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3部 人魚と選ばれし番編
7 未知の領域
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夕方5時~♪
だいぶ腐鮫さんと話し込んでしまった。
まだ把握していない沈没船の情報も教えてもらった。
腐鮫さんは海の素材で鮮やかな物にだけ執着しているらしく、古代魔石や魔導具のお宝系は色が鮮やかでも興味がないそうで、互いの欲しいものには手を出さないと条約を結んだ。
「人間が作った物はたまに見掛けるから、見付けたらついでに集めておくよ~」
「あ、なら私も! 極彩貝殻とか千色昆布とか、色が鮮やかな物があったら回収しときますねっ」
お宝探しで提携者ができたぞ。
物々交換しやすいようこの場に転移門を刻んでおく。
笑顔でバイバイして隠密を解く。その場でフィックスさんの部屋に転移した。
転移したら、宙だった。
ガクンと地面に落ちて尻餅をついた。
そこは何もない土地だった。
「…………は」
フィックスさんの部屋じゃない……平原だ。
周りは建物ひとつなく、人の気配もない。
「…………は?」
え。なにか間違えた?
地図を発動。
ティアント大陸──カプルス共和国と同じ大陸。ちょっとホッ。
でも国の名前が出てこない。
地図を見るとカプルス共和国そっくりの地形だ。でも嗅いだことのない風の匂いがして、変な汗が出てきた。
あ、上空に見たことのない鷲がいる。
翼をひろげた体長は10mくらい。
あれはやばい。肌を燻るチリチリとした圧。
私を見るなり襲ってきたので火魔法──獄炎竜巻で灰にした。
間を置かずに遠くで獣を探知。
大型の猿系魔獣──それが私に向かって高速で移動してきている。魔力を捻出。これは殺さないと勝てないと直感が訴えた。
現れた。群れだ。30頭はいる。
これも見たことのない銀色の猿。
囲まれた。
雷魔法──脳天雷。
全頭の脳天に命中。まだ死なない。
咄嗟に脳天雷──全頭に20連。
あ、8連で全部死んだ。
そこで少し落ち着きを取り戻して周りに結界を張った。隠密も発動。
知らない景色。
肌に感じたことのない空気。
気味の悪さにざわざわと肌が栗立つ。
収納から【ハードキャンディー】を出す。
見た目は白い飴玉だ。
これは前世でプレイヤーに配られた魔力無限回復飴。課金でも手に入らない。毎月一個だけ運営から配られるか、デイリークエストを連続10回達成する毎に貰える、収納には51個しかない貴重な飴だ。
海王蛇討伐クエスト以外では使ったことはない。
一時間しかもたないが、舐めてる限り魔力が減らないチートな飴玉。
それを舐めながら飛行で上空までとぶ。
見渡す限り平原と、海が見える。
魔力を拡げてマップ開拓。
20分ほどで魔力が隣国に届いた。
よし、アルレント国と表示された。
この大陸で初めて国を築いたアルレント。
ならここは過去のティアント大陸ということで……。
そこで肌がビリ!っと反応した。
瞬時に振り返ると海──が一瞬だけ何者かの巨大な胃袋に見えた気がした。かなり遠くから何かが私に反応した。魔力とは別の謎の力が引力を発してる。まるでこっちへ来いと言ってるみたいに。この場所は見たことのない魔獣がいる。なにかの罠か? 動きまわるのは悪手だ。
「くっ……!?」
謎の力が増し、徐々に引力も増していく。きもい。怖い。なにこれ? 呼ばれてる?
ハードキャンディーを舐めたままだから出来る荒業で魔力値約200万を一気に放出した拒絶スキルを発動する。強大な引力を弾き返した。でも無理な荒業に結界も隠密も解除された。
この隙に姿や位置を特定される可能性がある。
さっきは隠密なのに悟られたのだ。怖い。収納から出した【偽りの天使】を装着して、7本の弓矢を連結させ猛毒鞭に変形させた。今の奴はどんな毒が効くか解らないが、直感が毒で戦えと訴えたのだ。滅多に使わない【シールド毒】を装填する。毒でできた防御膜を展開し、敵がこの膜に触れればどの毒が効くか教えてくれるし、猛毒鞭の中身もより効果のある毒に自働装填される。
残りのハードキャンディーは舐めたまま待ち構える。全て直感に従った。
その後すぐに海からの反応が消えた。
数分警戒するも、完全に気配が消えた。
地面におりて辺りを見渡す。
そして途方にくれた。
不安と焦り。現実を痛感したという方が正しい。
「え……場所が、わかった、からって……どうだって……いうのよ……?」
空が薄暗くなってきた。
そういやまだ装備が濡れたままだった。
洗浄して戦闘用のジャージに早着替えして、魔導テントを出してその周りに結界を重ねる。淡々とやるも息がしずらい。体が震える。ここの土地や空気のせいだけではない。
「……お、お茶でも……飲もう」
テントに入ろうとして、手が停止した。固まったように動けなくなったという方が正しい。
え?
ここで一人で寝るの?
ありえなくない?
なんでフィックスさんの部屋じゃないの?
なんでこんな目に合ってるの?
このテントに泊まって、朝になったらどうするの?
それからどうするの?
一人で生きていくの?
こんないつの時代かもわからないカプルス共和国で……一人で……?
「……やだああああああッ! 帰してよう! てか戻してよう!」
胸が苦しい。
そりゃあ前世を思い出してからここぞとばかりに好き勝手生きてきたけどさ。なんで? もしかして転生させたのも誰かの罠なの? 幸福の間に絶望に突き落とすのが趣味な誰かの罠?
「……落ち着いて……落ち着いて……な、んか間違ったん、だ……」
これはバグだバグ。
そうに決まってる。
たまに操作してるプレイヤーが転移後に壁にめり込むとかあったもん。
転移先でなんらかのバグが発生した場合、運営からなんて言われた?
あ、そうそう。転移前の場所にもう一度戻ればバグは消えると────。
「……っ、深海1000mに転移!」
きつく目を閉じて転移魔法を発動。
次に目を開けた時、腐鮫さんが目の前にいた。
「あれ? なんか忘れ物……?」
首を振って違うと意思表示すると、腐鮫さんはフーン、という感じで船に戻っていった。
あ……海上の船に転移……は怖い。ここで転移して変な場所に飛ばされたんだ。
海の頂点に早着替えして地面を蹴った。
がむしゃらに泳ぎ、泣きそうになって、精神的に泳ぐ手を止めそうになったがなんとか自力で海上に戻れた。
船に乗り込む。
脱力してペタンと腰をおろした。
生活魔法で時間を調べる。
夕方5時19分…………え?
バグの時間が加算されていない。
ゴクリと唾を飲み込み、船の上からフィックスさんの部屋に──転移!
「……も……戻れたぁぁ」
そっと目をあけるとフィックスさんの部屋にいた。
カチャっとドアが開いて振り返ると、フィックスさんがきょとんとした。
「おかえりリリー…………風邪ひくよ?」
「フィックスさぁんっ」
抱き付いてそこで全身が海水にまみれていたのを思いだし、洗浄してまたフィックスさんに飛び付いた。
「なにかあった?」
「フィックスさぁんっ」
罠がぁぁ……運営の罠に嵌まってバグが発生したんですよぉ……カプルス共和国は1800年の歴史があるから1800年は前の過去に飛ばされてこれから一人で生きていかなきゃいけないと絶望してたんですよぉ──とは流石に言えないので、今日は何もお宝を見つけられなかったと泣いといた。
「うぅ……おいちぃょぅ」
「よしよし。リリーは可愛いね。シチューもお食べ」
柔らかい肉団子の入ったミルクたっぷりなシチューが超美味しい。優しい味つけが身に染みるぅ。パンが止まらない。
おまけにベットでフィックスさんに背後から抱き締められながらの食事。うぅ……これを失っていたかと思うと、顎の軋みと共に涙がぽろり。あ、フォークに刺さった揚げタコだぁ、ぱくり。うまし!
「帰って来た時、死にそうな顔してた」
「うぅ……モグモグ」
「もう……そんなに泣いて」
スプーンに乗せられた真っ赤な林檎のコンポート。
赤ワイン煮だぁ。香りでシナモンも入ってるのがわかった。ぱくぱくするもスプーンが届かない。
「リリー、」
見上げると優しい笑みを浮かべてスプーンを皿に戻すフィックスさん。あ、待って待って林檎のコンポート~。
「本当はなにがあったの?」
どんどん溢れてくる涙を拭われながらフィックスさんを見上げた。顔を見ると弱音が出そうになるというか、とても安心する。あ、そういやあそこに魔導テント置き忘れてきたな。まぁ、いっか。戻ってこれたんだもん。
「言いたくない?」
「……その、実は深海1000mからフィックスさんの部屋に転移したらわけのわからない場所にとばされたんですよ。そこは私の知らない魔獣ばっかで、途方にくれてて……道に迷ったら来た道を引き返すのがいいかと思ってまた転移で深海に戻ったらフィックスさんの元に帰ってこれて……涙が止まらないのは……ホッとしてるからです」
それにテンパり過ぎて忘れてた。
私には【ペテン師のトランプ】があったことを。まぁ、切り札は残しておくのが戦いの常だよねー。
「……深海は魔法が正常に機能しない時があるからね」
「そうなんですか?」
「うん。俺も深海では魔力は使わないよ」
そういやゲームでも魔法が使えないエリアは全部海底800m付近にある。
サリラン大陸の魔境支部、海底ダンジョンの隠し洞窟にある第四釣り場とか。
"深海では魔力は使わない"
てかフィックスさん、たまに魔力とは別の謎の力を使う時があるよね。巨大真珠を出した時とか、エメラルドちゃんの頭ポンした時とか。
「あまり心配させないで……これからはちゃんと船に戻ってから転移しておいで。はい、あーん」
「はぁい。あー……はぅ……ぉぃち」
林檎のコンポートが大人向けの味だ。
優しい甘さが心に染みるぅ。
今回は勉強になったな。
深海には行ってもあんなわけのわかんないとこには二度と行かないぞ。
ご飯を食べ終わり、フィックスさんが食器を片付けようとするのを止めて皿を洗浄。
腕を引いてベットに引き摺りこんだ。
「うぅ……フィックスさぁん。ちょっとだけ……あともうちょっと、こうしていて下さい」
胸元に顔を押し付けてぐりぐり。
うぅ……気持ちいい。シャツを掴んで匂いも嗅いでもっとぐりぐりしちゃう。
「リリー……泣いてるの?」
「いえ、今はフィックスさんを堪能してます」
「俺もリリーを堪能していい?」
「……はぃ」
その日はずっとフィックスさんの腕に囲われて、抱かれながらたまに泣いて、そしたら途中でわけわからなくされて、いっぱい恥ずかしいことを口走った気もするけど前後不覚のまま鳴いて叫んで気付いたら昼になってて超元気になってた。
「うおおっしゃああっ! 腰は砕けても心は折れないっっ!」
まるで憑き物が落ちたように心は軽々と、逆に体は重石を背負わされたギシギシのぎっくり腰だったので錬金術で虹の化石と生命の枝を調合した秘薬でフルパワーになった。
やばい効く。効き過ぎて思わずベットから飛び出してしまったほどだ。
「う~ん……リリーは手強いね」
「へ?」
おわ。振り返るとぺしゃんこになったベットの上でフィックスさんが額に手をついて笑っている。
昨夜はHPプラス値どころかカンスト分も削られた破壊的な夜だった記憶はある。
てかどうやってこのベットを壊したのだろう。気持ち良すぎてそこまで記憶がないんだよね。
錬金術で元に戻して鑑定。耐久度は35万。柔軟性においては液体金属魚の特性とはいえ130万とか、もはやベットとは思えない頑丈さの、これを……。
「フィックスさんこそ、とても手強いと思います」
「そんなことないよ……いま凄く上機嫌だよ」
「そうなんですか?」
「うん……ちゃんと戻ってきたからね」
抱き締められてよしよしと髪を撫でられる。あぁ……そういや昨夜もずっと頭を撫でられていたなぁ。終始抱き締められたまま、しゅるりと舌が首に1周して、快感に滲む視界のなか気を失うまでアンアン言ってた朧気な記憶。
「今日はパンケーキがあるよ」
「わぁ、食べます食べます!」
超お腹空いてきた!
てか体が糖分を欲してる。
着替えたらおりといでと言われてまずは体を洗浄。パンケーキと言われて何故かフリフリのワンピースなんか出して着ちゃって。ついでに髪もツインテールにしてくれるヘアピンをつけて身支度完了。
一階へ下りると甘い香りが充満していた。
「こ、これ……この匂い!」
フィックスさんの指! から出てくる甘いの!
