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第三章 謎と試練
51 モテ男の苦悩
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「キャプテーン! キャプテンキャプテンキャプテーン!」
練習中、騒々しく駆け寄ってくるのはレオとペペのおチャラけコンビ。
「なんだなんだ!? どうした急に」
「悪ぃ悪ぃ、今しかチャンスがないと思ったんだ」
「ミアちゃんアリスちゃん未来ちゃんフィロちゃんさんがコートから離れてて、凛ちゃんラーラちゃんも近くにはいない。絶好の機会だなー」
「へ? 女好きのお前らがなんでそんな避けるようなことしてんだ?」
「お前"ら"って……俺は別に違うからぁ」
「馬鹿お前! 俺は今から大切な話をするんだ! 女の子たちには絶対に聞かれたくない話だ!
俺はモテるからな。女の子たちに聞き耳立てられるどころか服に盗聴器くらい付けられててもおかしくねえ。だからこの機をうかがってたんよ!」
「いや、盗聴器付けられてんならコートから離れてても関係ないだろ……」
「……あ」
「…………」
「ギャハハ、気づいてなかったのかよ! レオお前ちょくちょく馬鹿だよなぁー」
「やべやべ! 確かにその通りじゃねえか! くそ! 俺に心休まる時間はねえってのか!?」
「大丈夫だって、お前に盗聴器付けてたとしても1日でその不要さに気づくだろうから」
「はあっ!? どういう意味だよそれはっ!」
相変わらず賑やかなやつらだ。
さて、そろそろ話を進めるとするか。
「それで、俺に言いたい大切な話ってなんだ?」
「おお、それな! えっと……やべ、緊張してきた!」
「大丈夫だレオ! キャプテンは男だ! 女の子じゃない!」
「おおそうだな。キャプテンは男。可愛さなんて全く無い。男……男……」
何を見せられてるんだこれは。
それはそうとレオの大切な話か。何か少し思い当たりがあった気がするが……思い出せない。
「ゴホン! えっとな、実は俺……。
パスがくっっっっっっっそ下手なんだ!!!
は、恥ずかしいから女の子には絶対言うなよな!」
なるほどな。そういう欠点は女子には聞かれたくないか。
あれ? でもレオって
「え? パス下手なの?」
「だ、だからそう言ってるだろ! あんま声出すなって!」
あれあれ? これは俺の情報と違う。
レオ・シルバ。女好きなイメージが先行しているせいで隠れているが、実はかなりサッカーが上手い。このチームでも五本の指に入る実力者と言っても過言ではないだろう。もちろん、クレのように司令塔にはなれるタイプではないが。
そして、フランス代表時代はその実力でチームの中心となり勝利に貢献していた男だ。当然苦手なプレーがあるという情報は無かった。
「へぇ、それは知らなかった。でもフランス代表時代は普通にパスしてなかったか?」
「あいつらとは付き合いも長いからなぁ。俺のパスの実力を知った上で合わせてくれてたんだ。いやー、いいチームだったぜ」
「なるほどね。そういえばオグレスとの試合のときもペペと上手く連携してたけど、もしかしてお前ら2人って付き合い長かったりするのか?」
「全然? 初対面だったぜ?
それなのにあんだけ連携できたの、こいつがシンプルにヤバいんよ」
「そー、俺がヤバいの。ヤバ上手いの」
あのとき、未来も言っていたようにペペがレオを動かしていたのは見ていてもわかった。
だが下手なパスのフォローまで含めて動かしていたとは。
恐るべき、天才ペペ・アポダカ。
「ちなみに、パスが下手ってどれくらい下手なんだ?」
「いやぁー、まじで下手だぜ? 誇張じゃなく、シャレにならないレベルで」
「この前の試合さー、空中でパスを繋げるって作戦だったじゃん? それ聞いたこいつめちゃくちゃ焦ってさ、ずっとパスの来なさそうな位置に隠れてたんだよなー」
「ちょ、馬鹿、それは言うなって!」
おいおいまじか。全く気づいてなかったぞそんなの。どれだけ必死に隠れてたんだよ。
「違うんだってキャプテン! 俺がパスに参加してもミスるだけだしさ。それにもちろんサボってたわけじゃないぜ? ちゃんと相手のディフェンスは引き付けてたからさ? 許してくれるよな? 俺たち親友だもんな?」
まあ終わった試合だし別に怒りはしない。仕事はしていたみたいだし、言い出せなかった理由も今のレオを見ていれば簡単にわかるしな。
それにこれの対策は簡単だろう。
「まあまあ別に気にしてないって。凛に言うだけで許してやるよ」
「それがダメなんだっでえ!」
「えっと、フランス代表時代は合わせられてたんだよな。
てことは俺たちがレオに合わせられるように練習すればいいってことであってるか?」
「いーや、レオの話によると、こいつのパスに合わせられるようになるまで2年ほどかかったらしいんだ。
だから正攻法でやろうとすると間に合わないんじゃないかなー。
ま、俺みたいな天才なら話は別だけどね!」
「はっ、に、2年!? レオ、お前どんだけ」
「ご迷惑をおかけしております」
「え、でも、2年って、代表チームでいる期間そんなに無かっただろ? どうやって練習したんだ!?」
「んー、フランス代表って1つのクラブチームからの持ち上がりが多かったんだよな。だから代表に選ばれる前から連携はできてたって感じだ。正確には逆で俺を活かせるメンバーだから選ばれたんだと思ってるけどな」
「なるほどな……。っていっても他にやり方があるわけじゃない。全力で練習する、しかないんじゃないのか?」
「いやぁ、俺もそれしかないとは思ってるんだけどよぉ……」
「あー、練習する姿を女子たちに見られたくないと」
あ、今更思い出した。
最初のリーダーたちとの話し合いのとき、クレが言ってたな、レオは一部の練習をやりたがらないって。
それがこれ、パス練習だったのか。
「そーうなんだよ! 今の彼女たちには俺が完璧超人に映っていることだろう! そんな俺に欠点があるとすれば彼女たちを失望させてしまう! それはダメだ! モテ男には女の子たちの期待に応え続ける責任がある! それに、女の子の悲しむ顔は見たくないし、さ」
「えー、そんなキメ顔で言われても……。
もうモテキャラは辞めて抜けてるけどいい所もあるキャラに変えたら?
正直勝てないだろ、アランとかクレに」
「あはは! 言っちゃった!」
「おいおいおいおいそれを言うんじゃねえ!
あいつらがかっけえのはわかってんだよ。でも大丈夫、俺の方が女の子の扱い方は上なんだよ!
聞いてくれ、この前ミアちゃんに――」
「私がどうかした?」
突如現れたミアに俺たち3人は一瞬固まる。
「あ、ミ、ミアちゃん。いつからここに……?」
「いつからって、今だけど……。
それより何やってるの? こんな隅でこそこそと。
べ、別に話の内容が気になってるとかじゃないけど!」
危ない。話は聞かれていなかったみたいだ。てかこれだけで話中断かよ。め、めんどくせえぇぇ。
と、その時
「ミアちゃん避けて!」
「え……」
ミアに対して流れ弾のボールが飛んでくる。突然のことで動けないミア。ぶつかる、そう思ったが……
「よっ、と」
ミアの目の前でボールを受け止めるレオ。相変わらず上手なトラップだ。それに、こんな突然の状況でも動けるあたり、伊達にモテ男やってないんだな、とも思う。
ん? もしかして俺がモテないのってこういうときに咄嗟に動けないからなのか……?
「大丈夫か? ミアちゃん」
「だ、大丈夫。
って、別にあんたに取ってもらわなくても、ト、トラップくらい私でもできるんだからね!」
これは彼女なりの感謝の言葉か。俺も何となくわかるようになってきた。大丈夫だ、俺だって女の子の気持ちくらいわかる。モテようと思えば……モテる……かも……。
「ごめーん! ミアちゃん怪我はない!?
レ、レオくんも、ありがとうございます!」
「よゆーよゆー、気にしなくていいよー、ラーラちゃん」
「あ、ど、どうもです。
それで、ボールも取ってもらえたら嬉しいですー!」
「おけおけ。じゃあいくぜー」
「「あ」」
ラーラにボールを蹴り届けようとするレオ。ダメだ、これもパスの1種。ミアもラーラも見ている、パスの下手さがバレてしまう。
「おいレオ、それは――」
「そいっ……あ、やべ」
レオも蹴ってから気づいたようだ。女子2人に礼を言われて有頂天になっていたのだろうか。
しかし蹴ってしまったボールは止まらない。
ボールの行方は……
練習中、騒々しく駆け寄ってくるのはレオとペペのおチャラけコンビ。
「なんだなんだ!? どうした急に」
「悪ぃ悪ぃ、今しかチャンスがないと思ったんだ」
「ミアちゃんアリスちゃん未来ちゃんフィロちゃんさんがコートから離れてて、凛ちゃんラーラちゃんも近くにはいない。絶好の機会だなー」
「へ? 女好きのお前らがなんでそんな避けるようなことしてんだ?」
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「馬鹿お前! 俺は今から大切な話をするんだ! 女の子たちには絶対に聞かれたくない話だ!
俺はモテるからな。女の子たちに聞き耳立てられるどころか服に盗聴器くらい付けられててもおかしくねえ。だからこの機をうかがってたんよ!」
「いや、盗聴器付けられてんならコートから離れてても関係ないだろ……」
「……あ」
「…………」
「ギャハハ、気づいてなかったのかよ! レオお前ちょくちょく馬鹿だよなぁー」
「やべやべ! 確かにその通りじゃねえか! くそ! 俺に心休まる時間はねえってのか!?」
「大丈夫だって、お前に盗聴器付けてたとしても1日でその不要さに気づくだろうから」
「はあっ!? どういう意味だよそれはっ!」
相変わらず賑やかなやつらだ。
さて、そろそろ話を進めるとするか。
「それで、俺に言いたい大切な話ってなんだ?」
「おお、それな! えっと……やべ、緊張してきた!」
「大丈夫だレオ! キャプテンは男だ! 女の子じゃない!」
「おおそうだな。キャプテンは男。可愛さなんて全く無い。男……男……」
何を見せられてるんだこれは。
それはそうとレオの大切な話か。何か少し思い当たりがあった気がするが……思い出せない。
「ゴホン! えっとな、実は俺……。
パスがくっっっっっっっそ下手なんだ!!!
は、恥ずかしいから女の子には絶対言うなよな!」
なるほどな。そういう欠点は女子には聞かれたくないか。
あれ? でもレオって
「え? パス下手なの?」
「だ、だからそう言ってるだろ! あんま声出すなって!」
あれあれ? これは俺の情報と違う。
レオ・シルバ。女好きなイメージが先行しているせいで隠れているが、実はかなりサッカーが上手い。このチームでも五本の指に入る実力者と言っても過言ではないだろう。もちろん、クレのように司令塔にはなれるタイプではないが。
そして、フランス代表時代はその実力でチームの中心となり勝利に貢献していた男だ。当然苦手なプレーがあるという情報は無かった。
「へぇ、それは知らなかった。でもフランス代表時代は普通にパスしてなかったか?」
「あいつらとは付き合いも長いからなぁ。俺のパスの実力を知った上で合わせてくれてたんだ。いやー、いいチームだったぜ」
「なるほどね。そういえばオグレスとの試合のときもペペと上手く連携してたけど、もしかしてお前ら2人って付き合い長かったりするのか?」
「全然? 初対面だったぜ?
それなのにあんだけ連携できたの、こいつがシンプルにヤバいんよ」
「そー、俺がヤバいの。ヤバ上手いの」
あのとき、未来も言っていたようにペペがレオを動かしていたのは見ていてもわかった。
だが下手なパスのフォローまで含めて動かしていたとは。
恐るべき、天才ペペ・アポダカ。
「ちなみに、パスが下手ってどれくらい下手なんだ?」
「いやぁー、まじで下手だぜ? 誇張じゃなく、シャレにならないレベルで」
「この前の試合さー、空中でパスを繋げるって作戦だったじゃん? それ聞いたこいつめちゃくちゃ焦ってさ、ずっとパスの来なさそうな位置に隠れてたんだよなー」
「ちょ、馬鹿、それは言うなって!」
おいおいまじか。全く気づいてなかったぞそんなの。どれだけ必死に隠れてたんだよ。
「違うんだってキャプテン! 俺がパスに参加してもミスるだけだしさ。それにもちろんサボってたわけじゃないぜ? ちゃんと相手のディフェンスは引き付けてたからさ? 許してくれるよな? 俺たち親友だもんな?」
まあ終わった試合だし別に怒りはしない。仕事はしていたみたいだし、言い出せなかった理由も今のレオを見ていれば簡単にわかるしな。
それにこれの対策は簡単だろう。
「まあまあ別に気にしてないって。凛に言うだけで許してやるよ」
「それがダメなんだっでえ!」
「えっと、フランス代表時代は合わせられてたんだよな。
てことは俺たちがレオに合わせられるように練習すればいいってことであってるか?」
「いーや、レオの話によると、こいつのパスに合わせられるようになるまで2年ほどかかったらしいんだ。
だから正攻法でやろうとすると間に合わないんじゃないかなー。
ま、俺みたいな天才なら話は別だけどね!」
「はっ、に、2年!? レオ、お前どんだけ」
「ご迷惑をおかけしております」
「え、でも、2年って、代表チームでいる期間そんなに無かっただろ? どうやって練習したんだ!?」
「んー、フランス代表って1つのクラブチームからの持ち上がりが多かったんだよな。だから代表に選ばれる前から連携はできてたって感じだ。正確には逆で俺を活かせるメンバーだから選ばれたんだと思ってるけどな」
「なるほどな……。っていっても他にやり方があるわけじゃない。全力で練習する、しかないんじゃないのか?」
「いやぁ、俺もそれしかないとは思ってるんだけどよぉ……」
「あー、練習する姿を女子たちに見られたくないと」
あ、今更思い出した。
最初のリーダーたちとの話し合いのとき、クレが言ってたな、レオは一部の練習をやりたがらないって。
それがこれ、パス練習だったのか。
「そーうなんだよ! 今の彼女たちには俺が完璧超人に映っていることだろう! そんな俺に欠点があるとすれば彼女たちを失望させてしまう! それはダメだ! モテ男には女の子たちの期待に応え続ける責任がある! それに、女の子の悲しむ顔は見たくないし、さ」
「えー、そんなキメ顔で言われても……。
もうモテキャラは辞めて抜けてるけどいい所もあるキャラに変えたら?
正直勝てないだろ、アランとかクレに」
「あはは! 言っちゃった!」
「おいおいおいおいそれを言うんじゃねえ!
あいつらがかっけえのはわかってんだよ。でも大丈夫、俺の方が女の子の扱い方は上なんだよ!
聞いてくれ、この前ミアちゃんに――」
「私がどうかした?」
突如現れたミアに俺たち3人は一瞬固まる。
「あ、ミ、ミアちゃん。いつからここに……?」
「いつからって、今だけど……。
それより何やってるの? こんな隅でこそこそと。
べ、別に話の内容が気になってるとかじゃないけど!」
危ない。話は聞かれていなかったみたいだ。てかこれだけで話中断かよ。め、めんどくせえぇぇ。
と、その時
「ミアちゃん避けて!」
「え……」
ミアに対して流れ弾のボールが飛んでくる。突然のことで動けないミア。ぶつかる、そう思ったが……
「よっ、と」
ミアの目の前でボールを受け止めるレオ。相変わらず上手なトラップだ。それに、こんな突然の状況でも動けるあたり、伊達にモテ男やってないんだな、とも思う。
ん? もしかして俺がモテないのってこういうときに咄嗟に動けないからなのか……?
「大丈夫か? ミアちゃん」
「だ、大丈夫。
って、別にあんたに取ってもらわなくても、ト、トラップくらい私でもできるんだからね!」
これは彼女なりの感謝の言葉か。俺も何となくわかるようになってきた。大丈夫だ、俺だって女の子の気持ちくらいわかる。モテようと思えば……モテる……かも……。
「ごめーん! ミアちゃん怪我はない!?
レ、レオくんも、ありがとうございます!」
「よゆーよゆー、気にしなくていいよー、ラーラちゃん」
「あ、ど、どうもです。
それで、ボールも取ってもらえたら嬉しいですー!」
「おけおけ。じゃあいくぜー」
「「あ」」
ラーラにボールを蹴り届けようとするレオ。ダメだ、これもパスの1種。ミアもラーラも見ている、パスの下手さがバレてしまう。
「おいレオ、それは――」
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しかし蹴ってしまったボールは止まらない。
ボールの行方は……
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