たちの町、ノイヴァルトハイム」
そして、ついにその日が来た。
町への昇格式。
町の中央広場には、特設の舞台が作られていた。
町民全員が集まっている。
そして、グランベルの町から、カール代表が来ている。
領主のフリードリヒ男爵も、正装で来てくれた。
他にも、周辺の村々から、代表者たちが祝いに来てくれている。
正午、式が始まった。
男爵が舞台に上がる。
「本日、ここに集いし皆様。我が領地において、新しい町が誕生します」
男爵の声が、広場に響く。
「辺境の貧しい村だったこの地が、わずか半年で、立派な町へと生まれ変わりました」
「これは、一人の少年の英知と勇気、そして町民の皆様の努力の結果です」
男爵が僕を見る。
「アレン・ヴァルトハイム、前へ」
僕は舞台に上がった。
町民たちが拍手する。
男爵が羊皮紙を取り出す。
「ここに、正式に宣言します。本日より、この地を『ノイヴァルトハイム町』と認定し、アレン・ヴァルトハイムを町の正式な代表として任命します」
町民たちが歓声を上げる。
「ノイヴァルトハイム万歳!」
「アレン代表万歳!」
男爵が僕に、正式な任命書を手渡す。
「アレン殿、この町を、そして町民を、よろしくお願いします」
「はい。全力を尽くします」
僕は任命書を受け取り、町民に向かって宣言した。
「みなさん、今日から僕たちの村は、正式に『ノイヴァルトハイム町』になりました」
町民たちが拍手する。
「これからも、みんなで力を合わせて、もっと良い町にしていきましょう」
「そして、この町が、誰もが幸せに暮らせる場所になるように、僕も頑張ります」
町民たちが大きな歓声を上げた。
こうして、ノイヴァルトハイム町が、正式に誕生した。
式の後、祝宴が開かれた。
広場に、たくさんの料理が並ぶ。
町民たちが、歌い、踊り、笑い合う。
領主の男爵も、気さくに町民と話している。
「本当に、良い町ですね」
男爵が僕に言う。
「ありがとうございます」
「これからも、何か困ったことがあれば、遠慮なく言ってください。できる限り協力します」
「ありがとうございます。それでは、一つお願いがあるのですが…」
「何でしょう?」
「交易路の整備を、お願いできないでしょうか。この町と、グランベルの町を結ぶ道を、もっと良くしたいんです」
男爵が頷く。
「わかりました。すぐに手配します」
そして、男爵が真剣な表情になる。
「それと、一つ相談があります」
「何でしょうか?」
「実は、東の森で、魔物の活動が活発になっているという報告があります」
男爵が説明する。
「オークやゴブリンだけでなく、もっと強力な魔物も目撃されているとか」
「それは…」
「貴殿の町は、優秀な冒険者が多いと聞いています。もし可能なら、調査を依頼したいのですが」
僕は少し考えた。
「わかりました。調査してみます」
「ありがとうございます。報酬は、もちろんお支払いします」
祝宴が終わり、夜になった。
僕は家族と共に、屋敷に戻った。
広いリビングで、家族会議を開く。
「みんな、領主様から依頼があったんだ」
僕は東の森の魔物について説明した。
「危ないんじゃない?」
母さんが心配そうに言う。
「でも、調査するだけだよ。無理はしない」
ソフィア姉さんが言う。
「私も行く。家族みんなで行けば、大丈夫だよ」
マルク兄さんも頷く。
「僕も。偵察なら、僕の弓が役立つと思う」
ノエルも言う。
「私も行きたい。クラフト魔法で、何か役に立てるかも」
双子が不満そうに言う。
「僕たちも行きたい!」
「ダメだよ、双子はまだ小さいから」
僕が言うと、双子が泣き出しそうになる。
母さんが双子を抱きしめる。
「レオ、リナ、お留守番お願いね。みんなが帰ってくるまで、ゲオルグさんと一緒にいて」
「…わかった」
双子が渋々頷く。
「じゃあ、明後日、東の森に調査に行こう」
翌日、僕は町の冒険者たちに声をかけた。
「東の森の調査に行きます。一緒に来てくれる人はいますか?」
十人の冒険者が手を挙げてくれた。
「ありがとう。明日の朝、出発します」
そして、その夜、僕は準備をした。
装備の確認、回復薬の準備、食料の準備。
空間収納に、必要なものを全て入れる。
母さんが心配そうに見ている。
「アレン、無理しないでね」
「大丈夫だよ、母さん。調査するだけだから」
「でも…」
「それに、家族みんなで行くんだ。みんなで守り合えば、きっと大丈夫だよ」
母さんが優しく微笑む。
「そうね。あなたたちなら、大丈夫ね」
その夜、窓の外を見上げると、一つの星が特に明るく輝いていた。
「セレスティア、見てくれてる?」
小さく呟く。
「町への昇格、無事に終わったよ。でも、新しい責任も増えた」
星が優しく瞬く。
「明日から、東の森の調査に行くんだ。少し不安だけど…でも、家族と仲間がいるから、大丈夫だと思う」
星がまた瞬く。
まるで、女神が励ましてくれているかのように。
「これからも、見守っていてね」
そして、僕は眠りについた。
明日は、新しい挑戦が待っている。
町の代表として。
家族の一員として。
そして、冒険者として。
僕の二度目の人生は、まだまだ続いていく。
次回:第17話「東の森の脅威」
グランベル町から戻った翌日、僕は緊急の村民集会を開いた。
中央広場に、村民全員が集まっている。約200人。
みんな、何の話か気になっているようだ。
「みなさん、大事な報告があります」
僕は前に出た。
「昨日、グランベル町の代表、カール・フォン・グレイ様とお会いしました」
村民たちがざわつく。
「そこで…僕たちの村を、正式に『町』に昇格させたいという提案を受けました」
一瞬の沈黙。
そして――
村民たちが歓声を上げた。
「町に!?」
「本当か!?」
「すごい!」
ゲオルグさんが前に出てくる。
「アレン、それは本当か?」
「はい。一ヶ月後、正式に昇格します」
ゲオルグさんの目から涙が溢れる。
「わしが村長だった何十年間、貧困に苦しんできたこの村が…町に…」
彼が声を詰まらせる。
村民たちも涙を流している。
「ありがとう、アレン!」
「お前のおかげだ!」
「ヴァルトハイム家万歳!」
僕は手を上げて、静かにするように促す。
「みなさん、ありがとうございます。でも、これはみんなの努力の結果です」
「冒険者になって頑張ってくれた人たち、クラフト魔法を学んでくれた人たち、みんなが協力してくれたから、ここまで来られたんです」
村民たちが静かに聞く。
「これから、町への昇格に向けて、準備が必要です」
僕は説明する。
「まず、町の名前を決めなければなりません」
その夜、僕は家族とゲオルグさんと、数人の村の有力者を屋敷に招いて、会議を開いた。
「町の名前…どうしましょうか」
僕が問いかけると、一人の老人が言った。
「やはり、ヴァルトハイムという名前を入れるべきではないか」
「ヴァルトハイム…」
別の人が言う。
「ヴァルトハイムは『森の守り』という意味だったな」
ゲオルグさんが言う。
「この村は、森に囲まれている。そして、お前たち家族が守ってくれた」
母さんが言う。
「でも、家の名前だけというのは…」
ソフィア姉さんが提案する。
「じゃあ、『新しい』とか『希望』とか、そういう意味の言葉を加えるのはどう?」
マルク兄さんも言う。
「確かに、この村は新しく生まれ変わったからね」
ノエルが言う。
「『ノイヴァルトハイム』はどうかな? 『ノイ』は『新しい』という意味だよ」
僕は考えた。
ノイヴァルトハイム。
新しい森の守り。
この村…いや、町の歴史に相応しい名前だ。
「いいですね。ノイヴァルトハイムにしましょう」
全員が賛成してくれた。
「では、明日村民に提案します」
翌日の集会で、町の名前を発表した。
「町の名前は、『ノイヴァルトハイム』にしたいと思います」
村民たちがざわつく。
「ノイヴァルトハイム…」
「新しい森の守り…」
「いい名前だ!」
全員が賛成してくれた。
こうして、町の名前が決まった。
次は、町の組織体制を整える必要があった。
町になれば、行政の仕事が増える。
僕一人では対応しきれない。
「ゲオルグさん、相談があります」
「何だ?」
「町の行政を手伝ってくれる人が必要です。役職を作りたいんです」
ゲオルグさんが頷く。
「そうだな。では、こうしてはどうか」
彼が提案する。
「お前が町の代表。わしが副代表として補佐する」
「それから、財政担当、治安担当、建設担当、教育担当…それぞれに責任者を置く」
「いいですね。じゃあ、それぞれの担当者を決めましょう」
僕たちは、適任者を選んでいった。
財政担当:村で一番計算が得意な商人、ハンス
治安担当:元兵士で冒険者のベテラン、オットー
建設担当:クラフト魔法チームのリーダー格、エーリッヒ
教育担当:学校の先生、ゲルハルト
そして、各担当の下に、数人ずつの補佐を置く。
「これで、組織体制は整いました」
一週間後、町への昇格に向けて、最後の準備が進んでいた。
町の入口に、大きな門を建設する。
クラフト魔法で、立派な石造りの門。
門の上には、「ノイヴァルトハイム」という文字を刻む。
そして、町の広場には、新しい建物を建てた。
町役場だ。
二階建てで、一階は町民が利用できるスペース、二階は行政のオフィス。
「これで、町としての体裁が整ったね」
ノエルが嬉しそうに言う。
「うん。あと二週間で、正式な昇格式だね」
昇格式の一週間前、グランベルの町から使者が来た。
「アレン代表、領主様がお会いになりたいとのことです」
「領主様…?」
「はい。この地域を治めるフリードリヒ・フォン・シュタイン男爵様です」
使者が説明する。
「町への昇格を正式に認めるためには、領主様の承認が必要です」
「わかりました。いつお会いすればいいですか?」
「明日、領主の館にお越しください」
翌日、僕は母さんとソフィア姉さん、マルク兄さん、ノエルと共に、領主の館に向かった。
双子は、また泣いて付いてきた。
領主の館は、グランベルの町から少し離れた、丘の上にある立派な建物だった。
石造りの壁、高い塔、広い庭園。
「すごい…お城みたい…」
双子が目を丸くする。
門番に案内されて、館の中に入る。
広い謁見の間に通された。
そこには、立派な椅子に座った男性がいた。
四十代くらいだろうか。厳格そうな顔つきだが、目には優しさがある。
フリードリヒ・フォン・シュタイン男爵だ。
「ようこそ、アレン・ヴァルトハイム」
男爵が立ち上がって、僕を迎えてくれた。
「初めまして。アレン・ヴァルトハイムです」
僕は丁寧に頭を下げる。
家族も同じように挨拶する。
「座ってください」
男爵が勧めてくれる。
椅子に座ると、男爵が口を開いた。
「貴殿の噂は、かねがね聞いております」
「ありがとうございます」
「七歳にして、村を町に変えた少年。盗賊団を壊滅させ、魔法建築屋ギルドを立ち上げた英雄」
男爵が微笑む。
「最初は信じられませんでした。でも、グランベルの町代表、カール殿から詳しく聞き、そして実際に貴殿の町…ノイヴァルトハイムを視察させていただきました」
「視察…ですか?」
「ええ。変装して、こっそりと」
男爵が少し照れたように言う。
「驚きました。あの貧しい辺境の村が、立派な城壁に囲まれ、美しい家々が並び、活気に満ちている」
「それに、村民…いや、町民の表情が、明るい。希望に満ちている」
男爵が真剣な表情になる。
「これは、本物だと確信しました」
彼が立ち上がる。
「アレン・ヴァルトハイム。私は、貴殿の町への昇格を、正式に承認します」
「ありがとうございます!」
僕も立ち上がって、深々と頭を下げる。
「ただし」
男爵が続ける。
「町になれば、責任も増えます。税の徴収、治安の維持、交易の管理…様々な義務が生じます」
「覚悟しています」
「それと、年に一度、領主である私に報告する義務があります」
「承知しました」
男爵が微笑む。
「では、一週間後の昇格式を楽しみにしています」
領主の館を出ると、家族みんなが安堵の表情を浮かべた。
「緊張した…」
ソフィア姉さんが深く息を吐く。
「でも、優しい領主様だったね」
マルク兄さんが言う。
「うん。厳格そうに見えたけど、町のことを本当に心配してくれてる感じがした」
母さんが言う。
「これで、正式に町になれるのね」
ノエルが嬉しそうに微笑む。
「私たちの町、ノイヴァルトハイム」
そして、ついにその日が来た。
町への昇格式。
町の中央広場には、特設の舞台が作られていた。
町民全員が集まっている。
そして、グランベルの町から、カール代表が来ている。
領主のフリードリヒ男爵も、正装で来てくれた。
他にも、周辺の村々から、代表者たちが祝いに来てくれている。
正午、式が始まった。
男爵が舞台に上がる。
「本日、ここに集いし皆様。我が領地において、新しい町が誕生します」
男爵の声が、広場に響く。
「辺境の貧しい村だったこの地が、わずか半年で、立派な町へと生まれ変わりました」
「これは、一人の少年の英知と勇気、そして町民の皆様の努力の結果です」
男爵が僕を見る。
「アレン・ヴァルトハイム、前へ」
僕は舞台に上がった。
町民たちが拍手する。
男爵が羊皮紙を取り出す。
「ここに、正式に宣言します。本日より、この地を『ノイヴァルトハイム町』と認定し、アレン・ヴァルトハイムを町の正式な代表として任命します」
町民たちが歓声を上げる。
「ノイヴァルトハイム万歳!」
「アレン代表万歳!」
男爵が僕に、正式な任命書を手渡す。
