5 / 10
本編+挿話
最終話【前編】
しおりを挟む
鬼の国は、『春たけなわ』だ。
あれから、シロ様と四度、『満月』の日を過ごした。
最後のときは、一番『ひどかった』。
高熱と『穢れ』に蝕まれ、寝衣の衿を握りしめて苦しむシロ様を、ぼくはただ、ぎゅっと抱きしめて、彼の目尻ににじむ涙を舐めとって。
「そばにいるよ。『ひとり』じゃないよ……」
そう、言葉を紡ぎつづけることしかできなかった。
シロ様は、一度だって『弱音』を言うことなんてなくて。
ぼくは、『無力』だ。
✿✿✿✿✿
そんなシロ様が、最近(今までもたまに、どうかしちゃったのかな?? って思うときはあったけれど)おかしい。
目が合うとそわそわしてしまうことが増えたし、この前は一緒に眠るとき、寝衣からのぞく滑らかな胸に頬ずりしたら、びくーん! って跳ねて、急いでお手洗いへ行ってしまった(お着物の上からはいつもさせてくれるのに……これは直接だとくすぐったかった、だけ??)。
ぼく、なにかしちゃったのかな……。
✿✿✿✿✿
朝。
障子からやわらかな明るさを感じとり、目をゆっくりと開けると、布団で後ろ向きに座っているシロ様が、お着物を開きながら、ぶつぶつとつぶやいている声が聞こえた。
「うう、ぱんつ、五枚重ねにしなきゃだめだろうか……」
(ぱんつ……?)
目をこすりながらシロ様の言葉を反芻する。ぱんつが、五枚……??
「シロさま、ぱんつって一枚はけばいいんだよね……?」
ねぼけたまま、なんの気なしにひょいっとシロ様をのぞきこもうとすると……。
「ひゃあっっ!!」
シロ様は素早く股の間を押える。
「…………」
「…………」
耳まで真っ赤になって気まずそうに、目を泳がせるシロ様。
ええと、ぱんつが五枚必要で、大切なところを隠さなくちゃいけなくて……それは、つまり。
「……あ!」
真意に気づいて、ぼくも沸騰したみたいに赤くなる。
「ご、ごめんなさい、シロ様! あの、その、オスだもんね!! そうなるときもあるよね!!」
真っ赤なまま、どんどんうつむいてゆくシロ様へ、必死にフォローをする。
「ほらだって、朝は特にっ」
「……クロは?」
「え」
「クロがこうなってるの、見たことないですけれど」
隠しながらも、少し拗ねたように言うシロ様。
いや、普通になるときはなるよ……?
欲情しちゃったときも、シロ様がいないときに隠れて『処理』しているし……。
「あの、シロさ」
説明しようとしたとき、
「失礼いたします。朝餉をお持ちいたしました」
「あ、ああ。ありがとう……そこへ置いておいていただけますか」
襖越しに女中さんの声がして、そのまま、この話題は立ち消えになってしまった。
✿✿✿✿✿
「それじゃあ、行ってきますね……」
「い、行ってらっしゃい……」
ご飯が終わり、ぎこちない空気のままお部屋を出てゆこうとするシロ様。
なんだか、このままではいけない気がした。
襖に手をかけたシロ様の袖をとっさにつかんで、上目遣いに打ち明ける。
「ぼ、ぼくもなるよ!」
「?」
顔が熱くて、心臓が爆発しそうだけれど、伝えたかった。
「血の巡りがよくなったり、すきなひとのこと想ったりしたら、普通におっきくなる……オスの部分」
シロ様も、伝染したみたいにぶわっと赤くなる。
「だ、だからね、それは『当たり前』の仕組みなの! シロ様とぼくは、『一緒』、だからね!!」
「…………はぁ~。本当に、あなたって狼は……」
深いため息と共に、ぼくの肩に手を置き、しゃがみこむシロ様。
「あの……? シロ様?」
「適わないなぁ」
シロ様がへにゃっと、困ったように笑った。
「???」
「帰ってきたら、覚悟しておいてくださいね。もっと話したい」
「……え」
にこっとぼくに笑いかけて、お部屋から出てゆくシロ様。
話すってなにを??
