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22話 ガルムの交渉
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「どちらにしても私はお貸しすることはできません。そのような大金は持っていませんので」
「嘘をつくな。領地運営をしていて、俺たちが管理している隣の領土は大成功しているではないか」
「お兄様とお父様の領地です。私はあくまでもあの場所が好きだからお手伝いしているだけにすぎません」
お金の管理や予算提案などもするし、何度もバケット子爵のところへ対談することがあった。だからガルムにとっては私が管理しているなどと思ってしまったのだろう。
ガルムがあまりにも困っているため、提案だけはしておく。
あくまでも、大金を借りるにあたっての信用を得るためにはどうしたらいいかという提案だ。
ガルムのこの先どうなるかなどは考慮していない。
「今すぐにでも国へ報告するのが先かと。そうでなければ誰であってもお貸しすることなどできませんよ」
「国家勢力での捜査が始まるだろう」
「なにを困っているのです?」
ガルムは無言になる。
しばらくガルムの顔をじっと見つめた。
今までのガルムだったら喜んでいたが、今回は見てくるなとばかりに視線を逸らそうとする。
「レイチェルにだけ話したいことがあるのだが……」
「残念ながら仕事柄私は奥様から離れるわけにはいきません」
「約束したではないか。俺はレイチェルに危害を加えたり婚約を申し込んだり、今回はしないと」
「たとえいかなる宣言をされようとも離れるわけにはいきません」
ガルムが困っていた。
なにを話そうとしているのかも概ね想像がつく。
「ここにいる執事長は、どのようなことであれ口は固いです。もしも今から話す内容を執事長が公言しないという上でお話ししてもらうというのはいかがでしょうか?」
「本当か……?」
「それが奥様や旦那様の命や名誉に関わることでなければお約束できます」
ガルムはしばし考え納得した。
「父上が国に報告しないのは、おそらく俺を守るためなんだ」
「と、言いますと?」
「俺は今後のために金貨を借りた。ずっと使わなかったから、今後も使わない金だと思っていたんだ……」
特に驚くこともなかった。
夜会の日、ガルムが着ていたタキシードを見た時点でどうやって手に入れたのか疑問だったからだ。
なぜなら、バケット子爵があのようなタキシードを選ぶはずもない。だとすればガルム自ら調達したものになる。
だが、ガルムにそのような財力はなかったはず。
ガルムがここで白状したため、疑問だったことが真実に変わった。
それだけのことである。
「だがそれはレイチェルのために使ったものなんだぞ。だからレイチェルに立て替えてもらいたい」
「はい?」
「レイチェルの結婚は間違っている。俺と婚約してもらうため必死になっていたんだよ」
いえいえ。私は今とっても幸せですよと言いたかったが、ひとまず我慢しておいた。
せっかく喋ってくれているのだから、会話を引き出すためにうんうんとうなずくだけに留めておく。
「まあ……どちらにしてももう遅い。俺はジェシー=ベックと結婚することになってしまったのだからな」
「夜会で一緒にいられましたね」
「そうだ……俺はあんな女よりもレイチェルと……その話は今はいい。ともかく、レイチェルへの気持ちは変わらないがいつでも君のためだと思って忠告したい。どうにか金を貸して欲しい。そのためにハイド公爵の力も必要なんだ」
言っていることがメチャクチャだ。
都合がよすぎる。
サイヴァスさんも呆れすぎて後ろを向きながらクスクスと笑ってしまっているではないか。
「お断りですね」
「な!?」
「どのような理由であっても、勝手に金庫からお金を持ち出す。これはどういうことかわからないのですか?」
「いや……事情が事情であるだけに……」
「ありえませんよ。仮に私のことを思ってのことであったとしたとしても、何度も言っていたでしょう? ガルムさんと結婚する意思は全くないと」
再び無言になるガルム。
本音を言えるなら早く帰ってほしい。
やってしまったことはどうすることもできない。
仮に金庫からの持ち出しを本気で反省していて、その上でどうしたら良いかなどの相談であれば、力及ばずとも聞くくらいはできた。
だが、なにかと理由をつけてくる。借りれるのがあたりまえのように思っている態度も嫌な気分にさせられる交渉だ。
なかなか話がまとまらない中、応接室のドアが勢いよく開いた。
「レイチェル!!」
「ハイド様!?」
お顔をしっかりと確認するころにはすでに私の手を握られていた。
とてつもなく素早い動きで、まるで時が一瞬止まったかのように思ってしまった。
「サイヴァスよ、これはいったいどういう状況なのだ?」
「申し訳ございません。この件につきましては――」
「違うんです。私が応接室での面会を許可したのですよ」
ハイド様がじっとガルムの顔を伺う。
それだけでなにかを悟ったようで、すぐにサイヴァスさんに対して謝罪していた。
「なるほど……。ちょうど良いタイミングでもある。私もガルム殿とは一度話しておこうかと思っていた」
突然の対談宣言にガルムが一番の驚きを見せていた。
目視でわかるくらいに身体がブルブルと震えている。
「ここでの話は内密にしてもらえるんですか?」
「かまわない。どのような話であってもここにいる者たち以外に話すことは決してしないと誓おう」
ハイド様は即答だ。
これには私も少々驚いてしまった。
ハイド様もガルムがなにをしてバケット子爵の領地が大変なことになりかけているか知っているはず。
ここでそのような約束をしてしまっていいのだろうか、と疑問になっていた。
「本当ですね……?」
「例えばの話ではあるが、ガルム殿が『王族を十人消した』と発言したとしても約束は守る」
国のルールで一番の重罪が王族暗殺行為だ。
それでも黙るということはどのようなことを話したとしても黙秘すると誓ったも同然である。
ガルムも安心したようで、ようやく椅子に腰掛けた。
「先ほどレイチェルには話しま――」
「私の大事な結婚相手を名前で呼び捨てか!?」
ハイド様がギロリと睨んだ。
恐怖を与えるかのような赤色の瞳を久しぶりに見てしまった。
ガルムは慌てて訂正する。
「レイチェル公爵夫人様には先ほど話しましたが……全く使い道がないと思っていた金庫の金貨を借りていました。しかし今になって必要となってしまいまして。どうしても援助……いえ、融資していただけないかと」
慣れない言葉と相当な慌てようで言葉がメチャクチャになっていた。
ハイド様はガルムが相手でも真剣に話を聞く姿勢になっている。交渉は今までたくさんしてきたが、ここまで向き合うことは私にはできない。
改めて今までハイド様がやってきたという他国とのやりとりが、ものすごかったのかがなんとなく想像できた。
「まず疑問になっていることがいくつかある。その点をクリアし双方が納得できた場合に、融資も検討に値するがよろしいか?」
「助かります! ああ……よかった」
ガルムはすでに融資が受けられると思い込んでいるかのような返事だった。
しかし、ハイド様の疑問はそんなに生易しいものではないだろう。
私はこのあとも表情を変えないようにしながら黙って聞いていた。
「嘘をつくな。領地運営をしていて、俺たちが管理している隣の領土は大成功しているではないか」
「お兄様とお父様の領地です。私はあくまでもあの場所が好きだからお手伝いしているだけにすぎません」
お金の管理や予算提案などもするし、何度もバケット子爵のところへ対談することがあった。だからガルムにとっては私が管理しているなどと思ってしまったのだろう。
ガルムがあまりにも困っているため、提案だけはしておく。
あくまでも、大金を借りるにあたっての信用を得るためにはどうしたらいいかという提案だ。
ガルムのこの先どうなるかなどは考慮していない。
「今すぐにでも国へ報告するのが先かと。そうでなければ誰であってもお貸しすることなどできませんよ」
「国家勢力での捜査が始まるだろう」
「なにを困っているのです?」
ガルムは無言になる。
しばらくガルムの顔をじっと見つめた。
今までのガルムだったら喜んでいたが、今回は見てくるなとばかりに視線を逸らそうとする。
「レイチェルにだけ話したいことがあるのだが……」
「残念ながら仕事柄私は奥様から離れるわけにはいきません」
「約束したではないか。俺はレイチェルに危害を加えたり婚約を申し込んだり、今回はしないと」
「たとえいかなる宣言をされようとも離れるわけにはいきません」
ガルムが困っていた。
なにを話そうとしているのかも概ね想像がつく。
「ここにいる執事長は、どのようなことであれ口は固いです。もしも今から話す内容を執事長が公言しないという上でお話ししてもらうというのはいかがでしょうか?」
「本当か……?」
「それが奥様や旦那様の命や名誉に関わることでなければお約束できます」
ガルムはしばし考え納得した。
「父上が国に報告しないのは、おそらく俺を守るためなんだ」
「と、言いますと?」
「俺は今後のために金貨を借りた。ずっと使わなかったから、今後も使わない金だと思っていたんだ……」
特に驚くこともなかった。
夜会の日、ガルムが着ていたタキシードを見た時点でどうやって手に入れたのか疑問だったからだ。
なぜなら、バケット子爵があのようなタキシードを選ぶはずもない。だとすればガルム自ら調達したものになる。
だが、ガルムにそのような財力はなかったはず。
