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輪廻Ⅱ『忌憚』
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50年連れ添った主人に先立たれた。坂上敏子、今年喜寿になる。子供は女ばかり四人で全員嫁いで行った。幸いなことにそれぞれが裕福な暮らしをしている。親にとってこんなに安心することはない。主人は銀行員でそれなりの財を残した。元々親の代から継いだ土地であるが継ぐ者がいない。娘達もそれぞれが持ち家に暮らしている。
「土地を売ります」
長女の香織に電話を入れた。
「どうしたの、お母さん急に?」
「老人ホームに入ろうと決めたんだ。土地は二億で買ってくれるらしい。月々40万円の高級ホームなんだ。単純に計算しても40年分はあるから安心だよ。まさか120歳まで生きることはないと思うが、お前達に迷惑は掛けない」
「どうしてお母さん、うちで暮らせばいいじゃない。里見も裕子も愛子もみんなお母さんと暮らしたいと願っているのよ。それぞれのご主人もみんな歓迎してくれているのにどうしてなの?」
「お母さんは一人で悠々と暮らしたいんだよ。もし予定より早く死んだらお前が財産を分けてあげてね」
「みんなお金なんか欲しくないわ、お母さんと暮らしたいの」
「私が嫌なんだよ。分かってね」
敏子は電話を切った。翌日娘達が集まって家族会議を開いた。
「電話でも言ったけどお母さんが土地を売って高級老人ホームに入るらしいの」
喫茶店のテラスで四人が集まった。四人が集まるのは3年振りである。父親の葬儀以来である。
「ところで世田谷の実家を継ぐ人は居ないかしら。裕子の旦那さんは物書きだからいいんじゃない」
「だめだめ、うちの人はマンション派だから。コンクリートの壁に囲まれていないとイメージが浮かばないらしいの。それに五年後にはロスに移住する予定なの」
「初耳、里見はどう?」
「お姉ちゃん、うちは呉服屋よ、それに世田谷の実家の三倍も大きな屋敷に住んでいるのよ。要らない。くれると言っても欲しくない」
「愛子のご主人はどう?やっぱり北海道に引っ越すの?」
「もう整備が始まっているわ。一大リゾート地になるのよ。外国人観光客が押し寄せてくるの。忙しくなるって」
「そう言うお姉ちゃんはどうなの?もう子供達も離れたし悠々自適で過ごせるじゃない」
末娘の愛子が言った。
「意地悪ね、お母さんはうちの人を好いていないの分かっているでしょ。それにお墓があるから動けないのよ」
それぞれに実家を継げない理由がある。豊かである故の贅沢な拒否である。
「お母さんどうして私達の家に入らないのかなあ?みんな歓迎しているのにね」
三女の裕子がこぼした。
「もしかして遠慮?」
「そんなことないわよ。お母さんがあたし達にどうして遠慮なんてするの。もしこの誰かの家に世話になるなら堂々と入るわよ。むしろあたし達が遠慮するようになるわよ」
集まれば姉妹の黄色い声が仲良しを確認し合う。結局母親の好きにさせるのが親孝行とホーム暮らしに賛同した。
入所金を現金で支払い月々40万円の高級老人ホームに引っ越した。実家の家財は娘達に分配した。絵画や書がたくさんあり骨董屋を呼んで処分させた。
入所に付き添いしたのは三女裕子の長女美麻と四女愛子の長男勝馬である。美麻と勝馬は齢が同じでおなじ高校に通っている3年生である。ホームに家財は不要、気に入っている油絵を一枚と服、それと茶器ぐらいである。それでも服が多く、引っ越しに2トン車で運搬した。
「おばあちゃん、服いっぱいあるね」
美麻がクローゼットに収まり切れない服を片付けながら言った。
「どれもこれもおじいさんとの想い出の服だからね、捨てられないのさ。でも美麻が欲しければ持って行きなさい」
「ほんと」
「美麻は狐の襟巻が付いたコートを羽織って姿見の前で回転した」
「今どきそれを着ていると動物保護団体から締め上げられる」
勝馬が冗談半分に言った。
「それを着てヘルシンキに行ったんだよ」
敏子はアルバムを広げて見せた。