よくわからないけれど、その笑顔がすごく色っぽくて。ぼくはしばらく、ぽーっとしてしまった。
✿✿✿✿✿
十数分くらい夢見心地だったけれど、ずうっとぽーっとしていちゃ『だめ』だ、なにかお手伝いできることを探してがんばらなくちゃ、と、お部屋のお掃除をすることにする。
文机に目を移すと、そこには。
「あれ。この箱……」
桐でできたその箱は細身で、あちらこちらに色とりどりの宝石と、きれいな模様があしらわれている。すごくすごく見覚えがあって、さあっと血の気が引いた。
これ、『王家の万年筆』だ……!!
シロ様から聴いたことがある。鬼の国の大切な書類は絶対、この万年筆で署名をしなくちゃいけなくて、『国の宝』だって。
シロ様は毎日、肌身離さず持ち歩いていたのに。今日、ぼくといろいろあったことで、きっと記憶から飛んでしまったんだ。というか……。
『お仕事道具』を忘れたなんてわかっちゃったら……シロ様がクレナイ様に、命が危ういレベルのおしおきされちゃうかも……!!
どうにかクレナイ様に内緒で渡せる方法がないかな、と一生懸命考えつつ、木箱を大切に両手で包み、執務室まで静かに走る。
だんだん執務室が見えてくると、ぼくの耳は、シロ様の声をキャッチした。なんだか、この距離にしては大きい声……もしかして気づかれちゃったのかな!?
慌てて近づくにつれ、どちらかというとうれしそうな声色なので、安心したけれど。でも。
別の心配が浮かんでくる。
ど、どうしよう。もはや叫ぶような音量なのだけれど……。ぼくじゃなくても丸聞こえだよ?! もしも、鬼の国の大切なお話だったとしたら……!!
急いでノックして知らせようと、手の甲を執務室の扉へ向けたそのとき。信じられないシロ様の言葉が、辺り一面に響きわたった。
「もう本当に、心から愛しているんだ!! 襲いたい!!」
え。
頭を強く、殴られたような。
ぐわんぐわん、世界が回るような心地がした。
『心から、愛している』。
『襲いたい』……。
そうか、最近のことは全部。
クレナイ様への気持ちが、『我慢』できなくなっていたから――……。
目頭が熱くなってきた。わかっていた、はずなのに。そう。シロ様はずっと、クレナイ様と仲がよかったもの。
くちびるをぎゅっと噛んで、必死にこらえる。……泣くのは、『だめ』。まずは、『万年筆』が先。
ぼくは、静かに呼吸を整えてから、とんとんとん、と扉を叩く。そして、すぅー、と、限界までお腹に息を吸いこんで、
「シロ様あー!! 失礼します、ですーっ!!」
さっきのシロ様に負けないくらいの大きな声で叫んだ。
「クロ! どうしてここに……!?」
「騒々しいぞ、犬っころ」
「ご、ごめんなさいです、クレナイ様。シロ様、あの、これ。お仕事のときに必要と思ったから……」
驚いた様子のシロ様と、眉をひそめたクレナイ様が執務室から顔をのぞかせる。ぼくはそっと、箱に入った万年筆を差しだした。
「……ぅえっ!? 王家の万年筆……忘れていましたか私!? ああ、ありがとうございます。助かりました、クロ!」
「うん。お役に立ててうれしい。どうぞ、シロ様……」
普通に、いつも通りにしなくちゃいけないのに。
笑顔はがんばって作れても、手が、少しだけ震えてしまった。
「クロ? どうかし……」
「あ゙ぁ゙……? なに国宝、置き去りにしてくれちゃってるんだお前?? それがなきゃ仕事成り立たないだろうが……」
ぼくの手をとろうとしたシロ様の真後ろへ、瞬間移動を極めたクレナイ様は、今まで見たことがないくらい恐ろしい顔をしていた。これが本当の『鬼』というもの、なのかもしれない。
「だ、だってあの、最近いろいろ悩ましくて……テ、テヘ♡☆なーんて……」
「そうだよなぁ、モンモンモンモンしてたよな。じゃあそのモンモンパワーで20倍くらい、今日は仕事こなせるよな??」
「いやちょっと待ってクロの様子が……」
「ほらさっさと来いや」
地の底から這うような低音を響かせてシロ様の襟首をつかみ、引きずりだすクレナイ様。そんなふたりの遣り取りを、もうぼくは直視なんてできなかった。でも、できる限り、『いつも通り』を言い聞かせる。
「クレナイ様、ごめんなさいです。全部全部、ぼくのせい、なので。シロ様もごめんね、こっそりできなくて……。――応援してる」
「クっ、クロー!?!!」
