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「では、聖女よ。共に行こう」
「やです」
「そうだろう……え?」
「やです」

プイ、と女子高生はそっぽを向いた。
かわいい。
横顔すらパーフェクトとか、この子すごいなぁ…じゃなくて。

「ど、どういうことだ。あなたは、この俺とこの国を救ってくれるんだろ」
「…っ!いやっ!」
「はいはい。じゃあ、ちょっと失礼」

拒否されて動揺した不審者が、またもや女子高生に近づき、触ろうとしていた。今度は結構鬼気迫る感じだったから、さすがの女子高生もおびえている。ちょっと君、距離感図るの下手すぎるよ。コミュ障か。
初めましての相手に、一方的すぎるんだよね。これじゃあ暴力と一緒だってことに気が付かないのかな。
そんなわけで、私が横に入ると女子高生はしがみつくように私の背中にまとわりついた。
いや、君も近いな!

「なんだ貴様」
「少しあなた礼儀がなっていないんじゃないんですか?」
「なんだと?」
「まずは、ここがどこで、どうして私たちがここにいるんですか。その説明義務があなたにあると思うんですが」
「義務だと?私にそんなものはない!」
「……はぁ。誰か話の分かるかたはいないんですか?大人のコミュニケーションが欲しいんですけど」

相手は激高している。
よかった一応言葉は通じるみたい。話は、全く通じないけど。
少なくとも無理やりいうことを聞かせたり、暴力を振るわれることは、今のところなさそうだけど、今後はどうなるかな。
せめて、子どもの彼女だけは助けてあげたい…なんて殊勝なことは言わない。自己犠牲なんてクソくらえだ。

「きさまぁあああ!!!この俺を誰だと思っている」
「誰ですか」
「俺は、この国の第一王子だぞ!?誰もが俺の指示に従う必要があるんだ!聖女だろうと何だろうと、この俺に従う必要がある…おい女!来い」
「ひっ!」

私の後ろに男が手を伸ばす。
後ろで、少女がおびえ縮こまる様子が背中を通りしてわかる。

「ふざけんじゃないわよっ!説明しろって言ってんのよ!」

なに逆切れしてんだ。こっちのほうこそ切れていい状況だと思う。

「このっ!いい加減にー」

その瞬間、凄まじい轟音がしたかと思うと、激しい光が上から落ちてきた。

「っ!」
「きゃ、っ」

あまりの轟音と室内がびりびりと震えている。

「な、なに…?」

音の正体はなんだったのか。
光のほうを見ると、部屋の半分がなくなり、焦げ臭い匂いが辺りに充満していた。

「か、神の怒りだ…王子まずいですよ」
「う、うむ」
「神の怒り……?」

聖書じゃあるまいし、神が怒って雷を落とすとか。
そんなことするわけないでしょ……しないですよね?
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