昼寝聖女を追放したら王都がアンデッドで溢れたんだが、これって俺が悪いのか!? 〜責任を取らされた竜狩りの俺は、日夜アンデッドを倒しています〜

凛海

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第4話 スケルトンとは

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「………おわっ…………ったぁ………」

 俺は朝日を半身に受けながら、墓地の中心で立ち尽くしていた。

 思わず呟いてしまったのは、疲れと安堵からだ。

「お、お疲れ様でございます…………竜狩り殿………うっ………」
「おいおい……無理して喋んな………常人じゃぶっ倒れてるほどの労働量だ…………今は黙って倒れとけ」

 俺の隣のコイツは王国の上級武官であるケイランズ君だ。

 弱冠にして、要は二十歳でその地位にまで上り詰めた有能な青髪の青年だ。

 俺とケイランズは途中で合流し、以降共に墓地を制圧していった。

 最初の墓地に勝るとも劣らない数のスケルトンが湧いていた墓地を、俺と共に7、8ヶ所も回ったのだ。
 俺の言葉の通り、そんな事をすれば常人ならあまりの労働量により今頃ぶっ倒れてても不思議ではない。

「あ、倒れとけとは言ったがそのまま死ぬなよ?お前までスケルトンになったら面倒だ」
「そこはせめて悲しんでくれないですか?」
「悪いがスケルトンの顔を見て、お前の顔が思い出せるほどほど俺は器用じゃないもんでな。………気づいたら隣の奴がスケルトンになっていました。あなたはどうしますか?」
「倒します」
「俺もだ」
「……………いや、そうじゃなくてですね………」

 もちろん冗談さ。1割は。

 確かに平時だったら、俺もスケルトンになってしまった君を倒すのは心が傷んだかもしれない。

 だが今はタイミングが悪い。
 平たく言えばクソ疲れているんだ。

 そんな時に俺を疲れさせた張本人であるスケルトンが隣にいたら、憂さ晴らしついでに骨を全部折りながら倒しちまいそうだ。

 悪いがそれがケイランズ君だとしても、それを思い出せるのは全身骨折させ終わった後だろう。

「まぁ、今はそんな事はどうでもいい………帰投するぞ」
「………宜しいので?」
「何がだ?」

 墓地に湧いていたスケルトンは既にその殆どを炭にした。
 アイツらは色々と厄介な性質を持っているからな。
 バキバキに折り尽くすか、再生できないレベルに燃やし尽くすのが普通なのだ。

 それで?そんな厄介なスケルトンを燃やし尽くして死ぬほど疲れてる俺に、城に帰るなと言うのかい、君は?

「この後にスケルトンが湧くかもしれないじゃないですか。現時点で確認したスケルトンは確かに全て倒し切りましたけど、まだ安心は出来ないのでは?」

 なんだそんな事か。
 やはりまだまだ若い。それに王城勤めだから経験も少ないな。
 君はスケルトンについてよく知らない様だ。

「甘いねぇ」
「甘い………ですか?」
「あぁ、甘いさ。やはりまだ学ぶ事は多そうだな」
「………失礼ですが、この後の危険を予測するのは当然では?」

 おぉ怖い怖い。
 見下されまいとする若者の反骨心と言う奴だな。

 確かに騎士たる君はそう予想するだろうが、相手はスケルトン。つまるところモンスターだ。
 そんなモンスターについては、対人戦闘を主とする君よりも冒険者上がりの俺の方が詳しいのは当然だと思わないか?

「それが甘いんだよ。スケルトンの判別くらい、冒険者にとっては必須のスキルだ」
「……………どういうことでしょうか」

 ほら分かりやすい。
 さしずめ冒険者にできて騎士の自分に出来ないのが許せないんだろう。

 だが言っちゃ悪いが、そりゃ当然なんだよ。
 冒険者ってのは相手にするかもしれないモンスターについて血眼になって調べる。

 ただ目の前に現れたから切り捨ててる。そんな君達騎士とは必死さが違うんだよ。

「簡単だ。コイツらはスケルトンの中でも最下級の存在だからだ。見ろ」

 そう言って俺は近くの骨を拾い上げる。スケルトン産だ。

「骨がスッカスカだろ?普通、死体がスケルトンになったり瘴気がスケルトンを生み出すときは青い炎が現れる。その青い炎は死体の腐肉を焼き尽くして骨だけにする。その結果としてスケルトンになる。正気の場合は、青い炎によって瘴気がスケルトンの形に凝縮する」

 俺のざっくりしたスケルトン講義を若き有能な、だがまだまだ経験不足のケイランズ君が真面目な顔をして聞いている。

「それはさすがに僕も知っていますが………」
「もちろんお前を馬鹿にしている訳じゃないぞ?だが重要なのはここからだ」
「………骨がスカスカなのと関係があるんですね?」
「そうだ。青い炎が死体に宿った場合、その肉を焼く際に魔力を骨に与える。一度青い炎に燃やし尽くされた骨の中身は、魔力を与えられる際にその中身を再構築する。要は骨の密度が上がり、硬くなりより強いスケルトンになる。瘴気の場合も同じだ。青い炎によって構成される骨が硬くなるのさ」
「ですがこのスケルトンの骨は脆い。だからこれは最下級のスケルトンだと?」
「そうだ。そしてそんな最下級のスケルトンは陽の光への耐性が恐ろしく低い。一瞬でその身が焼かれちまうのさ」
「そして墓地に新たなスケルトンが湧く事もないと?」

 察しがいいじゃないか若き騎士君。

「そうだ。まぁ、もっとどえらいスケルトンが湧かないとは言い切れないが………今まで俺たちが相手にしたのは全て最下級のヤツだ。少なくとも、今日はもう日が沈むまでは安心できるだろう」

 そう。日が沈むまではだ。

 俺はこの件がこれだけで終わる気がしないのだ。

「まさか………今夜もこれと同じことが?」
「分からん。だが警戒はするべきだ」
「そう………………ですか……………」
「おいおい?そんな絶望しきった顔をするなよ?」
「いや、したくもなりますよ?こんな重労働を二日続けてやると?」

 まぁ気持ちはわかる。
 騎士になる時に聞いてない労働内容だからね?
 愚痴りたくなるのも分かるさ。

 でも今は未来を憂うよりも備える方が大事だ。

「言いたい事は分かるが、とにかく早く帰投するぞ。夜に備えて早く休め」

 渋るケイランズ君だったが、俺はそんな彼を無理やり納得させて、王城に向かって歩き出した。

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