シロ様の悲鳴に後ろ髪を引かれつつも、多分『真実』には気づいていない様子に『安堵』し、猛ダッシュでその場を離れる。……その場から、転がるように逃げだしたんだ。
あれから、シロ様と四度、『満月』の日を過ごした。
最後のときは、一番『ひどかった』。
高熱と『穢れ』に蝕まれ、寝衣の衿を握りしめて苦しむシロ様を、ぼくはただ、ぎゅっと抱きしめて、彼の目尻ににじむ涙を舐めとって。
「そばにいるよ。『ひとり』じゃないよ……」
そう、言葉を紡ぎつづけることしかできなかった。
シロ様は、一度だって『弱音』を言うことなんてなくて。
ぼくは、『無力』だ。
✿✿✿✿✿
そんなシロ様が、最近(今までもたまに、どうかしちゃったのかな?? って思うときはあったけれど)おかしい。
目が合うとそわそわしてしまうことが増えたし、この前は一緒に眠るとき、寝衣からのぞく滑らかな胸に頬ずりしたら、びくーん! って跳ねて、急いでお手洗いへ行ってしまった(お着物の上からはいつもさせてくれるのに……これは直接だとくすぐったかった、だけ??)。
ぼく、なにかしちゃったのかな……。
✿✿✿✿✿
朝。
障子からやわらかな明るさを感じとり、目をゆっくりと開けると、布団で後ろ向きに座っているシロ様が、お着物を開きながら、ぶつぶつとつぶやいている声が聞こえた。
「うう、ぱんつ、五枚重ねにしなきゃだめだろうか……」
(ぱんつ……?)
目をこすりながらシロ様の言葉を反芻する。ぱんつが、五枚……??
「シロさま、ぱんつって一枚はけばいいんだよね……?」
ねぼけたまま、なんの気なしにひょいっとシロ様をのぞきこもうとすると……。
「ひゃあっっ!!」
シロ様は素早く股の間を押える。
「…………」
「…………」
耳まで真っ赤になって気まずそうに、目を泳がせるシロ様。
ええと、ぱんつが五枚必要で、大切なところを隠さなくちゃいけなくて……それは、つまり。
「……あ!」
真意に気づいて、ぼくも沸騰したみたいに赤くなる。
「ご、ごめんなさい、シロ様! あの、その、オスだもんね!! そうなるときもあるよね!!」
真っ赤なまま、どんどんうつむいてゆくシロ様へ、必死にフォローをする。
「ほらだって、朝は特にっ」
「……クロは?」
「え」
「クロがこうなってるの、見たことないですけれど」
隠しながらも、少し拗ねたように言うシロ様。
いや、普通になるときはなるよ……?
欲情しちゃったときも、シロ様がいないときに隠れて『処理』しているし……。
「あの、シロさ」
説明しようとしたとき、
「失礼いたします。朝餉をお持ちいたしました」
「あ、ああ。ありがとう……そこへ置いておいていただけますか」
襖越しに女中さんの声がして、そのまま、この話題は立ち消えになってしまった。
✿✿✿✿✿
「それじゃあ、行ってきますね……」
「い、行ってらっしゃい……」
ご飯が終わり、ぎこちない空気のままお部屋を出てゆこうとするシロ様。
なんだか、このままではいけない気がした。
襖に手をかけたシロ様の袖をとっさにつかんで、上目遣いに打ち明ける。
「ぼ、ぼくもなるよ!」
「?」
顔が熱くて、心臓が爆発しそうだけれど、伝えたかった。
「血の巡りがよくなったり、すきなひとのこと想ったりしたら、普通におっきくなる……オスの部分」
シロ様も、伝染したみたいにぶわっと赤くなる。
「だ、だからね、それは『当たり前』の仕組みなの! シロ様とぼくは、『一緒』、だからね!!」
「…………はぁ~。本当に、あなたって狼は……」
深いため息と共に、ぼくの肩に手を置き、しゃがみこむシロ様。
「あの……? シロ様?」
「適わないなぁ」
シロ様がへにゃっと、困ったように笑った。
「???」
「帰ってきたら、覚悟しておいてくださいね。もっと話したい」
「……え」
にこっとぼくに笑いかけて、お部屋から出てゆくシロ様。
話すってなにを??
よくわからないけれど、その笑顔がすごく色っぽくて。ぼくはしばらく、ぽーっとしてしまった。
✿✿✿✿✿
十数分くらい夢見心地だったけれど、ずうっとぽーっとしていちゃ『だめ』だ、なにかお手伝いできることを探してがんばらなくちゃ、と、お部屋のお掃除をすることにする。
文机に目を移すと、そこには。
「あれ。この箱……」
桐でできたその箱は細身で、あちらこちらに色とりどりの宝石と、きれいな模様があしらわれている。すごくすごく見覚えがあって、さあっと血の気が引いた。
これ、『王家の万年筆』だ……!!
