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18 レム視点 (4) 強引に作らせる
しおりを挟む「ちょっと! 冗談はやめてくれます? これのどこが酷いというのです?」
「猿が描いた絵の方が上手いと思えるわい」
まぁ絵については仕方がないかもしれないけど、問題はデザインだ。
「デザインは最高でしょ!? その通りに製造するんですよね!? 十万着くらい?」
「何を馬鹿なことを……こんなデザインの服を着ようとする者などいないだろう。見ただけで吐きそうになったぞ」
なんという酷い言い方だ。
いくらシェリルさんの味方だからって……。デザインは良いことがわかっているくせにワザと酷くいうのはやめて欲しい。
「ガルカ! あんたこれ見てどう思う!? すごく良くない?」
「すまんが俺はファッションについては無知なんだ。シェリルにもデザインのことに触れたことは一切ないのだから。まぁ結婚式のドレスは文句を言ったが」
「なんだと!? 馬鹿息子! あの素晴らしいドレスを悪く言うとは……」
ガルカの父親は頭を抱えながら呆れていた。
私はそのドレスは見たことないからなんとも言えないけど。
でもこれではっきりした。この人は、シェリルさんとの契約があるからやたらと彼女だけを立てているのね。
「もういいですよ。どうせそのデザイン画で製造する気はなかったのでしょう? ならば、私から依頼します。そのデザインで服を製造してください。小売になるので五万着で我慢しますわ……。私が自ら販売しますよ」
「は!? 気は確かかレム嬢よ」
「当たり前です。こうなったら私が直接販売するしかなさそうですし」
「……五万着など売れるわけがない! シェリル様のオーダーだって一種類で一万着前後なんだぞ! 売れ余って破滅するぞ!」
ふっふっふ……。魂胆は読めている。
売れるに決まっている。シェリルさんの功績よりも私の方が上になってしまえば、ますます彼女のやる気がなくなってしまうのを恐れているのね。
シェリルさんとガルカがすぐにでも離婚できるように、シェリルさんの財産なんかアテにしないで私自身で億万長者になってみせる。
「絶対売れます。それともこれだけの依頼をしているのに拒否するのです?」
「こちらとしては依頼を拒否する必要はないのだが……、ど……どうなっても知らんぞ」
よし! あっさりと丸め込んでやった。さぁて、問題なのはどこで売ればいいのかしらね。
「ではせめてもの情けだ……代金は本来の半額にしておいてやる。五万着ならば、一萬紙幣一万五千枚だ」
「あ、私お金持ってない。ツケで」
「……それでは流石に取引は出来んな」
ぐぬぬ……それでは困る。折角破格にしてくれたんだから。一着に付き二萬で売るつもりだったから、これならば数億儲かる。
仕方がない……『誰にでも融資だけはしてくれる』という金融機関で借りてくるか。
一年以内に全額返済できれば、利子が年利で一パーセントで済むのだから、気楽に借りれるし。
「わかったわ。じゃあ製造よろしくということで」
少し予定は狂ったが、目的は達成できた。
むしろ、予定よりも私は明らかに優位になったのは間違いないだろう。
私は大急ぎでお金を借りてきて、契約は完了した。
借りたお金を来年の今日までに返済できなかった場合には大変なことになるらしいけど、その頃には余裕でしょう。
帰り道、誰にも見られていないことを確認してガルカの手を握った。
「ガルカ、これで私たちもお金持ちよ。だから早くシェリルさんなんかとは別れて欲しいんだけど」
「本当に大丈夫なのか? 俺は服に関しては無頓着だから全くわからないんだが」
「大丈夫よ。だって、シェリルさんのやる気と自信をなくさせるほどの実力なのよ……私は」
「ふむ……何を言ってもブレずに信念を曲げなかったシェリルがなぁ……」
「それだけ私は特別ってこと!」
「そうか……」
ううむ……ガルカの態度も気に入らない。シェリルシェリルって何度も連呼しちゃって。
「ガルカ、予定変更。今なら誰も見ていないし、ちょっと付き合って」
「どこへ行くんだ?」
「ホテル」
「よし、行くか」
ガルカもちょろい。
いつも私たちのことを監視するように見てきていた使用人もいないし。
こういう大事な時に監視していないなんて、あいつらもバカよね……。
おかげで、たやすく目的地へ入ることができた。
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