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しおりを挟む夜の営業が終わって片づけや掃除をしながら繭子は昼間のことを一平に話した。
「そうか…そんなことが…」
高橋亜希のことを聞くと、顔をしかめた。
「とにかく彼女がクビになってよかったよ。でも、池田さん、だっけ? 彼女が言う通り、なんで繭子がいる時に辞めさせなかったんだって思う。君だって仕事に口出しされたり仕事を奪われたりしたんだろう? 社長と不倫したのも問題だけど、もっと早く彼女をクビにしていれば繭子は辛い目にあわずに会社も辞めずに済んだのにな。ホント対応が遅すぎる。今更ながら腹が立つ」
一平は腕を組むと軽く舌打ちした。
「まあ、会社の人たちは私よりも彼女の能力の方を重視していたから仕方がなかったんだと思います」
「そんなことない! 俺は実際に会社での君の仕事ぶりを見てはいないが、ここでの働きを毎日間近で見ていれば分かる。君は仕事に対していつも誠実で真面目に一生懸命だ。会社を支えているのはそういう人たちだ。池田さんだって君を評価していたんだろう? 彼女だけじゃなく、優秀な社員ならみんな同じように君のことを思っていたはずだ。それにしても本当にバカな会社だよ。会社の体制が変わらない限り、池田さんたちのように見切りをつけて辞めていく人が増えて良い人材がどんどん流出していって結局残るのは仕事のできない奴らばかりになって、やがて倒産という結末になるんじゃないかな」
一平も由美と同じようなことを言った。由美の話だと社内の雰囲気が悪いままなのは元谷社長のワンマンぶりがますます酷くなかったからというのも原因らしい。人手が足りない上に、繭子のように心の病にかかってしまって休職した社員もいるとのこと。辞めてしまった会社がこれからどうなろうが別に気にならないが、その休職している社員のことは気の毒に思った。焦りは禁物だが徐々に回復して元気になって、転職できるなら心機一転新たなところでまた頑張っていってもらいたい。繭子は心からそう願った。
「一平さん、そんなに怒ってくれて、そんな風に言ってくれて、本当にありがとうございます。そのお気持ちだけでどれだけ嬉しいか…。でも、私、今は本当に吹っ切れていて、高橋さんのことも会社のことももうどうでもいいんです。それに…今となっては会社を辞めてよかったと思っています。だって、もしそうしていなければこの店のことも思い出さなかっただろうし、一平さんとも出会ってなかったかもしれない。店と一平さんのおかげで私は救われたし立ち直れたんです。だからその恩返しをするために私は自分の生涯を捧げるつもりでここで頑張ります」
すると、一平はちょっと不満げな表情になった。
「…ねえ、君が一生懸命なのは、ただの恩返しが理由? それと生涯を捧げるのは店にだけ?」
繭子は、あっ、となってから、頬を染めて軽く俯いた。
「……いえ、それだけではなく…一平さんを…愛しているからです……それに、もちろん、生涯を捧げるのは一平さんだけです…」
言うなり一平の胸に抱き寄せられた。
「よかった…それが聞きたかった…。俺も繭子のおかげでまた未来を夢見ることができたんだよ。ありがとう…俺も愛している…。これからもずっと一緒にこの店を守って幸せに生きて行こう」
一平の広い温かい胸の中で繭子はしっかりと頷いた。
「…んっ…! あ、もう、そこばっかり…!」
「なんだかいつもより敏感になってるんじゃないか…ん…?」
「そんなこと…! あ…んっ…」
さっきからずっと一平の舌や唇や指が繭子の両胸の先端を優しく時には小刻みに刺激している。いつもよりも長い胸の愛撫に、繭子は気が狂いそうになる。
「繭子の胸はとてもすべすべしてして柔らかくて弾力も適度にあって大きさもちょうどよくてとても好きだよ…」
手のひらで胸を揉みしだきながら耳元でそんなことを囁かれるからたまったもんじゃない。
「…いや…そんなっ…恥ずかしい…!」
「そんな風に未だに恥ずかしがるところもかわいい…。あ、もちろん、好きなのは胸だけじゃないからね。こっちも…」
一平の手が繭子の下の一番敏感なところに下りると…。
「…アッ!!」
繭子の腰が跳ね上がった。