シロ様から聴いたことがある。鬼の国の大切な書類は絶対、この万年筆で署名をしなくちゃいけなくて、『国の宝』だって。
シロ様は毎日、肌身離さず持ち歩いていたのに。今日、ぼくといろいろあったことで、きっと記憶から飛んでしまったんだ。というか……。
『お仕事道具』を忘れたなんてわかっちゃったら……シロ様がクレナイ様に、命が危ういレベルのおしおきされちゃうかも……!!
どうにかクレナイ様に内緒で渡せる方法がないかな、と一生懸命考えつつ、木箱を大切に両手で包み、執務室まで静かに走る。
だんだん執務室が見えてくると、ぼくの耳は、シロ様の声をキャッチした。なんだか、この距離にしては大きい声……もしかして気づかれちゃったのかな!?
慌てて近づくにつれ、どちらかというとうれしそうな声色なので、安心したけれど。でも。
別の心配が浮かんでくる。
ど、どうしよう。もはや叫ぶような音量なのだけれど……。ぼくじゃなくても丸聞こえだよ?! もしも、鬼の国の大切なお話だったとしたら……!!
急いでノックして知らせようと、手の甲を執務室の扉へ向けたそのとき。信じられないシロ様の言葉が、辺り一面に響きわたった。
「もう本当に、心から愛しているんだ!! 襲いたい!!」
え。
頭を強く、殴られたような。
ぐわんぐわん、世界が回るような心地がした。
『心から、愛している』。
『襲いたい』……。
そうか、最近のことは全部。
クレナイ様への気持ちが、『我慢』できなくなっていたから――……。
目頭が熱くなってきた。わかっていた、はずなのに。そう。シロ様はずっと、クレナイ様と仲がよかったもの。
くちびるをぎゅっと噛んで、必死にこらえる。……泣くのは、『だめ』。まずは、『万年筆』が先。
ぼくは、静かに呼吸を整えてから、とんとんとん、と扉を叩く。そして、すぅー、と、限界までお腹に息を吸いこんで、
「シロ様あー!! 失礼します、ですーっ!!」
さっきのシロ様に負けないくらいの大きな声で叫んだ。
「クロ! どうしてここに……!?」
「騒々しいぞ、犬っころ」
「ご、ごめんなさいです、クレナイ様。シロ様、あの、これ。お仕事のときに必要と思ったから……」
驚いた様子のシロ様と、眉をひそめたクレナイ様が執務室から顔をのぞかせる。ぼくはそっと、箱に入った万年筆を差しだした。
「……ぅえっ!? 王家の万年筆……忘れていましたか私!? ああ、ありがとうございます。助かりました、クロ!」
「うん。お役に立ててうれしい。どうぞ、シロ様……」
普通に、いつも通りにしなくちゃいけないのに。
笑顔はがんばって作れても、手が、少しだけ震えてしまった。
「クロ? どうかし……」
「あ゙ぁ゙……? なに国宝、置き去りにしてくれちゃってるんだお前?? それがなきゃ仕事成り立たないだろうが……」
ぼくの手をとろうとしたシロ様の真後ろへ、瞬間移動を極めたクレナイ様は、今まで見たことがないくらい恐ろしい顔をしていた。これが本当の『鬼』というもの、なのかもしれない。
「だ、だってあの、最近いろいろ悩ましくて……テ、テヘ♡☆なーんて……」
「そうだよなぁ、モンモンモンモンしてたよな。じゃあそのモンモンパワーで20倍くらい、今日は仕事こなせるよな??」
「いやちょっと待ってクロの様子が……」
「ほらさっさと来いや」
地の底から這うような低音を響かせてシロ様の襟首をつかみ、引きずりだすクレナイ様。そんなふたりの遣り取りを、もうぼくは直視なんてできなかった。でも、できる限り、『いつも通り』を言い聞かせる。
「クレナイ様、ごめんなさいです。全部全部、ぼくのせい、なので。シロ様もごめんね、こっそりできなくて……。――応援してる」
「クっ、クロー!?!!」
シロ様の悲鳴に後ろ髪を引かれつつも、多分『真実』には気づいていない様子に『安堵』し、猛ダッシュでその場を離れる。……その場から、転がるように逃げだしたんだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる