俺はヒーローなんかじゃない

ここクマ

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俺は君のヒーローだ。

10 変わらない君、変わった俺。

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 4月があっという間に過ぎようとしていた。
 けれど、俺の心の中に湧き出た気持ちは変わらなかった。

(俺は、虎が好きだ。好きなんだ。)

 俺の初恋は虎だから、この気持ちが本物かなんてわからない。でも、俺の好きは友達としてじゃない。


 大切にしたい。けど、壊してしまいたい。



「真木ちゃん?」

 首を傾げて、虎が俺を見る。

 虎との距離の近さにはまだ慣れない。
 けれど、その近さが心地いい。

「もう、入学して1ヶ月経つんだね。」

 そうだ、入学して1ヶ月。虎と毎日一緒に1ヶ月いたんだ。

「なんだか、早いね。」

「あぁ。」

 虎が好きだ。

 俺が助けたあの日から。

 虎を守るのは俺なんだ。

 虎の隣は 俺なんだ 。



 小さい頃、よく行く公園で黙々と山を作っていた時だ。

「やめてよ!この仔が怖がってるでしょ!!」

 女の子の声が近くで聞こえた。気になって声の方を見ると、いつのまにかそこにはボロボロの仔猫とその仔を守るようにして立つ女の子が居た。そして、その向かいには木の枝を持った男の子達が居た。

「うるさいぞ!そのネコはおれたちと遊ぶんだ!!」
「そーだそーだ!」

「そんなの間違ってるよ!この仔はそんな遊び楽しくないもん!」

「楽しいんだよ!お前は黙ってろよ!」

ドンッ

 男の子が女の子を突き飛ばして、女の子は尻餅をついた。


「……だめ。」

 俺は、女の子のと男の子の間に立った。

「なんだよ!」

「……だめ。」

 両手を広げて首を振る。

 男の子は、持っていた棒を俺に投げてあっかんべーをして他の子と一緒に公園から出て言った。

 女の子の方を向いて手を伸ばすと、女の子は少し泣いていた。

「ありがとう。」

(……かわいい。)


 それから、同じ公園で同じように女の子が男の子と言い合いをしているところに入り、助ける事を繰り返していた。


「真木ちゃんは、凄いね。」

「?」

「真木ちゃんは、泣かないし、強いし、いっつも僕の事見つけてくれるでしょ?」

 虎は俺の手を握りしめた。

「真木ちゃんは、僕のヒーローみたいだ。」


 後に、虎と家が向かい同士だと知る。

 そして、家族ぐるみで仲良くなって初めて虎が男だと知った。

「真木ちゃん!一緒にお風呂入ろう!!」

「?!」

 俺の手を引く虎にドギマギしたのを今でも覚えている。


 虎が男だと知って、俺の初恋が散ると思われた時だ。虎が、俺に魔法をかけた。

「あのね、真木ちゃん。真木ちゃんは、僕のヒーローだよ。だから、僕、真木ちゃんが…大好き。だからね、真木ちゃん、僕と一緒にいてくれる?」

 虎の顔が真っ赤になっていたのは、逆上せてたせいなのか、恥ずかしかったせいなのかわからなかった。

けれど、その言葉をもらった日から俺は虎のヒーローで、虎とずっと一緒にいようと思ったんだ。

 散りかけた恋は再び蘇り、今もなお消えようとしてくれない。

 だけど、虎の恋は俺じゃない……。


「虎。」

「なぁに?真木ちゃん。」

「俺は、まだ……」

「まだ?」

「……まだ、ヒーローなのか。」

 虎は、俺の問いにすぐに答えた。

「うん。真木ちゃんは、僕のヒーローだよ!」

「そうか……。」

 虎は、変わらない。

 変わらないんだ。

 幼い頃の笑顔のままで俺に言うんだ。



 俺は、あの頃みたいに変わらない言葉を変わらない気持ちで受け取れてるのだろうか。

「真木ちゃん?」


 いや、そんなわけ無いんだ。


「真木ちゃん、大丈夫?」


 だって、あの頃は嬉しかったんだ。


「真木ちゃん……悲しいの?」

 
 俺は、虎の頭を撫でて笑ってみせた。
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