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理解
しおりを挟む人の気持ちを理解するということは難しい。
だって、自分のことすら、理解しきれないのだから。
「貴方の性別はなんですか?」
そう聞かれて、答えが詰まってしまう理由とか
「好きならずっと一緒にいたいでしょ?」
そう問われて、同意したい反面、苦しくも思ってしまうこととか
「親を大切にしなさい」
そう言われて、苛立ちと悔しさが込み上げてくる心とか
そういった、自分でも形容しきれない理由達を、伝えるだけでも難しいのに…
伝えた上に、理解してもらうなんて、きっと、途方もない時間が必要なんだと思ってしまう。
考え過ぎだと、思っていた時期もある。
けれど、ふとした時に放たれる周囲の会話が「自分の考えは異端である」と、そう感じさせる。
「男なんだから」なんて言葉は聞き飽きた。
だから、「僕は、男としてじゃなく、良識のある人として行動するんだ」と考える。
それでも、更衣室にいると落ち着かないし、同性愛についての話題になると悲しくなる。
「ゲイなんじゃないの」って笑いを含んだ言葉に肝が冷えるし、「レズなのかな」って腫れ物を触るみたいに言う人に、悲しさを覚える。
言葉の意味だけが世界に進んでしまって、隠れていた場所を無理やり暴かれるみたいな、そんな感覚がなくならない。
僕は、性別がわからない。
自分の性別がわからない。
体はただの箱みたいで、僕は無理矢理そこに嵌め込まれた気分で生きている。
この体は、僕のものなのに、借り物みたいな気持ちになる。
僕の心は、この体が大嫌いで「ぶち壊してやりたい」って、常々思っている。
それは、この箱が、心に合っていないから。かといって、他の性別でありたかったと強く願うわけでもない。たしかに、なれるものならそうなりたい。
けれど、僕は男にも女にもなりたくない。だけど、男でも女でもありたい。
難しいんだ。ジェンダーはグラデーションというけれど、まさにその通りで、僕は、はっきりとした色になれないでいる。
これが僕の中では普通のことで、きっと、はっきりとした色を持った人には異端なことなんだろう。
その異端について、普通だと説明することは難しい。
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