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第5章 女装男子と永遠に
1 最初で最後の朝side真琴
しおりを挟む1週間が、今日で終わる。
彼女との地獄は、今日から始まる。
重い足取りで、階段を降りれば冬也さんは居なくて代わりにカウンター席に座っている秋桐君がいた。
「おはよう。迎えに来ちゃった。」
「あ…ぉはよう…。」
「お兄さんなら、砂糖が切れたって買い物に行ったよ。」
「…うん。」
昨日の秋桐君と女の子の会話を思い出す。
(………彼女…居るんだよね…)
「どうかしたの?早く座りなよ」
「あ、なんでも…ない。」
(例えば、僕が秋桐君の事を、好きだとして例えば、僕が秋桐君と付き合いたいって言ったら…秋桐君は、僕の恋人になってくれるのかな…彼女が、居るのに…?)
僕がモヤモヤ考えているとコホンと咳払いをした秋桐君が僕を見た。
「…あー、のさ…少し早いけど…聞いて良い?僕にどこにいて欲しいか。」
「え……」
「……でも…僕は、狡いからね。先に、言うよ?」
「言うって、何を?」
「……これで、何回目だろう…」
秋桐君が懐かしそうに何かをボソッと呟く。それから、秋桐君は僕の方を向いた。
「僕は、好きだよ。真琴の事。真琴がどんな姿だろうと…女装してても、してなくても…記憶が無くったって…僕は真琴が好きだ。だから、僕は…何度だって、真琴に言うよ…。僕の、恋人にならない?」
世界が止まった。息の仕方を忘れる……頭が混乱する。
「え、でも、だって…僕は、え?秋桐君、恋人は?」
「え?恋人って?」
「だって、居るんでしょ?」
秋桐君は、首を傾げながら
「え、うん?居るには、居るけど???」
とポカンとした。
僕の混乱は、マックスに達しそうだった。
「え?居るの?は?」
「え、居るよ?だって、だから僕は、真琴に、」
「なんで?!」
「え?なんでって、なんで?!」
僕の中の秋桐君が壊れていきそうだっだ。
(秋桐君は、恋人がいるのに、僕に恋人になってなんて言うの?!なんで!)
全くもって罪の意識が無さそうな秋桐君は顎に手を当てながら何かを考えているようだった。
(いやいやいや!考える事じゃないでしょう!)
「秋桐君は、僕の事本当に好きなの?」
疑いながら言うと秋桐君は即答で「好きだよ」と言う。
「…なら、なんで恋人いるの?」
「え、だって…恋人は…」
そこで真っ直ぐ僕を見る…。
「……僕の顔に何か付いてるの?」
「え、いや、そんな事は…」
「……だったら、何?…………恋人……秋桐君には、可愛い女の人が、居るんでしょ?」
「え、女の人??真琴、なんの事言って…」
リリリリリン
秋桐君の言葉を遮るように携帯が鳴った。
「……ごめん、出るね。」
「あ、うん。」
画面を見ると未登録の番号からだった。
(誰だろう……。)
ピッ
『お・そ・い♡』
全身に鳥肌が立った。
「……美緒ちゃん。」
ガタッ
「?!……あ、ご、ごめん。」
秋桐君が椅子から落ちた。
けど、僕はそれどころじゃない。
「な、んで」
『…マコトォ、アタシ言わなかった?また明日って。でも、今夏休みでしょ?昨日はたまたま学校に行ったけれど、いつ会えるかわからないじゃない?だから、番号盗んできちゃった♡』
「ぬすって…どこから…」
『えー、ヒ・ミ・ツ♡…で、マコトォ…今、暇よね』
「え、いや…暇じゃ…」
『え?聞こえない。』
彼女の声に苛立ちが混ざる。
「だ、から…その…暇じゃ…ないです」
『……わからない?聞こえないって言ったの。』
彼女は、肯定しか望んでいないらしかった。
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