蠱惑

壺の蓋政五郎

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蠱惑『二回目の同じ女房』

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 自分の部屋を掃除していると階段を下りる女房の足音が響きました。スリッパを履いている時と素足の時の足音で外出するのかキッチンかバスルームに行くのか判別出来ます。それを女房も知らせているのです。これからキッチンで食事の用意をするから来ないで下さいよ、シャワーを浴びますから出て来ないでくださいよと。そんな時私は廊下にも出ません。トイレも我慢して自室にこもり安酒を飲みながらテレビを観ています。女房も私がキッチンにいるときは二階から下りて来ることはありません。キッチンのテレビの音量を大きくし二階の廊下に出ればその音が聞こえるようにしています。それはマナーというか二人の間で暗黙の裡に交わされたいわばシグナルでしょうか、長年連れ添った阿吽の呼吸とでも申しましょうか、至極当たり前に巧くいっています。子供達が家を離れて三十年、私が六十で退職して二年目ですが、別れ話は一度も出たこともないわけで、これが夫婦円満の秘訣でしょうか。
 家内と顔を合わせたのは七年前でそれ以来声も聞いたことがありません。ただ女房も還暦近いとはいえ女ですから欲を満足させる喘ぎ声だけは大きく、この締め切った私の部屋にも届きます。それは仕方のないことで、女房が女であることを継続しているのは私にとって最高の喜びでもあります。家内は週に二度、火曜日と金曜日に外出します。帰宅は翌日の正午頃です。玄関の前でバタバタと靴の汚れを落とします。汚れなど付いていません、私に帰宅を知らせているのです。そして鍵穴を突くように数秒掛けて解錠するのです。そう、中の私に聞こえるように、今帰宅してこれから上がると言う合図なのです。鍵穴を突く数秒に私は一旦自室に戻ります。そして家内が階段を上がる足音を確認してまたキッチンに戻るのです。私の自室は居間です。居間にベッドを運んで生活しています。トイレは一階と二階にありますがバスルームは一階にしかありません。こういう生活になると分かっていれば初めから棟梁に頼んでそうしてもらったのに、ま、初めからこういう関係なるなどと考えてもいませんでしたが。二階には二部屋の子供部屋と意外と広いベランダを女房が独占しています。一階にはもう二部屋ありますが不要な家具や子供達の
残していったガラクタで一杯です。今日は火曜日女房の出掛ける日です。スーパーに買い出しに行ってフライでも揚げましょう。鯵をさばいて、烏賊もいい、野菜不足は良くないから茄子と、そうだ蓮根もいい。思いつく素材をメモして女房の出掛けるのを待ちましょう。
 
 旦那はまだキッチンにいる。急かすと火の元が危ないからもう少し待ってあげよう。二階に陣取ったのが私の間違いだった。階段の上り下りだけでも膝が痛い。主人の声はもう忘れた。七年も会っていないし髪も抜け始めていたからもう完全に無いかもしれない、もしカツラなんか被っていたらお笑いだわ。旦那は必ず月曜日と水曜日に出掛ける。どこに行くんだか知らないけど帰って来るのは深夜。遊び相手でも捜しているのかしら。あれでもまだ性欲があるんですよ。気持ち悪いったらないわ。本人は二階まで聞こえないと思っているんでしょうが裏ビデオの音量が大きく私に聞こえているのも知らないで何をしているのかしら。年金収入だけでそれを半分ずつ。二人で賄えば何とかなるけど一人ずつだと全然足りない。貯金も八百万円有った。七年前に半分ずつ分けたわ。私は全部使ってしまったけどケチ旦那のことだからそっくり残しているでしょう。死んで誰かに取られるなら早く使ってしまえばいいのに。もしかして私に遺書を残してこの家と貯金を総てくれるのかしら。部屋に戻ったわ。リビングの引き戸を強く締める音。あれが「もういいよ」の合図です。私はスリッパを叩くように階段を下ります。階段のすぐ横のリビングに旦那はいる。テレビの音が聞こえる。天気予報だわ。どうせ私が出掛けたら裏ビデオを楽しむんでしょう、気持ち悪い。記憶している七年前の醜い容姿、その旦那がティシュを抱えているのを想像するだけで吐き気がする。ところで男は幾つまで性欲があるんでしょうか。個人差はあるでしょうが私は死ぬまでありそう。熟女が好きな若い男と、性欲を満たしたい私がいる。それも報酬がもらえる不思議な場所。さあ、出掛けましょう。
 
 女房が出掛けた。いつも通りの時間だ。もう今夜は帰って来ない。どこで何をしているか多少興味がある。まさか男がいるのか、あんなビヤ樽みたいな身体付きのばばあと付き合う物好きもいないと思うが。それにしてもこんな可愛い子が裏ビデオに出演しているのが不思議だ。セーラー服を着ているけどまさか本物の高校生だろうか。そんな馬鹿なことはないだろう。おう、たまらない。我慢出来ない。いやここは我慢だ。スーパーに買い出しに行ってフライを揚げて、晩酌の後の楽しみを取っておこう。今日中に三本観てしまわないといけない。ビデオ屋の延滞金はもったいない。明日午前中に帰してまた借りよう。だけどビデオ屋の作りを替えてくれないかな。エロビデオコーナーの入り口はレジから丸見えで、たまに店主と目が合う。若い女の子のアルバイトもたまにいる。常連だけどエロの入り口で挨拶するのは止めて欲しい。挨拶されれば知らん顔も出来ず私も会釈する。還暦を過ぎた男がエロビデオコーナーに入る時会釈もおかしいと思うが礼には礼である。もしかしたら還暦を過ぎているように見えないのか。髪も薄くなり始めた七年前に近くのクリニックで発毛の治療をした。それが私には効果絶大だった。抜け毛は止まり、一番気にしていた頭頂部にも発毛した。鏡を見ても少し薄い程度で維持している。もしかしたら四十代、いや五十代前半に見えるのかもしれない。そうだ、きっとそうだ。歳を感じることなどないのだ。現に精力だってあるじゃないか。もう少し積極的に女に近付いてもいいのかもしれない。歳だからと卑屈になることなんてないんだ。ナンパ?そうだ、ビデオ屋のアルバイトを誘ってみようか。私がエロコーナーに入るとき会釈するのは誘われるのを待っているんじゃないだろうか。そうに違いない。
 
 しかしテレビで宣伝しているのはやらせだろうと思っていたけど大金を次ぎこんだだけのことはあるわ。樽のような身体が二十代とまでは言わないが三十代それも前半のスタイルに戻った。旦那と家庭内別居した七年前と今の私は大違い。身体に自信を持つとそれを見せびらかしたくなる。そしてそれを維持するためにさらに磨く。首筋の皺だけが気になるけどスカーフが隠してくれる。駅で待ち合わせした男は大学生。ジーパンに丈の短いトレンチコートを着ている。私に気付いて手を振る。この子とは二回目。熟女クラブで知り合いこれから同伴する。料金だってそんなに安くない。親の仕送りと家庭教師のアルバイトをしているらしいがそれが私のレンタル代に消えてしまう。この店では他に数人の若い男と関係を持っている。旦那と暮らしていた退屈な暮らしが還暦近くなって一変した。さっきからじっと私を見つめている男がいる。照れ屋なのか私が笑うと下を向いてしまう。同伴した男にトイレと言ってその男に水割りグラスを運ぶ。後ろから胸を男の頭に擦り付ける。そしてわざと男の股間に溢してやる。ごめんねと謝りながら拭き取ってやると男が反応した。照れて顔を真っ赤にする。お金あるのと耳元で誘うと十万有りますと上出来の答えが返る。同伴した男はせいぜい五万。嘘を吐いて帰らそう。きょうはこの坊やで欲を晴らそう。この店の名刺の裏に携帯番号を書いて股間に落とした。膨らみに跳ね返され名刺が床に落ちた。「ごめんね、体調が悪いの」同伴した男は延長を一回だけして帰った。私が他のテーブルに長いから諦めたのかもしれない。またお金貯めていらっしゃい。最終まで延長した照れ屋の男と連れ込みホテルに行きました。
「どうしたらこれだけ体力があるの」
「あなたがその源で溢れる蜜に反応する」
 フランス文学が好きらしい。雑誌で仕入れた俄か知識で私を喜ばせているつもりかしら。
「大学生ですが辞めたも同然で、今はその体力を生かして役者をしている。そうだ、あなたも出たらいい、出演料は一本十万でその売れ行きによって出演料も上がります」
 今は熟女ブームで若いファンが多いからあなたのような方は絶対売れるって太鼓判を押してくれるの。どうしようか迷ったけど人生一度のチャンスだから受けてみた。今夜撮影があるから一緒に行こうってトントン拍子。
「でもそんな仕事していれば若い素人の女生といい事たくさん出来るでしょ」
 そう聞いたらもうあなたのことしか頭にないって、若い女の子を相手にしていても私を想像しているらしい。
「でもあなたはうちの店今日が初めてでしょ、どこで私を見たの?」
「実はあなたの裏のアパートに暮らしていて、あなたの姿態を見ています」
「やだ恥ずかしい」
「声がすごい、あの辺りはアパートや学生寮も多いからあなたが発散する日は多くの男が同時に満たしている」
「そう、それならもっとサービスしなくちゃね」

 女房の帰りが遅い。遅くても昼過ぎには帰宅するのに何をしているのだろう。ビデオ屋のアルバイトの子が三時で交代してしまう。危険を冒して出てしまおうか。いや、それは出来ない、七年間続いた暗黙の了解を破ってしまい、ばったりと顔を合わすことになったらそれこそ大変だ。夫婦円満の秘訣を乱すようなことはいくら何でも反則行為だ。ここは辛抱だ。まさかいい男でも出来たか、そんなことはない、誰が還暦ビヤ樽ドッポンドッポン女を誘うか。私のようにはげ治療をして年齢より十も若く見られていれば別だけどな。おっ、帰って来た。バタバタと泥除けマットで足踏みしているぞ、まるで牛が地団駄踏んでいるようだ。そして鍵穴をガチャガチャ言わせて私に帰宅を教えているのだ。はいはい、お帰りなさい。スリッパを踏む音が気怠そうだな。昨夜男を捜して歩き回り、朝まで見つからずに疲れてしまったんだろうか、可愛そうにこのビヤ樽が。もしかしたら欲が溜まって今夜あたり一人で頑張るつもりかな。だけどあの叫び声はなんとかならないかな、近所迷惑も甚だしい。とは言え女一人七年以上も挿入枯れじゃ仕方がない。ご近所の皆さん、今夜ご迷惑をお掛けします、ごめんなさいね。よし出掛けるとするか。
 
 あの馬鹿出掛けたわ、水曜日はビデオ屋のサービスデーだから急いで出て行ったわ。なるべく早く行ってエロいの先に取られないように心配なんだわ。私の帰りが遅いからジリジリしていたのよ。わっ、何これ、鯵フライかしら、これは、蓮根よ。これでもフライなの、油が垂れて皿がヌルヌル。こんなもん食ってるから頭はげるのよ。見たくもないけどもう後頭部三分の一しかないんじゃない気持ち悪い。恐らく帽子を深く被って後ろ三分の一だけ見せてはげを偽っているんでしょ。どっかの暇なばばあでも誘って帽子脱いだら、あれっーて逃げ出されるわよきっと。熟女ブームで薄らっぱげのじじいなんて相手にしちゃくれないのよこの馬鹿。さあ、シャワーでも浴びてワインでも飲んで、昨夜の男が言っていた。私の喘ぎ声がこの周辺の男達の欲を誘うって。今夜は窓開けっ広げて近所のわんぱく坊主共の一斉シャワーでも浴びせてやるか。

 おっいた、アルバイトの子だ。笑顔で応対してくれる。これはもう店と客の関係以上に意識しているに違いない。返却するビデオを差し出す。エロい表紙にエロい文句が恥ずかしい。俺のジュニアに触れたケースに彼女が触れた。私を一瞬見た。これはもう私を誘っている。顔を赤らめているのは私の誘いを待っているのだろうか。初心な子だ、うちの女房も知り合ったときはこんな感じだったが、今となってはこの子の三倍に膨れ上がっている。エロコーナーに入る。彼女を見る、見てるぞ。会釈する。返してくれた、間違いない。よし、出るときに声を掛けてみるか。どう、一緒にビデオ観ない。もうちょっと気の利いた言葉じゃないと、君フライ好き、鯵のフライ手作り、食べながらビデオ鑑賞しようよ。若いからフライは好きなはずだ。アルバイトをしているぐらいだから食事の誘いは効果あるだろう。おっ、新作だ。『ターザン熟女の雄叫び』なかなかいい女だな、知り合った頃の女房に輪郭が似ている。いいね、豹の毛皮を着て猫まねで手招きしている。熟女でもこんな風に齢を重ねてくれればいいが、女房みたいにビヤ樽が着たんじゃ豹じゃなくて乳牛になるぞ。これも含めて三本借りよう。
「この三本借ります。君はフライが好きかな」
「ええ好きです、揚げたてをビールでいいですよね」
「私はフライが得意でね、すぐ近くなんだがよかったら食べに来るといい」
 照れている。他の客が来た。やはり私と同じ新作を借りている。とんだ邪魔だ。今日は帰るとするか。
 
 玄関前でポストの蓋を開け閉めしている。あれは旦那の帰宅の合図。早いわね。仕方ない一旦二階に上がるか。普段は早くても夕方なのにどうしたのかしら。そうか、ビデオ屋に行って好みのエロビデオがあって、早く観たくて帰って来たのよあの馬鹿。そういえば昨夜の彼が言っていたけど、この業界流通が速いから今夜の作品は明日にはビデオ屋の棚に陳列されますよって。それに一押しだから売れ筋のコーナーに並ぶって本当かしら。まさか旦那が私の主演作を借りたりして。そう何て言ったかしら、えーとターザン何とかって女豹目線で表紙撮影したわ。明日又是非お願いしまっすて言われたけどどうしよう。ターザンシリーズで抜き抜きってあの監督張り切っていたわ。キッチンで何かしている。油臭い、あのフライを二度揚げしているのかしら気持ち悪い。油っこいもんばかり食べているから恐らく頭も油でテカッているんじゃない。わっ、換気扇ぐらい回しなさいよ。吐き気がするわ、窓開けましょう。あれ誰か手を振っているわ。昨夜の男だわ。そう言えばうちのすぐ裏のアパートって言っていたけどこんなに近く。ようしサービスするか。窓は開けたままでレースのカーテンだけを閉めて、そう風が吹くと少し揺れていやらしさを盛り上げてくれる。想像しよう、何がいいか。そうだ女豹のポーズで監督がたまらんと言って自分で擦っていた。あれはすごく感じたわ。想像、想像。
 
 ようし、ビデオ鑑賞しましょうか。先ずは新作の『ターザン熟女の雄叫び』おっ、いい女だ、ビヤ樽女房に見せてやりたいよ、こういうふうに齢を磨くんだってね。あれ、この男優どこかで見たことあるな。そうだ、さっきビデオ屋で私の後ろに並んでいた男だ。こいつのせいでレジの女の子を誘い逃してしまったんだ。しかし世の中狭いな、今度会ったらこの女優を紹介してもらおう。金で解決出来ればお願いしよう。ああ、たまらん。新作は高いから一日レンタルにした。明日同じ時間に行ってみよう、会えるかもしれない。おおっ、なんだ声がダブっているぞ。ボリュームは女房に聞こえないように最低にしているんだが、違う二階のビヤ樽だ。昨夜も男捜しがうまく行かず一人上手を始めたか。でも面白いことにビデオと女房の声がマッチしているな。大きな声で恥ずかしくないのか。だけどターザンの雄叫びは女房の方が上だな。それにしてもこの女優の声と歌手が口パクで歌うようにぴったり女房と合ってる。いかん、女房のビヤ樽を連想したから萎えてしまった。もう一度やり直しだ。蚊の鳴くような音量に全神経を研ぎ澄ませて集中する。駄目だ、ビヤ樽が奇声を発した。アーアッアーってターザンの雄叫び。
 
 最後は昨日のラストシーンよ。周辺の独身男性、どうでしたか、満足しましたか。あっ、あそこの窓ガラスが揺れてる、あっ、あっちの窓ガラスも。ガラスの向こうに人影がある。可愛いわ。昨日の男の窓が少し開いている。何かが小刻みに動いているわ。あっなんか飛んだ。あらやだ、夕べあれだけ頑張ったのに回復が早いのね若い子は。シャワーでも浴びて少し寝ましょう。明日の撮影に備えなくちゃ。
 
 おっスリッパをばたばたしてる。女房が下りて来る合図だ。たっぷり汗を掻いたからシャワーでも浴びるつもりだな。下りてきた。引き戸の前をパタパタと通り過ぎて、やはりバスルームだ。ビヤ樽女房よ、箍(たが)もしっかり洗えよ。箍に脂が挟まっていると嫌な臭いを発するぞ。
 
 あの馬鹿、聞こえないと思っているのかしら。それにしてもよく毎日裏ビデオ観てられるわね気持ち悪い。何やってんのかしらってナニやってんのよ、ああ気持ち悪いわこのハゲ。私は身体を磨きましょう。でもここまでクビレが戻るとは思わなかったわ。それにバストの張り、身体に自信を持つと心にも余裕が出て来た。これって相乗効果ってやつ。益々若返ってどうしましょ。明日の撮影が楽しみだわ。毎日撮影してもいいわ、毎日欲が晴らせて十万円いただけるし、熟女クラブ辞めちゃおうかしら、でも若い学生もいいわ。ああー迷っちゃう。
 
 風呂に入ってからずっと寝ていたなあのビヤ樽。よし少し早めに行ってあの男優を捕まえよう。ビヤ樽は今日出ずの日だからな。あっ来た来た。昨日と同じ格好して汚い奴だな。こんな不潔にあんな熟女はもったいない。
「こんにちは」
 おっ、先方から声がかかった。
「どうでしたあのビデオ?
「いや良かったよ凄く。君が男優さんだとすぐに気が付いたよ」
「そこで話があるんだが、あの女優を紹介してくれないかな。もちろん紹介料はたっぷりと」
「川崎の熟女クラブに行けば、十万円で可能です。それにあなたがよければビデオ出演もOKですよ。男優さんが足りなくて監督困っていますから。そうだ共演なさればいい。あなたも同額の報酬がもらえますよ。売れっ子の監督ですから翌日にはレンタルビデオ屋に並びますよ」
 あなたが借りたのも昨日の撮影ですからって、行きましょう、熟女クラブ奢る。
 
 カーテンを開けるとあちこちの窓から顔出しているわ。もう一回期待してるのかしら。そうだ、ヒップだけ窓から出して大サービス。プリプリと二回振ってお子様のお相手はこれで終わり。さあてそろそろ、撮影が八時だから六時から一時間だけ熟女クラブに顔出そうかしら。撮影の男優はまた昨夜の子じゃいや。立派だけど足臭いし、鼻毛が出てるし不潔。そうだ、熟女クラブでいい子捜そう。昨夜の子がやきもち妬いたら三人で愉しんでもいいわ。
 
 待ち遠しいなあ、でもほんとに熟女だけなんだな。わっー、かなり渋いおばさんもいるな。おばさんと言うより席を譲りたくなるレベルだぜ。お元こーって懐かしいなあ。来ましたよ、ターザン姫が。
「紹介します。僕の近所の知り合いの方であなたの大ファンです」
 女房の若い頃に少し似ている。うちのビヤ樽もこうならなあ。

 亭主の若い頃に目が似てるわ。少し薄いけどいい感じに歳重ねてる。
「この方が共演させて欲しいとお願いしています」

 おいおい少し飲んでからの方がいいんじゃないか本題は。

「そうねいいわよ、意外と好みよ、たまには塾男のテクで喜ばせてもらいたいわ」

 撮影所に急ぎました。と言ってもマンションの一室です。監督がターザンは好調だよと上機嫌でした。早速始めると言って用意された衣装はゴリラのマスクとパンツです。彼女は女豹、そして紹介してくれた男もゲスト出演だと言ってキリンのマスクとパンツを穿きました。どの衣装もエロく大事な部分には穴を開けてあります。そして絡み始めたのです。『うっなんだこの熟女、どうして私の好きな攻めを知っているんだ』『あっ、何この熟男、あたしの急所を知ってるわ』
 よしよし、これでよし。七年振りですよ、パパとママが仲良くしてくれるのは。倅としてこんなに嬉しいことはない。倅の倅を道具に使ってしまったけどね。でも酷い、二人共長男のことを忘れているんですから。でも何より嬉しいのは親子の共演。
「監督、記念に一枚撮っていただけますか。女豹の母とゴリラの父、そしてキリンの僕」
「はいチーズ」
「アーアッアー」と母が叫ぶと父がドラミングをした。ずっと夫婦円満でいて欲しい。
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