「リリーのは特別ね」
「わぁー凄いっ凄いっ」
カウンターに座るとふわっふわのパンケーキが出てきた!
出来立てホカホカが3枚だぞ!
キラキラ輝く蜂蜜とたっぷりふりかけられた粉糖にうっとりしちゃう。
「うんみゃあああ~♪」
あまぁい生地から蜜が滲みだす。
濃いねぇ♪かなり濃いねぇ♪
これアルコール度数やばそ……でもとまんない。
「リリー、顔が赤いよ」
「だってこれすごぉい……生地は……原液で溶いたんですか?」
「うん。おかわりもあるよ」
「ありがとうございます!」
更に2枚追加。
さっきより濃いぃ。
口に入れた瞬間からもうあかん。
美味しい生地からとろけるような蜜が出てきて舌が喜ぶ。
「ンぅー……もっとぉ」
「いいよ」
更に2枚追加。
フィックスさんが淹れてくれた香山紅茶と合うぅアウアウ……。
「ふぁ、ぁぁ」
「今日は船には乗らないで。街にいて」
「はぁい」
甘い香りにつられたのか、店内も混んできた。あぁあかん、そろそろ席を空けないと、そう思って腰を上げたのにフィックスさんが追加の4枚を持ってきてまた腰をおろした。
「おいちい……おいちぃょぅ~」
「可愛いね……美味しそう」
美味しいんです!
あ、テリーさんが来た。
おわ、凄い呆れ顔だ。
「お嬢ちゃん、いたか」
「? はい」
「フィックスは、大丈夫だな」
「うん。大丈夫みたい。でも誰だろうね。ずっと探してるのに、見つからない。海にはいないのかな?」
「俺は……事態が解決するまで表に出さないことにした」
なにを?
テリーさんに厨房に呼ばれたフィックスさんは私の頭をぽんぽんとしてから離れていった。再びホットケーキをぱくり、じわり、うんみゃあああ♪
やばいな。
どんだけ食べてんだ。
軽くてふわふわでまだまだ入るぞ。
「こちらが昼食になります」
うっほ! 従業員さんがお肉たっぷりの麺料理と揚げたて熱々の巨大魚を持ってきてくれた。
「ありがとうございます!」
ポケットに手を突っ込んで収納から出したオタマナマズの卵缶詰を10個渡す。皆で食べて~と囁いてお互いにんまり。
「んぅぅ……ピリ辛やぁ」
この魚、生姜がよくきいた餡掛けがかかってるぅ。
揚げたてでカリっとしてるぅ。
あちち、うまま。ピリ辛で口内の唾液が凄いこと。
──そこで店内から強い視線を感じた。近い。真後ろだ。それも複数。
麺を啜りながら真後ろを探知、そして鑑定。
……狐がおる。え。視線を送ってきた六人全員が狐獣人?
そのうち四人は精霊術をカンストしたエリート魔導師だぞ。
背中がビリっとする。敵意じゃない、それでもあまり好意的なものではないな。無視無視。
この麺料理、角煮のようなスライス肉と麺を絡ませると超うまい。しゃきしゃきの野菜も絡ませると旨味が調和されて更にうまい。
うままっ、スープもうまま!
甘いもの頂いたあとの塩気はやばいね。最後の1滴までとまんない。
「……もっと食べたぁい」
「いいよ」
わあ! 厨房から出てきたフィックスさんがにこにこしながら肉麺のおかわりを持ってきてくれた。
てか食べ過ぎ……。
「リリー?」
手をつけずにいるとフィックスさんがこてんと首を傾げた。
「た、沢山食べる子って……どうなんでしょう?」
「リリーはよく食べるね」
そんなとろけるように甘い目を向けないで。てか甘やかさないで。
「そうなんですよ。美味しいご飯を作るフィックスさんのせいです」
「そうだね……沢山したから……今日はとくに栄養が必要みたい」
は、わわ。
指先で首をさわさわされた。
ズクっと下腹部に疼きをもたらす、昨夜の首に巻き付く舌の感触が蘇った。あと縦長の凄い怖い目にも見つめられていたような不鮮明な感覚……あれれ?
