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3部 人魚と選ばれし番編
8 デート
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おかわりのご飯を頂いてから、フィックスさんと手を繋いで街を歩いた。
「お店凄く混んでましたけど……私達だけ遊んでて大丈夫でしょうか?」
今日は甘い匂いにつられて店の外は行列もできていた。
「大丈夫。テリーがいるからね」
てかこれってデート?
こんな風に一緒におでかけなんて初めてじゃない?
あぁ。それにしてもフィックスさんがかっこいい。背も高くて外国のモデルみたいなスタイルで歩いてるだけで様になる。乙女ゲームそっちのけでRPG楽しんでた自分としては、男は見た目がどうこうとか、体の逞しさがどうこうとか、ときめきが欲しいとか、全く興味もなかったのに。まさか自分がこんなにも乙女だったなんて。
手を繋いで、もう片方の手はフィックスさんの腕を掴む。ついでに頬で二の腕もすりすり。逞しい腕だ。もう離れられない。
ちらりとフィックスさんを見上げると、強い日差しで癖のある黒髪が顔に影を落とし、その髪の隙間から覗く金色の目でじっと私を見つめていた。
「不思議だね」
「何がですか?」
「リリーは俺のどこが好き?」
「……ふ」
「笑ってないで教えて」
「ふふっ、私……フィックスさんとは、恋愛なんです!」
「……恋愛?」
「はいっ。初対面の時からフィックスさんにハマりそうになって、自然と気になっちゃって、触れられても嫌じゃなくて、それよりドキっとする程で──」
泳ぎに誘われた時は迷ったけど、そしてまさか海中であのような事を致すとは思ってもなく、勢いでベットに転移して連れてきてしまったこと。彼氏と言ったとき否定されなくて内心ひそかに喜んでたこと。宿とか家とかかりるなり、きちんと生活の基盤を整えようと思っていた所、フィックスさんに甘やかされてずるずるここまできてしまったけど、このまま同棲を続けたい旨とか、恥ずかしながら暴露した。
「……嬉しい。誰も強い者に惹かれるからね。少し、不安だった」
「あ、それはないです。春頃に実力的にやばい人と出会ったけど、惹かれるどころか逃げてきましたもん」
「どこの、誰?」
「隣国の山菜マスターです。あ、でも謎だらけのスキルと実力的に見てびびって逃げただけで、何か攻撃されたわけでもないし悪い人ではないと思います……んん?」
「そう、覚えとくよ、隣国の、聖族かぁ」
──なにかに囲まれてる。
そして霧が出てきた。
魔力を含んだ霧だ。
幻覚の魔法か。
近くに精霊術をカンストしてる魔導師がいるな。あと獣臭。ならさっき鑑定したあの狐獣人かな?
「ほんとフィックスさんて、慌てませんよね?」
この魔力を含んだ霧は、相手に自分のおおよそのステータスを教えてしまう危険性があるのだ。鑑定ほどの精密さはないが、雑魚か強者か超ド級かは晒してしまう。私は拒絶のスキルがあるから常時跳ね返してしまうけど……。
「昨日は慌てたよ」
「え。……まさか最中に?」
昨夜は致してた殆どの時間、頭ばかになってたから見れなかった……残念。
「リリーは抜けてるけど、俺、大好きだよ」
「ぅ……抜けてても捨てないで下さいね」
「捨てないよ。絶対に。……さないよ」
「よかった……」
ホッとしたら霧が晴れた。あれ?
少し離れたところに狐がいる。
四匹のモフモフ。本物の狐だ。
近くの農園から街に迷いこんだとか?
てかこっち見ながらめっちゃ怯えている。
一匹は小狐で、失禁している。親とはぐれたのかな?
こういう場合、近くに人間がいると親は警戒するだろう。手助けして人間の匂いがついてもいけない。
「あ、向こうに行くと農園があるんですが、その手前に綺麗に整備された丘があるんです。そこで休憩しません?」
「いいよ」
手を繋いでフィックスさんと歩く。
自然と浮き足立って、ぴょんぴょんしてしまう。
あぁー、楽しい。彼氏に寄りかかりながら手を繋いで歩く。これが青春かぁ。
「リリーは可愛いね」
「……フィックスさんはかっこいい、です」
……もう大好き。
今が人生のピーク。
フィックスさんが側に居る限り、ずっとピーク。
緩やかな丘にきて収納から出したシートを広げた。フィックスさんに座ってもらって、私はその横で腕に絡み付く。寄りかかって頬を寄せた。さらさらの皮膚が心地いい。
周りもシートをひろげてランチする親子連れか、ジュースを飲みながらイチャつく恋人達しかいない。
天気もよくて、飴玉を売る屋台の周りを子供達が走りまわってる。なんというほのぼのした空間。もうこの光景が素晴らしいね。ここにいる全員にお金を払いたくなるほどだ。
「幸せです……フィックスさん……大好き」
「俺も……早くリリぃを……孕ませたいね」
「ひゃ、っ」
囁かれた声の湿度に動けないでいると、腰にまわされた手に引き寄せられた。こんなところで膝に抱っこですか!
あ、でも肩組んでチューしてる男女やシートの上でじゃれあってる男女もいる。
「……ぅ。ちょっとぉ……もしかして周りに感化されたんですかぁ?」
「リリーは可愛いからね。あとたまに周りの目を引く格好をするでしょ? ……見せたくないね」
背後から隠すように抱き締められてフィックスさんの腕と足にすっぽり身を包む。
「ねぇねぇ、フィックスさん」
「うん?」
「……その、発情期に……ら、来年……って言ってたじゃないですかぁ?」
「リリーが俺の子を孕むのが?」
「……お、おふ……うん」
この体勢だと耳に唇を付けたまま喋られる。もうね、いちいち胸もお腹もきゅんきゅんして反応するんですよ。
「それって私……結婚してフィックスさんの奥さんになるん、ですよね?」
「うん。なって欲しい。リリーを俺にくれる?」
「っ、ひゃ、はぃ……なり、ますぅ」
「嬉しい。海と地上、どっちで暮らしたい?」
「暮らすならぁ……フィックスさんが居るところぉ」
「可愛いね……もう丸のみにしたい」
「ぁひゃ、っ、」
甘くて湿度のある声がやばぁい。フィックスさん、一緒にお風呂入ってる時の濡れた声みたいだ。ああぁ声だけで頭がばかになりそぅ。てかいつ結婚しよう。するなら来年、発情期前がいいよね? そう考えてたら舌が耳をチロチロと……。
「こ、こんなところで……誘惑しないでぇ」
「するよ。こんなに可愛いんだから……」
「も、もぉ……戻りませ、んか?」
「いいよ……戻ったら、」
「ぁ、あっ」
きゃーっ! 頭の中が期待でいっぱい! 脳内がエロい声で埋め尽くされてる。身悶えながら耳からくるぞくぞくした刺激を耐えていると目の前に影がかかった。
「失礼。君はリリー、といったか? ビィセェス殿下の番に選ばれた……そうだろう?」
……は?
見上げると目の前に濃紺の髪に翡翠の瞳の青年──てかアルレント国のヴィッセル王太子殿下がいた。乙女ゲームの攻略対象者その1……なんでやねん。
白眼を剥きながら周りを見ると誰もヴィッセル殿下に反応していない。恋人達が醸し出す甘い雰囲気のままだ。あ、遠くにいかにもな従者がいる。三人。
「人違いです」
「そんな筈はない」
「誰ですか貴方? 彼氏との逢瀬を邪魔しないでもらえますか?」
「……すまない。邪魔をする気はないんだ。むしろこういった場も雰囲気も苦手でね」
本当に困った、という顔でヴィッセル殿下が眉を下げた。それならと白眼をやめる。
「でしたら向こうの方に静かな農園がありますから、そちらに行かれてはどうですか? 一人でゆっくり過ごせますよ」
指で農園をさす。
あっちあっち、としつこく指さすもヴィッセル殿下は動かない。
「リリー、誰これ?」
「知らない人です」
「あ、いや君達の仲をどうこうする気は一切ないんだ。ただ君を番だと思ったビィセェス殿下が、この軍事演習のさなかアルレントに戻ると聞かなくてね……獣人にとったら番と認識した者の言葉は絶対なようで、君から何を言われたのかは知らないが困っているんだ」
「すみませんが私には獣人の知り合いはいないんですよ」
「……ビィセェス殿下に会っただろう?」
「見ました。会話もしました。番ではないと解決しました。番を探すならこの大陸で一番でかい国に行って探してみたら? とは言いましたがそれだけです」
「それでアルレントに戻ると聞かないのか……しかし君がその様子なら、ビィセェス殿下の番ではないのだろう」
「そうです」
やはりヴィッセル殿下、乙女ゲームの中のヴィッセル殿下と全く同じで、冷静できちんとしているな。身分を明かして圧をかけようともしてこないし。同い年のビィセェスさんも見習ってほしいものだ。
む。三人の従者が近付いてくる。
周りの人達も気付いたようで、訝しげな目をした。
「殿下、そろそろ……そちらの方をお連れしてもよろしいでしょうか?」
「ここは共和国だ。自国民でない者に無理強いは出来ない」
「無理強いは致しません。協力という形でお願いしたいのです」
「協力といっても──」
振り返ったヴィッセル殿下が冷たく私を見下ろした。お。感じが変わった。それに今の発言、自国民なら無理強いするってことよね?
王族こわー。
「──我々と関わりたくないという顔をしている。それはそれで、非常に興味深いね」
ヴィッセル殿下が私の出方を見る。
……ほう。そうきたか。
ポカンを貫くとヴィッセル殿下が眉を寄せた。
「さっきから考えていたんだが……君は、アマリリス・ヒューテックに似ているな」
「誰?」
アマリリスと言われてギクリとしなかったのは、自分でも少し驚きだった。少し前まで、確かエメラルドちゃんに身の上話をした時など、まだ彼女は微かに私の意識下にいたような気もするけど、最近では記憶や字体の癖が残っているだけ。元はといえばアマリリスとして前世を思い出したのに、今は自分の中でも完全に別人として捉えているほど。
「彼女はアルレント国の公爵令嬢──私の婚約者候補の内の一人だ。君はその令嬢に、瓜二つだ」
「そういやこの前のビィセェスさんも私を番と勘違いしたし、その知り合いの貴方も勘違いしやすい性格なの?」
「……いや、本当に似ている。ただそれだけだ。あの令嬢は幼馴染で、これまでに何度も会ったが……」
あー、そうね。
アマリリスの記憶の中には、いつもヴィッセル殿下がいる。でもヴィッセル殿下の方はアマリリスと殆ど目も合わせないし、親しげに会話した記憶もない。いつもヴィッセル殿下がアマリリスに追いかけられてる感じ。まぁ自分の事を好きでもない婚約目当ての女に追いかけまわされても気は乗らないよね。
「何度も会ってたら本人か別人か、判別できると思いますが」
「…………」
さっきからなんやねんその目。
本人だから瓜二つは当然なんだけど、そんなにじろじろ顔見てなかったじゃん。自然と白眼を剥いてしまう。
「ああ、別人だ……これ程の、高魔力故の独色、しかもその色が髪や瞳にまで滲み出る者は、我が国にはいない。……いたら私が見逃す筈がない」
「よかった。私さっき彼氏から求婚されてお嫁にいくことが決まったんですよー。なのに貴方もあのビィセェスさんみたいにいきなり連れて帰るとか訳わかんないこと言い出すのかと思って、ちょっと引いてました」
「それに関しては、ビィセェス殿下の友人として謝罪しておこう。戻ったら彼にも言っておく。……自分の番にするのは諦めろ、とな」
ん? いまフィックスさんがピリっとした。
慌てて振り返るといつも通りなフィックスさん。
「どうしたの?」
「どうもしないよ?」
腕に囲われて顔を見上げてたら、あ、そうそう、聞きたいことがあるんだったと思い出した。
「……じゃあ……い、いつ結婚……式をあげる?」
「いつでもしたいよ」
「……じ、じゃあ……来年…………する?」
「来年?」
うん。発情期は1ヶ月あるから、子作りの前に、結婚してハネムーンしよう! あとドレスとか作る時間も欲しいし……と恥ずかしながら小声で言った。
「いいよ。リリーのしたいこと、なんでもするよ」
「……わ、私……フィックスさんの正装姿を拝みたいです」
「いいよ」
「あ、あと、ドレスと一緒にタキシードは私が作りたいです。あ、フィックスさんの体のサイズは、きちんと合わせますんで!」
「うん。じゃあ俺はリリーに指輪を贈るね。どんなのがいい?」
「えー嬉しい、あっ金色かなぁ! 金色っていっても、フィックスさんの瞳の金色と同じのでお願いします!」
「いいよ。なんでも言って。全部叶えてあげる」
「くふぅ♪」
はぁー……あかん。
胸元に顔をぐりぐりして上機嫌が止まらない。
そういや男装用の礼服や騎士服があったな。装備品なのであれをフィックスさんに着てもらったら正確なサイズがわかる。てかほんと胸板凄いよね。スーツとか……黒でも白でもめっちゃ似合うと思う!
「盛り上がっているところ悪いが、君にはもう一度ビィセェス殿下と会ってもらいたい」
「これからとても忙しいので無理ですね」
背後からかけられた声に振り返らずに答えた。もう頭の中お花畑なんだもん。
「どうしても?」
「はい。だってビィセェスさん、私を見て目が血走って呼吸が荒くなって涎だらだらで怖かったんですもの。この前は一目見ただけで、歯を剥き出しにして私に近付こうとして、数人の配下に慌てて押さえ付けられてましたよ。配下が主にそのような行動を取る時って、周りから見ても私に危険が迫っていたということでしょう? そのビィセェスさんとまた会えとは、貴方はなかなか酷な人ですね。ついていったら何をされるか解ったものじゃないです」
「……そこまで言うとは」
「私の言ってること、間違ってます?」
「……恐らくビィセェス殿下は君の高魔力にあてられて誤って番と認識してしまったのだろうな。獣人は魔力や身体能力が高く、番にもそれを求める傾向があるから……しかし我が国では、過去に間違って獣人に番と認識されてしまった令嬢が、とんとん拍子で婚姻を結び、のちにその獣人は真の番と対峙したものの、本能を抑えて今もその令嬢と仲睦まじく暮らしている事例もある」
「そうなんですか? このカプルス共和国では、過去に番と間違われて獣人に囚われた女性が裁判を起こした時、獣人側が負けたんです。判決が出た時、獣人は被害者の女性を誘拐しようと襲いかかったそうですよ。女性は他国の王家分家の籍に属し、この国でも薬師という貴重な身分だった為、裁判所では常にカプルス共和国の魔導師が護衛についていたので、獣人は現行犯でその場で焼かれてしまったとか」
「……囚われの姫事件か。昔のことなのに、詳しいな」
うん。アマリリス公爵令嬢、沢山勉強していたからね。隣国や主要国のことなら、記憶として頭の中に入ってる。あぁ~ドレスどんなのにしよう。あ、ドレス風にした着物もいいよね。フィックスさん、袴に食い付いたこともあるし。
「あ、フィックスさんの好きな色を教えて下さい」
「俺の? ……この金色と青色かな」
フィックスさんに横髪を撫でられ親指がふにふにと頬を擦る。あぁ。幸せ。
「そうなの? じゃあ青いドレスと金色のアクセサリーがいいかなぁ……」
にへらと笑うと、強く抱き締められ、フィックスさんの胸に顔を埋めた。うぅ……ぴったりハマるぅ。ぐりぐりしてくんくんもしちゃう。もう絶対離れられない。脇に腕を伸ばして背中に手をまわす。あぁ、なんか肉厚でやばい。こんなとこで色々やばい。
……こんなに素敵な彼氏がいて、来年には結婚するなんて、ほんと人生のピーク。明日しぬんかな。
悶々しながら顔を上げると濡れた金色の目に絡め取られるように視線を奪われた。
「ひゃ、かっこいっ……フィックスさん、あともうひとつお願いっ……一緒にケーキ入刀してくだひゃい!」
「いいよ。俺からもお願い。外で可愛い格好はしないで」
「わかりました! 外ではジャージでいます!」
「よかった。さ、帰ろうか」
「はい!」
手を繋いで立ち上がる。
あれ? いつの間にかヴィッセル殿下もその従者もいないぞ。
「お店凄く混んでましたけど……私達だけ遊んでて大丈夫でしょうか?」
今日は甘い匂いにつられて店の外は行列もできていた。
「大丈夫。テリーがいるからね」
てかこれってデート?
こんな風に一緒におでかけなんて初めてじゃない?
あぁ。それにしてもフィックスさんがかっこいい。背も高くて外国のモデルみたいなスタイルで歩いてるだけで様になる。乙女ゲームそっちのけでRPG楽しんでた自分としては、男は見た目がどうこうとか、体の逞しさがどうこうとか、ときめきが欲しいとか、全く興味もなかったのに。まさか自分がこんなにも乙女だったなんて。
手を繋いで、もう片方の手はフィックスさんの腕を掴む。ついでに頬で二の腕もすりすり。逞しい腕だ。もう離れられない。
ちらりとフィックスさんを見上げると、強い日差しで癖のある黒髪が顔に影を落とし、その髪の隙間から覗く金色の目でじっと私を見つめていた。
「不思議だね」
「何がですか?」
「リリーは俺のどこが好き?」
「……ふ」
「笑ってないで教えて」
「ふふっ、私……フィックスさんとは、恋愛なんです!」
「……恋愛?」
「はいっ。初対面の時からフィックスさんにハマりそうになって、自然と気になっちゃって、触れられても嫌じゃなくて、それよりドキっとする程で──」
泳ぎに誘われた時は迷ったけど、そしてまさか海中であのような事を致すとは思ってもなく、勢いでベットに転移して連れてきてしまったこと。彼氏と言ったとき否定されなくて内心ひそかに喜んでたこと。宿とか家とかかりるなり、きちんと生活の基盤を整えようと思っていた所、フィックスさんに甘やかされてずるずるここまできてしまったけど、このまま同棲を続けたい旨とか、恥ずかしながら暴露した。
「……嬉しい。誰も強い者に惹かれるからね。少し、不安だった」
「あ、それはないです。春頃に実力的にやばい人と出会ったけど、惹かれるどころか逃げてきましたもん」
「どこの、誰?」
「隣国の山菜マスターです。あ、でも謎だらけのスキルと実力的に見てびびって逃げただけで、何か攻撃されたわけでもないし悪い人ではないと思います……んん?」
「そう、覚えとくよ、隣国の、聖族かぁ」
──なにかに囲まれてる。
そして霧が出てきた。
魔力を含んだ霧だ。
幻覚の魔法か。
近くに精霊術をカンストしてる魔導師がいるな。あと獣臭。ならさっき鑑定したあの狐獣人かな?
「ほんとフィックスさんて、慌てませんよね?」
この魔力を含んだ霧は、相手に自分のおおよそのステータスを教えてしまう危険性があるのだ。鑑定ほどの精密さはないが、雑魚か強者か超ド級かは晒してしまう。私は拒絶のスキルがあるから常時跳ね返してしまうけど……。
「昨日は慌てたよ」
「え。……まさか最中に?」
昨夜は致してた殆どの時間、頭ばかになってたから見れなかった……残念。
「リリーは抜けてるけど、俺、大好きだよ」
「ぅ……抜けてても捨てないで下さいね」
「捨てないよ。絶対に。……さないよ」
「よかった……」
ホッとしたら霧が晴れた。あれ?
少し離れたところに狐がいる。
四匹のモフモフ。本物の狐だ。
近くの農園から街に迷いこんだとか?
てかこっち見ながらめっちゃ怯えている。
一匹は小狐で、失禁している。親とはぐれたのかな?
こういう場合、近くに人間がいると親は警戒するだろう。手助けして人間の匂いがついてもいけない。
「あ、向こうに行くと農園があるんですが、その手前に綺麗に整備された丘があるんです。そこで休憩しません?」
「いいよ」
手を繋いでフィックスさんと歩く。
自然と浮き足立って、ぴょんぴょんしてしまう。
あぁー、楽しい。彼氏に寄りかかりながら手を繋いで歩く。これが青春かぁ。
「リリーは可愛いね」
「……フィックスさんはかっこいい、です」
……もう大好き。
今が人生のピーク。
フィックスさんが側に居る限り、ずっとピーク。
緩やかな丘にきて収納から出したシートを広げた。フィックスさんに座ってもらって、私はその横で腕に絡み付く。寄りかかって頬を寄せた。さらさらの皮膚が心地いい。
周りもシートをひろげてランチする親子連れか、ジュースを飲みながらイチャつく恋人達しかいない。
天気もよくて、飴玉を売る屋台の周りを子供達が走りまわってる。なんというほのぼのした空間。もうこの光景が素晴らしいね。ここにいる全員にお金を払いたくなるほどだ。
「幸せです……フィックスさん……大好き」
「俺も……早くリリぃを……孕ませたいね」
「ひゃ、っ」
囁かれた声の湿度に動けないでいると、腰にまわされた手に引き寄せられた。こんなところで膝に抱っこですか!
あ、でも肩組んでチューしてる男女やシートの上でじゃれあってる男女もいる。
「……ぅ。ちょっとぉ……もしかして周りに感化されたんですかぁ?」
「リリーは可愛いからね。あとたまに周りの目を引く格好をするでしょ? ……見せたくないね」
背後から隠すように抱き締められてフィックスさんの腕と足にすっぽり身を包む。
「ねぇねぇ、フィックスさん」
「うん?」
「……その、発情期に……ら、来年……って言ってたじゃないですかぁ?」
「リリーが俺の子を孕むのが?」
「……お、おふ……うん」
この体勢だと耳に唇を付けたまま喋られる。もうね、いちいち胸もお腹もきゅんきゅんして反応するんですよ。
「それって私……結婚してフィックスさんの奥さんになるん、ですよね?」
「うん。なって欲しい。リリーを俺にくれる?」
「っ、ひゃ、はぃ……なり、ますぅ」
「嬉しい。海と地上、どっちで暮らしたい?」
「暮らすならぁ……フィックスさんが居るところぉ」
「可愛いね……もう丸のみにしたい」
「ぁひゃ、っ、」
甘くて湿度のある声がやばぁい。フィックスさん、一緒にお風呂入ってる時の濡れた声みたいだ。ああぁ声だけで頭がばかになりそぅ。てかいつ結婚しよう。するなら来年、発情期前がいいよね? そう考えてたら舌が耳をチロチロと……。
「こ、こんなところで……誘惑しないでぇ」
「するよ。こんなに可愛いんだから……」
「も、もぉ……戻りませ、んか?」
「いいよ……戻ったら、」
「ぁ、あっ」
きゃーっ! 頭の中が期待でいっぱい! 脳内がエロい声で埋め尽くされてる。身悶えながら耳からくるぞくぞくした刺激を耐えていると目の前に影がかかった。
「失礼。君はリリー、といったか? ビィセェス殿下の番に選ばれた……そうだろう?」
……は?
見上げると目の前に濃紺の髪に翡翠の瞳の青年──てかアルレント国のヴィッセル王太子殿下がいた。乙女ゲームの攻略対象者その1……なんでやねん。
白眼を剥きながら周りを見ると誰もヴィッセル殿下に反応していない。恋人達が醸し出す甘い雰囲気のままだ。あ、遠くにいかにもな従者がいる。三人。
「人違いです」
「そんな筈はない」
「誰ですか貴方? 彼氏との逢瀬を邪魔しないでもらえますか?」
「……すまない。邪魔をする気はないんだ。むしろこういった場も雰囲気も苦手でね」
本当に困った、という顔でヴィッセル殿下が眉を下げた。それならと白眼をやめる。
「でしたら向こうの方に静かな農園がありますから、そちらに行かれてはどうですか? 一人でゆっくり過ごせますよ」
指で農園をさす。
あっちあっち、としつこく指さすもヴィッセル殿下は動かない。
「リリー、誰これ?」
「知らない人です」
「あ、いや君達の仲をどうこうする気は一切ないんだ。ただ君を番だと思ったビィセェス殿下が、この軍事演習のさなかアルレントに戻ると聞かなくてね……獣人にとったら番と認識した者の言葉は絶対なようで、君から何を言われたのかは知らないが困っているんだ」
「すみませんが私には獣人の知り合いはいないんですよ」
「……ビィセェス殿下に会っただろう?」
「見ました。会話もしました。番ではないと解決しました。番を探すならこの大陸で一番でかい国に行って探してみたら? とは言いましたがそれだけです」
「それでアルレントに戻ると聞かないのか……しかし君がその様子なら、ビィセェス殿下の番ではないのだろう」
「そうです」
やはりヴィッセル殿下、乙女ゲームの中のヴィッセル殿下と全く同じで、冷静できちんとしているな。身分を明かして圧をかけようともしてこないし。同い年のビィセェスさんも見習ってほしいものだ。
む。三人の従者が近付いてくる。
周りの人達も気付いたようで、訝しげな目をした。
「殿下、そろそろ……そちらの方をお連れしてもよろしいでしょうか?」
「ここは共和国だ。自国民でない者に無理強いは出来ない」
「無理強いは致しません。協力という形でお願いしたいのです」
「協力といっても──」
振り返ったヴィッセル殿下が冷たく私を見下ろした。お。感じが変わった。それに今の発言、自国民なら無理強いするってことよね?
王族こわー。
「──我々と関わりたくないという顔をしている。それはそれで、非常に興味深いね」
ヴィッセル殿下が私の出方を見る。
……ほう。そうきたか。
ポカンを貫くとヴィッセル殿下が眉を寄せた。
「さっきから考えていたんだが……君は、アマリリス・ヒューテックに似ているな」
「誰?」
アマリリスと言われてギクリとしなかったのは、自分でも少し驚きだった。少し前まで、確かエメラルドちゃんに身の上話をした時など、まだ彼女は微かに私の意識下にいたような気もするけど、最近では記憶や字体の癖が残っているだけ。元はといえばアマリリスとして前世を思い出したのに、今は自分の中でも完全に別人として捉えているほど。
「彼女はアルレント国の公爵令嬢──私の婚約者候補の内の一人だ。君はその令嬢に、瓜二つだ」
「そういやこの前のビィセェスさんも私を番と勘違いしたし、その知り合いの貴方も勘違いしやすい性格なの?」
「……いや、本当に似ている。ただそれだけだ。あの令嬢は幼馴染で、これまでに何度も会ったが……」
あー、そうね。
アマリリスの記憶の中には、いつもヴィッセル殿下がいる。でもヴィッセル殿下の方はアマリリスと殆ど目も合わせないし、親しげに会話した記憶もない。いつもヴィッセル殿下がアマリリスに追いかけられてる感じ。まぁ自分の事を好きでもない婚約目当ての女に追いかけまわされても気は乗らないよね。
「何度も会ってたら本人か別人か、判別できると思いますが」
「…………」
さっきからなんやねんその目。
本人だから瓜二つは当然なんだけど、そんなにじろじろ顔見てなかったじゃん。自然と白眼を剥いてしまう。
「ああ、別人だ……これ程の、高魔力故の独色、しかもその色が髪や瞳にまで滲み出る者は、我が国にはいない。……いたら私が見逃す筈がない」
「よかった。私さっき彼氏から求婚されてお嫁にいくことが決まったんですよー。なのに貴方もあのビィセェスさんみたいにいきなり連れて帰るとか訳わかんないこと言い出すのかと思って、ちょっと引いてました」
「それに関しては、ビィセェス殿下の友人として謝罪しておこう。戻ったら彼にも言っておく。……自分の番にするのは諦めろ、とな」
ん? いまフィックスさんがピリっとした。
慌てて振り返るといつも通りなフィックスさん。
「どうしたの?」
「どうもしないよ?」
腕に囲われて顔を見上げてたら、あ、そうそう、聞きたいことがあるんだったと思い出した。
「……じゃあ……い、いつ結婚……式をあげる?」
「いつでもしたいよ」
「……じ、じゃあ……来年…………する?」
「来年?」
うん。発情期は1ヶ月あるから、子作りの前に、結婚してハネムーンしよう! あとドレスとか作る時間も欲しいし……と恥ずかしながら小声で言った。
「いいよ。リリーのしたいこと、なんでもするよ」
「……わ、私……フィックスさんの正装姿を拝みたいです」
「いいよ」
「あ、あと、ドレスと一緒にタキシードは私が作りたいです。あ、フィックスさんの体のサイズは、きちんと合わせますんで!」
「うん。じゃあ俺はリリーに指輪を贈るね。どんなのがいい?」
「えー嬉しい、あっ金色かなぁ! 金色っていっても、フィックスさんの瞳の金色と同じのでお願いします!」
「いいよ。なんでも言って。全部叶えてあげる」
「くふぅ♪」
はぁー……あかん。
胸元に顔をぐりぐりして上機嫌が止まらない。
そういや男装用の礼服や騎士服があったな。装備品なのであれをフィックスさんに着てもらったら正確なサイズがわかる。てかほんと胸板凄いよね。スーツとか……黒でも白でもめっちゃ似合うと思う!
「盛り上がっているところ悪いが、君にはもう一度ビィセェス殿下と会ってもらいたい」
「これからとても忙しいので無理ですね」
背後からかけられた声に振り返らずに答えた。もう頭の中お花畑なんだもん。
「どうしても?」
「はい。だってビィセェスさん、私を見て目が血走って呼吸が荒くなって涎だらだらで怖かったんですもの。この前は一目見ただけで、歯を剥き出しにして私に近付こうとして、数人の配下に慌てて押さえ付けられてましたよ。配下が主にそのような行動を取る時って、周りから見ても私に危険が迫っていたということでしょう? そのビィセェスさんとまた会えとは、貴方はなかなか酷な人ですね。ついていったら何をされるか解ったものじゃないです」
「……そこまで言うとは」
「私の言ってること、間違ってます?」
「……恐らくビィセェス殿下は君の高魔力にあてられて誤って番と認識してしまったのだろうな。獣人は魔力や身体能力が高く、番にもそれを求める傾向があるから……しかし我が国では、過去に間違って獣人に番と認識されてしまった令嬢が、とんとん拍子で婚姻を結び、のちにその獣人は真の番と対峙したものの、本能を抑えて今もその令嬢と仲睦まじく暮らしている事例もある」
「そうなんですか? このカプルス共和国では、過去に番と間違われて獣人に囚われた女性が裁判を起こした時、獣人側が負けたんです。判決が出た時、獣人は被害者の女性を誘拐しようと襲いかかったそうですよ。女性は他国の王家分家の籍に属し、この国でも薬師という貴重な身分だった為、裁判所では常にカプルス共和国の魔導師が護衛についていたので、獣人は現行犯でその場で焼かれてしまったとか」
「……囚われの姫事件か。昔のことなのに、詳しいな」
うん。アマリリス公爵令嬢、沢山勉強していたからね。隣国や主要国のことなら、記憶として頭の中に入ってる。あぁ~ドレスどんなのにしよう。あ、ドレス風にした着物もいいよね。フィックスさん、袴に食い付いたこともあるし。
「あ、フィックスさんの好きな色を教えて下さい」
「俺の? ……この金色と青色かな」
フィックスさんに横髪を撫でられ親指がふにふにと頬を擦る。あぁ。幸せ。
「そうなの? じゃあ青いドレスと金色のアクセサリーがいいかなぁ……」
にへらと笑うと、強く抱き締められ、フィックスさんの胸に顔を埋めた。うぅ……ぴったりハマるぅ。ぐりぐりしてくんくんもしちゃう。もう絶対離れられない。脇に腕を伸ばして背中に手をまわす。あぁ、なんか肉厚でやばい。こんなとこで色々やばい。
……こんなに素敵な彼氏がいて、来年には結婚するなんて、ほんと人生のピーク。明日しぬんかな。
悶々しながら顔を上げると濡れた金色の目に絡め取られるように視線を奪われた。
「ひゃ、かっこいっ……フィックスさん、あともうひとつお願いっ……一緒にケーキ入刀してくだひゃい!」
「いいよ。俺からもお願い。外で可愛い格好はしないで」
「わかりました! 外ではジャージでいます!」
「よかった。さ、帰ろうか」
「はい!」
手を繋いで立ち上がる。
あれ? いつの間にかヴィッセル殿下もその従者もいないぞ。
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弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
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