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俺は君のヒーローだ。
30 日常
しおりを挟む遠足が終わりいつものメンバーに獅子角と志野が加わった。と言っても俺は獅子角と、幸太は志野君と友達だったのですんなりと溶け込んだ気もする。
ちなみに、虎もそのメンバーの中にいる。
(まぁ、俺と喋らない以外はいつもの虎だからな…。)
「咲ちゃん、今日カラオケ行かない?」
「あ"ぁ?抜くぞ?」
「もー、咲ちゃん怒ると彼女できないぞー?」
「お前、本当に喧嘩売るの得意だなぁ?こっちも本気で買ってやろうか?あぁ?」
志野が物凄くドスのきいた声で切れている。
ちなみに、志野はカラオケに切れているわけではない。
獅子角曰く
『志野は、咲彩という自分の名前がコンプレックなんだ。だから、名前で呼ばれるのをすごく嫌う。ちゃん付けなんて以ての外だ。』
ということらしい。
「おい、松山。志野で遊ぶな。」
「あ、玲雅!俺で遊んでるってなんだ?!」
「獅子角が言うならやーめる」
「っ、幸太も俺で遊んでる気だったのか!?ちょ、虎之助君!ジャッジ!ジャッジして!」
「あはは、志野君遊ばれてる~」
ワイワイガヤガヤと、日常が戻ったみたいだった。
ピロリン
(ん?智也さんだ。)
メッセージ画面を見ると『今電話いいですか?』の文字があった。メッセージになると敬語になるのは相変わらずだ。
「悪い、ちょっと抜ける。」
「ん、そうか。」「わかった~」「うん。」
「え、ちょっと、真木君!俺をひとりにしないでよ!」
獅子角、幸太、虎、志野の順に俺に返事をくれる。
「悪いな、志野。まぁ、頑張れ。」
「えぇぇ、早く帰ってきてよー!」
志野の言葉に手を挙げ、俺は教室を後にした。
『あ、優翔今大丈夫だった?』
携帯を耳に当てると智也さんの声が心地よく響いた。
「はい。昼休みだったんで。」
『あ、僕と同じだ。』
「え、仕事の休憩だったんですか?……って、まぁ、そうですよね。今平日ですし……。」
『あ、うん。お昼休憩。それでね、昨日話すの忘れてたことがあって電話しちゃった。』
「そうなんですか。」
『うん。……えっと、今日は火曜日ですね。』
「え、あ、はい。」
『そして、明日は優翔も僕も休日ですね。』
「え、はい。」
確かに、カフェは水曜日が定休日で、俺も明日は休日ということで休みだった。
『そこで提案です。』
少し恥ずかしそうに智也さんがかしこまって言う。
『今日、僕の家にお泊まりしに来ま、せんか?』
語尾が少し小さくなって脳内に少し赤くなったであろう智也さんの顔が浮かんだ。それが可愛く思えて少し笑ってしまった。
「はは、良いですよ。行きます。」
『本当?よかった……。恋人をこうやって誘うの慣れてなくて……。あと、今日カフェが早めに閉まるでしょ?だから、迎えにも行きたいなって。』
智也さんの言う通り今日は店の都合で早めに閉まると言われていた。
(だから、今日のバイト無しになったんだよなぁ……)
「って……迎えに来て、くれるんですか?」
『あ、うん。嫌じゃ無ければ。』
「嫌なわけないですよ!……嬉しいです。」
「そっか、よかったぁ。」
それから、少し智也さんと話して電話を切った。
(不思議だな……俺、もうちゃんと……智也さんのこと好きになってる。……もう、きっと、俺は大丈夫だ。)
そう、暗示のように『大丈夫だ』と心に言い聞かせる。
大丈夫。俺はもう大丈夫。
けれど、そう心で唱えるたびに何かが沈んでいく。大切な何か。
「真木くん!やっと帰って来た!」
「優翔、カラオケ行かん?」
駆け寄る志野に声を掛けて席に戻ると幸太が俺に聞く。
「あー、悪い。今日は予定がある。」
「そっかぁ、じゃあ、仕方ないな。」
「え……真木くん来ないの……。」
「志野、真木が困るだろ。」
すんなり納得する幸太と一気に血の気が引く志野、それを保護者のように諭す獅子角……。
(……コントか!)
「悪いな、志野。……あー、なんだ。頑張れ。」
そうこう話しているうちに昼休みが終わった。
俺は、智也さんに会える事を心待ちにしながら授業を受けた。
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