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7話
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レオルド様のことを愛しすぎてダメになってしまいそうだ。
「私もデルム様とは結婚したくありません」
「あぁ」
「どうしても公爵様とレオルド様に助けてもらいたくて、勝手ながら戻ってきてしまいました」
「戻るもなにも、フィアーナの居場所はここだ」
「へ!? 愛人関係を終わらせると言っていましたよね……?」
「あぁ、もちろんだ。全ての愛人関係を終わらせる」
「そうでしたか……」
レオルド様の唯一の欠点だった愛人が大勢いることについて、終止符がついに打たれるらしい。
もちろん私とも終わりである……。
だが、これはむしろレオルド様にとっては喜ばしいことではないか。
私の寂しい気持ちはグッとこらえ、これに関しては良かったと言いたい。
その前に、先に大事な用件を伝えなければならない。
「レオルド様……。話を遮ってしまい申しわけございません。これをご確認ください!」
「お……おい」
私の服の中に隠していた紙を取り出し、レオルド様に手渡した。
「まさか、これは父上が調査に困難だった秘密組織のデータでは!?」
「デルム様の部屋から発見しました」
「なんと……! すぐに父上に報告する! 一緒に来てくれ」
デルム様の部屋の中で見つけた書類を見せたとたん、レオルド様の表情も険しくなった。
公爵様は私のことを嫌っているし、私も公爵様とはうまく話せないが、今回ばかりはそんなこと気にしている場合ではない。
すぐにレオルド様のあとへ続き、公爵様のいる部屋へと向かった。
♢
「まさか……!? このデータをフィアーナが発見したのか!」
「侯爵邸に仕えている使用人さんのおかげでもあります」
「それにしても……、これは私が追っている組織の……」
王都に住んでいれば誰もが知っているであろう最も危険な犯罪組織の名前が、ご丁寧に書かれていた。
デルム様がどうやって民衆から多額のお金を巻き上げているのかは不明だったが、もしもこの組織と繋がっていたならば説明がつく。
持ち出したことがバレる前に、なんとか公爵様たちに報告したかったのだ。
「私が持ち出したことがバレたら、お父様とお母様が危険かもしれないのです……。どうか……」
「あぁ、わかっている。至急馬車で使いの者を向かわせ、こちらで保護しよう。まぁ、これだけの貴重な情報があれば、我が部隊で一網打尽にするほうが早いかもしれぬがな」
「ありがとうございます!」
「いや、むしろこれに関しては礼を言うのは私のほうだ。大至急行動にうつす。フィアーナ”殿”は決してこの屋敷から外へ出るでないぞ。レオルドよ、しっかりと彼女を守るのだ」
「はい」
今まで公爵様は私のことを呼び捨てだったが、急に敬った呼び方をしてくださった。
少し、公爵様ともお近づきになれたかもしれない。
今こんなことを考えるべきではないが、私は素直に嬉しかった。
公爵様が迅速な動きで部屋を出ていった。
「父上は前々からデルム侯爵と組織のつながりがなにかしらあるのではないかと疑っていた。だからこそすぐに納得してくださったのだろう」
「こんな状況なのに、嬉しそうな顔をしていらっしゃいますね」
「あぁ」
「さきほど言っていた、愛人関係を全て終わらせると言う件ですが……」
「あぁ、必然となるだろう」
「今まで……、ありがとうございました。本当に幸せでした」
公爵邸でかくまってもらえる間がレオルド様と二人きりで話せる最後のチャンスだろう。
昨日は逃げ出してしまったが、私の気持ちを素直に伝えたかった。
その機会をもらえただけでも、感謝するべきかもしれない。
「あぁ、これからもよろしく」
「これからも!?」
「結婚して、生涯よろしくたのむ」
「へ!? けけけけけっこん!?」
「昨日言いそびれた。俺と結婚してほしいのだ」
