俺はヒーローなんかじゃない

ここクマ

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俺は君のヒーローだ。

8 小動物エンジェルシリーズ

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 入学式から1週間と少しがたった火曜日のことだった。

(次は、英語か……移動だな…。)

 昼休みに虎と幸太と3人で昼を済ませてロッカーから教科書を取っていた。

「真木ちゃん、僕先生に呼ばれてるから先に行ってて!」
「あ!俺 中庭で遊んでから行くから先行っててー!」

 俺は息がぴったりの2人に頷いて机に戻ろうとした時だった。

コツン

(ん…?何か当たった?)

 靴に小さな物が当たった感覚がして床を見る。

「っ、れは…」

 俺は、恐る恐るそれを手に取り息を飲んだ。

「……小動物エンジェルシリーズ…」

 『小動物エンジェルシリーズ』それは、リアル可愛い小動物のマスコットに天使の羽とリングが付いたカプセルトイやゲームセンターなどに売っているものだ。

 そして、俺は顔に似合わずそれが大好きだった。

 しかも、俺の手にあるのはカプセルトイ版の第一弾チャームで唯一持っていなかった『モモンガエンジェル』だったのだ。

(か、可愛いっ……くっ、なんだこの可愛さは!現物の破壊力凄いぞ!!)

 俺の脳内が大変なことになっていた時だ。

「……真木。」

 低い声と鋭い目つきの男が俺を呼んだ。

獅子角ししかど 玲雅りようが!)

 脳内に彼の名前が出たのは自己紹介で印象に残っていたからだ。

『……獅子角ししかど 玲雅りょうが。西校。』

 その簡潔さと、自分と似た不器用感。

(仲良くなれそう。)
そう思ったのを覚えている。

「…それ。」

 獅子角は、俺の手にあるモモンガエンジェルを指差した。

「……これ?」

「俺のだ。」

 その瞬間、シンパシーを感じた。

 獅子角もそれを感じたのだろう。

「……小動物。」

「……エンジェル。」

 まるで、何かの合言葉の様にその言葉が紡がれた。

 俺たちは、目配せをして一緒に歩き出した。


 昼休みというものは、素晴らしい。

 虎も幸太も居ないので先に教室に行っていようとおもったのだが、俺は校舎裏で獅子角と2人、携帯をのぞきあっていた。

「……っ、可愛いな。」

「だろう。特にこの曇りなき瞳。純粋にあふれて居て、とても、可愛いだろう?」

 獅子角の携帯には沢山の可愛い写真があった。

「俺は、特にモモンガが好きなんだ。始めて見たときこんなに可愛い動物がいるのかとおもったよ。」

 獅子角は、写真を愛しそうに見つめて微笑んだ。

 クラスでは必要以上話さない獅子角は、可愛いものには饒舌になるらしい。

 俺もそれに乗り、予鈴がなるまで永遠と話を続けて居た。


 獅子角と教室に入ると虎が少し驚いた様な顔で俺を見た。

 獅子角に「また」と告げて虎の元へ行く。幸太はまだ来て居ないらしかった。

「……真木ちゃん、新しい友達?」

 ちらりと獅子角をみて虎が言う。

「あぁ、素晴らしい奴と出会った。」

 俺は可愛い物好きと言う事は誰にも言ったことがなかった。そんな中、始めて同じ趣味の獅子角と出会い舞い上がって居た。
 だからかつい、顔がほころんでしまった。

「っ、そっ、か……。」

 虎が、複雑そうな顔をして目を逸らした。

(虎?)

 そして、間髪入れず隣の男子が話しかけて来た。

「真木って笑うんだな。」

「……は?」

「いや、いつもポーカーフェイスなイメージだからさ。顔整ってるなぁとは、思ってたけど笑っても綺麗とかすげぇや…」

「……そう、か?」

「そうだって!女子の会話で出るモテ男子は大体 真木か原か松山だぜ?」

「……初耳だ。」

 まだ、1週間しか経って居ないのにそんな噂が流れるのか、と思っているとチャイムと同時に幸太と先生が入ってきた。

 前を向くとき一瞬見えた虎の顔が少し悲しそうに見えた。
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