上 下
127 / 393
開き直っても大変だ(カンSide)

124.尻尾

しおりを挟む

鍵の言葉キーフレーズ


これを聞いた、シグルドの表情が一瞬強張った。


「・・・何のこと、でしょう?」


とぼけるフリで、俺の顔を見返すシグルド。
俺は、へら、と半笑いで対抗する。


「いやだなぁ・・・あの腕輪の『もう一つの効果』を発揮するための言葉、ですよ。」


そう。あの腕輪の精神干渉魔法は、作動にいくつかの条件というか、手順があった。

①腕輪の魔力制御により体内魔力量を半減させる。
②半減すると精神干渉系の魔法が発動。解除キーで魔力登録されている人間の指示に無条件に従うよう、自我に組み込まれる。

・・・但し、解除キーへの登録は2人。このままだと、相反する指示が出た場合、どちらに従うのか、という問題が生じる。
その疑問を調べるため、再度【解析アナライズ】をかけたところ、

③解除キー登録されているどちらかが、『鍵の言葉キーフレーズ』を唱えることで、『その者に』従う。

という、手順が存在した。


「『もう一つの効果』だと?何だ、それは。」


団長さんが、威圧を込めた表情でシグルドを見た。


「・・・さぁ。何かを疑われているようですが、私には何のことか。」


あくまでも、彼はしらを切り通すつもり、らしい。

部隊長さんを見ると、目を見開いて、シグルドの方を見ている。
心の底から吃驚している感じ。

・・・あぁ、この人、この腕輪については何にも知らないのかな。

そして。

精神干渉系の魔法の取り扱いについては、何か知ってそう。

ただ、この人自身は、ホントに善意な人だ。
部隊長を見るアルからも、警戒する感じがない。
アルの団長と部隊長を見るときと、シグルドを見る時の警戒具合が違いすぎる、

この人は、コウさんの言っていた『既存の武器の利活用を研究している』人。本来の第4部隊の在り方を体現する人なんだろう。
団員の安全を思い、怪我のリスクを減らしたいと考えるような人。

精神干渉も、もしかしたら戦争のトラウマなんかを軽減するとか、治療として行き着いたのかもしれない。

・・・奴は、その善意に漬け込んだのだろう。


ふつふつと、怒りが湧き上がる。


視界の端に、師匠の姿が見える。
師匠の口端が、少し歪んだ。


奴にも何かの信念はあるのかもしれないが。
ここまでしらばっくれるなら、もういいや。
どんな崇高な理想や大義名分はあれど、色んな人に迷惑をかけている事だけは事実なのだから。


「解除キー登録が2枠しかない制御の腕輪により魔力を半減した後、キー登録されている者に従うよう精神干渉し、ある『鍵の言葉キーフレーズ』を唱える事で、唱えた者に従う様になる。ーーー違いますか?」


シグルドの表情が、また、ほんの一瞬歪む。
俺は無意識のうちに威圧を放ちながら、対峙する。


「貴方がそこまで余裕ぶっこいているのは、リンさんの腕輪を外す際に、『鍵の言葉キーフレーズ』を唱える事で、リンさんが自ら自分に協力すると確信しているからだ。

ーーー 残念ながら、そんな思い通りにはなりませんよ。」





しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【R18】幼馴染が変態だったのでセフレになってもらいました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:305pt お気に入り:39

ハーレムでハブられてるけど、一番愛してる自信ある!

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:547

悪徳令嬢はヤンデレ騎士と復讐する

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:1,405pt お気に入り:259

螺旋の中の欠片

BL / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:665

雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される

BL / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:4,816

夢見るシンデレラストーリー

BL / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:696

誰にも愛されずに死んだ侯爵令嬢は一度だけ時間を遡る

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:1,874

処理中です...