ガルムがここで白状したため、疑問だったことが真実に変わった。
それだけのことである。
「だがそれはレイチェルのために使ったものなんだぞ。だからレイチェルに立て替えてもらいたい」
「はい?」
「レイチェルの結婚は間違っている。俺と婚約してもらうため必死になっていたんだよ」
いえいえ。私は今とっても幸せですよと言いたかったが、ひとまず我慢しておいた。
せっかく喋ってくれているのだから、会話を引き出すためにうんうんとうなずくだけに留めておく。
「まあ……どちらにしてももう遅い。俺はジェシー=ベックと結婚することになってしまったのだからな」
「夜会で一緒にいられましたね」
「そうだ……俺はあんな女よりもレイチェルと……その話は今はいい。ともかく、レイチェルへの気持ちは変わらないがいつでも君のためだと思って忠告したい。どうにか金を貸して欲しい。そのためにハイド公爵の力も必要なんだ」
言っていることがメチャクチャだ。
都合がよすぎる。
サイヴァスさんも呆れすぎて後ろを向きながらクスクスと笑ってしまっているではないか。
「お断りですね」
「な!?」
「どのような理由であっても、勝手に金庫からお金を持ち出す。これはどういうことかわからないのですか?」
「いや……事情が事情であるだけに……」
「ありえませんよ。仮に私のことを思ってのことであったとしたとしても、何度も言っていたでしょう? ガルムさんと結婚する意思は全くないと」
再び無言になるガルム。
本音を言えるなら早く帰ってほしい。
やってしまったことはどうすることもできない。
仮に金庫からの持ち出しを本気で反省していて、その上でどうしたら良いかなどの相談であれば、力及ばずとも聞くくらいはできた。
だが、なにかと理由をつけてくる。借りれるのがあたりまえのように思っている態度も嫌な気分にさせられる交渉だ。
なかなか話がまとまらない中、応接室のドアが勢いよく開いた。
「レイチェル!!」
「ハイド様!?」
お顔をしっかりと確認するころにはすでに私の手を握られていた。
とてつもなく素早い動きで、まるで時が一瞬止まったかのように思ってしまった。
「サイヴァスよ、これはいったいどういう状況なのだ?」
「申し訳ございません。この件につきましては――」
「違うんです。私が応接室での面会を許可したのですよ」
ハイド様がじっとガルムの顔を伺う。
それだけでなにかを悟ったようで、すぐにサイヴァスさんに対して謝罪していた。
「なるほど……。ちょうど良いタイミングでもある。私もガルム殿とは一度話しておこうかと思っていた」
突然の対談宣言にガルムが一番の驚きを見せていた。
目視でわかるくらいに身体がブルブルと震えている。
「ここでの話は内密にしてもらえるんですか?」
「かまわない。どのような話であってもここにいる者たち以外に話すことは決してしないと誓おう」
ハイド様は即答だ。
これには私も少々驚いてしまった。
ハイド様もガルムがなにをしてバケット子爵の領地が大変なことになりかけているか知っているはず。
ここでそのような約束をしてしまっていいのだろうか、と疑問になっていた。
「本当ですね……?」
「例えばの話ではあるが、ガルム殿が『王族を十人消した』と発言したとしても約束は守る」
国のルールで一番の重罪が王族暗殺行為だ。
それでも黙るということはどのようなことを話したとしても黙秘すると誓ったも同然である。
ガルムも安心したようで、ようやく椅子に腰掛けた。
「先ほどレイチェルには話しま――」
「私の大事な結婚相手を名前で呼び捨てか!?」
ハイド様がギロリと睨んだ。
恐怖を与えるかのような赤色の瞳を久しぶりに見てしまった。
ガルムは慌てて訂正する。
「レイチェル公爵夫人様には先ほど話しましたが……全く使い道がないと思っていた金庫の金貨を借りていました。しかし今になって必要となってしまいまして。どうしても援助……いえ、融資していただけないかと」
慣れない言葉と相当な慌てようで言葉がメチャクチャになっていた。
ハイド様はガルムが相手でも真剣に話を聞く姿勢になっている。交渉は今までたくさんしてきたが、ここまで向き合うことは私にはできない。
改めて今までハイド様がやってきたという他国とのやりとりが、ものすごかったのかがなんとなく想像できた。
「まず疑問になっていることがいくつかある。その点をクリアし双方が納得できた場合に、融資も検討に値するがよろしいか?」
「助かります! ああ……よかった」
ガルムはすでに融資が受けられると思い込んでいるかのような返事だった。
しかし、ハイド様の疑問はそんなに生易しいものではないだろう。
私はこのあとも表情を変えないようにしながら黙って聞いていた。
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