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2話
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その部屋には一人のおばあさんが椅子に座っていた。
「あらエドガー、ずいぶん手を焼いたようね」
おばあさんは面白そうに笑っている。
「彼女、一筋縄じゃいかないよ?」
「それは大変ね」
そこで私に向き直り紹介してくれた。
「そこに座っているのが現聖女様のオレリア様」
「初めましてアルビノの少女さん、今回は私があなたに用があってエドガーに迎えに行かせたの」
「初めまして、アイリーンと申します」
素直に口を開いた私にエドガーは驚いている。
なによ、私だって名乗られたら名乗り返すわよ。
そこまで落ちた覚えはないわ。
「かわいい名前ね。いきなりで悪いのだけどあなたにはこの国の聖女になってもらいたいの」
やっぱりその話よね。
「お断り致します」
私はきっぱりと言い切った。
「あなたの気持ちはさっきのやり取りを見させてもらったからわかったわ、でも私はこの国の人たちを守りたいの。見ての通りもう長くはないから今のうちに代替わりをしないといけないのよ」
「……なぜこの国の人たちを守りたいのですか?」
不思議に思った、守る価値などあるのかと。
「私はね、アルベルトのことが好きだったの。聖女って神聖なイメージがあるけどそんな不純な動機で最初は力を貸したわ。でもね、守り始めるとこの国の人たちが向けてくれる笑顔が特別なものになるのよ。アルベルトとの恋は実らなかったけれど、代わりにとても大切で守りたいものができたわ」
アルベルトとは現国王陛下のことね。
オレリア様は少しも悲しそうな表情はしておらず、逆にすがすがしいくらいきれいな笑みを浮かべている。
「お気持ちはわかりました、でも私は人を守りたいと思えないのです」
この街の人たちのことも、あの村の人たちのこともね。
「でもオレリア様、あなたの頼みなら受けてもいいとも思えました」
「まあ、本当!」
「はい、私の両親はすでに亡くなっていますがオレリア様は亡くなった母にとても似ているんです。雰囲気というか…」
「…そうだったの」
「ただし条件があります。結界は張り直しますが私はここに留まる気はありません」
それまで嬉しそうにしていた二人の表情が一気に曇った。
「どうしてかしら?」
「聖女は結界を張り魔物をダンジョンから出さないのが役目ですよね、ここにずっといる必要はありません。なんなら一人で結界を張りなおしてきますのでご心配なさらないでください」
オレリア様はなぜか少し困ったような表情をしている。
なんでそんな表情をするのかしら?
そこで今まで黙っていたエドガーが口を開いた。
「……悪いけどアイリーンにはここにいてほしいんだ」
「それは私の力が他国に漏れたり悪用されないため?それとも私を戦争の駒として使う気なのかしら?」
そう聞くとますますエドガーの表情が曇り苦しそうにしている。
この国は両隣を大国によって挟まれている。
今までは穏やかだったが最近では国境付近でのいざこざが増えているらしい。
「……」
「何も言えないということは図星ね」
「すまない」
「ごめんなさいね、あなたにはつらいでしょうけどこの国のためにあなたの力を貸してほしいの」
たぶんオレリア様もこの年になるまでずっと国のために、街の人たちのためにその身と人生をささげて生きてきたのだろう。
「……いくらオレリア様のお願いでもそれを叶えることはできません」
二人はなにも言わなくなった。
私はきっぱりとこの国を見捨てるといったようなものよね。
二人がお叱りを受けることになるのかもしれない、でも私だって人生がかかってる。
今世では誰かの言いなりになんじゃなくて自分の思うままに生きてみたい。
私は踵を返し、転移魔法を発動させる。
「約束通りダンジョンに結界は張っておきます。だから安心してください」
エドガーはさっき転移結晶を使ってここまで連れてきたけれど私はそんなものがなくても転移できる。
転移する直前、もう一度エドガーとオレリア様のほうを向いて口を開いた。
「ごめんなさい」
最後にそう言い残して私は一番近くのダンジョンへと転移したのだった。
「あらエドガー、ずいぶん手を焼いたようね」
