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17 レム視点 (3) 修羅場
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二人の話し合いなど待っていられない。
私はガルカ達が話し合っている部屋の前に立ったのだが……。
「ばっかもーーーーーん!!」
「ぐべぇぇふっふう……!」
物凄い怒声の後、おそらくビンタの音……そしてガルカの悲鳴が聞こえてきた。
私は驚きのあまり、ドアの前で固まってしまった。
「親父! 痛いぞ! 確実に口内炎が出来てしまう……」
「当たり前だ! 痛くなるように殴ったのだからな!」
ガルカは今までも日常的に怒られてばっかりだったけれど、手が出るのは初めてかもしれない。
恐いし部屋に入れないじゃないか。
「レム嬢が急にいなくなったかと思ったら、お前……シェリル様との新婚生活だというのにレム嬢を同居させていたのか!」
「レムは幼馴染だし、それくらいならいいじゃないか!」
そうよ、まだやましいことをしたわけでもないし、ただ居候していたにすぎないだけよ。
「バカもの! お前がそのようなことをするからだろう! シェリル様との大事な契約まで無くなってしまったのだぞ」
「は!?」
「シェリル様のデザイン画で製造ができなくなってしまったのだ。おそらく貴様がまた余計なことをしたのだろうと思って呼び出してみればレム嬢と一緒に来るし……。おまけに何故だと聞けば、堂々と一緒に住んでいるなどとよくもまぁ平気で言えるもんだ」
なるほど! それは勘違いよ。私は大慌てでドアを開けて喧嘩中の現場へ突入した。
「ガルカのお父さん、いえ、元主人様。シェリルさんの契約が無くなってしまった件は誤解ですよ」
「な!? あのレム嬢が私のことを主人と呼ぶとは……!?」
ふっふっふ……驚いている驚いている! みんな私の急成長っぷりに驚いているのね。
「まさか! 今までクソジジイだの老いぼれエロ底辺準男爵だのと平気で呼んでいたあのどうしようもないレム嬢が……」
そこまでは……流石にクソジジイと言った覚えはないけどね……。とにかく誤解を解かなくては。
「シェリルさんの製造が出来なくなった理由は私が同居しているのが原因ではありませんよ」
「な……なんだと? ガルカとレムが不倫のような行いを堂々としていたからじゃないのか!?」
相変わらずこのエロジジイは鋭い……。予定では不倫行為もしたかったけど、今のところは使用人達のせいでまだというだけだが。
「シェリルさんより私のデザイン画の方が上手でしたので……きっと自信を無くしてしまわれたのです。シェリルさんを自信喪失させるつもりはなかったんですけどねー」
数日前、私がシェリルさんに好奇心でデザインを描いてみると挑戦してみた。やってみたらスンナリと描けたのだ。
まぁ絵としてはどうかとは思ったけれど、デザインとしては最高の出来だった。
結果的に私が勝っちゃったようだけど、仕方ないよね……芸術の世界は厳しいのだから。
「ばかな……あのシェリル様の優れた才能を超えるというのか!」
「えぇ、先日私の描いたデザインも販売してもらうように頼んだのですよ。届いていませんか?」
「ま……まさかとは思うが、レム嬢よ……デザインとはこのことか? 最後の最後で一点だけ製造するなり販売するなり好きにしていいと言われて受け取ったデザイン画があるのだが……」
さすがシェリルさんですね。
自分自身が自信喪失してやる気を無くしてしまわれても私のデザインだけはしっかりと伝えてくれていたのね。
まぁ、感謝だけはしておこうじゃないか。
「あまりにも驚きすぎてどうするか迷っていたのだが……」
うん、うん。そうでしょ!? だって私の描いたデザインが素晴らしすぎて何万着製造するか迷っていたのでしょ。
あぁ、億万長者もすぐ目の前ね!
……って、あれ?
デザイン画の紙が随分とグシャグシャに丸められているんですけど……。
ガルカの親は、紙を広げて私たちに見せてきた。
そうよ、これ!
「あまりにも酷くて嫌がらせかと思ったのだが」
「ほへ!?」
あまりにも皮肉めいた言葉が聞こえてきた。
私の耳はおかしくなってしまったのだろうか。
私はガルカ達が話し合っている部屋の前に立ったのだが……。
「ばっかもーーーーーん!!」
「ぐべぇぇふっふう……!」
物凄い怒声の後、おそらくビンタの音……そしてガルカの悲鳴が聞こえてきた。
私は驚きのあまり、ドアの前で固まってしまった。
「親父! 痛いぞ! 確実に口内炎が出来てしまう……」
「当たり前だ! 痛くなるように殴ったのだからな!」
ガルカは今までも日常的に怒られてばっかりだったけれど、手が出るのは初めてかもしれない。
恐いし部屋に入れないじゃないか。
「レム嬢が急にいなくなったかと思ったら、お前……シェリル様との新婚生活だというのにレム嬢を同居させていたのか!」
「レムは幼馴染だし、それくらいならいいじゃないか!」
そうよ、まだやましいことをしたわけでもないし、ただ居候していたにすぎないだけよ。
「バカもの! お前がそのようなことをするからだろう! シェリル様との大事な契約まで無くなってしまったのだぞ」
「は!?」
「シェリル様のデザイン画で製造ができなくなってしまったのだ。おそらく貴様がまた余計なことをしたのだろうと思って呼び出してみればレム嬢と一緒に来るし……。おまけに何故だと聞けば、堂々と一緒に住んでいるなどとよくもまぁ平気で言えるもんだ」
なるほど! それは勘違いよ。私は大慌てでドアを開けて喧嘩中の現場へ突入した。
「ガルカのお父さん、いえ、元主人様。シェリルさんの契約が無くなってしまった件は誤解ですよ」
「な!? あのレム嬢が私のことを主人と呼ぶとは……!?」
ふっふっふ……驚いている驚いている! みんな私の急成長っぷりに驚いているのね。
「まさか! 今までクソジジイだの老いぼれエロ底辺準男爵だのと平気で呼んでいたあのどうしようもないレム嬢が……」
そこまでは……流石にクソジジイと言った覚えはないけどね……。とにかく誤解を解かなくては。
「シェリルさんの製造が出来なくなった理由は私が同居しているのが原因ではありませんよ」
「な……なんだと? ガルカとレムが不倫のような行いを堂々としていたからじゃないのか!?」
相変わらずこのエロジジイは鋭い……。予定では不倫行為もしたかったけど、今のところは使用人達のせいでまだというだけだが。
「シェリルさんより私のデザイン画の方が上手でしたので……きっと自信を無くしてしまわれたのです。シェリルさんを自信喪失させるつもりはなかったんですけどねー」
数日前、私がシェリルさんに好奇心でデザインを描いてみると挑戦してみた。やってみたらスンナリと描けたのだ。
まぁ絵としてはどうかとは思ったけれど、デザインとしては最高の出来だった。
結果的に私が勝っちゃったようだけど、仕方ないよね……芸術の世界は厳しいのだから。
「ばかな……あのシェリル様の優れた才能を超えるというのか!」
「えぇ、先日私の描いたデザインも販売してもらうように頼んだのですよ。届いていませんか?」
「ま……まさかとは思うが、レム嬢よ……デザインとはこのことか? 最後の最後で一点だけ製造するなり販売するなり好きにしていいと言われて受け取ったデザイン画があるのだが……」
さすがシェリルさんですね。
自分自身が自信喪失してやる気を無くしてしまわれても私のデザインだけはしっかりと伝えてくれていたのね。
まぁ、感謝だけはしておこうじゃないか。
「あまりにも驚きすぎてどうするか迷っていたのだが……」
うん、うん。そうでしょ!? だって私の描いたデザインが素晴らしすぎて何万着製造するか迷っていたのでしょ。
あぁ、億万長者もすぐ目の前ね!
……って、あれ?
デザイン画の紙が随分とグシャグシャに丸められているんですけど……。
ガルカの親は、紙を広げて私たちに見せてきた。
そうよ、これ!
「あまりにも酷くて嫌がらせかと思ったのだが」
「ほへ!?」
あまりにも皮肉めいた言葉が聞こえてきた。
私の耳はおかしくなってしまったのだろうか。
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