【BL】シロとクロ ※R-15

コウサカチヅル

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本編+挿話

最終話【前編】

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 鬼の国は、『はるたけなわ』だ。

 あれから、シロ様と四度よんど、『満月まんげつ』のごした。

 最後さいごのときは、一番いちばん『ひどかった』。

 高熱こうねつと『けがれ』にむしばまれ、寝衣しんいえりにぎりしめてくるしむシロ様を、ぼくはただ、ぎゅっときしめて、かれ目尻めじりににじむなみだめとって。

「そばにいるよ。『ひとり』じゃないよ……」 

 そう、言葉ことばつむぎつづけることしかできなかった。

 シロ様は、一度いちどだって『弱音よわね』をうことなんてなくて。



 ぼくは、『無力むりょく』だ。


✿✿✿✿✿

 そんなシロ様が、最近さいきん(今までもたまに、どうかしちゃったのかな?? っておもうときはあったけれど)おかしい。

 うとそわそわしてしまうことがえたし、このまえ一緒いっしょねむるとき、寝衣しんいからのぞくなめらかなむねほおずりしたら、びくーん! ってねて、いそいでお手洗てあらいへってしまった(お着物きものうえからはいつもさせてくれるのに……これは直接ちょくせつだとくすぐったかった、だけ??)。

 ぼく、なにかしちゃったのかな……。


✿✿✿✿✿


 あさ
 障子しょうじからやわらかなあかるさをかんじとり、目をゆっくりとけると、布団ふとんうしきにすわっているシロ様が、お着物きものひらきながら、ぶつぶつとつぶやいているこえこえた。
「うう、ぱんつ、五枚重ごまいがさねにしなきゃだめだろうか……」
(ぱんつ……?)
 目をこすりながらシロ様の言葉ことば反芻はんすうする。ぱんつが、五枚ごまい……??
「シロさま、ぱんつって一枚いちまいはけばいいんだよね……?」
 ねぼけたまま、なんのなしにひょいっとシロ様をのぞきこもうとすると……。
「ひゃあっっ!!」
 シロ様は素早すばやまたあいだおさえる。
「…………」
「…………」
 みみまでになってまずそうに、およがせるシロ様。
 ええと、ぱんつが五枚必要ごまいひつようで、大切たいせつなところをかくさなくちゃいけなくて……それは、つまり。
「……あ!」
 真意しんいづいて、ぼくも沸騰ふっとうしたみたいにあかくなる。
「ご、ごめんなさい、シロ様! あの、その、オスだもんね!! そうなるときもあるよね!!」
 なまま、どんどんうつむいてゆくシロ様へ、必死ひっしにフォローをする。
「ほらだって、あさとくにっ」
「……クロは?」
「え」
「クロがこうなってるの、たことないですけれど」
 かくしながらも、すこねたようにうシロ様。
 いや、普通ふつうになるときはなるよ……?
 欲情よくじょうしちゃったときも、シロ様がいないときにかくれて『処理しょり』しているし……。
「あの、シロさ」
 説明せつめいしようとしたとき、
失礼しつれいいたします。朝餉あさげをおちいたしました」
「あ、ああ。ありがとう……そこへいておいていただけますか」
 襖越ふすまごしに女中じょちゅうさんのこえがして、そのまま、この話題わだいえになってしまった。


✿✿✿✿✿


「それじゃあ、ってきますね……」
「い、ってらっしゃい……」
 ごはんが終わり、ぎこちない空気くうきのままお部屋へやてゆこうとするシロ様。
 なんだか、このままではいけないがした。
 ふすまをかけたシロ様のそでをとっさにつかんで、上目遣うわめづかいにける。
「ぼ、ぼくもなるよ!」
「?」
 かおあつくて、心臓しんぞう爆発ばくはつしそうだけれど、つたえたかった。
めぐりがよくなったり、すきなひとのことおもったりしたら、普通ふつうにおっきくなる……オスの部分ぶぶん

 シロ様も、伝染でんせんしたみたいにぶわっとあかくなる。
「だ、だからね、それは『たりまえ』の仕組しくみなの! シロ様とぼくは、『一緒いっしょ』、だからね!!」
「…………はぁ~。本当ほんとうに、あなたってひとは……」
 ふかいためいきともに、ぼくのかたき、しゃがみこむシロ様。
「あの……? シロ様?」
かなわないなぁ」
 シロ様がへにゃっと、こまったようにわらった。
「???」
かえってきたら、覚悟かくごしておいてくださいね。もっとはなしたい」
「……え」
 にこっとぼくにわらいかけて、お部屋へやからてゆくシロ様。
 はなすってなにを??

 よくわからないけれど、その笑顔えがおがすごくいろっぽくて。ぼくはしばらく、ぽーっとしてしまった。


✿✿✿✿✿


 十数分じゅうすうふんくらい夢見心地ゆめみごこちだったけれど、ずうっとぽーっとしていちゃ『だめ』だ、なにかお手伝てつだいできることをさがしてがんばらなくちゃ、と、お部屋へやのお掃除そうじをすることにする。

 文机ふづくえうつすと、そこには。
「あれ。このはこ……」
 きりでできたそのはこ細身ほそみで、あちらこちらにいろとりどりの宝石ほうせきと、きれいな模様もようがあしらわれている。すごくすごく見覚みおぼえがあって、さあっといた。

 これ、『王家おうけ万年筆まんねんひつ』だ……!!
 シロ様からいたことがある。鬼の国の大切たいせつ書類しょるい絶対ぜったい、この万年筆まんねんひつ署名サインをしなくちゃいけなくて、『国のたから』だって。
 シロ様は毎日まいにち肌身離はだみはなさずあるいていたのに。今日きょう、ぼくといろいろあったことで、きっと記憶きおくからんでしまったんだ。というか……。

 『お仕事道具しごとどうぐ』をわすれたなんてわかっちゃったら……シロ様がクレナイ様に、いのちあやういレベルのされちゃうかも……!!

 どうにかクレナイ様に内緒ないしょわたせる方法ほうほうがないかな、と一生懸命考いっしょうけんめいかんがえつつ、木箱きばこ大切たいせつ両手りょうてつつみ、執務室しつむしつまでしずかにはしる。

 だんだん執務室しつむしつえてくると、ぼくのみみは、シロ様のこえをキャッチした。なんだか、この距離きょりにしてはおおきいこえ……もしかしてづかれちゃったのかな!?
 あわててちかづくにつれ、どちらかというとうれしそうな声色こわいろなので、安心あんしんしたけれど。でも。
 べつ心配しんぱいかんでくる。


 ど、どうしよう。もはやさけぶような音量おんりょうなのだけれど……。ぼくじゃなくても丸聞まるぎこえだよ?! もしも、鬼の国の大切たいせつなおはなしだったとしたら……!!
 いそいでノックしてらせようと、こう執務室しつむしつとびらけたそのとき。しんじられないシロ様の言葉ことばが、あた一面いちめんひびきわたった。
「もう本当ほんとうに、こころからあいしているんだ!! おそいたい!!」

 え。
 あたまつよく、なぐられたような。
 ぐわんぐわん、世界せかいまわるような心地ここちがした。
 『こころから、あいしている』。
 『おそいたい』……。
 そうか、最近さいきんのことは全部ぜんぶ

 クレナイ様への気持きもちが、『我慢がまん』できなくなっていたから――……。

 目頭めがしらあつくなってきた。わかっていた、はずなのに。そう。シロ様はずっと、クレナイ様となかがよかったもの。

 くちびるをぎゅっとんで、必死ひっしにこらえる。……くのは、『だめ』。まずは、『万年筆まんねんひつ』がさき
 ぼくは、しずかに呼吸こきゅうととのえてから、とんとんとん、ととびらたたく。そして、すぅー、と、限界げんかいまでおなかいきいこんで、
「シロ様あー!! 失礼しつれいします、ですーっ!!」
 さっきのシロ様にけないくらいのおおきなこえさけんだ。 
「クロ! どうしてここに……!?」
騒々そうぞうしいぞ、いぬっころ」
「ご、ごめんなさいです、クレナイ様。シロ様、あの、これ。お仕事しごとのときに必要ひつようおもったから……」
 おどろいた様子ようすのシロ様と、まゆをひそめたクレナイ様が執務室しつむしつからかおをのぞかせる。ぼくはそっと、はこはいった万年筆まんねんひつしだした。
「……ぅえっ!? 王家おうけ万年筆まんねんひつ……わすれていましたか私!? ああ、ありがとうございます。たすかりました、クロ!」
「うん。おやくててうれしい。どうぞ、シロ様……」
 普通ふつうに、いつもどおりにしなくちゃいけないのに。
 笑顔えがおはがんばってつくれても、手が、すこしだけふるえてしまった。
「クロ? どうかし……」

「あ゙ぁ゙……? なに国宝こくほうりにしてくれちゃってるんだお前?? それがなきゃ仕事成しごとなたないだろうが……」
 ぼくのをとろうとしたシロ様の真後まうしろへ、瞬間移動しゅんかんいどうめたクレナイ様は、いままでたことがないくらいおそろしい顔をしていた。これが本当ほんとうの『鬼』というもの、なのかもしれない。

「だ、だってあの、最近さいきんいろいろなやましくて……テ、テヘ♡☆なーんて……」
「そうだよなぁ、モンモンモンモンしてたよな。じゃあそのモンモンパワーで20ばいくらい、今日きょう仕事しごとこなせるよな??」
「いやちょっとってクロの様子ようすが……」
「ほらさっさといや」
 そこからうような低音ていおんひびかせてシロ様の襟首えりくびをつかみ、きずりだすクレナイ様。そんなふたりのりを、もうぼくは直視ちょくしなんてできなかった。でも、できるかぎり、『いつもどおり』をかせる。
「クレナイ様、ごめんなさいです。全部全部ぜんぶぜんぶ、ぼくのせい、なので。シロ様もごめんね、こっそりできなくて……。――応援おうえんしてる」
「クっ、クロー!?!!」
 シロ様の悲鳴ひめいうしがみかれつつも、多分たぶん真実ほんとう』にはづいていない様子ようすに『安堵あんど』し、もうダッシュでそのはなれる。……そのから、ころがるようにげだしたんだ。
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