26 / 68
俺は君のヒーローだ。
22 光side虎之助
しおりを挟む「真木ちゃんは、ヒーロー。でも、真木ちゃんが・・・結婚?」
ついさっきまで隣にいた影を見つめる。
(真木ちゃんが、誰かと?)
ヒーローなら、一緒に居られると思っていた。
彼女ができても、何も変わらないと思っていた。
だけど、何故?
真木ちゃんは、進んでしまった。僕の隣からいなくなってしまった。
(早く、僕も進まないと。早く!)
焦りが体中を駆け巡った。
「原ちゃん?」
松山の声にハッと我に帰る。
「なに?」
「いや、ぼーっとしてたし。俺、原ちゃんが全開にして開かなくなったロッカーに靴入ってるんだよね。」
「あぁ、ごめん。」
謝ってロッカーの扉を閉じると驚いたように松山が僕をみた。
「何?」
「いや、素直な原ちゃん初めてだなって。」
「僕はいつも素直だよ。」
「・・・原ちゃん、どうしたの。」
「どうって?」
「元気ない。」
松山が困ったような顔をして俺をみた。
「そう?」
「うん。いつもは、もっとこう、キャピキャピ?キャハキャハ?してるのに今はこう、ずーん。って感じ。」
「・・・はっ、なんだそれ。」
変な擬音に吹き出すと松山はニッコリ笑った。
「うん。やっぱ原ちゃんは笑ってたほうがいいや。」
松山は一人で頷いて靴を取り出した。
「原ちゃんぼっちなら一緒帰ろうぜ。」
「なんでお前と帰らないといけないんだよ。」
「どうせ、道一緒だろ。それとも、彼女様と帰る?」
「彼女様って。今日は部活だって。」
(そうだ。だから、真木ちゃんと一緒に帰れると思ったのに。)
「ふーん。なんの部活?」
「え、知らない。」
仕方なく靴を取り出して松山の方へ行く。
「は?彼女なのに?」
「うん。興味ないし。」
「・・・彼女、なのに?」
口をあんぐりと開けて松山は停止した。
「なんで、付き合ってるの?」
「付き合ってって言われたから。」
問いに即答しただけで、松山は一人で歩き出した。
「なんなんだよ。」
僕はそれを追いかけた。
「原ちゃんは、優翔が好きじゃなかったの?」
「は?真木ちゃんは僕のヒーローだけど?」
「じゃあ、優翔に恋人ができてもヒーローだから原ちゃんには関係ないってこと?」
心臓が冷えた。
「真木ちゃんは、ヒーローだからね。」
「優翔が、原ちゃんより恋人を大切にしても?」
「えっ・・・。」
考えたくないことがある。
考えたら壊れそうで怖いから。
いつもそこだけ真っ黒に塗り潰して、見えないように隠してきた。
だから、今も。
今も、そうしないと。
見えないように。
考えないように。
「あれ?優翔?」
声にハッとして松山の視線の先を追う。
手を繋いでいた。
真木ちゃんは笑っていた。
「優翔にお兄さんって居たっけ?」
(お兄さん?)
一瞬溢れそうになった想いに蓋をした。
そうだ、誰が見たってそうは見えない。
なのに、どうして?
(あれ・・・?あの人どこかで。)
「あ、もしかして親戚の人かな。」
(最近、見た。誰だ?)
顔がよく見えなかった。
けれど、後ろ姿が誰かに重なった。
「仲良いんだなぁ。」
松山のその言葉に、唇を噛んだ。
(真木ちゃんの隣。僕以外の隣。)
「・・・原ちゃん。」
「何?」
「俺、来月の体育祭で優翔に話すよ。」
脈絡のない言葉に思考が停止する。
「俺は、進むよ。」
消えていた焦りが喉元で言葉を止めた。
「原ちゃんは、今優翔のどこにいるの?」
暗い。暗いんだ。
そんな中、真木ちゃんだけが光で……。
光なのに。
光はどうして眩しいんだろう。
「優翔の隣?前?それとも、後ろ?」
「隣だよ。ずっと。これから先も、ずっと。」
僕の言葉に松山は悲しそうな顔をしていた。
わかってる。
僕だってわかってる。
でも、それを知ってしまったら戻れないから。
もうきっと、絶対、光の先へは行けないから。
今は黒く、黒く塗るんだ。
いや、この先もずっと黒く、黒く、暗いままで。
他の光なんていらないから。
この真っ暗な世界で、君さえ輝いていればいいんだ。
0
あなたにおすすめの小説
昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜
キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。
モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。
このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。
「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」
恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。
甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。
全8話。
【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】
彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。
高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。
(これが最後のチャンスかもしれない)
流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。
(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。
*********
久しぶりに始めてみました
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
泣き虫な俺と泣かせたいお前
ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。
アパートも隣同士で同じ大学に通っている。
直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。
そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。
雪を溶かすように
春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。
和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。
溺愛・甘々です。
*物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています
happy dead end
瑞原唯子
BL
「それでも俺に一生を捧げる覚悟はあるか?」
シルヴィオは幼いころに第一王子の遊び相手として抜擢され、初めて会ったときから彼の美しさに心を奪われた。そして彼もシルヴィオだけに心を開いていた。しかし中等部に上がると、彼はとある女子生徒に興味を示すようになり——。
だって、君は210日のポラリス
大庭和香
BL
モテ属性過多男 × モブ要素しかない俺
モテ属性過多の理央は、地味で凡庸な俺を平然と「恋人」と呼ぶ。大学の履修登録も丸かぶりで、いつも一緒。
一方、平凡な小市民の俺は、旅行先で両親が事故死したという連絡を受け、
突然人生の岐路に立たされた。
――立春から210日、夏休みの終わる頃。
それでも理央は、変わらず俺のそばにいてくれて――
📌別サイトで読み切りの形で投稿した作品を、連載形式に切り替えて投稿しています。
エピローグまで公開いたしました。14,000字程度になりました。読み切りの形のときより短くなりました……1000文字ぐらい書き足したのになぁ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる