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3部 人魚と選ばれし番編
9 度重なる訪問
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お店に戻るまでフィックスさんと市場を歩きながら色々買い物して味見した。やばい楽しい美味しい。欲しかったモモリンも沢山あった。
「黒い桃なんてあるんですねっ……わぁ、中身は真っ白、って凄い甘い香りですね!」
「これ店のタレで使ってる桃だよ。試食してみる?」
「へぇー、あの美味しいタレの」
「どーぞどーそっ、あと双子さくらんぼに白瓜メロンもあるよ、今日は特売だよ!」
ケーキ屋さんの前を通るとメロンスイーツがあった。 丸く切り抜いた果肉でピラミッドみたいなタワーになってる。
なんか前世で見たクロカンブッシュみたいだ。
プチシューを積み上げた、確かあれはフランスの結婚式で出されるものだったかな?
「そんな可愛い顔して……あのケーキが食べたいの?」
「……いえ、あれだったらどこから入刀しようか角度を探ってます」
「ふふっ、可愛い」
てかさっきからお金も全部払ってもらった上に荷物も全部持ってもらってるんですけどぉ。なんでこんなにときめくの!
「フ、フィックスさんて私を女の子扱いしますよねぇ?」
「リリーは女の子だよ」
「そうですけどぉぉ」
きゅんきゅん。
お店に帰ってきた。
新婚気分で買い物してめっちゃ楽しかった。
フィックスさんに続いてお店に入っていくと叫ばれた。
「今までどこをほっつき歩いていた!」
おお、五男坊じゃないか。
まだ生きていたのか。
ん? 隣にアリエルちゃんもいる。
「リリーおねいさん、おかえりなさーい。わっ、フィックスさん凄い荷物……あ、二人でお買い物に行ってたんだー」
「ただいまー。うん……ちょっと夫とね、デートした帰りに買い物にね、……うふふ」
頬に手を添えてノロケてみたりなんかしちゃって。
そしたらフィックスさんが従業員さんに荷物を渡しながら振り向いて髪にちゅっとキスしてくれた。今のなんか新婚ぽかったぞ!
「座ってて。おやつ作るから」
「わーいっ、ありがとうございます!」
厨房に向かうフィックスさんについてってカウンターに座ると叫ばれた。
「頼むから! 君がボクに対してなんの関心も無いのはわかってる、その上で頼みたい! お願いだからボクの話を聞いてくれ!」
切羽詰まって今にも泣き出しそうな五男坊の声にチッと振り返る。
「レインさん、貴方はそのままでよかったのに。なんの罪悪感もなく無視できる人のままでいて下さいよー」
「そう言わないでくれ! 君に言われたことが、ようやく理解できたんだ! ボクは君にとんでもないことをした! ボクがしたことは付きまといだった! 本当にすまなかった!」
ん? 五男坊の横でアリエルちゃんがニコニコしている。おまけに五男坊の腕に手を絡ませてるぞ。
「え。二人とも付き合ってるの?」
「付き合ってない!」
「アリエルの四番目……じゃない、今は彼一筋なのっ」
「へぇ……え。へぇ~!」
「違う、この子の彼氏じゃない! ボクは騙されたんだ! この子が別れた男に付きまとわれていて、たまたま別れ話で拗れてる場面に出くわしたんだ! 男はゴツくて暴力をふるいそうな見た目だったから咄嗟に庇ったんだ! それだけだ!」
「うんうん、それが二人の付き合うきっかけになったんですね」
「ッ違う! ゴロツキみたいな男だったから、力では敵わないから、こっちは身分を使ってその男からこの子を離したんだ! そしたら付きまとわれるようになって……!」
「レインさんの事だから助けたあとアリエルちゃんを怒った、もしくは説教とかしたでしょ?」
「……し、した!」
「それが好意として受け止められて付き合うことになったんですね」
「っ、付き合ってない! 変態じゃあるまいし、こんな小さな子に手を出すわけがない! 助けてからずっと付きまとわれているんだっ!」
五男坊の渾身の叫びに一瞬アリエルちゃんが泣きそうな顔になって、不器用に笑った。
うわぁ。もう、面倒臭いなぁ。
「レインさん。貴方がアリエルちゃんを助けたのは、その時アリエルちゃんが演技ではなく本当に困っていたのが目に見えて解ったから、咄嗟に助けなくてはと体が動いたのでしょう? それがどんな正義感であろうとも、人助けをする時は最後まで面倒みましょうね……拾った子犬が煩わしいからといって途中で飽きて捨てるような偽善者ではないのなら、ね?」
「……ああ……その通りだ……君は、出会った時から冷静で説得力のある人だった……だから、好意を抱いたんだと思う……それが付きまといになってしまったのは、ボクの視野が狭かったせいだ。君は……悲しい境遇でも、逆境を乗り越えれる人だ。なのに君を護らなくてはと、勝手に考えてっ、暴走した……すまなかった……!」
はぁ……っと項垂れてアリエルちゃんを見ると……わーお。チラチラと五男坊を見上げてはモジモジして、いじらしく頬を染めております。女の子にそんな顔させれる五男坊になったんだね、と生温く見ていたら、五男坊の両手に囚われの姫の手錠がかかっていることに今さら気付いた……マジか。
「……アリエルちゃん」
「イヤ! お願いっ、リリーおねいさん、応援して!」
ちょっと耳をかしてと手で招くも、アリエルちゃんは絶対に離さないとばかりに五男坊の腕を掴んでいる。そんな今にも泣き出しそうな顔ですがられてもねぇ……。
「……はぁ。わかったから、アリエルちゃん、ちょっとこっちにおいで。レインさんも、勝手に帰らないで下さいね」
「……あ、ああ」
不安げなアリエルちゃんを呼び寄せ、小声で話す。
「彼に手錠を付けた時、なんて言って罪状を示したの?」
「さ、誘っても子供に興味は無いって怒られたから、本当かどうか裸で飛び付いて欲情するか試したの。ちょっと勃ってたから、まだアリエルにも可能性はあると思うの」
「はぁ……アリエルちゃん、お母さんは?」
「ママ? アリエルのママは港が閉鎖されてから戻ってきてないよ。たぶん離島のパパのとこにいると思うけど」
「…………よし、それでいこう。ちょっと待ってて」
「え?」
アリエルちゃんはそのままに、今度は五男坊の席まで歩いていく。
仕方ないよね。
私だって拾った子犬が煩わしくとも、放ってはおけないんだから。
「レインさん」
「っ、」
そう警戒してビクつくなよ。
お前の性癖は熟知してんだ。
悪いようにはしないからさぁ。
「レインさん、アリエルちゃんが色々すみませんでした」
「……えっ」
「……実はあの子、放置子なんです」
「放置、子?」
「はい。もうずっと親に育児放棄されていて……でもアリエルちゃんはそんな逆境にもめげずに、幼いながらも海中ハンターとして頑張って生計を立てているんですけどね。でもやっぱり寂しいんですよ……母親もたまにしかアリエルちゃんに会いにこないし……父親とも離れて暮らしてるから」
「そ、……なのか」
「ええ。その、初めて自分を叱ってくれたレインさんに対して、胸に暖かいものを感じたようで、レインさんの側に居ると……生まれて初めて心が落ち着いたと言っていました」
「…………そ、そんなこと」
「ええ、だからって……いくら寂しくても、暴力沙汰になるような彼氏を作ったり、レインさんに付きまとっていい理由にはなりませんよね」
「……っ、」
「アリエルちゃん、自分のこと、可哀想だとかふびんな目で見られるのをとても嫌うんですよ。自分だって誰かに愛されたい、でもその為には自分から誰かを愛するんだって……愛してくれない親への反発ですかね。だからレインさん、アリエルちゃんのことが可哀想だと思ったなら、そう言ってあげて下さい。付きまとわれることはなくなるでしょう……アリエルちゃんに対して、本当に無関心しかないなら……突き放してあげるのも優しさです」
「…………」
五男坊の両手首から手錠を外す。チッ。解除に魔力を5万も持ってかれたぜ。そしてポケットに入れて回収。
「ああ、そうそう、突き放すといってもアリエルちゃんは──」
彼女はウニが好きなので、餓死しないようたまにウニ料理とか差し入れしてやってくれませんかね、と言う前に五男坊、既にアリエルちゃんに寄り添っておりました。
「ア、アリエル……ボ、ボクは父上から港を任されていて、今は港が閉鎖されているから、毎日は無理だけど自由な時間はある。だから、付き合うとかじゃなく、……勉強とか、解らないことがあったら、いつでも頼っていいから」
「ほんと!? アリエルが側に居ても怒らない!?」
「あ、ああ。これでもたまに教会で子供向けの読書会を開いたり、ピアノを弾いたりしているんだ。よかったらアリエルも参加して、」
「うん! 行く! 行きたい!」
ちょろ過ぎんだろ、五男坊。
アリエルちゃんは顔を真っ赤にして涙ぐんでて、おいおいここで真珠は流すなよ、と色んな意味でこっちも涙が出てきた。おまけに脱力して肩が凝ってきましたよ。
欠伸をしながらカウンターに戻る。
「リリー、あーん」
「……へ、あ」
厨房から出てきたフィックスさんがスプーンで焼きりんごを口に入れてくれた。
「うんみゃあああ♪」
レモン汁とラム酒も入っとる。
それが甘々なモモリンと凄く合う。
ひと噛みするとすぐ溶けてなくなった。
「ひゃ、……ぉぃちっ」
「はい、あーん」
カウンターに手をついて口をパクパク。
皮まで美味しい焼きモモリンに舌がうねる。
「んふっ、ンフっ♪」
「…………可愛い……やっぱり外にいても俺の前では可愛い格好はして欲しい」
「はぁい♪」
私は母国で放浪してからここまで、生きる為に考え、とくにスキルなんかは使いまくってきたけど、こうやってフィックスさんに甘やかされている時が一番頭ばかになって無防備になれて幸せなのだ。
今日はもうなーんも考えたくないなぁ。
来年結婚する、その準備しか頭にない。
「漁師リリー! 君には現在閉鎖されている港で無許可で漁を行った疑いがかけられている! よってこの場で連行する!」
突然かけられた声に振り向いてギョッとした。
びしょ濡れのヴィッセル殿下と、同じくびしょ濡れの従者が三人いた。
前髪からぼたぼたと水……いや、この磯の匂いは海水か。遊泳でもしてたんか?
「……あのぉ、濡れ鼠みたいになってますけど?」
「っ、鼠とは……不敬罪だ! これ以上罪を重ねるなら、この場で取り押さえてもいいんだぞ!」
「いやここ不敬罪が通用しない共和国ですからね? 君主国の方達は、入国前にカプルス共和国の法律の下、足を踏み入れている筈ですが……先に大使館に相談されたらどうですか?」
「そんな事は解っている! それに君がとてもずる賢いことも! 魔力の波動もなくどうやって我々を移動させた!? 禁術か!?」
「はぁ?」
ちょ、てかそのびしょ濡れの状態で徐々に近付いてくるのはやめて欲しい。ほらもう、従者の人達も焦ってるじゃん。
「で、殿下……いけません」
「ど、どうかご冷静に。ここで手を出したら、立場が悪くなるのは我々です」
「そんな事は解っている! こんな目撃者も多い場所でこの国の民に怪我でもさせれば捕まるのは私の方だ! それが君の狙いだということも解っている!」
ヴィッセル殿下、私をギリッと睨み付けてきた際【罪の眼差し】を発動した。言われた内容に僅かでも身に覚えがあると自らに非があったのではと罪悪感を与えるスキルだ。断罪シーンでアマリリスから証言をとる時に使ってたやつやね。ってそれをなに罪も無い私に使ってくれてんねん。しばくぞ。
「いや目撃者がいなくても怪我させるのはダメですからね? そんな犯罪者寄りの思考はやめましょうね?」
「っ、な……なに……!?」
「あとこの界隈では水着のままとか、体が濡れたまま飲食店に入ると罰金刑がかされるんですよ。どの店も一回目はやんわり注意するだけに留めているそうなので、今後は気を付けて下さいね」
「っっ、君は……どこまで私をっ……!」
うわぁ……耳まで真っ赤になって激昂した。
子供かよ。ちょっと注意しただけじゃん。
「リリー」
あ、フィックスさんがめちゃ可愛く剥いた林檎やメロンを持ってきてくれた!
