グローリー・リーグ -宇宙サッカー奮闘記-

山中カエル

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第四章 新たな一歩

85 名探偵ヒロくん

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 「確信?」

 ここで、平然としていたフィロの胸の内でざわめきが起こる。
 しかし、表情には出さない。
 これがヒロのかまかけである可能性を考慮しているからだ。

 だが、そんな苦労も無駄に終わる。

 「とぼけるのが上手いなぁ。
 じゃあ説明するけどね、俺が気づいたのは第一戦、ギガデスとの試合を見てたときなんだー。
 明らかにおかしい点があったよね? どこかわかる?」

 「…………」

 「わからない? 正解は、地面が揺らされたときの反応!
 そろそろピンときたんじゃない?」

 その言葉を聞き、フィロの顔が青ざめる。
 そうだ。確かに今考えるとこれは"おかしい"。
 なぜ気づかなかったんだと自分を責めると同時に、気づいたとてどう対処すればよかったのだと頭を悩ます。

 「うーん、その反応! 気づいたかな??
 あの揺れで選手たちはコケまくってたのに、観客たちは全員微動だにしてなかったもんねー。
 同じ星の人たちで、こんなに差がつくことってあるかな?
 うんうん、これはどう考えてもおかしい!」

 「そ、それは……」

 「何? もしかして選手たちが偶然揺れに弱いとか言おうとしてる?
 無理無理。サッカー選手なら体幹は鍛えられてるはずだし、それに観客たち全員が揺れに耐性あった時点でどう考えても偶然じゃ片付けられないんだよねー。
 あ、選手たちの中にもコケなかった人いたけど、その人は本当のオグレス星人って感じかな! だから、正確には他星とオグレス星のハイブリッドチーム!」

 「…………」

 フィロは言葉を詰まらせる。言い訳などは全く思いつかない。
 これは立派な状況証拠。科学で誤魔化している可能性のある、オグレスが用意した証明なんかの何十倍もの重みがある決定的な証拠だ。

 「沈黙は肯定と捉えていいのかな?」

 「…………」

 終わった。フィロの頭にその四文字が浮かび上がる。
 しかし、このような絶望的な局面から、話は予想外の方向へと向かう。

 「あはは、焦ってるね。
 でも安心してよ、別にこの事で君たちを失格にしたりなんかしないからさ」

 「えっ……」

 「当然でしょ?
 このルールは、複数の星で同盟を組んでゼラに歯向かわれるのを危惧したもの。
 別にサッカーの有利不利のために作られたルールじゃないからね。君たちの星がサッカーに不向きなのは理解してるし大して気にしてないよ」

 「そ、そうなんで――」
 「ただ一つ、これだけ聞かせて?
 組んだのは一つの星だけだよね?」

 「え」

 「もし複数の星と組んでたら、今すぐに失格にするけど、どう?
 これは嘘無しで答えてね。
 ここで嘘をついたら、どうなるかはわかるよね?」

 ゼラの幹部、その気迫。あまりの圧にフィロはたじろいでしまう。
 嘘をついたらこの星は潰される。そう確信させられる凄みがあった。

 「一つだけです。
 嘘はついていません」

 「……うん! それならよかった!
 でもね、そうは言ったもののルールを違反したんだ。これを見過ごすのはゼラのメンツに関わるし、何より不平等だ。ペナルティ無しとは思っていないよね?」

 「はい、覚悟はできています」

 フィロも流石にペナルティの一つも無しだとは思っていない。しかし、それを甘んじて受け入れる覚悟はできている。
 最悪である失格を免れたのだ。多少のペナルティがなんだというのだ。

 「そーだなー。とりあえず科学技術の禁止かなー。
 あ、今までに申請されたものとか特訓施設とかは別にいいよ。
 つまり、これから新規に試合で使える科学アイテムの申請は受け付けないってこと。これでいい?」

 「はい、問題ありません。
 寛大な処置、心より感謝致します」

 正直キツくはある。
 これから先、試合を有利にするために作ろうとしていたアイテムの構想はたくさんあった。それが全て失われたのだ。

 しかし、今ある科学技術が許されたこと。そして何より失格を免れただけでも満足だ。
 これ以上何か言ってペナルティを重くされるのが最悪だと判断し、フィロは素直に相手に従う。

 「素直でよろしい!
 そしたら、次の試合は7日後、相手はメラキュラ!
 というわけで頑張ってねー、色々と!」

 こうしてゼラからの定期連絡は終了した。

 ***

 ー現在ー

 「というわけなの。
 失格という最悪の事態は避けられたわけだけど、科学技術は封印されてしまったわ。ごめんなさい」

 「謝らないでください、フィロさん。
 正直回避不可能の事態だったと思います。
 それなら、失格にされなかっただけ大きな成果です。ありがとうございました」

 「そんな、アランくん頭を上げて。
 いくらそう言われても私は納得できない。もっと上手くやれたと思ってる。このチームのサポートを任された者として不甲斐ないわ」

 「ほっほ、フィロ含めお前さんたち、そう暗い顔をするでない。
 どうだろうとやることは変わらん。サッカーが上手くなる、これだけじゃろう。
 大丈夫じゃ。特訓場での特訓をこなせば、科学技術など無くても宇宙のどのチームとも渡り合えるチームになっておる。安心して明日から特訓に望めばいいわい。
 それじゃ、明日からの特訓に備えて早く寝るんじゃぞー、解散」

 アウラスの言葉で場が開く。
 まだ頭を整理しきれていないメンバーも中にはいるが、それでも自分のすべきことはきちんと理解している。
 全員、明日の特訓までには気持ちを切り替えられそうだ。

 そんな中、クレートがあることに気がつく。

 「ん? ネイト、どこだ?」
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