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開き直っても大変だ(カンSide)
124.尻尾
しおりを挟む『鍵の言葉』
これを聞いた、シグルドの表情が一瞬強張った。
「・・・何のこと、でしょう?」
とぼけるフリで、俺の顔を見返すシグルド。
俺は、へら、と半笑いで対抗する。
「いやだなぁ・・・あの腕輪の『もう一つの効果』を発揮するための言葉、ですよ。」
そう。あの腕輪の精神干渉魔法は、作動にいくつかの条件というか、手順があった。
①腕輪の魔力制御により体内魔力量を半減させる。
②半減すると精神干渉系の魔法が発動。解除キーで魔力登録されている人間の指示に無条件に従うよう、自我に組み込まれる。
・・・但し、解除キーへの登録は2人。このままだと、相反する指示が出た場合、どちらに従うのか、という問題が生じる。
その疑問を調べるため、再度【解析】をかけたところ、
③解除キー登録されているどちらかが、『鍵の言葉』を唱えることで、『その者に』従う。
という、手順が存在した。
「『もう一つの効果』だと?何だ、それは。」
団長さんが、威圧を込めた表情でシグルドを見た。
「・・・さぁ。何かを疑われているようですが、私には何のことか。」
あくまでも、彼はしらを切り通すつもり、らしい。
部隊長さんを見ると、目を見開いて、シグルドの方を見ている。
心の底から吃驚している感じ。
・・・あぁ、この人、この腕輪については何にも知らないのかな。
そして。
精神干渉系の魔法の取り扱いについては、何か知ってそう。
ただ、この人自身は、ホントに善意な人だ。
部隊長を見るアルからも、警戒する感じがない。
アルの団長と部隊長を見るときと、シグルドを見る時の警戒具合が違いすぎる、
この人は、コウさんの言っていた『既存の武器の利活用を研究している』人。本来の第4部隊の在り方を体現する人なんだろう。
団員の安全を思い、怪我のリスクを減らしたいと考えるような人。
精神干渉も、もしかしたら戦争のトラウマなんかを軽減するとか、治療として行き着いたのかもしれない。
・・・奴は、その善意に漬け込んだのだろう。
ふつふつと、怒りが湧き上がる。
視界の端に、師匠の姿が見える。
師匠の口端が、少し歪んだ。
奴にも何かの信念はあるのかもしれないが。
ここまでしらばっくれるなら、もういいや。
どんな崇高な理想や大義名分はあれど、色んな人に迷惑をかけている事だけは事実なのだから。
「解除キー登録が2枠しかない制御の腕輪により魔力を半減した後、キー登録されている者に従うよう精神干渉し、ある『鍵の言葉』を唱える事で、唱えた者に従う様になる。ーーー違いますか?」
シグルドの表情が、また、ほんの一瞬歪む。
俺は無意識のうちに威圧を放ちながら、対峙する。
「貴方がそこまで余裕ぶっこいているのは、リンさんの腕輪を外す際に、『鍵の言葉』を唱える事で、リンさんが自ら自分に協力すると確信しているからだ。
ーーー 残念ながら、そんな思い通りにはなりませんよ。」
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