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第一章

30 デインヒール陛下も悩む

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 ロロガルさんに、清楚な服を見繕っていただきました。
 準備が整いライカル様と、いずれ義父様になるラウジャム様と共に王宮へ向かいました。

「リリーナ嬢、よく来てくれたな。君たちが来る前に、大体のことはシンザーンから聞いた……」
 デインヒール殿下は疲れた表情をしています。
 旅の疲れもあるであろう状態でこのようなことを聞いてしまっては無理もありません。

「お疲れのところ申し訳ございません。アルガルデ王国の元国王陛下と一部の貴族の者たちがこの国を制圧しに来る可能性が非常に高い。そしてダスフォール殿下と数十名の御者及び馬車が行方不明ということですね?」
「ん……あ、あぁ。シンザーンからもそのように報告を受けておる」

 大事な話ですからね。どこかで話の不一致があると厄介なので、念のために聞いておきました。

「兄上、まさかオーブルジェ王国が戦争を起こすおつもりで!?」
 ラウジャム様の声が震えています。

「いや……もちろん国を守りたいのだがどうやって……我々は今まで平和に過ごしてきた。戦う術を全く知らんのだぞ……」
「リリー! 昨日言っていた作戦を話してくれないか?」

 昨日の会議中に作戦は閃いてはいました。ですが、こういうことは安易に喋ってしまっては良くなかったのでまだ黙っていました。
 昨晩、ずっと寝ないであらゆる想定を考えた上、一番うまく行くであろう作戦であるかどうか自ら考えておきたかったためです。

「シンザーン殿下はまだお見えでないですか? 殿下が来られてからの方が良いかと……」
「ではリリーナ嬢、これだけは確認しておきたい。ダスフォールの居場所は予想できているのかね? あんなバカな息子でも私の大事な子なのだ……」

 陛下の発言は心苦しいです。何しろ、息子を捕らえなければいけなくなるかもしれないのですからね……。

「デインヒール陛下……もしもダスフォール殿下がこの国を滅ぼそうとしていたらどうしますか?」
「な!? そんなバカな……!」
 落胆した表情をしています。無理もありませんが……。

「国王の立場としては極刑は免れぬ……。だが、リリーナ嬢よ……確証はあるのか?」
「いえ、申し訳ございませんが確定ではなく、あくまで推測の一つに過ぎません。ですが、陛下がいない時期を狙い大掛かりに失踪したことや、食糧や金類が消えていないところを考えると家出ではないと思います。失礼ながら何か埋蔵金を発掘するようなことを隠れてやるような方ではないと存じていますので……」

「ま……まあそうだが……ところで、どうしたらいいと思う?」

 ライカル様やシンザーン殿下も同じように聞いてきましたが、仕方がないことですよね。
 この国は元々信じられないほど平和な国でした。
 戦争など想定外の出来事なのですから。

「遅くなってごめんなさいね。あらリーナったら今日はいつもに増してしっかりした格好ね。綺麗よ」

 しんちゃんが走って玉座の間へ来られました。

 今回は国を乗っ取ろうとしていることを前提に提案をするわけですが、もしもこれで違ったらただ事では済まないはずです。
 そのため、ライカル様やラウジャム様、しんちゃんには予めもしも見当違いだったらどうするか相談しました。
 しかし、責任云々よりも可能性があるならば対策を優先して欲しいと言われたのです。
 だからこそ、今回はしっかりと提案することにしました。

「対策として全部で四十五通り考えています」
「「「「そんなに!?」」」」

 驚いていますが、戦争問題ですよ。対策案としてはこれでも少ないくらいだと思います。
 とはいえ、どれもこれもこの国で実行できるかは分からないので、おそらく半分くらいになるでしょう。

「まず一番有力な方法ですが、オーブルジェ王国には狙撃系の武器は存在していますか?」
 種子島もしくは鉄砲のような類です。
 別にこれで殺めようという考えは持っていませんよ。もっと平和的に解決させます。

「似たようなものならある。だがこれは実践用ではないのだよ」
「どういうものですか?」
「水を発射するだけの銃でな……年に一度開催される王都全員参加型の『水鉄砲バトルロイヤル』というのをやっていてね、これで最後まで水を浴びなかったものが勝者という大会なんだが」

「あ、それで完璧です! その水鉄砲を見せてもらえますか?」
「う……うむ、しかし一体?」

 陛下だけでなく皆さんポカンとしています。
 もちろん水鉄砲で戦争に勝とうなどと考えていませんからね。
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