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「オリビエ。お前とは婚約破棄をする」
「……」

突然、殿下に呼び出され、来てみれば、上記の言葉を言われた私は、完全に思考がストップしてしまいました。
なんの反応も返さない私を、殿下の腕に巻き付いているミア様が、馬鹿にしたように笑っていました。

「なぁに。その顔。まるで、鳩が豆鉄砲を食ったようですわ。まぁ、鳩が豆鉄砲を食った顔なんて、私見たことありませんから、知りませんけどね」

嘘です。
ミア様の趣味は、動物虐待なのです。
何も抵抗できないか弱い動物の子どもを虐めるのが、特別好きだということを私は知っております。
抵抗が出来ないように翼と足を切り落とされた鳩に向かって、石を投げていた姿を見たと友人たちから、聞かされたことがある私は、思わず黙り込んでしまいます。

抵抗が出来ないという意味では、私の今の状況も同じようなものなのかもしれません。

「お前のために使う金も空間もこの国にはない!とっとと国から出ていけ!」
「そんな…」

私は、10歳のころに父親に売られました。
母は、とっくの昔に亡くなっていますし、この国に私の家族はいません。
ですから、追い出されても、どこにも行く当てなどないのです。

「陛下は…陛下はなんと言われているのですかっ!?」

私は、陛下によって、この国に連れてこられた身。
陛下の所有物でもあるのです。
そんな私を陛下の許可なく国外追放などしては、たとえ実の子どもである王太子であろうと、許されないはずです。

「父上には、伝えてある」
「では、陛下も了承済みということなのですか?」
「……」
「殿下?」
「もう、うんざりなのよ。私たち…いいえ。私たちだけじゃない。この城の人たち、貴族たち、みんな」
「う、うんざりですか?何か粗相をしてしまったでしょうか。でしたら、気をつけます」
「あんたの存在が、粗相だって言わないと分からない?」
「え?」

ミア様の言葉がわかりません。
そんな私をまたしても、見下した、冷たい視線で見つめてきます。
私は、その視線の冷たさに怖くなり、思わずうつむき、床を見つめることしか出来ません。
「ふん」と、またしても馬鹿にしたような笑いが聞こえます。
しかたありません。
ミア様のいう通り、私は、尊き身分の血を持っていないのですから。

「お前にできることは、一つ。今すぐ、ここから出ていけ」


「連れていけ」と命令を下された兵士によって、私は城の外へと放り出されました。
いったい、これは、どういうことなのでしょうか。
私は、いったいこれからどうすればよいのでしょうか。
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