おばあさんは面白そうに笑っている。
「彼女、一筋縄じゃいかないよ?」
「それは大変ね」
そこで私に向き直り紹介してくれた。
「そこに座っているのが現聖女様のオレリア様」
「初めましてアルビノの少女さん、今回は私があなたに用があってエドガーに迎えに行かせたの」
「初めまして、アイリーンと申します」
素直に口を開いた私にエドガーは驚いている。
なによ、私だって名乗られたら名乗り返すわよ。
そこまで落ちた覚えはないわ。
「かわいい名前ね。いきなりで悪いのだけどあなたにはこの国の聖女になってもらいたいの」
やっぱりその話よね。
「お断り致します」
私はきっぱりと言い切った。
「あなたの気持ちはさっきのやり取りを見させてもらったからわかったわ、でも私はこの国の人たちを守りたいの。見ての通りもう長くはないから今のうちに代替わりをしないといけないのよ」
「……なぜこの国の人たちを守りたいのですか?」
不思議に思った、守る価値などあるのかと。
「私はね、アルベルトのことが好きだったの。聖女って神聖なイメージがあるけどそんな不純な動機で最初は力を貸したわ。でもね、守り始めるとこの国の人たちが向けてくれる笑顔が特別なものになるのよ。アルベルトとの恋は実らなかったけれど、代わりにとても大切で守りたいものができたわ」
アルベルトとは現国王陛下のことね。
オレリア様は少しも悲しそうな表情はしておらず、逆にすがすがしいくらいきれいな笑みを浮かべている。
「お気持ちはわかりました、でも私は人を守りたいと思えないのです」
この街の人たちのことも、あの村の人たちのこともね。
「でもオレリア様、あなたの頼みなら受けてもいいとも思えました」
「まあ、本当!」
「はい、私の両親はすでに亡くなっていますがオレリア様は亡くなった母にとても似ているんです。雰囲気というか…」
「…そうだったの」
「ただし条件があります。結界は張り直しますが私はここに留まる気はありません」
それまで嬉しそうにしていた二人の表情が一気に曇った。
「どうしてかしら?」
「聖女は結界を張り魔物をダンジョンから出さないのが役目ですよね、ここにずっといる必要はありません。なんなら一人で結界を張りなおしてきますのでご心配なさらないでください」
オレリア様はなぜか少し困ったような表情をしている。
なんでそんな表情をするのかしら?
そこで今まで黙っていたエドガーが口を開いた。
「……悪いけどアイリーンにはここにいてほしいんだ」
「それは私の力が他国に漏れたり悪用されないため?それとも私を戦争の駒として使う気なのかしら?」
そう聞くとますますエドガーの表情が曇り苦しそうにしている。
この国は両隣を大国によって挟まれている。
今までは穏やかだったが最近では国境付近でのいざこざが増えているらしい。
「……」
「何も言えないということは図星ね」
「すまない」
「ごめんなさいね、あなたにはつらいでしょうけどこの国のためにあなたの力を貸してほしいの」
たぶんオレリア様もこの年になるまでずっと国のために、街の人たちのためにその身と人生をささげて生きてきたのだろう。
「……いくらオレリア様のお願いでもそれを叶えることはできません」
二人はなにも言わなくなった。
私はきっぱりとこの国を見捨てるといったようなものよね。
二人がお叱りを受けることになるのかもしれない、でも私だって人生がかかってる。
今世では誰かの言いなりになんじゃなくて自分の思うままに生きてみたい。
私は踵を返し、転移魔法を発動させる。
「約束通りダンジョンに結界は張っておきます。だから安心してください」
エドガーはさっき転移結晶を使ってここまで連れてきたけれど私はそんなものがなくても転移できる。
転移する直前、もう一度エドガーとオレリア様のほうを向いて口を開いた。
「ごめんなさい」
最後にそう言い残して私は一番近くのダンジョンへと転移したのだった。
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・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
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