「ああすごい、もうこんなにトロトロになって…待ちわびてたんだね…ごめんよ…」
「や…! そんなこと言わないで…」
「ふふっ…待たせた分、こっちもちゃーんとかわいがってあげるからね…」
どうすれば繭子が一番喜ぶかすっかり覚えている指使いで、今度は敏感な芽をクルクルと円を描くように刺激した。
「ンッ…! ダメ…それ…おかしくなっ…ちゃ…う…!」
「いいよ、おかしくなって…」
それから繭子の中に指を入れて内側の感じる箇所も絶妙な力加減で動かした。
「……っ!」
感じる外側と中側を同時に刺激されて、あまりの気持ちよさに息が止まった。
繭子の反応に気を良くした一平は指の動きを加速させた。
「繭子、声出して。たくさん感じてる声が聞きたい」
「アッ…! ん…ふっ…アッ…ハァッ!」
繭子が声を上げると一平は嬉しそうに唇を重ねた。
「…ん…ふっ…ん…」
一平の巧みな愛撫にだんだんと熱いものがせり上がってきて大きく弾けそうになる。
「あっ…も、もう…ダメ…! 一平さん…! ンッ…ンッ…ンンッ…!」
「いいよ、イって…繭子…!」
「…アッ…アッ………アァァァァァァ…!」
快感の塊が弾け、一平の腕の中で頭と腰をのけ反らせながら繭子は盛大に達した。
目をゆっくりと開けると、一平が繭子を腕枕しながら髪を撫でていた。
「大丈夫?」
「…はい」
「疲れただろう? もうこのまま寝ようか」
「あ…でも…一平さん…まだ…」
一平がふっ…と笑った。
「俺はいいよ、もうそんながっつくような年でもないし」
「でも…」
繭子は申し訳なく思った。いつも一平さんは私のことばかりとても気持ちよくしてくれて…。してもらってばかりで私は何も…。
ゆっくりと起き上がった繭子は、横向きで寝ている一平をそっと仰向けにさせると、自分の身体を徐々に一平の太ももの間に移動させ……。
「…っ繭子!?」
繭子の唇が一平のモノを包み込んだ瞬間、驚いた一平が跳ね起きた。
「…したことがないので下手かもしれませんが…」
再び口に含むと頭をゆっくり上下に動かし始めた。そうしながら繭子の舌が一平の裏側に触れた時、一平の体がビクンとなった。
「っ…!」
ここが気持ちいいのかな…と思わず一平の方を見上げると、熱を孕んだ目とぶつかった。根元を手で握りながら夢中になってひたすら続けていると一平の息が荒くなってきた。
「ハッ…アッ…繭子…! もういい…これ以上は…ダメだ…!」
言うなり勢いよく身体を引きはがされた。
「…え…どうしてですか…最後までしたかったのに…」
「気持ち良過ぎて繭子の口の中に出してしまいそうになったからだ」
「それでも私はよかったんですよ…」
繭子はベッドに押し倒された。
「ダメだ、俺は繭子の中でイきたいんだ…いいか……?」
一平の熱い吐息を感じた瞬間、繭子の中がキュンとなった。
「はい…」
繭子の愛撫によって再度昂った一平のモノがズンッと一気に入ってきた。
「…アァァ!!!」
「痛いか…?」
繭子の頬を撫でながら問いかける一平に微笑みながら首に縋りつく。
「とても気持ちいいです…」
「…そうか…じゃあそのまま離れないで」
そう言うと、また腰を繭子の中に打ちつけた。抱きついていることで少し中の角度が変わり、ある一点に当たっると身体が跳ねた。
「あぁっ!」
「ん? ここか? また繭子のイイところを発見した…」
嬉しそうにしながら、そこを外さないように打ちつけるたびに繭子の口から嬌声が上がる。徐々に一平の動きが速くなった。
「アンッ…! ソコッ…! アァ…アッ、アッ、アッ、アッ!」
「繭子…! 俺も、気持ちいい…一緒に…イこう…!」
「ッ…アッ…なんか…クるっ…! 一平さんっ…! ぁ、ぁ、ァアアアアアアアアッ……!!!」
「ンッ……ッ!!!」
2人はきつく抱き合いながら身を震わせて同時に達した。
繭子は完全に疲れ切ってそのまま寝てしまい、一平のベッドの中で朝を迎えた。
一平に起こされ、頬に口づけされた後、耳元で「昨夜の繭子は積極的ですごく興奮したよ」と囁かれ、思い出した瞬間、ゆでだこのように真っ赤になって、一平にクククッと笑われるのであった。
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