「今日はどこにも行かないで。俺といて」
「は、はぁい」
だいぶ腐鮫さんと話し込んでしまった。
まだ把握していない沈没船の情報も教えてもらった。
腐鮫さんは海の素材で鮮やかな物にだけ執着しているらしく、古代魔石や魔導具のお宝系は色が鮮やかでも興味がないそうで、互いの欲しいものには手を出さないと条約を結んだ。
「人間が作った物はたまに見掛けるから、見付けたらついでに集めておくよ~」
「あ、なら私も! 極彩貝殻とか千色昆布とか、色が鮮やかな物があったら回収しときますねっ」
お宝探しで提携者ができたぞ。
物々交換しやすいようこの場に転移門を刻んでおく。
笑顔でバイバイして隠密を解く。その場でフィックスさんの部屋に転移した。
転移したら、宙だった。
ガクンと地面に落ちて尻餅をついた。
そこは何もない土地だった。
「…………は」
フィックスさんの部屋じゃない……平原だ。
周りは建物ひとつなく、人の気配もない。
「…………は?」
え。なにか間違えた?
地図を発動。
ティアント大陸──カプルス共和国と同じ大陸。ちょっとホッ。
でも国の名前が出てこない。
地図を見るとカプルス共和国そっくりの地形だ。でも嗅いだことのない風の匂いがして、変な汗が出てきた。
あ、上空に見たことのない鷲がいる。
翼をひろげた体長は10mくらい。
あれはやばい。肌を燻るチリチリとした圧。
私を見るなり襲ってきたので火魔法──獄炎竜巻で灰にした。
間を置かずに遠くで獣を探知。
大型の猿系魔獣──それが私に向かって高速で移動してきている。魔力を捻出。これは殺さないと勝てないと直感が訴えた。
現れた。群れだ。30頭はいる。
これも見たことのない銀色の猿。
囲まれた。
雷魔法──脳天雷。
全頭の脳天に命中。まだ死なない。
咄嗟に脳天雷──全頭に20連。
あ、8連で全部死んだ。
そこで少し落ち着きを取り戻して周りに結界を張った。隠密も発動。
知らない景色。
肌に感じたことのない空気。
気味の悪さにざわざわと肌が栗立つ。
収納から【ハードキャンディー】を出す。
見た目は白い飴玉だ。
これは前世でプレイヤーに配られた魔力無限回復飴。課金でも手に入らない。毎月一個だけ運営から配られるか、デイリークエストを連続10回達成する毎に貰える、収納には51個しかない貴重な飴だ。
海王蛇討伐クエスト以外では使ったことはない。
一時間しかもたないが、舐めてる限り魔力が減らないチートな飴玉。
それを舐めながら飛行で上空までとぶ。
見渡す限り平原と、海が見える。
魔力を拡げてマップ開拓。
20分ほどで魔力が隣国に届いた。
よし、アルレント国と表示された。
この大陸で初めて国を築いたアルレント。
ならここは過去のティアント大陸ということで……。
そこで肌がビリ!っと反応した。
瞬時に振り返ると海──が一瞬だけ何者かの巨大な胃袋に見えた気がした。かなり遠くから何かが私に反応した。魔力とは別の謎の力が引力を発してる。まるでこっちへ来いと言ってるみたいに。この場所は見たことのない魔獣がいる。なにかの罠か? 動きまわるのは悪手だ。
「くっ……!?」
謎の力が増し、徐々に引力も増していく。きもい。怖い。なにこれ? 呼ばれてる?
ハードキャンディーを舐めたままだから出来る荒業で魔力値約200万を一気に放出した拒絶スキルを発動する。強大な引力を弾き返した。でも無理な荒業に結界も隠密も解除された。
この隙に姿や位置を特定される可能性がある。
さっきは隠密なのに悟られたのだ。怖い。収納から出した【偽りの天使】を装着して、7本の弓矢を連結させ猛毒鞭に変形させた。今の奴はどんな毒が効くか解らないが、直感が毒で戦えと訴えたのだ。滅多に使わない【シールド毒】を装填する。毒でできた防御膜を展開し、敵がこの膜に触れればどの毒が効くか教えてくれるし、猛毒鞭の中身もより効果のある毒に自働装填される。
残りのハードキャンディーは舐めたまま待ち構える。全て直感に従った。
その後すぐに海からの反応が消えた。
数分警戒するも、完全に気配が消えた。
地面におりて辺りを見渡す。
そして途方にくれた。
不安と焦り。現実を痛感したという方が正しい。
「え……場所が、わかった、からって……どうだって……いうのよ……?」
空が薄暗くなってきた。
そういやまだ装備が濡れたままだった。
洗浄して戦闘用のジャージに早着替えして、魔導テントを出してその周りに結界を重ねる。淡々とやるも息がしずらい。体が震える。ここの土地や空気のせいだけではない。
「……お、お茶でも……飲もう」
テントに入ろうとして、手が停止した。固まったように動けなくなったという方が正しい。
え?
ここで一人で寝るの?
ありえなくない?
なんでフィックスさんの部屋じゃないの?
なんでこんな目に合ってるの?
このテントに泊まって、朝になったらどうするの?
それからどうするの?
一人で生きていくの?
こんないつの時代かもわからないカプルス共和国で……一人で……?
「……やだああああああッ! 帰してよう! てか戻してよう!」
胸が苦しい。
そりゃあ前世を思い出してからここぞとばかりに好き勝手生きてきたけどさ。なんで? もしかして転生させたのも誰かの罠なの? 幸福の間に絶望に突き落とすのが趣味な誰かの罠?
「……落ち着いて……落ち着いて……な、んか間違ったん、だ……」
これはバグだバグ。
そうに決まってる。
たまに操作してるプレイヤーが転移後に壁にめり込むとかあったもん。
転移先でなんらかのバグが発生した場合、運営からなんて言われた?
あ、そうそう。転移前の場所にもう一度戻ればバグは消えると────。
「……っ、深海1000mに転移!」
きつく目を閉じて転移魔法を発動。
次に目を開けた時、腐鮫さんが目の前にいた。
「あれ? なんか忘れ物……?」
首を振って違うと意思表示すると、腐鮫さんはフーン、という感じで船に戻っていった。
あ……海上の船に転移……は怖い。ここで転移して変な場所に飛ばされたんだ。
海の頂点に早着替えして地面を蹴った。
がむしゃらに泳ぎ、泣きそうになって、精神的に泳ぐ手を止めそうになったがなんとか自力で海上に戻れた。
船に乗り込む。
脱力してペタンと腰をおろした。
生活魔法で時間を調べる。
夕方5時19分…………え?
バグの時間が加算されていない。
ゴクリと唾を飲み込み、船の上からフィックスさんの部屋に──転移!
「……も……戻れたぁぁ」
そっと目をあけるとフィックスさんの部屋にいた。
カチャっとドアが開いて振り返ると、フィックスさんがきょとんとした。
「おかえりリリー…………風邪ひくよ?」
「フィックスさぁんっ」
抱き付いてそこで全身が海水にまみれていたのを思いだし、洗浄してまたフィックスさんに飛び付いた。
「なにかあった?」
「フィックスさぁんっ」
罠がぁぁ……運営の罠に嵌まってバグが発生したんですよぉ……カプルス共和国は1800年の歴史があるから1800年は前の過去に飛ばされてこれから一人で生きていかなきゃいけないと絶望してたんですよぉ──とは流石に言えないので、今日は何もお宝を見つけられなかったと泣いといた。
「うぅ……おいちぃょぅ」
「よしよし。リリーは可愛いね。シチューもお食べ」
柔らかい肉団子の入ったミルクたっぷりなシチューが超美味しい。優しい味つけが身に染みるぅ。パンが止まらない。
おまけにベットでフィックスさんに背後から抱き締められながらの食事。うぅ……これを失っていたかと思うと、顎の軋みと共に涙がぽろり。あ、フォークに刺さった揚げタコだぁ、ぱくり。うまし!
「帰って来た時、死にそうな顔してた」
「うぅ……モグモグ」
「もう……そんなに泣いて」
スプーンに乗せられた真っ赤な林檎のコンポート。
赤ワイン煮だぁ。香りでシナモンも入ってるのがわかった。ぱくぱくするもスプーンが届かない。
「リリー、」
見上げると優しい笑みを浮かべてスプーンを皿に戻すフィックスさん。あ、待って待って林檎のコンポート~。
「本当はなにがあったの?」
どんどん溢れてくる涙を拭われながらフィックスさんを見上げた。顔を見ると弱音が出そうになるというか、とても安心する。あ、そういやあそこに魔導テント置き忘れてきたな。まぁ、いっか。戻ってこれたんだもん。
「言いたくない?」
「……その、実は深海1000mからフィックスさんの部屋に転移したらわけのわからない場所にとばされたんですよ。そこは私の知らない魔獣ばっかで、途方にくれてて……道に迷ったら来た道を引き返すのがいいかと思ってまた転移で深海に戻ったらフィックスさんの元に帰ってこれて……涙が止まらないのは……ホッとしてるからです」
それにテンパり過ぎて忘れてた。
私には【ペテン師のトランプ】があったことを。まぁ、切り札は残しておくのが戦いの常だよねー。
「……深海は魔法が正常に機能しない時があるからね」
「そうなんですか?」
「うん。俺も深海では魔力は使わないよ」
そういやゲームでも魔法が使えないエリアは全部海底800m付近にある。
サリラン大陸の魔境支部、海底ダンジョンの隠し洞窟にある第四釣り場とか。
"深海では魔力は使わない"
てかフィックスさん、たまに魔力とは別の謎の力を使う時があるよね。巨大真珠を出した時とか、エメラルドちゃんの頭ポンした時とか。
「あまり心配させないで……これからはちゃんと船に戻ってから転移しておいで。はい、あーん」
「はぁい。あー……はぅ……ぉぃち」
林檎のコンポートが大人向けの味だ。
優しい甘さが心に染みるぅ。
今回は勉強になったな。
深海には行ってもあんなわけのわかんないとこには二度と行かないぞ。
ご飯を食べ終わり、フィックスさんが食器を片付けようとするのを止めて皿を洗浄。
腕を引いてベットに引き摺りこんだ。
「うぅ……フィックスさぁん。ちょっとだけ……あともうちょっと、こうしていて下さい」
胸元に顔を押し付けてぐりぐり。
うぅ……気持ちいい。シャツを掴んで匂いも嗅いでもっとぐりぐりしちゃう。
「リリー……泣いてるの?」
「いえ、今はフィックスさんを堪能してます」
「俺もリリーを堪能していい?」
「……はぃ」
その日はずっとフィックスさんの腕に囲われて、抱かれながらたまに泣いて、そしたら途中でわけわからなくされて、いっぱい恥ずかしいことを口走った気もするけど前後不覚のまま鳴いて叫んで気付いたら昼になってて超元気になってた。
「うおおっしゃああっ! 腰は砕けても心は折れないっっ!」
まるで憑き物が落ちたように心は軽々と、逆に体は重石を背負わされたギシギシのぎっくり腰だったので錬金術で虹の化石と生命の枝を調合した秘薬でフルパワーになった。
やばい効く。効き過ぎて思わずベットから飛び出してしまったほどだ。
「う~ん……リリーは手強いね」
「へ?」
おわ。振り返るとぺしゃんこになったベットの上でフィックスさんが額に手をついて笑っている。
昨夜はHPプラス値どころかカンスト分も削られた破壊的な夜だった記憶はある。
てかどうやってこのベットを壊したのだろう。気持ち良すぎてそこまで記憶がないんだよね。
錬金術で元に戻して鑑定。耐久度は35万。柔軟性においては液体金属魚の特性とはいえ130万とか、もはやベットとは思えない頑丈さの、これを……。
「フィックスさんこそ、とても手強いと思います」
「そんなことないよ……いま凄く上機嫌だよ」
「そうなんですか?」
「うん……ちゃんと戻ってきたからね」
抱き締められてよしよしと髪を撫でられる。あぁ……そういや昨夜もずっと頭を撫でられていたなぁ。終始抱き締められたまま、しゅるりと舌が首に1周して、快感に滲む視界のなか気を失うまでアンアン言ってた朧気な記憶。
「今日はパンケーキがあるよ」
「わぁ、食べます食べます!」
超お腹空いてきた!
てか体が糖分を欲してる。
着替えたらおりといでと言われてまずは体を洗浄。パンケーキと言われて何故かフリフリのワンピースなんか出して着ちゃって。ついでに髪もツインテールにしてくれるヘアピンをつけて身支度完了。
一階へ下りると甘い香りが充満していた。
「こ、これ……この匂い!」
フィックスさんの指! から出てくる甘いの!
