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「じゃん!」
「あ、それは」

マリーさんが出してきたのは、一通の手紙でした。
去年、海の向こうの大国の姫君が、難病に苦しんでいたそうです。そこで、陛下が私に難病が和らぐような、軽くなるような加護がこもった札を書けと言われたことがありました。
そして、私はさっそく病が消え去るようにと、神様にお願いして、書いた札を贈ったことがありました。
そのおかげかは分かりませんが、姫君の体調がみるみるよくなったとお礼の手紙が届いたことがありました。
私宛に手紙など、これまでに1通もありませんでしたから、とても嬉しかったのを覚えております。社交辞令でしょうが、私があの国に訪問する際は、ぜひともお礼をさせてくれと、招待状まではいっておりました。

その招待状入りの手紙を、マリーさんが持っていたのです。

「あぁ。そうでした。私、ご招待されているんでしたね。…でも、いきなりお城に訪れても迷惑でしょう。どうしましょうか。筆もレターセットもここにはありませんし」
「そう思って、じゃん!」

マリーさんったら、なんて用意がいいんでしょうか。
どこから取り出したのか分かりませんが、レターセットと万年筆、それにインク瓶まで出してくれました。

「今から向かうとしたら、どれくらいかかるんでしょうか…1か月くらいでしょうか」
「そんなかからないよ!天馬呼ぶ?そしたら、空飛んで、ぴゅーとひとっ飛びだけど」
「! 空から行く。そんな手もあるんですね…。でも、欲を言えば、もう少しだけこの国を歩いてみたくて…。それに船というものに乗ってみたいのですが…。あぁ、でも、お金がありませんでしたね」

やはり馬に乗せてもらって飛んでいくしかありませんか。

「お金ねぇ…。一応、あなたのお金ならあるわよ」
「私の?で、でも、私、お金なんていただいたことありません」
「あの馬鹿が横領してたのよ。それを取り返してやったわ」
「おうりょう…?馬鹿…?」
「あなた、ぼんやりしてるんだもの。使用人が、あなたの部屋にあるものを売っていたの気づかなかった?」
「そうだったのですね…。知りませんでした」

使用人の方…。どなたでしょうか。
もしかしたら、ララさんかもしれません。
あの方のお母さまは、体のお加減が優れないからと言って、私に贈られてきたドレスを持って行ってしまったことがありましたから。
もしかして、またお母さまのお体に何かあったのかもしれません。

「そのお金は、もらってもいいものなのでしょうか。誰か困りませんか?」
「いいの!あなたのなんだから!勝手に持っていくなんてドロボウじゃない!だったら、こっちも奪い返して、当然よ」
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