俺はヒーローなんかじゃない

ここクマ

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俺は君のヒーローだ。

23 シロクマと初恋。

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智也さんが足を止めて振り返った。
「ねぇ、優翔どこ行きたい?」
急な問いに言葉が詰まった。
てっきり、目的地に向かって歩いていると思っていたからだ。
「えっ、と……。」
「まぁ、急に言われても出てこないよね。僕もそうだし。でも、優翔と話すの楽しいからどこかで駄弁るだけでも良さそうだけどね。」
そう言われて、ふと獅子角に聞いたスイーツの話を思い出した。
ours polaireウルスポレールという店のケーキが美味しいらしいぞ。』
『ウルスポレール?どこにあるんだ?』
『県外にあったんだが最近、駅の近くに新しくできた。今度行ってみるといい。まぁ、1人が気不味かったら俺を誘えばいい。』
(丁度、駅の近くだし誘ってみるか。)
「あの、智也さん。ウルスポレールって店知ってますか?」
「ん?知らないけど、シロクマのグッズとか売ってるの?」
「シロクマ?いや、俺はスイーツの店って聞いたんですけど。」
「あ、そうなんだ。ours polaireウルスポレールっていうからそうかと思ったんだけど。スイーツか、いいね。行こう。」
智也さんはそう言って、俺の手を引いて行った。

「あ、ここだね。うん、やっぱりシロクマだぁ。」

智也さんは嬉しそうに店の看板を見た。
看板にはours polaireの文字と可愛いシロクマの絵が描かれていた。

「あの、智也さん。なんで、シロクマってわかったんですか?」

「え、なんでってours polaireウルスポレールはフランス語でシロクマって意味だからだよ?」

智也さんはキョトンとしながら言った。

(さも当然のように…もしかして、俺の常識力が無いだけ?)

そんな事を思いながら店内に入った。
席に座りメニューを見る。

「可愛い。」

つい声が出た。でも、そんなことなんてどうでもよくなるくらい可愛いケーキが沢山あった。どれもシロクマや熊をモチーフにしていてその熊たちが寝ていたり遊んでいたりするケーキたち。

(え、むり、このこたちを食べるなんて、俺には無理。可愛すぎる。)

そんなこんなメニューと格闘しながら、クマ耳が刺さっただけの色々な意味で食べやすそうなケーキを注文した。ちなみに、智也さんはジュースだけを頼んでいた。

「……優翔、今日はなんで僕の誘いに乗ってくれたの?」

ケーキを待っていると智也さんが口を開いた。その目は、全部を知っているみたいに笑っていた。

「……そ、れは。」

「優翔は良い子だから、好きな子がいるのに僕と遊ぶなんてことできないって思ったんだけど。」

「俺は、良い子なんかじゃ……。」

今だって、虎を忘れるために智也さんを利用している。

「良い子だよ。僕のこと利用してるって罪悪感、優翔にあるでしょ?」

「え?」

「好きな子、幼馴染の子でしょ?前、僕が彼女と歩いてるの見ちゃった子。」

「っ!」

「やっぱり。あー、真っ赤になっちゃって。良いんだよ、僕はそこに漬け込みたかったんだから。言ったでしょ?僕が忘れさせてあげるって。僕を利用してよ。」

智也さんは、そう言って笑った。
俺は、その笑顔が少し怖かった。

それから、ケーキが来てそれを食べながら虎への気持ちを全部吐き出した。

「あいつ、もう、わかんないんだ。彼女は大切なはずなのに、俺の方を取ろうとするから。勘違いしたくなる。好きを、やめたくなくなる。」

「……優翔は、本当に好きをやめたい?」

「……わからない。でも、やめないと……。」

フォークを置いて、考える。

「あ、食べ終わったね。」

急に声色の変わった智也さんがニコニコしてからの皿をみた。

「あ、はい。」

「美味しかった?」

「はい。ちょうどいい甘さでした。」

「じゃあさ、この後、僕の家においでよ。」

「え……?」

「初恋の虎くんの話聞きたいし、漬け込みたいから。」

「で、でも……。」

「大丈夫。今日中にはちゃんと家に返すから。」

俺はちゃんと返事をできないまま智也さんに連れられてその場所まで行ってしまった。
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