「リリーのは特別ね」
「わぁー凄いっ凄いっ」
カウンターに座るとふわっふわのパンケーキが出てきた!
出来立てホカホカが3枚だぞ!
キラキラ輝く蜂蜜とたっぷりふりかけられた粉糖にうっとりしちゃう。
「うんみゃあああ~♪」
あまぁい生地から蜜が滲みだす。
濃いねぇ♪かなり濃いねぇ♪
これアルコール度数やばそ……でもとまんない。
「リリー、顔が赤いよ」
「だってこれすごぉい……生地は……原液で溶いたんですか?」
「うん。おかわりもあるよ」
「ありがとうございます!」
更に2枚追加。
さっきより濃いぃ。
口に入れた瞬間からもうあかん。
美味しい生地からとろけるような蜜が出てきて舌が喜ぶ。
「ンぅー……もっとぉ」
「いいよ」
更に2枚追加。
フィックスさんが淹れてくれた香山紅茶と合うぅアウアウ……。
「ふぁ、ぁぁ」
「今日は船には乗らないで。街にいて」
「はぁい」
甘い香りにつられたのか、店内も混んできた。あぁあかん、そろそろ席を空けないと、そう思って腰を上げたのにフィックスさんが追加の4枚を持ってきてまた腰をおろした。
「おいちい……おいちぃょぅ~」
「可愛いね……美味しそう」
美味しいんです!
あ、テリーさんが来た。
おわ、凄い呆れ顔だ。
「お嬢ちゃん、いたか」
「? はい」
「フィックスは、大丈夫だな」
「うん。大丈夫みたい。でも誰だろうね。ずっと探してるのに、見つからない。海にはいないのかな?」
「俺は……事態が解決するまで表に出さないことにした」
なにを?
テリーさんに厨房に呼ばれたフィックスさんは私の頭をぽんぽんとしてから離れていった。再びホットケーキをぱくり、じわり、うんみゃあああ♪
やばいな。
どんだけ食べてんだ。
軽くてふわふわでまだまだ入るぞ。
「こちらが昼食になります」
うっほ! 従業員さんがお肉たっぷりの麺料理と揚げたて熱々の巨大魚を持ってきてくれた。
「ありがとうございます!」
ポケットに手を突っ込んで収納から出したオタマナマズの卵缶詰を10個渡す。皆で食べて~と囁いてお互いにんまり。
「んぅぅ……ピリ辛やぁ」
この魚、生姜がよくきいた餡掛けがかかってるぅ。
揚げたてでカリっとしてるぅ。
あちち、うまま。ピリ辛で口内の唾液が凄いこと。
──そこで店内から強い視線を感じた。近い。真後ろだ。それも複数。
麺を啜りながら真後ろを探知、そして鑑定。
……狐がおる。え。視線を送ってきた六人全員が狐獣人?
そのうち四人は精霊術をカンストしたエリート魔導師だぞ。
背中がビリっとする。敵意じゃない、それでもあまり好意的なものではないな。無視無視。
この麺料理、角煮のようなスライス肉と麺を絡ませると超うまい。しゃきしゃきの野菜も絡ませると旨味が調和されて更にうまい。
うままっ、スープもうまま!
甘いもの頂いたあとの塩気はやばいね。最後の1滴までとまんない。
「……もっと食べたぁい」
「いいよ」
わあ! 厨房から出てきたフィックスさんがにこにこしながら肉麺のおかわりを持ってきてくれた。
てか食べ過ぎ……。
「リリー?」
手をつけずにいるとフィックスさんがこてんと首を傾げた。
「た、沢山食べる子って……どうなんでしょう?」
「リリーはよく食べるね」
そんなとろけるように甘い目を向けないで。てか甘やかさないで。
「そうなんですよ。美味しいご飯を作るフィックスさんのせいです」
「そうだね……沢山したから……今日はとくに栄養が必要みたい」
は、わわ。
指先で首をさわさわされた。
ズクっと下腹部に疼きをもたらす、昨夜の首に巻き付く舌の感触が蘇った。あと縦長の凄い怖い目にも見つめられていたような不鮮明な感覚……あれれ?
「今日はどこにも行かないで。俺といて」
「は、はぁい」
2
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