16 / 74
第一章
休息と笑顔
しおりを挟む
暫く時が過ぎ、黒幕を掴むための準備が整った。
そんな中、今日は、王都の街を歩いている。俺とフィリムの二人で。
最初の頃は、公爵令嬢という地位とフィリムの可愛らしい容姿で、緊張していたが、今は随分と仲良くなって、それもない。
「アンタ、盗聴器はもう設置したの?」
「あぁ、既に忍ばせてもらっているよ。急にどうしたの?」
相手側が動いてくれるのを待てば良いだけなので、街で買い物を楽しんでいる。
「随分と気楽な顔しているから心配だったのよ」
「あ、ごめん、街で買い物したりするの初めてで楽しんでた」
「それは別にいいのよ。私も楽しんでるし。で、盗聴器なんてどこに?」
またどこから盗聴されているかもわからないから、俺はフィリムの耳の側に近づいた。
「ちょ……ちょっと!? なに!?」
顔が赤らむフィリムに小声で話した。
「盗聴されてたらまずいから。実は俺の父バルスに。もう忍ばせてある」
「アンタの家族が王都に!?」
フィリムも小さい声で聞いてきた。
「そういうこと」
ヨハネス様と話をした時に盗聴されていた。俺の実家や書庫監禁の事も聞いていたはず。
セバスさんからの情報では、ザガル伯爵はズル賢く、俺の父とも敵対していると教えてくれた。
だとすれば次にやりそうな事は見当がついていた。
「でも……アンタいつの間にそんな事してたのよ!?」
「いや、忍ばせてもらったのは俺じゃないんだ。セバスさんに頼んでいた」
「セバスに? なるほどね」
フィリムのセバスさんに対する信頼が窺える反応だった。
「どうやって忍ばせてくれたかも教えてくれたけど、フィリムの言う通り、名執事さんだね」
「そりゃ……そうだけど……」
「今回の件、俺だけの力じゃ無理だと思うけど、フィリムも、その周りの人も頼って良いって話だったからセバスさんに甘えたんだけど」
「あんたねえ……まあいいけど。次からはやる前にちゃんと私にも教えなさいよ」
フィリムは拗ねているように見えた。
普段は国や俺のことに一生懸命で優しいフィリムだけど、こういう自分の感情を露わにするフィリムも可愛い。
「セバスさんが会話を全て記録してくれているみたいだから、駒が出揃ったらいよいよだと思う」
「……もう! だったら王都で情報なんて、不要だったんじゃないの?」
俺は首を横に振った。
「セバスさんが行ってきてほしいって。フィリムは今まで休まずに国のことや今回の事でも動いているから、情報収集の名目でいいから外へ連れ出してって」
「はぁ……私ってば、まんまと騙されたわね……」
ため息を吐きながら肩を落とすフィリム。
俺も最初はこんな時にダメでしょうと、断ろうとしたが、普段休まずに動いてて、心身共に気が張りすぎているから、楽しませてあげてと、これも仕事ですと断れなかった。
ついでに俺も楽しんできてと言われてしまう。
でも、王都をこうして歩いてたら……
「まぁ少しの間は俺に付き合ってよ。俺もフィリムとこうしてて結構楽しいし。あっちに王都名物料理の屋台もあるみたいだし、行こ!」
俺はフィリムの手を掴んで連れて行った。
「もう! みんな私に甘くしすぎ!!」
そんな事をブツブツ言っていたが、暫く王都をぶらついて楽しんでフィリムの家に入る直前に俺にこう言った。
「レイス……今日はありがとう」
既に日が暮れて一面の星空の明かりで映されたフィリムは、今までで一番の笑顔だった気がした。
そんな中、今日は、王都の街を歩いている。俺とフィリムの二人で。
最初の頃は、公爵令嬢という地位とフィリムの可愛らしい容姿で、緊張していたが、今は随分と仲良くなって、それもない。
「アンタ、盗聴器はもう設置したの?」
「あぁ、既に忍ばせてもらっているよ。急にどうしたの?」
相手側が動いてくれるのを待てば良いだけなので、街で買い物を楽しんでいる。
「随分と気楽な顔しているから心配だったのよ」
「あ、ごめん、街で買い物したりするの初めてで楽しんでた」
「それは別にいいのよ。私も楽しんでるし。で、盗聴器なんてどこに?」
またどこから盗聴されているかもわからないから、俺はフィリムの耳の側に近づいた。
「ちょ……ちょっと!? なに!?」
顔が赤らむフィリムに小声で話した。
「盗聴されてたらまずいから。実は俺の父バルスに。もう忍ばせてある」
「アンタの家族が王都に!?」
フィリムも小さい声で聞いてきた。
「そういうこと」
ヨハネス様と話をした時に盗聴されていた。俺の実家や書庫監禁の事も聞いていたはず。
セバスさんからの情報では、ザガル伯爵はズル賢く、俺の父とも敵対していると教えてくれた。
だとすれば次にやりそうな事は見当がついていた。
「でも……アンタいつの間にそんな事してたのよ!?」
「いや、忍ばせてもらったのは俺じゃないんだ。セバスさんに頼んでいた」
「セバスに? なるほどね」
フィリムのセバスさんに対する信頼が窺える反応だった。
「どうやって忍ばせてくれたかも教えてくれたけど、フィリムの言う通り、名執事さんだね」
「そりゃ……そうだけど……」
「今回の件、俺だけの力じゃ無理だと思うけど、フィリムも、その周りの人も頼って良いって話だったからセバスさんに甘えたんだけど」
「あんたねえ……まあいいけど。次からはやる前にちゃんと私にも教えなさいよ」
フィリムは拗ねているように見えた。
普段は国や俺のことに一生懸命で優しいフィリムだけど、こういう自分の感情を露わにするフィリムも可愛い。
「セバスさんが会話を全て記録してくれているみたいだから、駒が出揃ったらいよいよだと思う」
「……もう! だったら王都で情報なんて、不要だったんじゃないの?」
俺は首を横に振った。
「セバスさんが行ってきてほしいって。フィリムは今まで休まずに国のことや今回の事でも動いているから、情報収集の名目でいいから外へ連れ出してって」
「はぁ……私ってば、まんまと騙されたわね……」
ため息を吐きながら肩を落とすフィリム。
俺も最初はこんな時にダメでしょうと、断ろうとしたが、普段休まずに動いてて、心身共に気が張りすぎているから、楽しませてあげてと、これも仕事ですと断れなかった。
ついでに俺も楽しんできてと言われてしまう。
でも、王都をこうして歩いてたら……
「まぁ少しの間は俺に付き合ってよ。俺もフィリムとこうしてて結構楽しいし。あっちに王都名物料理の屋台もあるみたいだし、行こ!」
俺はフィリムの手を掴んで連れて行った。
「もう! みんな私に甘くしすぎ!!」
そんな事をブツブツ言っていたが、暫く王都をぶらついて楽しんでフィリムの家に入る直前に俺にこう言った。
「レイス……今日はありがとう」
既に日が暮れて一面の星空の明かりで映されたフィリムは、今までで一番の笑顔だった気がした。
24
あなたにおすすめの小説
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。
紺
ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」
実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて……
「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」
信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。
微ざまぁあり。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる