俺はヒーローなんかじゃない

ここクマ

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俺は君のヒーローだ。

9 先生と片思い

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 木曜日の朝のホームルームのことだった。

「えー、来月にある遠足関係で遠足係は講義室1に集まるように。それから…6月にある体育祭関係で体育祭委員は今日の昼、視聴覚室に集まるように。それから国語科係は昼に国語科室に来るように。」

 先生と目があって頷く。

 木曜日は、4時間目に体育、昼を挟んで国語があった。俺は、ダッシュで体育着を着替えて国語科室に向かった。

(ここ、だよな。)

 そう思って、ノックする前に壁の表示を確認する。

「れは、お前の事ずっと!」

(え?!)

 ギリギリ、扉の前で聞こえるくらいの叫びに固まる。

(……だれか、いるのか?)

 詳しくは聞こえないが先生の声だけが聞こえる。

(電話、かな…)

「は?!」

「お前、俺の気持ち知ってていってんのか!」

(……聞いたらいけないやつだな。)

 出直そうと思った時、先生の足音が近づいた。

「もういい。切るぞ。」

ガラガラ

 声と同時に扉が開いた。

 目の前には、携帯を持った先生が居た。

「真木、か…いつからいたんだ?」

「……と、お前の事ずっと って、とこから…」

「こういう時は、今来たとこですって、嘘でも言うんだよ。」

 先生は、そう言って俺を室内に入れてドアを閉めた。

「それで?何を聞いたんだ。あと、そんなに声大きかったか?」

「いや、あの…ノックしようとして微かに聞こえたぐらいなんで、詳しくは聞いてないです。」

「そう、か。」

 俺の言葉を聞いて安心したように先生は机に行って教材をまとめはじめた。

「……でも、先生やっぱり恋人はいるんですね。」

ピクッ

 俺の言葉に先生の行動が止まった。

「なん、でだ?」

ギギギギギと音を立てそうに首を俺に向けて先生が俺を見る。

「え、だって『俺の気持ち』とか言ってたから恋人と話してるのかなって…」

 先生は、観念したように溜息をついた。

「はぁ…恋人じゃない。……俺の片思いだ。」

「え?」

「真木、誰にも言うなよ。」

 そう静かに言った先生の目は、少し悲しそうに見えた。

 そして、しばらく作業をしていると不意に先生が俺を見た。

「……真木は、恋してるのか?」

「……え?」

 突然のことに意味がわからず手が止まる。

「おー、してるのか。そうか、そうか。青春だなぁ」

「なん!」

「なんでわかったんだって?その赤い顔見れば、誰だってわかるぞ。」

 先生は、はっはっはっと笑ってから資料を俺に渡した。

「よし、これを教室に持って行ってくれ。」

「……はい。」

 

 教室に戻ると虎が俺の机に弁当を置いて待っていた。

「虎、すまん。待たせた。」

「うんん。大丈夫だよ。でも、時間かかってたしやっぱり僕もついて言ったほうが良かった?」

 首を傾げて上目遣いで俺を見る虎はすこぶるかわいい。

「いや。俺の仕事だ。それに…今日は…俺だけで大丈夫だった。」

(もし、虎もいたら先生が流石に大変だ。)

「……ふーん。そっか。」

 虎は、少しつまらなそうに下を向いた。

(かわいいな。虎。)

 そう思った時、何故だか先生の言葉が頭をよぎった。

『俺の片思いだ。』

(……片、思い……)

「……真木ちゃん?」

ドクン

 心臓の音が聞こえた。

「……あぁ。」

 椅子に座って、弁当を出して虎といただきますを言って箸を持つ。

 けれども、その行動の中で俺は何とも言えない気持ちを心に飼っていた。

(どうしたんだろうか……)

 考えたくない事達が、頭を駆け抜ける。

(そうだ、虎は彼女がいたんだ。……彼女が……)

「真木ちゃん?大丈夫?」

 虎の言葉に、俺は小さく答えることしかできなかった。
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