俺はヒーローなんかじゃない

ここクマ

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俺はヒーローになりたかった[大人組過去編]

一緒に不幸になろうside太狼

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木嶋龍が好きだ。

それを言ったら、彼はなんと言うだろう。なにを思うだろう。

そう考えて、思考を止めた。

木嶋龍は、俺を世界に入れてくれた。それだけで幸せな事だ。だから、これ以上欲張ったらいけない。
友達って場所に居られる、それだけで満足しないと駄目だ。

そうやって、恋心を隠して冬休みを過ごすつもりだった。



12月24日 クリスマスイブ

俺は何故だか木嶋龍に呼び出されていた。

「こんな日に呼び出してごめんな」

木嶋龍は、妙に落ち着かない様子で俺を見た。

「いや、大丈夫だけど…話ってなに?」

俺がそう尋ねれば木嶋龍は
「ちょっとついて来て」
と言って歩き出した。

前を歩く木嶋龍の背中を見ながら、自分を落ち着かせる。

顔には出ていないが、正直俺の心臓は壊れそうなくらいバクバク言っている。

だって、クリスマスイブだぞ?

今だって道行く恋人らしき人達が歩いている。そんな時、というか、場所で、好きな人と歩いているんだぞ。

何を言われるのかわからないのは不安だが、悪いことはないだろうと思って背中を追う。


「よし、着いた。」

着いた場所は、街が見下ろせる高台だった。街はクリスマス用の装飾が飾られていて、遠目からでも綺麗だった。

(夜だったら、イルミネーションとかでもっと綺麗なんだろうな・・・)


「ここ、良い場所だろ?寒いから人もほとんど来ないし。お気に入りの場所なんだ。」

得意そうにそう言って、ぽつんとある木のベンチに手を当てて座るように促してくる。

俺が隣に座ると満足そうに笑って、鞄からブランケットを出し、それを2人で羽織って、たわいもない話をした。

日が傾いてきて、イルミネーションが光だした頃、木嶋龍は急に立ち上がった。
それから、すぅっ、と深呼吸をして、俺の前にひざまずいた。

「え?どうしたんだ?」

木嶋龍は真っ直ぐ俺を見た。

「太狼、僕、太狼が好きだよ。」

凛とした声でその言葉は放たれた。

俺は突然のことに理解できず、反射で聞き返した。
すると、木嶋龍はそんな俺に優しく笑った。

「僕は太狼が好きだ。」

その言葉に不思議と涙が溢れた。

「俺は、俺は…」

嬉しいはずなのに、頭の中で困惑する。

「俺も、お前が好きだ…でも、でも…」

不安だった。
俺と付き合うことで、人気者の木嶋龍が壊れるんじゃないか。木嶋龍に不利な生き方をさせてしまうんじゃないか。
他にも沢山の不安が俺を襲った。

だけど、木嶋龍はそんな俺の不安も簡単に変えてしまう。

「太狼、僕達は世界の敵だって言ったよね。きっと、幸せになることも許されないのかもしれない。だから…」

木嶋龍は俺の手を取って優しく握った。

「僕と一緒に不幸になろう。それで、ずっと、一緒に生きよう。」

「一緒に不幸に…?」

「うん。世界から見たら僕達はきっと不幸だ。だって、世界の敵になった時点で生き難いんだよ。それなのに、僕はさらに生き難い幸せを求めてる。だから、きっと不幸なんだよ。でも、そんな世界から見た不幸でも、僕には幸せなんだ。ねぇ、太狼は?僕と居て、幸せ?」

少し不安そうに、それでも力強くそれでいて優しく、木嶋龍は俺を見た。

「俺は、お前といて……幸せだよ。だから、幸せだから、お前と一緒に不幸になりたい。」

木嶋龍は、俺の言葉に やった って安心したように言って、泣きそうな笑顔を見せてくれた。

俺の心は幸せで一杯になった。

その幸せは、世界から見たら不幸かもしれない。それでも、俺達は幸せだから、不幸だって幸せだから。


それから、俺は木嶋龍とキラキラ光るイルミネーションを高台から見下ろした。

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