悠久の大陸

彩森ゆいか

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第47話 無理だよ

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 ウラクの町から出て雑木林のほうへと向かうと、ザラクのダンジョンへの入り口がある。ダンジョンの外は彼らから見て弱い敵しか出ないが、ダンジョンの中は急に強くなる。
 雑魚でさえも強めなので、ボスは相当強い。リュウトとスオウにとっては弱いボスモンスターなのだが、まだレベルの低いナツキには勝てる気がしない敵である。
 ガクガクと足が震えるのは力が入らないからだ。振動もピストンもないが、入っているというだけで、どうしようもなく身体が熱い。
「リュウト、むりだよ……っ、戦えない……っ」
 ナツキは必死で訴えたが、誰も聞いてくれない。スオウは一応心配してくれているようだが、リュウトと意見が違うわけではなさそうだ。
 ダンジョンの中に入ると、猿の形をしたモンスターがいきなり現れた。
「うわあっ」
 ナツキは必死で剣を振るった。ザンッと音がしてモンスターが霧散する。
「……はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
 体内にバイブが入っているせいで、いつもの倍以上の労力が必要だった。
「まだこれは弱いほうだ。先に進むともっと強いのが出る」
 リュウトが告げる。彼がどういうつもりなのかわからないままだが、とにかくこの状態で戦うしかないのだろう。ナツキは奥歯を噛み締めた。
 コウモリの形をしたモンスターが現れた。頭上から攻撃され、ダメージを負う。
「うわっ……」
 ザンッ。スオウが剣を振り上げた。モンスターがたちまち消えていく。
(……すごい汗)
 ナツキは自分が汗だくになっていたことに気づいた。軽くめまいもする。こんなにフラフラした状態で戦えるわけがない。勝手にログアウトしたら、きっと後でお仕置きされるのだろう。今逃げずに戦うのと、逃げて後でお仕置きされるのと、どっちがマシだろう。
「ナツキッ!」
 スオウが大声で呼んだ。ナツキの目の前を獣の爪がかすめる。反射的によろめいたナツキは、かろうじてダメージを受けずに済む。見ると、ヒョウのような姿をした額に第三の目を持つモンスターだった。唸り声をあげている。
 ふと、ここで倒されたほうが楽なのではと、ナツキの脳裏で誘惑の声がした。その瞬間、いきなり尻の中で突き上げる動きが襲ってきて、思わず声をあげた。
「あぁっ……!」
 へなへなとその場に膝をつく。尻の中でバイブがピストン運動をしていた。突き上げられるたびに、ナツキはビクビクと小さく跳ねる。
「あっ、あっ……あっ……!」
 まるで考えを見透かされたような気分だった。いや、見透かされていたのだろうか。ナツキはリュウトのいるほうへと振り向いた。
「おい、リュウトッ!」
 スオウの咎める声が聞こえた。
 リモコンを操っていたのはやはりリュウトだ。
 悪びれた様子もなく、澄ました顔で、さらに無茶なことを言ってくる。
「ナツキ、立て。立って、戦え」
 まるでどこかのスポ根アニメのようだ。
「どんなスパルタだよ」
 呆れるスオウには構わず、リュウトは手の中のリモコンをいじる。ふっとピストンの動きが消え、ナツキはよろよろと立ち上がった。しかしすぐにガクンと崩れ落ちる。
「やぁっ……むり……っ」
 頬を紅潮させながら熱い息を吐き出すナツキは、どう見ても色気のかたまりで、スオウがごくりとツバを飲み込んだ。
「俺の戦闘力もなくなりそうだぜ」
「いいから雑魚を倒せ、スオウ」
「俺に命令すんな」
 スオウはリュウトを軽くにらみつけながら、剣を振り上げる。ヒョウの形をしたモンスターが霧散した。
 リュウトはナツキに近寄り腕をつかむと、強引に立ち上がらせた。ナツキの目元に涙がにじんでいる。
「……も、やだ……取って……取りたい」
「だめだ」
 リュウトはリモコンのスイッチを弱にした。
 弱い振動のみが尻の中で起こり、ナツキは震えながらも一応は立てる。このまま歩けというのだろう。従いたくなかったが、ナツキは必死で足を踏み出した。
「……はぁ……はぁ、はぁ……」
 そんな状態のままダンジョンを進むことになり、ナツキは何度も意識がなくなりそうだったが、倒れそうになるたびにスイッチがオフになり、冷静さを取り戻して歩きだすと、弱の振動にさいなまれる状態になっていた。
 雑魚モンスターのほとんどはリュウトとスオウで倒していて、ナツキはまるで役に立たない存在に成り果てていた。
 それでもなんとかダンジョンの奥へと進み、残るはボスモンスターの待つ部屋のみとなった。
「ナツキ、ドアを開けて」
 ボスの待つ部屋には扉があった。リュウトに言われるままナツキは必死で扉を開ける。その向こうに立ちはだかっていたのは、巨大で太った鬼のようなモンスターだった。ガシャーン、ガシャーンとどこかで音がする。ボスモンスターの足音だった。
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