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第67話 なぜかはわからないけど
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ボスモンスターを倒したので、グランデルクの城にはもうモンスターはいなかった。
しんと静まりかえった鬱蒼とした城の内部は、かすかな音すらも聞こえてこなくて非常に不気味だ。
「装備を整えて、外に出るぞ」
リュウトが促してきた。ナツキはほんのりと頬を染めた。
「う、うん」
恥ずかしいような照れ臭いような、妙な感情に振り回される。
リュウトと身体を重ねたのは一度や二度ではないというのに。
もっと恥ずかしい姿をさんざんさらしてきたというのに。
どうしてこんなにも身体が熱くなってしまうのだろう。
支度を終えると、先を歩くリュウトについていく。性感の数値が高いせいなのだろうか、歩いているだけでも変な気分になる。いや数値だけのせいではない。セックスの直後だからだろう。でもそれだけではない。
(なぜかはわからないけど、俺、リュウトのことを好きになってる)
恋愛感情に理屈なんてものはない。ふとした瞬間に急に好きになる。これまで何度も身体を重ねてはきたが、こんな気持ちになったのは今日が初めてだ。
(なぜかはわからないけど)
振り返ったリュウトが眩しく見える。
「ナツキ」
リュウトが右手を伸ばしてきた。手を差し出している。
「……?」
ナツキが戸惑うように首をかしげると、リュウトが焦れたような顔をした。
「俺の手に、手を重ねて。魔法で一瞬で城の外に出るから」
「あ、うん」
リュウトの手のひらに、そっと手を重ねた。彼の手は熱かった。体温が高いのだろうか。きゅうとナツキの胸が締めつけられる。
リュウトが呪文を唱えた。全身がふわっと浮いたような、ズンッと沈むような、空間が歪むような感覚が押し寄せたかと思ったら、もう城の外に出ていた。
「……すごい。ホントに一瞬」
「ワープだよ。ダンジョンから一瞬で外に出る」
リュウトがふっと微笑んだ。
「これからどうする? 適当に雑魚キャラと戦ってレベルあげる? もしそうするなら俺もサポートするけど? それともメインストーリーを進める?」
「俺ひとりでも」
「却下。ひとりにはしない。俺もついてく」
どうやらリュウトは本気だ。
「ひとりにするとロクなことがない。ここはアダルト空間なんだ。ただでさえ性感の数値が高いんだ。それに引き寄せられてくるモンスターもいる。このままだと、あらゆるモンスターから犯されまくることになるぞ」
ナツキはぞっとした。
「性感の数値が高くなったのはリュウトのせいだろ。俺は頼んでないし」
「ナツキはもう、その存在だけでもエロいんだ。本音を言えば、どこかの部屋に閉じ込めて毎日抱きたいぐらいなんだ」
「存在がエロいってなんだよ。俺をエロくしたのはリュウトだろ」
「一目惚れなんだよ」
「えっ?」
急な告白に、ナツキは心底から戸惑った。
「初心者の村で一目見た時から、ナツキには惹かれてた。だから声をかけたんだ。抱きたかったからアダルト空間にも誘った。でもナツキは男には興味なさそうだったし、だから半分騙すような形になってしまったけど」
ナツキはどぎまぎとする。なぜリュウトは急に告白してきたのだろう。
「本当は」
リュウトはさらに口を開いた。真剣な表情だった。
「本当は、リアルのナツキにも会いたい。リアルのナツキも抱きたい」
ナツキはどきりとした。
「で、でも、リアルとゲームでは顔も名前も」
「ふふっ」
なにがおかしいのか、リュウトが急に笑った。
「うん、まあ、いいよ。とりあえずナツキのゲームを進めよう」
急に話が打ち切られてしまった。
ここでようやくナツキはスオウのことを思い出した。
(どうしよう)
リュウトとはどうやら相思相愛のようだ。となると、スオウと、辰泰と関係が続いているのは、だいぶマズイのではないか。
「ス、スオウのことは……どう……」
「俺たちは3Pする関係だろ。そもそもあいつを誘ったのは俺なんだ。スオウはナツキに本気みたいだし、これからも3Pしよう」
「えぇ……っ?」
ナツキは激しく戸惑った。この先も、ふたりから同時に抱かれることになるらしい。ようするに、これまでと何も変わらないということだった。
(いいのか、俺? それで本当にいいのか?)
ナツキは混乱したが、リュウトはあっけらかんとしている。
しんと静まりかえった鬱蒼とした城の内部は、かすかな音すらも聞こえてこなくて非常に不気味だ。
「装備を整えて、外に出るぞ」
リュウトが促してきた。ナツキはほんのりと頬を染めた。
「う、うん」
恥ずかしいような照れ臭いような、妙な感情に振り回される。
リュウトと身体を重ねたのは一度や二度ではないというのに。
もっと恥ずかしい姿をさんざんさらしてきたというのに。
どうしてこんなにも身体が熱くなってしまうのだろう。
支度を終えると、先を歩くリュウトについていく。性感の数値が高いせいなのだろうか、歩いているだけでも変な気分になる。いや数値だけのせいではない。セックスの直後だからだろう。でもそれだけではない。
(なぜかはわからないけど、俺、リュウトのことを好きになってる)
恋愛感情に理屈なんてものはない。ふとした瞬間に急に好きになる。これまで何度も身体を重ねてはきたが、こんな気持ちになったのは今日が初めてだ。
(なぜかはわからないけど)
振り返ったリュウトが眩しく見える。
「ナツキ」
リュウトが右手を伸ばしてきた。手を差し出している。
「……?」
ナツキが戸惑うように首をかしげると、リュウトが焦れたような顔をした。
「俺の手に、手を重ねて。魔法で一瞬で城の外に出るから」
「あ、うん」
リュウトの手のひらに、そっと手を重ねた。彼の手は熱かった。体温が高いのだろうか。きゅうとナツキの胸が締めつけられる。
リュウトが呪文を唱えた。全身がふわっと浮いたような、ズンッと沈むような、空間が歪むような感覚が押し寄せたかと思ったら、もう城の外に出ていた。
「……すごい。ホントに一瞬」
「ワープだよ。ダンジョンから一瞬で外に出る」
リュウトがふっと微笑んだ。
「これからどうする? 適当に雑魚キャラと戦ってレベルあげる? もしそうするなら俺もサポートするけど? それともメインストーリーを進める?」
「俺ひとりでも」
「却下。ひとりにはしない。俺もついてく」
どうやらリュウトは本気だ。
「ひとりにするとロクなことがない。ここはアダルト空間なんだ。ただでさえ性感の数値が高いんだ。それに引き寄せられてくるモンスターもいる。このままだと、あらゆるモンスターから犯されまくることになるぞ」
ナツキはぞっとした。
「性感の数値が高くなったのはリュウトのせいだろ。俺は頼んでないし」
「ナツキはもう、その存在だけでもエロいんだ。本音を言えば、どこかの部屋に閉じ込めて毎日抱きたいぐらいなんだ」
「存在がエロいってなんだよ。俺をエロくしたのはリュウトだろ」
「一目惚れなんだよ」
「えっ?」
急な告白に、ナツキは心底から戸惑った。
「初心者の村で一目見た時から、ナツキには惹かれてた。だから声をかけたんだ。抱きたかったからアダルト空間にも誘った。でもナツキは男には興味なさそうだったし、だから半分騙すような形になってしまったけど」
ナツキはどぎまぎとする。なぜリュウトは急に告白してきたのだろう。
「本当は」
リュウトはさらに口を開いた。真剣な表情だった。
「本当は、リアルのナツキにも会いたい。リアルのナツキも抱きたい」
ナツキはどきりとした。
「で、でも、リアルとゲームでは顔も名前も」
「ふふっ」
なにがおかしいのか、リュウトが急に笑った。
「うん、まあ、いいよ。とりあえずナツキのゲームを進めよう」
急に話が打ち切られてしまった。
ここでようやくナツキはスオウのことを思い出した。
(どうしよう)
リュウトとはどうやら相思相愛のようだ。となると、スオウと、辰泰と関係が続いているのは、だいぶマズイのではないか。
「ス、スオウのことは……どう……」
「俺たちは3Pする関係だろ。そもそもあいつを誘ったのは俺なんだ。スオウはナツキに本気みたいだし、これからも3Pしよう」
「えぇ……っ?」
ナツキは激しく戸惑った。この先も、ふたりから同時に抱かれることになるらしい。ようするに、これまでと何も変わらないということだった。
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ナツキは混乱したが、リュウトはあっけらかんとしている。
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