8 / 9
8話
しおりを挟む
何度も瞬きをしてから、もう一度レオルド様に確認をした。
「愛人を終わらせるというのは……?」
「結婚のためだ。フィアーナ以外の女性にはすまないと思うが、全員断る」
「重ね重ね申しわけございません……。そうとは知らずに昨日は勝手に帰ってしまい……」
「いや、フィアーナを誤解させた俺がいけなかった。夜中に危険な目にあわせてすまない」
あろうことか、レオルド様が深く頭を下げてきた。
この国では、目下の人間相手に頭を下げるなんて、威厳を損ねるため次期公爵という立場上あまり良くない行為だ。
いくら周りに人がいないからってここまでさせたくない。
「顔をあげてください。私の独断で動いたことですから。それに、結果的にはデルム侯爵様のつながりが見つかりましたし……」
「あぁ。許せんな」
「そうですよね」
「俺自身が許せない……」
「へ……?」
「フィアーナを侯爵邸で危険な目に遭わせてしまったことが許せない。たとえ王都がより平和になったとしても、フィアーナになにか身を滅ぼしてしまうようなことがあっては意味がない。今後は俺がずっとそばで見守りたい!!」
レオルド様が私に近づき、そのままギュッと抱きしめてきた。
「ふんぎゅ!?」
「無事で良かった……」
「…………?」
今日のレオルド様は、今までとなにかが違う。
今まではこんなに積極的ではなかった。
私はむしろ嬉しすぎて、声すら出せずにドキドキが止まらなかった。
「フィアーナは一度危険な目に遭ったことがあるだろう? あの日から俺はキミを助けられる存在になりたいと思っていた」
「ででででも……、いろんな方と愛人を……」
私はおもいきって、レオルド様に気がかりだったことを言ってしまった。
私自身も同じ愛人という立場であったが、愛人関係はもう終わりにすると言っていたし、モヤモヤした感情も精算したいと思ってしまったのだ。
だがレオルド様は、私が想定しなかったようなことを言いはじめたのである。
「愛人についてはすまないと思っている。言いわけがましいが、父上の命令だった」
「命令……?」
「このことはキミに話したら、絶対にフィアーナとの婚約だけは認めないと言われていた。だから、父上が帰ってきてから直接交渉する」
「えぇと、どういう意味でしょう……?」
「俺はずっとフィアーナのことだけを愛している。ゆえに愛人は大勢いたが誰一人として、手を出したことはない。信じてもらえないとは思うが」
レオルド様は嘘をつくようなお方でない。
なにか理由があって愛人がたくさんいたことまでなら知っている。
そんなことよりも、私を愛してくれていたことが嬉しくて、たまらなくレオルド様の身体にぎゅっとしがみついた。
「私だって……、助けていただいたあの日からずっとレオルド様のことを……」
「すまなかったな。今回フィアーナが大きな手助けをしてくれたことで父上の考えも変わるはずだ。俺はもう一度、素直な気持ちを父上に告げたいと思っている」
レオルド様の気持ちっていったいなんなのだろう。
会話が終わっても、レオルド様は私を離そうとしなかった。
いっそのこと、ずっとこのままギュってしてくださってくれたほうがいい。
こんな大事なときなのに、私はレオルド様のことばかり考えてしまうのだった。
「愛人を終わらせるというのは……?」
「結婚のためだ。フィアーナ以外の女性にはすまないと思うが、全員断る」
「重ね重ね申しわけございません……。そうとは知らずに昨日は勝手に帰ってしまい……」
「いや、フィアーナを誤解させた俺がいけなかった。夜中に危険な目にあわせてすまない」
あろうことか、レオルド様が深く頭を下げてきた。
この国では、目下の人間相手に頭を下げるなんて、威厳を損ねるため次期公爵という立場上あまり良くない行為だ。
いくら周りに人がいないからってここまでさせたくない。
「顔をあげてください。私の独断で動いたことですから。それに、結果的にはデルム侯爵様のつながりが見つかりましたし……」
「あぁ。許せんな」
「そうですよね」
「俺自身が許せない……」
「へ……?」
「フィアーナを侯爵邸で危険な目に遭わせてしまったことが許せない。たとえ王都がより平和になったとしても、フィアーナになにか身を滅ぼしてしまうようなことがあっては意味がない。今後は俺がずっとそばで見守りたい!!」
レオルド様が私に近づき、そのままギュッと抱きしめてきた。
「ふんぎゅ!?」
「無事で良かった……」
「…………?」
今日のレオルド様は、今までとなにかが違う。
今まではこんなに積極的ではなかった。
私はむしろ嬉しすぎて、声すら出せずにドキドキが止まらなかった。
「フィアーナは一度危険な目に遭ったことがあるだろう? あの日から俺はキミを助けられる存在になりたいと思っていた」
「ででででも……、いろんな方と愛人を……」
私はおもいきって、レオルド様に気がかりだったことを言ってしまった。
私自身も同じ愛人という立場であったが、愛人関係はもう終わりにすると言っていたし、モヤモヤした感情も精算したいと思ってしまったのだ。
だがレオルド様は、私が想定しなかったようなことを言いはじめたのである。
「愛人についてはすまないと思っている。言いわけがましいが、父上の命令だった」
「命令……?」
「このことはキミに話したら、絶対にフィアーナとの婚約だけは認めないと言われていた。だから、父上が帰ってきてから直接交渉する」
「えぇと、どういう意味でしょう……?」
「俺はずっとフィアーナのことだけを愛している。ゆえに愛人は大勢いたが誰一人として、手を出したことはない。信じてもらえないとは思うが」
レオルド様は嘘をつくようなお方でない。
なにか理由があって愛人がたくさんいたことまでなら知っている。
そんなことよりも、私を愛してくれていたことが嬉しくて、たまらなくレオルド様の身体にぎゅっとしがみついた。
「私だって……、助けていただいたあの日からずっとレオルド様のことを……」
「すまなかったな。今回フィアーナが大きな手助けをしてくれたことで父上の考えも変わるはずだ。俺はもう一度、素直な気持ちを父上に告げたいと思っている」
レオルド様の気持ちっていったいなんなのだろう。
会話が終わっても、レオルド様は私を離そうとしなかった。
いっそのこと、ずっとこのままギュってしてくださってくれたほうがいい。
こんな大事なときなのに、私はレオルド様のことばかり考えてしまうのだった。
28
あなたにおすすめの小説
君の声を、もう一度
たまごころ
恋愛
東京で働く高瀬悠真は、ある春の日、出張先の海辺の町でかつての恋人・宮川結衣と再会する。
だが結衣は、悠真のことを覚えていなかった。
五年前の事故で過去の記憶を失った彼女と、再び「初めまして」から始まる関係。
忘れられた恋を、もう一度育てていく――そんな男女の再生の物語。
静かでまっすぐな愛が胸を打つ、記憶と時間の恋愛ドラマ。
政略結婚の鑑
Rj
恋愛
政略結婚をしたスコットとティナは周囲から注目を浴びるカップルだ。ティナはいろいろな男性と噂されるが、スコットの周りでは政略結婚の鑑とよばれている。我が道をいく夫婦の話です。
全三話。『一番でなくとも』に登場したスコットの話しです。未読でも問題なく読んでいただけます。
笑わない妻を娶りました
mios
恋愛
伯爵家嫡男であるスタン・タイロンは、伯爵家を継ぐ際に妻を娶ることにした。
同じ伯爵位で、友人であるオリバー・クレンズの従姉妹で笑わないことから氷の女神とも呼ばれているミスティア・ドゥーラ嬢。
彼女は美しく、スタンは一目惚れをし、トントン拍子に婚約・結婚することになったのだが。
無愛想な婚約者の心の声を暴いてしまったら
雪嶺さとり
恋愛
「違うんだルーシャ!俺はルーシャのことを世界で一番愛しているんだ……っ!?」
「え?」
伯爵令嬢ルーシャの婚約者、ウィラードはいつも無愛想で無口だ。
しかしそんな彼に最近親しい令嬢がいるという。
その令嬢とウィラードは仲睦まじい様子で、ルーシャはウィラードが自分との婚約を解消したがっているのではないかと気がつく。
機会が無いので言い出せず、彼は困っているのだろう。
そこでルーシャは、友人の錬金術師ノーランに「本音を引き出せる薬」を用意してもらった。
しかし、それを使ったところ、なんだかウィラードの様子がおかしくて───────。
*他サイトでも公開しております。
〖完結〗私を捨てた旦那様は、もう終わりですね。
藍川みいな
恋愛
伯爵令嬢だったジョアンナは、アンソニー・ライデッカーと結婚していた。
5年が経ったある日、アンソニーはいきなり離縁すると言い出した。理由は、愛人と結婚する為。
アンソニーは辺境伯で、『戦場の悪魔』と恐れられるほど無類の強さを誇っていた。
だがそれは、ジョアンナの力のお陰だった。
ジョアンナは精霊の加護を受けており、ジョアンナが祈り続けていた為、アンソニーは負け知らずだったのだ。
精霊の加護など迷信だ! 負け知らずなのは自分の力だ!
と、アンソニーはジョアンナを捨てた。
その結果は、すぐに思い知る事になる。
設定ゆるゆるの架空の世界のお話です。
全10話で完結になります。
(番外編1話追加)
感想の返信が出来ず、申し訳ありません。全て読ませて頂いております。ありがとうございます。
王太子殿下のおっしゃる意味がよくわかりません~知能指数が離れすぎていると、会話が成立しない件
碧井 汐桜香
恋愛
天才マリアーシャは、お馬鹿な王子の婚約者となった。マリアーシャが王妃となることを条件に王子は王太子となることができた。
王子の代わりに勉学に励み、国を発展させるために尽力する。
ある日、王太子はマリアーシャに婚約破棄を突きつける。
知能レベルの違う二人の会話は成り立つのか?
【完結】深く青く消えゆく
ここ
恋愛
ミッシェルは騎士を目指している。魔法が得意なため、魔法騎士が第一希望だ。日々父親に男らしくあれ、と鍛えられている。ミッシェルは真っ青な長い髪をしていて、顔立ちはかなり可愛らしい。背も高くない。そのことをからかわれることもある。そういうときは親友レオが助けてくれる。ミッシェルは親友の彼が大好きだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる