神様の喫茶店 ~こだわりの珈琲とともに~

早見崎 瑠樹

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ひととなか

出雲旅行記

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 地元から島根県の出雲まで車以外で行こうとすると、実はかなり大変だったりする。
 一番速い行き方は、新幹線で広島に行き、それからバスで三時間揺られるというものだ。

 ……往復で3万円超えるんですが。

 なぜ出雲の話になっているのかというと、彼の神使に頼まれたからで。

ーー ーー ーー

「出雲に?」
「うむ、必要ならばこれを使うと良い」

 珠呼たまよびは断るとは梅雨ほども思っていないのか、一つの勾玉を渡す。

「勾玉ですか」
「うむ、質屋に持っていけばそれなりの金になるだろう」

「な、なるほど」

 手にした翡翠の勾玉を転がす。
 まるで、生きているかのような緑色だ。そして、ひんやりと心地良い冷たさが手に伝わってくる。

 多分これは質屋に持っていったら、値段がつけられないほどの値がつくと思う。

「では、頼んだぞ」

 そう言って、珠呼はきびすを返す。

「あ、ちょっと…!」

 慌てて呼び止めると、珠呼は足を止めて顔だけをこちらに向ける。

「どうした?」

「あ、えと、珠呼さんは行かなくていいんですか?」

「ふむ、神無月の間、神社に主がいないだろう?」

「…はい」

「であれば、誰かが留守を守護しなければならない」
「あ、なるほど」

 珠呼は頷くと、今度こそきびすを返す。そして、ふっと姿がかき消えてしまった。

「私、高校あるんですけど…」
「………僕も大学がある」

 ますます寒くなる秋風の中で、二人の男女は頭を抱えたのだった。

ーー ーー ーー

 そして、今日は11月3日、文化の日である。今年の文化の日はちょうど金曜日、土日と合わせて、3連休になるのだ。

「ふー、新幹線って久しぶりです」

 ホントに、夏奈子さん。
 女子高校生と二人で出雲に行くのって、端から見たら犯罪なのですけど。

 隣の席に座る夏奈子を見て、そんな感想をいだく。

「僕も中学の修学旅行以来だな」
「へー、修学旅行ってどこでありました?」
「京都、大阪だったな」

 京都に行ったときは凄かった。
 至るところに神や妖怪がいたのだから。

「あ、私もです。定番ですよね」

 そんな、地元の高校あるあるを話しているうちに新幹線は順調に距離を伸ばす。

  あ、ちなみに勾玉はオークションに出したら、博物館から連絡が来ました。

ーー ーー ーー

「あああああああぁ………!」

 それから数時間してのこと、ほとんど動かずに凝り固まった体をほぐす僕がいた。

 今は午後の2時過ぎ。
 流石に6時間以上も動かないのは辛すぎだ。こんなことなら、昨日ぐっすりと眠らずに、ここで寝ればよかった。

 ちなみに、夏奈子は新幹線でも、バスの中でもぐっすりと眠っていた。

「…夏奈子さん」

 そう言って、夏奈子の肩を叩く。

「……ふぁい?」

 夏奈子は寝ぼけた声を出す。

「もうそろそろ、出雲につくよ」
「そうですか、そうですか」

 夏奈子はゆっくりとした動きで、姿勢をただす。

「ふー、意外と早いですね」
「………そうだね」

 いや、とっても遅いよ。長かったよ。
 心の中で思わずツッコミをいれる。

 そうこうしているうちに、バスは出雲大社前駅に停車する。

ーー ーー ーー

「これって、人よりも神様の方が多いんじゃない?」

 バスを降りての第一声はそんなものだった。
 というのも、明らかに人外の存在が闊歩し、西洋風の駅が彼岸の者たちで埋め尽くされていた。

「これは見えない方が、幸せかもしれませんね」

 夏奈子がポツリともらす。

「…………まったくだよ」
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