「どうしておばあちゃんはうちに来ないの?あたし楽しみにしてたのに」
「美麻はおばあちゃんが来れば旅行に行けるからだろ?」
勝馬が美麻の目論見を暴いて笑った。
「そうよ、それがなぜいけないのよ」
「ほら見ろ、自分の楽しみのためじゃないか」
「ほらほら、喧嘩しないの」
敏子が笑いながら止めた。
「でもどうして母さん達はおばあちゃんちを継がないんだろうね、うちは呉服屋だけどまだ祖父母も元気だし、実家に拘る必要もないと思うけどね。そりゃいずれ父さんが実家に入るだろうけどあたしがおばあちゃんちに残ってもいい」
「それぞれの家にはそれぞれのしきたりがあるんだよ。特に里見の嫁いだ呉服屋さんは先祖代々商いをされている家柄で豪商だからね」
「そんなもんかなあ」
「そんなもんさ」
ノックされた。
「失礼します。初めましてケアマネの佐藤と申します」
「ケア?」
「失礼しました、ケアマネージャーの佐藤です。坂上さんの意向に沿った計画書を作成しますのでね、少しお話を聞かせてください」
「それじゃおばあちゃん、僕達帰る。また来るからね」
勝馬が立ち上がり言った。
「おばあちゃん、また来るからね」
美麻はどうして涙が出るのか分からない。敏子にハグして肩で涙を拭いた。
「どうしたんだい美麻、いつでも会えるでしょ」
美麻は頷いた。
「美麻行こう」
勝馬も寂しい目をしている。祖母が希望して入居したはずの老人ホームである。二人の孫は矛盾を感じていた。
「いいお孫さんですね」
ケアマネの佐藤が世辞を言う。ホームの職員は仕事として老人と接する。自分達にも家族があり年寄りもいる。第一に考えるのは家族であることは言うまでもない。愛情で繋がる家族か、仕事として責任を持つか、そのどちらかでなければ下の世話など出来ない。ホームの全ての職員も仕事として責務を果たしているのである。
敏子は膝関節が痛む。痛いときは立ち上がるのも困難である。だが四六時中痛むわけではない。やはり疲れがたまると痛み出し、数日休むと和らぎ、これの繰り返しだが加齢により痛む時間が増えていた。
「こんにちは、初めまして」
蝶ネクタイをした紳士がドアを開けた。ケアマネが出て行ったあと施錠を忘れていた。背筋のピンとした紳士は部屋に入り一礼した。
「驚かせて申し訳ありません。私はこのホームの自治会長をしている長友と申します。入居された方にご挨拶代わりに自治会の行事など案内させていただいています」
敏子は驚いたが、150人が集まるホームは150世帯であり、小さな地域の自治会ぐらいはあるだろう。であるならばこういう活動も不思議ではないと気持ちを落ち着かせた。
「そうですか、よろしくお願いします。坂上敏子と言います」
「敏子さんは今年78になられる、ここでは平均年齢を下げていますよ」
年齢を知っていることに驚いた。恥ずかしがる齢ではないが誰から訊いたのだろうか。敏子はプライバシーがないことを知った。
「失礼ですけどどうして私の年齢をご存知なんですか?」
「いいじゃありませんか、このホームに入れば家族同然、それに私はここの所長から世話役を仰せつかっていますから、皆様の色んなことを知らないといけないんですよ」
長友は真っ白い入れ歯をむき出して笑った。
「会費はいくらでしょうか?」
敏子は気が滅入る。会費を渡して長井を追い払いたくなった。
「月額3千円ですが、ご存知のように介護を受けている方もたくさんいます。そのような方から徴収するのは酷でして、余裕のある方には寄付感覚でお支払いいただいている次第です」
敏子は一万円を渡した。五千円にしようと思ったが万札しか持ち合わせていない。長友はポシェットから領収証を出して渡した。
「今夜8時からパーティーがありますから是非参加してください。楽しみにしております」
長友は手を上げて出て行った。敏子は膝が痛く、手摺に摑まりながらエレベーターに乗り1階の受付まで行った。
「すいません」
「はい、いかがなさいましたか?」
「あのう、所長さんはいらっしゃいますか?」
「所長は本日留守にしておりますが、宜しければお伝えいたしますが」
敏子は少し考えた。長友は敏子の年齢をホームから聞いて知っていた。年寄りだからと言って他人に知らせてよいのだろうか、知り合って打ち解けて初めて明かすものではないだろうか。
「あのう、自治会の会長さんが私の年齢をホームから訊いたと申しておりました。それはどうでしょう、常識的に考えて外れているとは思いませんか?」
受付の女は困った顔して敏子に頷いた。
「坂上様、このホームはアットホームなお付き合いを大事にしております。利用者様もスタッフも家族のようにしたいと願っております。年齢もそうですが、お身体の体調もそうです。食べ物の好き嫌いや家族構成なんかも分かっていないとサービスの低下を致します。そんな一環で長友会長には利用者様の全てを知っていただきこのホームをリードしていただいております。坂上様も小さなことに不満をお持ちにならずに、前向きになって楽しいホームの生活を送りましょう」
受付の女に小さなことで悩むなと説教を喰らうとは思わなかった。
「小さなことですか?」
「ええ、これから先のことを考えると実に小さなことです。長友様はみな様のことをお考えになっております。長い物には巻かれろと申すではありませんか。坂上様とこの先仲良く楽しく暮らしていくことを希望しております」
受付の女にまとめられてしまった。敏子は部屋に戻った。そして着替えを始めた。これから始まる生活が初めから嫌な思いでスタートしたのではつまらない。ディナーにはおめかしをして行こうとお洒落をして待っていた。ノックがしてドアが開いた。
「失礼します、看護師の和田と申します」
若い男が挨拶した。
「今日坂上様を担当します。うわっ、凄い」
和田が敏子の服装に感嘆の声を上げた。
「どう、似合う?今夜ディナーの参加は初めてだからお洒落してみたの」
敏子はその場で一周した。
「坂上さん、他でやってくださいよ。そんな着飾ってどこに行くつもりですか。坂上様は膝に持病をお持ちと伺っています。それと血圧が高めですね。食事中に痛みが起きて、着替えることが出来ますか?担当の私がその一枚一枚を脱がさなければならないんですよ。ここはホテルじゃありません、老人ホームです。老人はどこかしら身体が悪い。ですから介護が必要、だったら介護され易い服装で協力する。どうですか?僕の考えは間違っていますか?いないでしょ。さあお時間ありますから着替えちゃってください。このことは秘密にしておきますよ」
敏子はソファーに腰を下ろした。立ち上がる気力もない。ディナーは食欲がないと断った。
翌日学校の帰りに美麻と勝馬は待ち合わせをしていた。敏子の入ったホームに行くためである。
「おばあちゃんちに遊びに行くってお母さんに言ったら面会でしょって。これ言い方おかしくない?」
美麻は言い方ひとつに気になっていた。
「美麻は面会じゃ嫌なの?」
「だっておばあちゃんは病気じゃないし、病気じゃないのに面会はおかしいでしょ。あそこは新しいおばあちゃんちだもの」
美麻は母親の表現に納得がいかない。
「ところで美麻、昨日おばあちゃと別れる時泣いていたね。あれはどうして?」
自宅から小一時間で来れる距離にあるホームである。その気なら毎日来れる。
「なんかおばあちゃんがずっと遠くに行ってしまうような気がしたの。実家に住み続けていれば一年振りでもそんな気にならないけど、ホームにいると思うだけで悲しくなるの」
勝馬も美麻と同じだった。ホームの受付で面会の記帳をした。
「やっぱりここはおばあちゃんちじゃないよ」
名前を書きながら美麻が言った。
「僕達の前に誰か来ているね」
敏子の部屋番号に面会の記帳がされていた。
「金原武、美麻知っている?」
「知らない」
二人は敏子の部屋でノックする。返事がない。ドアノブを回すと鍵は掛かっていない。二人は顔を見合わせてドアを開けた。
「おばあちゃん」
美麻が呼んだ。見知らぬ男が敏子の頭に掌を被せていた。その男の肩には鳥がとまっていた。
「しっー」
その男が鼻に一文字を当てた。
「失礼しました」
小声で謝罪して廊下に出た。
「誰かしら?」
「もしかしたらお医者さんかもね、おばあちゃんの頭に掌を載せていた」
「でも肩に鳥がいたよ、黒い鳥だった。嘴が長くてちょっと恐い感じがした」
「スピリチュアルセラピーかもしれない」
「何それ?」
「精神療法だよ。おばあちゃん色々悩んでいたのかもしれない」
15分が経過した。
「どうされましたか?」
廊下を通過するスタッフが声を掛けた。
「お客さんがいるので待っています」
「あら、帰られましたよ10分前です。焦げ茶色のハンチングを被った方ですよね」
スタッフが時計を見て言った。
「僕等ずっとここに居ましたから」
勝馬が言うより早く美麻がドアを開けた。
「おばあちゃん」
美麻が抱き付いた。
「ほらほら痛いから放してよ美麻」
敏子はベッドからソファーに移動した。勝馬が肩を支えた。
「おばあちゃん、さっきまでお客さんがいたでしょ、金原武って人?」
勝馬が訊いた。
「うんいたわよ、おばあちゃんの気持ちを理解してくれた。いい人に出遭えたわ」
「でも不思議だよ。私達ずっと廊下で待っていたのに出て行くのを見なかった」
「そう言う人なんだよ」
敏子の言う意味が分からない。
「いいかい、これから大事な話があるからようく聞いておくれよ」
二人はベッドに腰を下ろした。
「本当はおばあちゃん、お前達や娘達と一緒に暮らしたかったんだよ」
美麻が泣き出した。勝馬がハンカチを出した。
「今からでも遅くないよおばあちゃん、うちに来れば」
「うちでもいいし」
「二人共やさしいねえ。でもねこれは主人と約束したことなの。どちらが生き残っても家族の世話になるのは止そうってね」
「どうして?おばあちゃんがお母さん達を生んでそれから私達が生まれた。おばあちゃんが一番偉いんだよ、遠慮なんか要らないんだよおばあちゃん」
美麻は敏子の手を握る。その手を敏子が擦っている。
「主人はね、もしどちらが先に逝ってもそれで終わりにしようと口癖のように言っていた。一人になったら一人で生きるのが人生。お前達の誰かに世話になると言うことはお前達の時間を奪ってしまう。それだけは絶対に止めようと主人と約束していたんだよ。だからおばあちゃんはこのホームを選んだんだ。娘と孫に囲まれて生きるより、主人との想い出を大事にしたいんだ。そうでないと天国の主人が可哀そうでしょ」
「おばあちゃん」
美麻が頷いた。
「おばあちゃんの考えはよく分かったよ。僕も好きな人が出来たらおばあちゃんやおじいちゃんのように生きてみたい」
勝馬が敏子の価値観に賛同した。
「そうかい、ありがとう。それでお前さん達にお願いだよ。実家はさっきまでいた方が買い戻してくれるそうだ。自由に出入りしていいし、自由に使っていいと言ってくれた。縁側の前に桜の苗木を二本植えて欲しい。右はおじいさんで左はわたしだよ。必ずお前達の手で植えておくれ。植える時にこの名刺をそれぞれの苗木の下に敷いておくれ」
敏子は名刺を出した。
「仙人?金原武?この人がさっきの人?」
「ああそうだよ、おばあちゃんが空に向かってお祈りしていたら、やって来たんだよ。わたしの希望を叶えてくれるってね」
「あの人、肩に鳥がとまっていたでしょ、黒くて嘴の長い?」
「癪と言う名前らしい。さあそろそろ帰りなさい。私の時間もぼちぼち終わりだから。最後に主人と釧路の場末の酒場で踊ったうぬぼれワルツを聴きながら眠りましょう」
二人は敏子が疲れたのだと気を使いその日は帰った。その晩も食事はとらなかった。担当看護師が部屋まで運んでくれたが持ち帰らせた。天命は明け方前だと知らされた。信じていいのかどうか分からないが死ぬ前にご褒美をくれると言う。敏子はドレスに着替えた。そしてレコードプレーヤーにワルツを載せた。敏子が一人で踊り出す。すると窓が開いて紳士が現れた。
「あなた」
微笑んでいるが返事はない。敏子の手を取り踊り出す。
「♪ラッタッタ ラッタッタ うぬぼれワルツ♪あんた男前、あたしいい女♪」
敏子は口ずさみながら頭が男の肩に乗った。最高の天命を迎えた。
美麻と勝馬は敏子との約束通り実家の縁側の前に二本の桜を植えた。苗木の下には忘れずに名刺を置いた。実家の名義を見て驚いた。美麻と勝馬の名義になっている。そして二人は従妹同士だが10年後に結ばれ敏子の実家に暮らすことになる。
「でも誰なのかしら金原武って」
「名刺には仙人て書いてあったね」
「それにしてもきれいに咲いている」
「ああ」
了
「土地を売ります」
長女の香織に電話を入れた。
「どうしたの、お母さん急に?」
「老人ホームに入ろうと決めたんだ。土地は二億で買ってくれるらしい。月々40万円の高級ホームなんだ。単純に計算しても40年分はあるから安心だよ。まさか120歳まで生きることはないと思うが、お前達に迷惑は掛けない」
「どうしてお母さん、うちで暮らせばいいじゃない。里見も裕子も愛子もみんなお母さんと暮らしたいと願っているのよ。それぞれのご主人もみんな歓迎してくれているのにどうしてなの?」
「お母さんは一人で悠々と暮らしたいんだよ。もし予定より早く死んだらお前が財産を分けてあげてね」
「みんなお金なんか欲しくないわ、お母さんと暮らしたいの」
「私が嫌なんだよ。分かってね」
敏子は電話を切った。翌日娘達が集まって家族会議を開いた。
「電話でも言ったけどお母さんが土地を売って高級老人ホームに入るらしいの」
喫茶店のテラスで四人が集まった。四人が集まるのは3年振りである。父親の葬儀以来である。
「ところで世田谷の実家を継ぐ人は居ないかしら。裕子の旦那さんは物書きだからいいんじゃない」
「だめだめ、うちの人はマンション派だから。コンクリートの壁に囲まれていないとイメージが浮かばないらしいの。それに五年後にはロスに移住する予定なの」
「初耳、里見はどう?」
「お姉ちゃん、うちは呉服屋よ、それに世田谷の実家の三倍も大きな屋敷に住んでいるのよ。要らない。くれると言っても欲しくない」
「愛子のご主人はどう?やっぱり北海道に引っ越すの?」
「もう整備が始まっているわ。一大リゾート地になるのよ。外国人観光客が押し寄せてくるの。忙しくなるって」
「そう言うお姉ちゃんはどうなの?もう子供達も離れたし悠々自適で過ごせるじゃない」
末娘の愛子が言った。
「意地悪ね、お母さんはうちの人を好いていないの分かっているでしょ。それにお墓があるから動けないのよ」
それぞれに実家を継げない理由がある。豊かである故の贅沢な拒否である。
「お母さんどうして私達の家に入らないのかなあ?みんな歓迎しているのにね」
三女の裕子がこぼした。
「もしかして遠慮?」
「そんなことないわよ。お母さんがあたし達にどうして遠慮なんてするの。もしこの誰かの家に世話になるなら堂々と入るわよ。むしろあたし達が遠慮するようになるわよ」
集まれば姉妹の黄色い声が仲良しを確認し合う。結局母親の好きにさせるのが親孝行とホーム暮らしに賛同した。
入所金を現金で支払い月々40万円の高級老人ホームに引っ越した。実家の家財は娘達に分配した。絵画や書がたくさんあり骨董屋を呼んで処分させた。
入所に付き添いしたのは三女裕子の長女美麻と四女愛子の長男勝馬である。美麻と勝馬は齢が同じでおなじ高校に通っている3年生である。ホームに家財は不要、気に入っている油絵を一枚と服、それと茶器ぐらいである。それでも服が多く、引っ越しに2トン車で運搬した。
「おばあちゃん、服いっぱいあるね」
美麻がクローゼットに収まり切れない服を片付けながら言った。
「どれもこれもおじいさんとの想い出の服だからね、捨てられないのさ。でも美麻が欲しければ持って行きなさい」
「ほんと」
「美麻は狐の襟巻が付いたコートを羽織って姿見の前で回転した」
「今どきそれを着ていると動物保護団体から締め上げられる」
勝馬が冗談半分に言った。
「それを着てヘルシンキに行ったんだよ」
敏子はアルバムを広げて見せた。
「どうしておばあちゃんはうちに来ないの?あたし楽しみにしてたのに」
「美麻はおばあちゃんが来れば旅行に行けるからだろ?」
勝馬が美麻の目論見を暴いて笑った。
「そうよ、それがなぜいけないのよ」
「ほら見ろ、自分の楽しみのためじゃないか」
「ほらほら、喧嘩しないの」
敏子が笑いながら止めた。
「でもどうして母さん達はおばあちゃんちを継がないんだろうね、うちは呉服屋だけどまだ祖父母も元気だし、実家に拘る必要もないと思うけどね。そりゃいずれ父さんが実家に入るだろうけどあたしがおばあちゃんちに残ってもいい」
「それぞれの家にはそれぞれのしきたりがあるんだよ。特に里見の嫁いだ呉服屋さんは先祖代々商いをされている家柄で豪商だからね」
「そんなもんかなあ」
「そんなもんさ」
ノックされた。
「失礼します。初めましてケアマネの佐藤と申します」
「ケア?」
「失礼しました、ケアマネージャーの佐藤です。坂上さんの意向に沿った計画書を作成しますのでね、少しお話を聞かせてください」
「それじゃおばあちゃん、僕達帰る。また来るからね」
勝馬が立ち上がり言った。
「おばあちゃん、また来るからね」
美麻はどうして涙が出るのか分からない。敏子にハグして肩で涙を拭いた。
「どうしたんだい美麻、いつでも会えるでしょ」
美麻は頷いた。
「美麻行こう」
勝馬も寂しい目をしている。祖母が希望して入居したはずの老人ホームである。二人の孫は矛盾を感じていた。
「いいお孫さんですね」
ケアマネの佐藤が世辞を言う。ホームの職員は仕事として老人と接する。自分達にも家族があり年寄りもいる。第一に考えるのは家族であることは言うまでもない。愛情で繋がる家族か、仕事として責任を持つか、そのどちらかでなければ下の世話など出来ない。ホームの全ての職員も仕事として責務を果たしているのである。
敏子は膝関節が痛む。痛いときは立ち上がるのも困難である。だが四六時中痛むわけではない。やはり疲れがたまると痛み出し、数日休むと和らぎ、これの繰り返しだが加齢により痛む時間が増えていた。
「こんにちは、初めまして」
蝶ネクタイをした紳士がドアを開けた。ケアマネが出て行ったあと施錠を忘れていた。背筋のピンとした紳士は部屋に入り一礼した。
「驚かせて申し訳ありません。私はこのホームの自治会長をしている長友と申します。入居された方にご挨拶代わりに自治会の行事など案内させていただいています」
敏子は驚いたが、150人が集まるホームは150世帯であり、小さな地域の自治会ぐらいはあるだろう。であるならばこういう活動も不思議ではないと気持ちを落ち着かせた。
「そうですか、よろしくお願いします。坂上敏子と言います」
「敏子さんは今年78になられる、ここでは平均年齢を下げていますよ」
年齢を知っていることに驚いた。恥ずかしがる齢ではないが誰から訊いたのだろうか。敏子はプライバシーがないことを知った。
「失礼ですけどどうして私の年齢をご存知なんですか?」
「いいじゃありませんか、このホームに入れば家族同然、それに私はここの所長から世話役を仰せつかっていますから、皆様の色んなことを知らないといけないんですよ」
長友は真っ白い入れ歯をむき出して笑った。
「会費はいくらでしょうか?」
敏子は気が滅入る。会費を渡して長井を追い払いたくなった。
「月額3千円ですが、ご存知のように介護を受けている方もたくさんいます。そのような方から徴収するのは酷でして、余裕のある方には寄付感覚でお支払いいただいている次第です」
敏子は一万円を渡した。五千円にしようと思ったが万札しか持ち合わせていない。長友はポシェットから領収証を出して渡した。
「今夜8時からパーティーがありますから是非参加してください。楽しみにしております」
長友は手を上げて出て行った。敏子は膝が痛く、手摺に摑まりながらエレベーターに乗り1階の受付まで行った。
「すいません」
「はい、いかがなさいましたか?」
「あのう、所長さんはいらっしゃいますか?」
「所長は本日留守にしておりますが、宜しければお伝えいたしますが」
敏子は少し考えた。長友は敏子の年齢をホームから聞いて知っていた。年寄りだからと言って他人に知らせてよいのだろうか、知り合って打ち解けて初めて明かすものではないだろうか。
「あのう、自治会の会長さんが私の年齢をホームから訊いたと申しておりました。それはどうでしょう、常識的に考えて外れているとは思いませんか?」
受付の女は困った顔して敏子に頷いた。
「坂上様、このホームはアットホームなお付き合いを大事にしております。利用者様もスタッフも家族のようにしたいと願っております。年齢もそうですが、お身体の体調もそうです。食べ物の好き嫌いや家族構成なんかも分かっていないとサービスの低下を致します。そんな一環で長友会長には利用者様の全てを知っていただきこのホームをリードしていただいております。坂上様も小さなことに不満をお持ちにならずに、前向きになって楽しいホームの生活を送りましょう」
受付の女に小さなことで悩むなと説教を喰らうとは思わなかった。
「小さなことですか?」
「ええ、これから先のことを考えると実に小さなことです。長友様はみな様のことをお考えになっております。長い物には巻かれろと申すではありませんか。坂上様とこの先仲良く楽しく暮らしていくことを希望しております」
受付の女にまとめられてしまった。敏子は部屋に戻った。そして着替えを始めた。これから始まる生活が初めから嫌な思いでスタートしたのではつまらない。ディナーにはおめかしをして行こうとお洒落をして待っていた。ノックがしてドアが開いた。
「失礼します、看護師の和田と申します」
若い男が挨拶した。
「今日坂上様を担当します。うわっ、凄い」
和田が敏子の服装に感嘆の声を上げた。
「どう、似合う?今夜ディナーの参加は初めてだからお洒落してみたの」
敏子はその場で一周した。
「坂上さん、他でやってくださいよ。そんな着飾ってどこに行くつもりですか。坂上様は膝に持病をお持ちと伺っています。それと血圧が高めですね。食事中に痛みが起きて、着替えることが出来ますか?担当の私がその一枚一枚を脱がさなければならないんですよ。ここはホテルじゃありません、老人ホームです。老人はどこかしら身体が悪い。ですから介護が必要、だったら介護され易い服装で協力する。どうですか?僕の考えは間違っていますか?いないでしょ。さあお時間ありますから着替えちゃってください。このことは秘密にしておきますよ」
敏子はソファーに腰を下ろした。立ち上がる気力もない。ディナーは食欲がないと断った。
翌日学校の帰りに美麻と勝馬は待ち合わせをしていた。敏子の入ったホームに行くためである。
「おばあちゃんちに遊びに行くってお母さんに言ったら面会でしょって。これ言い方おかしくない?」
美麻は言い方ひとつに気になっていた。
「美麻は面会じゃ嫌なの?」
「だっておばあちゃんは病気じゃないし、病気じゃないのに面会はおかしいでしょ。あそこは新しいおばあちゃんちだもの」
美麻は母親の表現に納得がいかない。
「ところで美麻、昨日おばあちゃと別れる時泣いていたね。あれはどうして?」
自宅から小一時間で来れる距離にあるホームである。その気なら毎日来れる。
「なんかおばあちゃんがずっと遠くに行ってしまうような気がしたの。実家に住み続けていれば一年振りでもそんな気にならないけど、ホームにいると思うだけで悲しくなるの」
勝馬も美麻と同じだった。ホームの受付で面会の記帳をした。
「やっぱりここはおばあちゃんちじゃないよ」
名前を書きながら美麻が言った。
「僕達の前に誰か来ているね」
敏子の部屋番号に面会の記帳がされていた。
「金原武、美麻知っている?」
「知らない」
二人は敏子の部屋でノックする。返事がない。ドアノブを回すと鍵は掛かっていない。二人は顔を見合わせてドアを開けた。
「おばあちゃん」
美麻が呼んだ。見知らぬ男が敏子の頭に掌を被せていた。その男の肩には鳥がとまっていた。
「しっー」
その男が鼻に一文字を当てた。
「失礼しました」
小声で謝罪して廊下に出た。
「誰かしら?」
「もしかしたらお医者さんかもね、おばあちゃんの頭に掌を載せていた」
「でも肩に鳥がいたよ、黒い鳥だった。嘴が長くてちょっと恐い感じがした」
「スピリチュアルセラピーかもしれない」
「何それ?」
「精神療法だよ。おばあちゃん色々悩んでいたのかもしれない」
15分が経過した。
「どうされましたか?」
廊下を通過するスタッフが声を掛けた。
「お客さんがいるので待っています」
「あら、帰られましたよ10分前です。焦げ茶色のハンチングを被った方ですよね」
スタッフが時計を見て言った。
「僕等ずっとここに居ましたから」
勝馬が言うより早く美麻がドアを開けた。
「おばあちゃん」
美麻が抱き付いた。
「ほらほら痛いから放してよ美麻」
敏子はベッドからソファーに移動した。勝馬が肩を支えた。
「おばあちゃん、さっきまでお客さんがいたでしょ、金原武って人?」
勝馬が訊いた。
「うんいたわよ、おばあちゃんの気持ちを理解してくれた。いい人に出遭えたわ」
「でも不思議だよ。私達ずっと廊下で待っていたのに出て行くのを見なかった」
「そう言う人なんだよ」
敏子の言う意味が分からない。
「いいかい、これから大事な話があるからようく聞いておくれよ」
二人はベッドに腰を下ろした。
「本当はおばあちゃん、お前達や娘達と一緒に暮らしたかったんだよ」
美麻が泣き出した。勝馬がハンカチを出した。
「今からでも遅くないよおばあちゃん、うちに来れば」
「うちでもいいし」
「二人共やさしいねえ。でもねこれは主人と約束したことなの。どちらが生き残っても家族の世話になるのは止そうってね」
「どうして?おばあちゃんがお母さん達を生んでそれから私達が生まれた。おばあちゃんが一番偉いんだよ、遠慮なんか要らないんだよおばあちゃん」
美麻は敏子の手を握る。その手を敏子が擦っている。
「主人はね、もしどちらが先に逝ってもそれで終わりにしようと口癖のように言っていた。一人になったら一人で生きるのが人生。お前達の誰かに世話になると言うことはお前達の時間を奪ってしまう。それだけは絶対に止めようと主人と約束していたんだよ。だからおばあちゃんはこのホームを選んだんだ。娘と孫に囲まれて生きるより、主人との想い出を大事にしたいんだ。そうでないと天国の主人が可哀そうでしょ」
「おばあちゃん」
美麻が頷いた。
「おばあちゃんの考えはよく分かったよ。僕も好きな人が出来たらおばあちゃんやおじいちゃんのように生きてみたい」
勝馬が敏子の価値観に賛同した。
「そうかい、ありがとう。それでお前さん達にお願いだよ。実家はさっきまでいた方が買い戻してくれるそうだ。自由に出入りしていいし、自由に使っていいと言ってくれた。縁側の前に桜の苗木を二本植えて欲しい。右はおじいさんで左はわたしだよ。必ずお前達の手で植えておくれ。植える時にこの名刺をそれぞれの苗木の下に敷いておくれ」
敏子は名刺を出した。
「仙人?金原武?この人がさっきの人?」
「ああそうだよ、おばあちゃんが空に向かってお祈りしていたら、やって来たんだよ。わたしの希望を叶えてくれるってね」
「あの人、肩に鳥がとまっていたでしょ、黒くて嘴の長い?」
「癪と言う名前らしい。さあそろそろ帰りなさい。私の時間もぼちぼち終わりだから。最後に主人と釧路の場末の酒場で踊ったうぬぼれワルツを聴きながら眠りましょう」
二人は敏子が疲れたのだと気を使いその日は帰った。その晩も食事はとらなかった。担当看護師が部屋まで運んでくれたが持ち帰らせた。天命は明け方前だと知らされた。信じていいのかどうか分からないが死ぬ前にご褒美をくれると言う。敏子はドレスに着替えた。そしてレコードプレーヤーにワルツを載せた。敏子が一人で踊り出す。すると窓が開いて紳士が現れた。
「あなた」
微笑んでいるが返事はない。敏子の手を取り踊り出す。
「♪ラッタッタ ラッタッタ うぬぼれワルツ♪あんた男前、あたしいい女♪」
敏子は口ずさみながら頭が男の肩に乗った。最高の天命を迎えた。
美麻と勝馬は敏子との約束通り実家の縁側の前に二本の桜を植えた。苗木の下には忘れずに名刺を置いた。実家の名義を見て驚いた。美麻と勝馬の名義になっている。そして二人は従妹同士だが10年後に結ばれ敏子の実家に暮らすことになる。
「でも誰なのかしら金原武って」
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「ああ」
了
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