「アレン殿、この町を、そして町民を、よろしくお願いします」
「はい。全力を尽くします」
僕は任命書を受け取り、町民に向かって宣言した。
「みなさん、今日から僕たちの村は、正式に『ノイヴァルトハイム町』になりました」
町民たちが拍手する。
「これからも、みんなで力を合わせて、もっと良い町にしていきましょう」
「そして、この町が、誰もが幸せに暮らせる場所になるように、僕も頑張ります」
町民たちが大きな歓声を上げた。
こうして、ノイヴァルトハイム町が、正式に誕生した。
式の後、祝宴が開かれた。
広場に、たくさんの料理が並ぶ。
町民たちが、歌い、踊り、笑い合う。
領主の男爵も、気さくに町民と話している。
「本当に、良い町ですね」
男爵が僕に言う。
「ありがとうございます」
「これからも、何か困ったことがあれば、遠慮なく言ってください。できる限り協力します」
「ありがとうございます。それでは、一つお願いがあるのですが…」
「何でしょう?」
「交易路の整備を、お願いできないでしょうか。この町と、グランベルの町を結ぶ道を、もっと良くしたいんです」
男爵が頷く。
「わかりました。すぐに手配します」
そして、男爵が真剣な表情になる。
「それと、一つ相談があります」
「何でしょうか?」
「実は、東の森で、魔物の活動が活発になっているという報告があります」
男爵が説明する。
「オークやゴブリンだけでなく、もっと強力な魔物も目撃されているとか」
「それは…」
「貴殿の町は、優秀な冒険者が多いと聞いています。もし可能なら、調査を依頼したいのですが」
僕は少し考えた。
「わかりました。調査してみます」
「ありがとうございます。報酬は、もちろんお支払いします」
祝宴が終わり、夜になった。
僕は家族と共に、屋敷に戻った。
広いリビングで、家族会議を開く。
「みんな、領主様から依頼があったんだ」
僕は東の森の魔物について説明した。
「危ないんじゃない?」
母さんが心配そうに言う。
「でも、調査するだけだよ。無理はしない」
ソフィア姉さんが言う。
「私も行く。家族みんなで行けば、大丈夫だよ」
マルク兄さんも頷く。
「僕も。偵察なら、僕の弓が役立つと思う」
ノエルも言う。
「私も行きたい。クラフト魔法で、何か役に立てるかも」
双子が不満そうに言う。
「僕たちも行きたい!」
「ダメだよ、双子はまだ小さいから」
僕が言うと、双子が泣き出しそうになる。
母さんが双子を抱きしめる。
「レオ、リナ、お留守番お願いね。みんなが帰ってくるまで、ゲオルグさんと一緒にいて」
「…わかった」
双子が渋々頷く。
「じゃあ、明後日、東の森に調査に行こう」
翌日、僕は町の冒険者たちに声をかけた。
「東の森の調査に行きます。一緒に来てくれる人はいますか?」
十人の冒険者が手を挙げてくれた。
「ありがとう。明日の朝、出発します」
そして、その夜、僕は準備をした。
装備の確認、回復薬の準備、食料の準備。
空間収納に、必要なものを全て入れる。
母さんが心配そうに見ている。
「アレン、無理しないでね」
「大丈夫だよ、母さん。調査するだけだから」
「でも…」
「それに、家族みんなで行くんだ。みんなで守り合えば、きっと大丈夫だよ」
母さんが優しく微笑む。
「そうね。あなたたちなら、大丈夫ね」
その夜、窓の外を見上げると、一つの星が特に明るく輝いていた。
「セレスティア、見てくれてる?」
小さく呟く。
「町への昇格、無事に終わったよ。でも、新しい責任も増えた」
星が優しく瞬く。
「明日から、東の森の調査に行くんだ。少し不安だけど…でも、家族と仲間がいるから、大丈夫だと思う」
星がまた瞬く。
まるで、女神が励ましてくれているかのように。
「これからも、見守っていてね」
そして、僕は眠りについた。
明日は、新しい挑戦が待っている。
町の代表として。
家族の一員として。
そして、冒険者として。
僕の二度目の人生は、まだまだ続いていく。
次回:第17話「東の森の脅威」
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全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。
辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。
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