もしかしたら私は、とんでもない勘違いをしていたのかもしれない。
「私もデルム様とは結婚したくありません」
「あぁ」
「どうしても公爵様とレオルド様に助けてもらいたくて、勝手ながら戻ってきてしまいました」
「戻るもなにも、フィアーナの居場所はここだ」
「へ!? 愛人関係を終わらせると言っていましたよね……?」
「あぁ、もちろんだ。全ての愛人関係を終わらせる」
「そうでしたか……」
レオルド様の唯一の欠点だった愛人が大勢いることについて、終止符がついに打たれるらしい。
もちろん私とも終わりである……。
だが、これはむしろレオルド様にとっては喜ばしいことではないか。
私の寂しい気持ちはグッとこらえ、これに関しては良かったと言いたい。
その前に、先に大事な用件を伝えなければならない。
「レオルド様……。話を遮ってしまい申しわけございません。これをご確認ください!」
「お……おい」
私の服の中に隠していた紙を取り出し、レオルド様に手渡した。
「まさか、これは父上が調査に困難だった秘密組織のデータでは!?」
「デルム様の部屋から発見しました」
「なんと……! すぐに父上に報告する! 一緒に来てくれ」
デルム様の部屋の中で見つけた書類を見せたとたん、レオルド様の表情も険しくなった。
公爵様は私のことを嫌っているし、私も公爵様とはうまく話せないが、今回ばかりはそんなこと気にしている場合ではない。
すぐにレオルド様のあとへ続き、公爵様のいる部屋へと向かった。
♢
「まさか……!? このデータをフィアーナが発見したのか!」
「侯爵邸に仕えている使用人さんのおかげでもあります」
「それにしても……、これは私が追っている組織の……」
王都に住んでいれば誰もが知っているであろう最も危険な犯罪組織の名前が、ご丁寧に書かれていた。
デルム様がどうやって民衆から多額のお金を巻き上げているのかは不明だったが、もしもこの組織と繋がっていたならば説明がつく。
持ち出したことがバレる前に、なんとか公爵様たちに報告したかったのだ。
「私が持ち出したことがバレたら、お父様とお母様が危険かもしれないのです……。どうか……」
「あぁ、わかっている。至急馬車で使いの者を向かわせ、こちらで保護しよう。まぁ、これだけの貴重な情報があれば、我が部隊で一網打尽にするほうが早いかもしれぬがな」
「ありがとうございます!」
「いや、むしろこれに関しては礼を言うのは私のほうだ。大至急行動にうつす。フィアーナ”殿”は決してこの屋敷から外へ出るでないぞ。レオルドよ、しっかりと彼女を守るのだ」
「はい」
今まで公爵様は私のことを呼び捨てだったが、急に敬った呼び方をしてくださった。
少し、公爵様ともお近づきになれたかもしれない。
今こんなことを考えるべきではないが、私は素直に嬉しかった。
公爵様が迅速な動きで部屋を出ていった。
「父上は前々からデルム侯爵と組織のつながりがなにかしらあるのではないかと疑っていた。だからこそすぐに納得してくださったのだろう」
「こんな状況なのに、嬉しそうな顔をしていらっしゃいますね」
「あぁ」
「さきほど言っていた、愛人関係を全て終わらせると言う件ですが……」
「あぁ、必然となるだろう」
「今まで……、ありがとうございました。本当に幸せでした」
公爵邸でかくまってもらえる間がレオルド様と二人きりで話せる最後のチャンスだろう。
昨日は逃げ出してしまったが、私の気持ちを素直に伝えたかった。
その機会をもらえただけでも、感謝するべきかもしれない。
「あぁ、これからもよろしく」
「これからも!?」
「結婚して、生涯よろしくたのむ」
「へ!? けけけけけっこん!?」
「昨日言いそびれた。俺と結婚してほしいのだ」
もしかしたら私は、とんでもない勘違いをしていたのかもしれない。
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