「かぁわいぃ~♪わぁ、もしかしてこれ海王蛇?」
「その隣にいるのがリリーね」
「凄ぉい! めちゃ可愛く剥いてくれてるじゃないですかぁぁ」
海王蛇メロンを手に乗せてにっこり。甘ぁい香りにすりすりしちゃう。もう離れられない。
「そのメロンと林檎すっごーいっ……てかリリーおねいさんて、知り合い多くない?」
「多くないよ。そこの人達は他人だし」
「……まさか、また君に付きまといが現れたのか?」
「え? リリーおねいさん、さっきからこの人達に付きまとわれてたの?」
五男坊とアリエルちゃんがヴィッセル殿下に目を向けた。
そして二人して『嫌がってる人に付きまとうなんて最低だと思います』『ああ本当に最低だ』とか、もうほんと凄いよ君達。ようやく他者の気持ちがわかるようになったんだね。リリーおねいさんもう色んな意味でため息が出てきたよ。
「……あれ? リリーおねいさんの付きまといの人達、いま消えたよ」
「ほんとだ……すぐ出ていったんだろう。あ、そうだアリエル、次の読書会の日程だが、」
「あ、うん! アリエル声に出して読むのも得意だから、色々やってみたいな!」
それにしてもフィックスさん、凄い包丁の技術だ。
あまりにも精巧なので林檎とメロンでちゅっちゅっさせていたらフィックスさんが噴き出した。わぁ、その笑顔また見れたぁ♪
「リリぃは可愛いね。絶対に誰にも渡さないよ」
「はぅ……」
いつになく真剣で甘い声色にもう膝がダメ……海王蛇メロンにちゅっとキスして照れ笑いしか返せませんでした。
翌日の昼。
お店に警察が事情聴取にきた。
ヴィッセル殿下達のことは店にいたお客さんや外にいた人達にまでなんとなく伝わっていたらしい。警察がいうには彼等が農園近くの丘にいた時から一般人から不審者とか怖いとか通報に近い報告がきていたらしく……まぁ、いかにもな厳つい従者三人も連れてたしね。
「うんうん、昨日はこの店にきてたのね? それで、お店の人や貴女はなにもされてない?」
「とくには……なんか協力して欲しいとか言われたんですが、私、断っちゃったんですよ」
「まぁ、協力っていっても任意だからね。気にするこたぁないよ」
カプルス共和国の黒と金色の国旗に似た制服を纏った男女のお巡りさん、その制服なんかかっこいい。背中には……眼のような? 金色の縦筋刺繍が入った斬新なデザインだ。
あっという間に事情聴取が終わり、ちょうど昼時だったので串焼き買ってウキウキで帰っていかれました。
私もお腹が減ってきた。
「今日は紅鯨があるよ」
「わぁ! それのお刺身、タレいっぱいつけて食べたいですぅ!」
「可愛い……体は辛くない?」
「ぁ……はぁい。大丈夫……」
そこでお店にヴィッセル殿下とビィセェス殿下がきた。
「失礼する」
「こっ……この度は、食事にきた」
へぇ。
今日はどちらも軽装で従者を連れていない。
てか以外な組み合わせ。
乙女ゲームの中では、この二人が並んで歩くなんて有り得ないくらい仲悪いんだけどね。学園では互いを牽制しながらヒロインのマーガレット・パステルを取り合って、でもヒロインはビィセェス殿下の真の番だから本能が惹かれているのを感じつつも、連日のごとく『番だから連れて帰る』と言われ続けて愛ってなんだろうって疲弊するんだよね。そこにいつも庇うように現れるヴィッセル殿下が『我が国の高魔力者を隣国に渡してなるものか』『番にするのは諦めろ』だの、ビィセェス殿下とやり合うんだよね。ヒロインは本能が暴走してるビィセェス殿下を諌めつつ、自分を駒扱いしてくるヴィッセル殿下に身分も関係なく注意して、その結果激怒させて、ついには慕われてしまうんだ。それがアマリリスにヴィッセル殿下を誘惑していると誤解されて、アマリリスの即死級の攻撃を受け流す度に魔力が強くなっていっちゃって、二人の殿下から執着は増すばかりだし、それでヒロインは余計にしんどくなっちゃって、その弱ったヒロインを支えるのが他の攻略対象者達だ。宰相の息子と、騎士団長の息子と、担任の教師と、あとは忘れた。てか攻略よりRPGてんこ盛りな要素にハマった。おまけにこの世界のどこかにいる超ド級の隠しキャラと出会って攻略に成功すればこの世界と同じくらい広い裏面でRPG出来る鍵が貰えるそうで、それも公式が発表した情報だったし、前世ではそっちに食い付いたんだよね。てか前世から今もRPGやり過ぎだろ。でもまだ足りない。まだまだ入るぞ。
「そう、私の腹は無限なのです!」
「可愛いねリリー。お刺身は沢山切っといたよ」
「わぁ、ありがとうございます!」
「こちらが昼食になります」
「ありがとうございます! えっへへ、またお部屋で頂いてきますねっ」
トレーを受け取り階段をかけ上がる。朝ご飯も作業をするため部屋で摂った。
「お、おい……君」
「あ、待ってく」
あぁ……昨夜はフィックスさんに着せた礼服で型をとったのだ。ほんとマジでヤバかった。礼服を試着中のフィックスさんを、その礼服を破いて襲いかかりそうになるのを必至に耐えて、型をとり終えたらすぐ襲われたんだよね。あれはやばいわ。礼服で襲いかかってくるフィックスさん、めっちゃかっこよかったもん。色んな意味で何度も気絶したわ。
「黒い桃なんてあるんですねっ……わぁ、中身は真っ白、って凄い甘い香りですね!」
「これ店のタレで使ってる桃だよ。試食してみる?」
「へぇー、あの美味しいタレの」
「どーぞどーそっ、あと双子さくらんぼに白瓜メロンもあるよ、今日は特売だよ!」
ケーキ屋さんの前を通るとメロンスイーツがあった。 丸く切り抜いた果肉でピラミッドみたいなタワーになってる。
なんか前世で見たクロカンブッシュみたいだ。
プチシューを積み上げた、確かあれはフランスの結婚式で出されるものだったかな?
「そんな可愛い顔して……あのケーキが食べたいの?」
「……いえ、あれだったらどこから入刀しようか角度を探ってます」
「ふふっ、可愛い」
てかさっきからお金も全部払ってもらった上に荷物も全部持ってもらってるんですけどぉ。なんでこんなにときめくの!
「フ、フィックスさんて私を女の子扱いしますよねぇ?」
「リリーは女の子だよ」
「そうですけどぉぉ」
きゅんきゅん。
お店に帰ってきた。
新婚気分で買い物してめっちゃ楽しかった。
フィックスさんに続いてお店に入っていくと叫ばれた。
「今までどこをほっつき歩いていた!」
おお、五男坊じゃないか。
まだ生きていたのか。
ん? 隣にアリエルちゃんもいる。
「リリーおねいさん、おかえりなさーい。わっ、フィックスさん凄い荷物……あ、二人でお買い物に行ってたんだー」
「ただいまー。うん……ちょっと夫とね、デートした帰りに買い物にね、……うふふ」
頬に手を添えてノロケてみたりなんかしちゃって。
そしたらフィックスさんが従業員さんに荷物を渡しながら振り向いて髪にちゅっとキスしてくれた。今のなんか新婚ぽかったぞ!
「座ってて。おやつ作るから」
「わーいっ、ありがとうございます!」
厨房に向かうフィックスさんについてってカウンターに座ると叫ばれた。
「頼むから! 君がボクに対してなんの関心も無いのはわかってる、その上で頼みたい! お願いだからボクの話を聞いてくれ!」
切羽詰まって今にも泣き出しそうな五男坊の声にチッと振り返る。
「レインさん、貴方はそのままでよかったのに。なんの罪悪感もなく無視できる人のままでいて下さいよー」
「そう言わないでくれ! 君に言われたことが、ようやく理解できたんだ! ボクは君にとんでもないことをした! ボクがしたことは付きまといだった! 本当にすまなかった!」
ん? 五男坊の横でアリエルちゃんがニコニコしている。おまけに五男坊の腕に手を絡ませてるぞ。
「え。二人とも付き合ってるの?」
「付き合ってない!」
「アリエルの四番目……じゃない、今は彼一筋なのっ」
「へぇ……え。へぇ~!」
「違う、この子の彼氏じゃない! ボクは騙されたんだ! この子が別れた男に付きまとわれていて、たまたま別れ話で拗れてる場面に出くわしたんだ! 男はゴツくて暴力をふるいそうな見た目だったから咄嗟に庇ったんだ! それだけだ!」
「うんうん、それが二人の付き合うきっかけになったんですね」
「ッ違う! ゴロツキみたいな男だったから、力では敵わないから、こっちは身分を使ってその男からこの子を離したんだ! そしたら付きまとわれるようになって……!」
「レインさんの事だから助けたあとアリエルちゃんを怒った、もしくは説教とかしたでしょ?」
「……し、した!」
「それが好意として受け止められて付き合うことになったんですね」
「っ、付き合ってない! 変態じゃあるまいし、こんな小さな子に手を出すわけがない! 助けてからずっと付きまとわれているんだっ!」
五男坊の渾身の叫びに一瞬アリエルちゃんが泣きそうな顔になって、不器用に笑った。
うわぁ。もう、面倒臭いなぁ。
「レインさん。貴方がアリエルちゃんを助けたのは、その時アリエルちゃんが演技ではなく本当に困っていたのが目に見えて解ったから、咄嗟に助けなくてはと体が動いたのでしょう? それがどんな正義感であろうとも、人助けをする時は最後まで面倒みましょうね……拾った子犬が煩わしいからといって途中で飽きて捨てるような偽善者ではないのなら、ね?」
「……ああ……その通りだ……君は、出会った時から冷静で説得力のある人だった……だから、好意を抱いたんだと思う……それが付きまといになってしまったのは、ボクの視野が狭かったせいだ。君は……悲しい境遇でも、逆境を乗り越えれる人だ。なのに君を護らなくてはと、勝手に考えてっ、暴走した……すまなかった……!」
はぁ……っと項垂れてアリエルちゃんを見ると……わーお。チラチラと五男坊を見上げてはモジモジして、いじらしく頬を染めております。女の子にそんな顔させれる五男坊になったんだね、と生温く見ていたら、五男坊の両手に囚われの姫の手錠がかかっていることに今さら気付いた……マジか。
「……アリエルちゃん」
「イヤ! お願いっ、リリーおねいさん、応援して!」
ちょっと耳をかしてと手で招くも、アリエルちゃんは絶対に離さないとばかりに五男坊の腕を掴んでいる。そんな今にも泣き出しそうな顔ですがられてもねぇ……。
「……はぁ。わかったから、アリエルちゃん、ちょっとこっちにおいで。レインさんも、勝手に帰らないで下さいね」
「……あ、ああ」
不安げなアリエルちゃんを呼び寄せ、小声で話す。
「彼に手錠を付けた時、なんて言って罪状を示したの?」
「さ、誘っても子供に興味は無いって怒られたから、本当かどうか裸で飛び付いて欲情するか試したの。ちょっと勃ってたから、まだアリエルにも可能性はあると思うの」
「はぁ……アリエルちゃん、お母さんは?」
「ママ? アリエルのママは港が閉鎖されてから戻ってきてないよ。たぶん離島のパパのとこにいると思うけど」
「…………よし、それでいこう。ちょっと待ってて」
「え?」
アリエルちゃんはそのままに、今度は五男坊の席まで歩いていく。
仕方ないよね。
私だって拾った子犬が煩わしくとも、放ってはおけないんだから。
「レインさん」
「っ、」
そう警戒してビクつくなよ。
お前の性癖は熟知してんだ。
悪いようにはしないからさぁ。
「レインさん、アリエルちゃんが色々すみませんでした」
「……えっ」
「……実はあの子、放置子なんです」
「放置、子?」
「はい。もうずっと親に育児放棄されていて……でもアリエルちゃんはそんな逆境にもめげずに、幼いながらも海中ハンターとして頑張って生計を立てているんですけどね。でもやっぱり寂しいんですよ……母親もたまにしかアリエルちゃんに会いにこないし……父親とも離れて暮らしてるから」
「そ、……なのか」
「ええ。その、初めて自分を叱ってくれたレインさんに対して、胸に暖かいものを感じたようで、レインさんの側に居ると……生まれて初めて心が落ち着いたと言っていました」
「…………そ、そんなこと」
「ええ、だからって……いくら寂しくても、暴力沙汰になるような彼氏を作ったり、レインさんに付きまとっていい理由にはなりませんよね」
「……っ、」
「アリエルちゃん、自分のこと、可哀想だとかふびんな目で見られるのをとても嫌うんですよ。自分だって誰かに愛されたい、でもその為には自分から誰かを愛するんだって……愛してくれない親への反発ですかね。だからレインさん、アリエルちゃんのことが可哀想だと思ったなら、そう言ってあげて下さい。付きまとわれることはなくなるでしょう……アリエルちゃんに対して、本当に無関心しかないなら……突き放してあげるのも優しさです」
「…………」
五男坊の両手首から手錠を外す。チッ。解除に魔力を5万も持ってかれたぜ。そしてポケットに入れて回収。
「ああ、そうそう、突き放すといってもアリエルちゃんは──」
彼女はウニが好きなので、餓死しないようたまにウニ料理とか差し入れしてやってくれませんかね、と言う前に五男坊、既にアリエルちゃんに寄り添っておりました。
「ア、アリエル……ボ、ボクは父上から港を任されていて、今は港が閉鎖されているから、毎日は無理だけど自由な時間はある。だから、付き合うとかじゃなく、……勉強とか、解らないことがあったら、いつでも頼っていいから」
「ほんと!? アリエルが側に居ても怒らない!?」
「あ、ああ。これでもたまに教会で子供向けの読書会を開いたり、ピアノを弾いたりしているんだ。よかったらアリエルも参加して、」
「うん! 行く! 行きたい!」
ちょろ過ぎんだろ、五男坊。
アリエルちゃんは顔を真っ赤にして涙ぐんでて、おいおいここで真珠は流すなよ、と色んな意味でこっちも涙が出てきた。おまけに脱力して肩が凝ってきましたよ。
欠伸をしながらカウンターに戻る。
「リリー、あーん」
「……へ、あ」
厨房から出てきたフィックスさんがスプーンで焼きりんごを口に入れてくれた。
「うんみゃあああ♪」
レモン汁とラム酒も入っとる。
それが甘々なモモリンと凄く合う。
ひと噛みするとすぐ溶けてなくなった。
「ひゃ、……ぉぃちっ」
「はい、あーん」
カウンターに手をついて口をパクパク。
皮まで美味しい焼きモモリンに舌がうねる。
「んふっ、ンフっ♪」
「…………可愛い……やっぱり外にいても俺の前では可愛い格好はして欲しい」
「はぁい♪」
私は母国で放浪してからここまで、生きる為に考え、とくにスキルなんかは使いまくってきたけど、こうやってフィックスさんに甘やかされている時が一番頭ばかになって無防備になれて幸せなのだ。
今日はもうなーんも考えたくないなぁ。
来年結婚する、その準備しか頭にない。
「漁師リリー! 君には現在閉鎖されている港で無許可で漁を行った疑いがかけられている! よってこの場で連行する!」
突然かけられた声に振り向いてギョッとした。
びしょ濡れのヴィッセル殿下と、同じくびしょ濡れの従者が三人いた。
前髪からぼたぼたと水……いや、この磯の匂いは海水か。遊泳でもしてたんか?
「……あのぉ、濡れ鼠みたいになってますけど?」
「っ、鼠とは……不敬罪だ! これ以上罪を重ねるなら、この場で取り押さえてもいいんだぞ!」
「いやここ不敬罪が通用しない共和国ですからね? 君主国の方達は、入国前にカプルス共和国の法律の下、足を踏み入れている筈ですが……先に大使館に相談されたらどうですか?」
「そんな事は解っている! それに君がとてもずる賢いことも! 魔力の波動もなくどうやって我々を移動させた!? 禁術か!?」
「はぁ?」
ちょ、てかそのびしょ濡れの状態で徐々に近付いてくるのはやめて欲しい。ほらもう、従者の人達も焦ってるじゃん。
「で、殿下……いけません」
「ど、どうかご冷静に。ここで手を出したら、立場が悪くなるのは我々です」
「そんな事は解っている! こんな目撃者も多い場所でこの国の民に怪我でもさせれば捕まるのは私の方だ! それが君の狙いだということも解っている!」
ヴィッセル殿下、私をギリッと睨み付けてきた際【罪の眼差し】を発動した。言われた内容に僅かでも身に覚えがあると自らに非があったのではと罪悪感を与えるスキルだ。断罪シーンでアマリリスから証言をとる時に使ってたやつやね。ってそれをなに罪も無い私に使ってくれてんねん。しばくぞ。
「いや目撃者がいなくても怪我させるのはダメですからね? そんな犯罪者寄りの思考はやめましょうね?」
「っ、な……なに……!?」
「あとこの界隈では水着のままとか、体が濡れたまま飲食店に入ると罰金刑がかされるんですよ。どの店も一回目はやんわり注意するだけに留めているそうなので、今後は気を付けて下さいね」
「っっ、君は……どこまで私をっ……!」
うわぁ……耳まで真っ赤になって激昂した。
子供かよ。ちょっと注意しただけじゃん。
「リリー」
あ、フィックスさんがめちゃ可愛く剥いた林檎やメロンを持ってきてくれた!
「かぁわいぃ~♪わぁ、もしかしてこれ海王蛇?」
「その隣にいるのがリリーね」
「凄ぉい! めちゃ可愛く剥いてくれてるじゃないですかぁぁ」
海王蛇メロンを手に乗せてにっこり。甘ぁい香りにすりすりしちゃう。もう離れられない。
「そのメロンと林檎すっごーいっ……てかリリーおねいさんて、知り合い多くない?」
「多くないよ。そこの人達は他人だし」
「……まさか、また君に付きまといが現れたのか?」
「え? リリーおねいさん、さっきからこの人達に付きまとわれてたの?」
五男坊とアリエルちゃんがヴィッセル殿下に目を向けた。
そして二人して『嫌がってる人に付きまとうなんて最低だと思います』『ああ本当に最低だ』とか、もうほんと凄いよ君達。ようやく他者の気持ちがわかるようになったんだね。リリーおねいさんもう色んな意味でため息が出てきたよ。
「……あれ? リリーおねいさんの付きまといの人達、いま消えたよ」
「ほんとだ……すぐ出ていったんだろう。あ、そうだアリエル、次の読書会の日程だが、」
「あ、うん! アリエル声に出して読むのも得意だから、色々やってみたいな!」
それにしてもフィックスさん、凄い包丁の技術だ。
あまりにも精巧なので林檎とメロンでちゅっちゅっさせていたらフィックスさんが噴き出した。わぁ、その笑顔また見れたぁ♪
「リリぃは可愛いね。絶対に誰にも渡さないよ」
「はぅ……」
いつになく真剣で甘い声色にもう膝がダメ……海王蛇メロンにちゅっとキスして照れ笑いしか返せませんでした。
翌日の昼。
お店に警察が事情聴取にきた。
ヴィッセル殿下達のことは店にいたお客さんや外にいた人達にまでなんとなく伝わっていたらしい。警察がいうには彼等が農園近くの丘にいた時から一般人から不審者とか怖いとか通報に近い報告がきていたらしく……まぁ、いかにもな厳つい従者三人も連れてたしね。
「うんうん、昨日はこの店にきてたのね? それで、お店の人や貴女はなにもされてない?」
「とくには……なんか協力して欲しいとか言われたんですが、私、断っちゃったんですよ」
「まぁ、協力っていっても任意だからね。気にするこたぁないよ」
カプルス共和国の黒と金色の国旗に似た制服を纏った男女のお巡りさん、その制服なんかかっこいい。背中には……眼のような? 金色の縦筋刺繍が入った斬新なデザインだ。
あっという間に事情聴取が終わり、ちょうど昼時だったので串焼き買ってウキウキで帰っていかれました。
私もお腹が減ってきた。
「今日は紅鯨があるよ」
「わぁ! それのお刺身、タレいっぱいつけて食べたいですぅ!」
「可愛い……体は辛くない?」
「ぁ……はぁい。大丈夫……」
そこでお店にヴィッセル殿下とビィセェス殿下がきた。
「失礼する」
「こっ……この度は、食事にきた」
へぇ。
今日はどちらも軽装で従者を連れていない。
てか以外な組み合わせ。
乙女ゲームの中では、この二人が並んで歩くなんて有り得ないくらい仲悪いんだけどね。学園では互いを牽制しながらヒロインのマーガレット・パステルを取り合って、でもヒロインはビィセェス殿下の真の番だから本能が惹かれているのを感じつつも、連日のごとく『番だから連れて帰る』と言われ続けて愛ってなんだろうって疲弊するんだよね。そこにいつも庇うように現れるヴィッセル殿下が『我が国の高魔力者を隣国に渡してなるものか』『番にするのは諦めろ』だの、ビィセェス殿下とやり合うんだよね。ヒロインは本能が暴走してるビィセェス殿下を諌めつつ、自分を駒扱いしてくるヴィッセル殿下に身分も関係なく注意して、その結果激怒させて、ついには慕われてしまうんだ。それがアマリリスにヴィッセル殿下を誘惑していると誤解されて、アマリリスの即死級の攻撃を受け流す度に魔力が強くなっていっちゃって、二人の殿下から執着は増すばかりだし、それでヒロインは余計にしんどくなっちゃって、その弱ったヒロインを支えるのが他の攻略対象者達だ。宰相の息子と、騎士団長の息子と、担任の教師と、あとは忘れた。てか攻略よりRPGてんこ盛りな要素にハマった。おまけにこの世界のどこかにいる超ド級の隠しキャラと出会って攻略に成功すればこの世界と同じくらい広い裏面でRPG出来る鍵が貰えるそうで、それも公式が発表した情報だったし、前世ではそっちに食い付いたんだよね。てか前世から今もRPGやり過ぎだろ。でもまだ足りない。まだまだ入るぞ。
「そう、私の腹は無限なのです!」
「可愛いねリリー。お刺身は沢山切っといたよ」
「わぁ、ありがとうございます!」
「こちらが昼食になります」
「ありがとうございます! えっへへ、またお部屋で頂いてきますねっ」
トレーを受け取り階段をかけ上がる。朝ご飯も作業をするため部屋で摂った。
「お、おい……君」
「あ、待ってく」
あぁ……昨夜はフィックスさんに着せた礼服で型をとったのだ。ほんとマジでヤバかった。礼服を試着中のフィックスさんを、その礼服を破いて襲いかかりそうになるのを必至に耐えて、型をとり終えたらすぐ襲われたんだよね。あれはやばいわ。礼服で襲いかかってくるフィックスさん、めっちゃかっこよかったもん。色んな意味で何度も気絶したわ。
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