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俺はヒーローになりたかった[大人組過去編]
過去の弱音side太狼
しおりを挟む初めて会ったとき、智也は笑っていた。
けれど、それから段々と時間が過ぎて智也の笑顔は変わってしまった。
自分が元気だと、大丈夫だと魅せるような笑顔に。
その笑顔すら壊れてしまったのは中学生の時だ。
智也はその日、表情一つ動かさなかった。何も感じていないみたいに、周りに誰もいないみたいに、ただ、最低限の会話をするだけだった。
けれど、その日、その日は特別だったんだ。
本当なら、沢山の友達に囲まれて幸せそうに笑って、楽しそうにしている日だ。
けれど、その日智也はそれどころじゃなかったんだ。
放課後、どうしてもその日のうちに伝えたかったことがあって智也を探した。
屋上に行くと、金網の近くに智也が立っていた。
「智也。」
俺が呼ぶと、智也は驚いたのか ガシャン と金網を揺らした。それから、振り返らないで返事をした。
「テンテンか、どうしたの?」
「えーと、その、なんだ…。智也、今日誕生日だろ。産まれてきてくれて、ありがとうな。」
本当は智也の他の友達も言いたそうにしていたが、智也の雰囲気がそれを避けさせていた。
だけど、どうしても俺はそう言いたかった。
「誕生日だし、お前と会えてよかったって、どうしても伝えたかった。俺は、お前がいなかったらきっとこんなに楽しくなかったよ。ありがとうな。」
俺がそう言うと、智也はゆっくりと振り向いた。
「でも、でも、僕は・・・」
そう言って言葉を詰まらせた智也は目を真っ赤にして泣いていた。きっと、俺がくる前から涙を流していたんだろう。
その顔と今日の態度、そして今の反応で何があったのかは、大体分かった。
(また両親に何か言われたんだ。)
苦しそうに涙を流す智也を安心させたくて肩を掴んだ。
「大丈夫だ。俺が居る。俺はお前の味方だ。」
俺の言葉に、智也は小さく言葉を落とし始めた。
「また、喧嘩して、今日は酷くて……僕が、僕のせいだって…僕がいなければ、いない方が…だけど、でも、僕はいらないって……。」
(あいつら…なんてこと…)
フツフツと体の底から怒りが溢れて、そんな奴のせいで傷付いてる智也が苦しそうで、悲しかった。
「俺は!…俺は……お前が生まれてきてくれて、よかったって……俺は思うけど?」
「え……?」
「俺は、智也が居てよかったよ。お前と出会えて楽しいことが増えたんだ。お前が居なかったら、俺はきっと今思える幸せとか、楽しいことってのが半分以上無くなってた。智也がいたから、俺は幸せが増えたんだよ。」
その日は、智也が泣くのに飽きるまでずっと屋上に居た。
次の日、智也はその日のことが無かったみたいにヘラヘラしたやつに戻った。
けれど、智也の笑顔は前より少なくなった。
いつだって、心配かけないように、何事もなかったみたいに笑顔を貼りつけて、限界にならないと、弱音すら聞かせてくれない。
それでも、智也がその弱音を吐くのは俺にだけだから、どうにかしてその弱音を受け止めたいと、包んでやりたいと思っていた。
けれど、高校に入るまで智也が弱音を吐いたことはなかった。
だから、目の前で泣き出した智也に“あの誕生日”より酷いことが起きたんだと思った。
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