「魔眼持ちは不気味だ!」と家を追い出されましたが新国王も魔眼持ちに決まったようです〜戻ってこいと言われても……もう王宮にいるから手遅れです〜

よどら文鳥

文字の大きさ
33 / 74
第一章

世界樹と保護

しおりを挟む
「ここが孤児院だ。ここの孤児院は私を含め、はぐれエルフの末裔の血が流れている者が多く住んでいる」

 王都中でも中心部から離れた比較的静かな場所。ここに孤児院が細々と建てられている。
 中に入ると、孤児院の中心部だけ透明なガラスで遮られ、一箇所だけドアがある。中には一本の小さな樹が綺麗に育っている。

「綺麗ねー!」

 フィリムが苗をみつめながら感動していた。
 俺は園芸には関心はないけれども、それでもこの樹は綺麗だと思う。

「これは世界樹。私達の……はぐれエルフ達の命なのだ」
「え!? まさか、この苗が枯れたり壊れたりしてしまうとはぐれエルフの人達は……!?」

 書庫で読んでいた小説に似たような事が書かれているのを思い出して、咄嗟に連想してしまった。

「直接的に死ぬ事はないにしても、これははぐれエルフの存在として象徴される『母』というような大事な樹。もしものことがあれば私達は立ち直れない……死も同然なのだ……」

 俺も母様を亡くし、大事な言葉をいつも大事にしている。

 ──貴方のその綺麗な眼で、綺麗な世界を作ってね

 はぐれエルフ達が苗を命のように大事にするのであれば、俺にとってはこの言葉が命のようなものだ。

 それを失ってしまうとなったら、絶望しかない。

「ギルドは私に、『孤児院を、苗を失いたくなければ命令に従い貴様にしか出来ない任務をこなすのだ』と脅されて仕方なく、孤児院を、世界樹の苗を守るために動いてきたのだ。だから、フィリム姫とレイス殿が声をかけてくれた時はもしかしたらギルドを抜けられるかもしれない……と思ったのだ」

 この話を聞いて、俺もフィリムもギルドやギルド担当大臣に対して怒りが込み上げた。

「酷い話よね。弱味に漬け込んで無理やりギルド依頼を課せさせるなんて! ヨハネスに報告するわよ!」
「いや、報告の前に、先に対策をしちゃおうか」

 フィリムとクレアは俺に対して何を言っているんだというような眼差しを向けられる。

「対策? レイス殿! どういうことだ?」
「つまり、ギルドの連中は、逆らえばこの世界樹をいつでも壊せるぞと脅しているんですよね?」
「そうだな……仮にギルドと戦争になって、孤児院の者たちを隠しても、世界樹を破壊されればもう私達は立ち直れない。常に心臓を握られたようなものだ」

 クレアが悔しそうに言うが、クレアが動けない理由が世界樹ならば、何とかなるかもしれない。孤児院への出資や金のことは、問題が解決すればどうにかなるはずだ。

「じゃあ世界樹ごと保護しよう」
「「は!?」」

 俺は魔眼を発動した。

「レイス殿!? 一体何をする!? それは魔眼では?」
「そうです。世界樹には絶対に危害を加えませんので見ててください」

 世界樹の周りに【空間干渉】を展開。苗の根元の更に地下部分から、苗の上部分、更に周り一帯をシールドのように、誰も手出しが出来ないようにした。俺がこの空間干渉を改めて発動して解除するまでは、もちろん魔法も魔力も物理的効力も全て受け付けない。

「クレア、樹の近くに触れようとしてみてください。途中で手が進まなくなります。なんなら大変不謹慎な発言ですが、その剣で斬ろうとしてください。必ず苗に届かずに剣が止まりますから」
「な!? 何という発言を! 私がそのようなことできるわけ……」
「クレアの納得が必要なんで……フィリム。俺の空間干渉で世界樹には絶対に触れられない。試して欲しい」

 フィリムは俺の魔眼を信じてくれているようで、容赦なく世界樹に触れようと手をかざす。
 しかし、途中で透明な壁に当たったかのように手が止まった。

「これ以上は手が進まないわね」
「どういうことだ?」
「クレアも試してください」

 クレアは不安になりながらも、世界樹に触れようとしたが、フィリム同様、途中で手が止まった。
 クレアが止めたわけでなく、強制的に止まったもである。

「手がこれ以上……どういうことなのだ!? 私は今かなりの力を入れて……岩をも押せるほどの力を入れているはず……それなのに」
「これが俺の魔眼の力です。世界樹の周りに強力な密集した空間を展開させました。その空間は魔力は無効化しますし、人間の力や生き物の力程度では全く入れません。例え世界最高の兵器を用いてもびくともしないでしょう。世界樹側の空気も、適度な水も、別の空間から空気入れ替えや給水を自動で展開させているので、今までと変わらず元気でいられるはずです」

 クレアは俺の説明を聞いて納得してくれたようでとても喜んでいた。

「レイス殿!! 其方は、はぐれエルフの救世主かもしれん! かたじけない……。これで私もギルドに堂々と……」

 これでクレアは自由に動けるようになったはず。
 ギルドに再び俺達は向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...