【BL】シロとクロ ※R-15

コウサカチヅル

文字の大きさ
8 / 10
おまけ

後日譚『鬼の国天下一武道会と二つ名』

しおりを挟む
「ねえねえ、シロ様!」
 ここは、新婚しんこんであるシロとクロ、ふたりの居室きょしつ
 クロはその大きな黒いをぶんぶんとりながら、ひとみかがやかせつつ、伴侶はんりょである鬼の国の王子・シロへかたりかける。敬意けいいをこめ、クロは婚姻後こんいんごもシロを『様づけ』で呼びつづけることをやめていない。
「なんですか、クロ?」
 シロも“とうとすぎる・オブ・ザ・今世こんせいなのでやすやすと普通ふつうの言葉でなど話せない”らしく、変わらずやわらかな敬語けいごでクロにこたえた。

「ぼく、ずっと気になっていたことがあるのだけれど!」
「えっ、なんですか私がどれだけクロを愛しているかってことですかそれでしたらこの全世界の一兆万倍よりさらに大きく深いですしなんだったらむげんだいの三兆倍と言っても過言かごんでは――」
「シロ様、少し息継いきつぎをしようか!? えと、それはとっても『光栄こうえい』だけれど、今聞いてみたいのはね……」


✿✿✿✿✿


「鬼の国天下一武道会てんかいちぶどうかいのお話、ですか?」
 シロがその白銀はくぎん睫毛まつげまたたかせながら、クロへ聞きかえす。
「うん! えっとね、もしご迷惑めいわくでなければなのだけれど……。シロ様がかっこよく優勝ゆうしょうしたお話、きたいな……?」
 上目遣うわめづかいで『おねだり』するクロに、シロが数秒(物理的に)天にされたのもご愛嬌あいきょう
 クロへの愛で元気に蘇生フェニックスしたシロは、咳払せきばらいをしながらいそいそと話しはじめた。

「そうですね、私が決勝で対戦たいせんした相手はクレナイでした」
「ええっ!?」
 その言葉にクロは驚き、まゆくもらせる。
なかよしさん同士どうしが戦うのって、苦しいよね……」
 しょんぼりとしっぽを下げるクロに、シロはあわてて言いつのった。
「いえこれ、むしろすごく楽しげというかちょっとした失笑しっしょうものですから!! まず――」


✿✿✿✿✿


 ――時は数年前。二十年に一度、王位おういをかけて行わなれる『鬼の国天下一武道会』の日だ。さいわい、空は気持ちがいいほど晴れわたっていた。

 シロは、りふられた対戦たいせんブロックが比較的ひかくてき怪力かいりき実力行使枠じつりょくこうしわくだったため、飛び道具とも言える妖術ようじゅつ駆使くしし、順調じゅんちょうに決勝まで勝ちすすむことに成功する。

(なんだかんだ、結構けっこう負けず嫌いなのですよねえ、私は)

 そんなことを暢気のんきに思いながら、もうひとブロックの準決勝会場じゅんけっしょうかいじょうをちらりとのぞく。

 ちょうど試合開始直前のその組み合わせは、コガネとクレナイ――。

「はじめ!!」

 審判しんぱんの声がひびいた刹那、ふとシロは、クレナイの真横まよこいてある、変わった形状けいじょうたるからつつのようなものがびた器具きぐを、視界しかいとらえる。

 そばにいた鬼へ、さりげなくたずねる前に、答えは出た。

「悪く思うなよ、コガネ」
「きゃーんっ★!」
 ぶしゃあぁあ!! と勢いよく筒先つつさきから真紫色まむらさきいろ液体えきたいきだし、コガネは――むしろみずから進んで当たりに行った。

 ビクビクと痙攣けいれんしながら、コガネは至極しごく幸せそうである。
「はぁ、はぁ……イケメンにおしるぶっかけられるなんて、なんて最高な体験なの……♡♡」
語弊ごへいのある言いかたするな。ほら、解毒剤げどくざい

 眉をひそめながら、ぺいっと薬瓶やくびんほうるクレナイ。

「イケ、ボ……ずっきゅんラ、ヴ……♡」
 手をふるわせながらもなんとかびんきこみ、言い残してぱたり、とコガネは完全かんぜんした。

 審判はコガネにおそおそる近づいたのち、勝敗しょうはいげる。

「コガネ、戦闘不能せんとうふのう! 勝者しょうしゃはクレナイとする!!」

 その歓声かんせいというより、“ウワッ……絶対こんなむごい目にいたくない……”というドン引きをこめた、まばらな拍手はくしゅたされた。

 それを見たシロは思った。

(ウワッ……こんな目に遭う前に妖術でツブそう……)


✿✿✿✿✿


「コガネの死のおかげで、事前じぜん結界けっかいることができました☆それでまぁ、なんとか今のいたわけです♡」
「コガネ様、まだ元気に『ご存命ぞんめい』だよ!? あと一番気になっていた決勝戦のお話がまるっとふんわりしているね?!」

 ぴゃーっ、とつっこむクロに、シロはふわっと優しい笑顔を浮かべる。

「私たち鬼は、存外ぞんがい単純な価値観かちかんを持っているものなのです。戦いがけたら、もういつもどおりの日常にもどってゆく。万一まんいち相手が死のうが、傷つけられようがね。――それって、クロにとって『異常いじょう』だったりするのでしょうか……?」
 どこかさみしそうにも見えるかれへ、クロはいきおいよく首をり、最愛の存在シロうでの中に飛びこんだ。

「ううん! ……ううん。全部がシロ様を『かたちづくってきたいとおしいもの』だもの。ぼくは全部が『大切』で、全部に『感謝』だよ!!」

 クロはすりっ、とシロにほおずりし、ちゅっ、とシロのつややかなくちびるにくちづけた。
 見つめあうふたりは、どちらかともなく笑いだす。


 ――とどのつまり、相思相愛そうしそうあいなのだ。


「そうそう、それ以来いらい、クレナイったらしばらく『毒汁どくじるぶっかけ鬼~セクボをのせて~』ってふたで、水面下すいめんかでは有名だったんですよ~!」
「ふふ、なんだかお店のごはんみたいなお名前だね!」

「……おい。」
 なぜかドヤ顔のシロと、シロの言葉を微笑ほほえましげに受けるクロの背後で、突如響とつじょひびきわたる当事者とうじしゃセクボ。クロはぴゃん、と正座せいざをしたまま飛びあがり、シロは瞬時しゅんじ大量たいりょうあせながしながらも、引きつった笑顔でおうじた。
「あっ……あはは~、クレナイ。なにか用事ようじでも――」
全員ぜんいんだ」
「……はい?」
「俺のことをそのふざけた『毒汁ぶっかけ鬼~セクボをのせて~』★とか呼んだやから、全員分の名前をよこせ……」
「…………はい……」
 シ ロ は 同 胞な か ま を 売 っ た !


✿✿✿✿✿


 後日、クレナイが標的ターゲット全員に改めて毒汁をぶっかけに行ったのは、言うまでもない――。



【終】
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

処理中です...