アルビノをもつ聖女は自由に生きたい

月影

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1話

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 日が昇ると同時に起きて旅の準備を始める。
 必要最低限のものをまとめ家を後にしようとした直後、私は足を止めた。

 誰かがこちらに向かってきている、それも複数人。
 山全体に結界を張っているためそこらへんの情報は筒抜けになっているのだ。

 「珍しいわね、今までこんなこと無かったじゃない。誰かしら?」
 
 わざわざ山に登ってきてまで私に石をぶつけたいのかしら?
 そんなわけないか、この山すごく広くて急だからそれなりの体力がないと登れないもの。
 村の子供ではないわね。
 大人は近寄らないからよそ者かしら?

 ようやく姿を目指できるようになると男たちが5人、少し息を切らしながら登ってきている。

 すごくいい身なりをしてるけどここになんの用があるのかしら?

 彼らは私の姿を見ると急いで近ずいてきた。

 ……私に用があるのね。
 何故だかわからないけれど嫌な予感がする……。

 急いで逃げようと踵を返すと地面に魔法陣が浮かび上がりまわりが土壁に覆われた。

 なるほど、簡単に逃がしてくれそうにないわね。
 魔法の扱いにかなり長けてる。
 これほどの使い手なら結界のことも気づいてるだろうし魔法を使っても大丈夫よね。

 私は風を操り土壁を斬り裂いて進んだ。

 後ろを振り向くと彼らも追いかけてきている。

 「……っいつまでついてくるのよ」

 かれこれ10分くらいはこの森を走り続けている。

 「もういいわ」
 
 少し広くなっていろところで私は足を止めた。
 そうすると彼らもスピードを緩め距離を近ずけてくる。

 「あなたたち、私にいったいなんの用があるの、しつこ過ぎるのよ」
 
 そう言うと1番前にいた前にいた緑の髪の男性が口を開いた。

 「……あんたが聖女様?」

 ……正直何を言っているのか分からないわ…。

 この国には代々聖女が存在している。
 それと同時にダンジョンも。
 聖女はダンジョンから魔物を逃がさないよう結界を貼っている。
 戦争のときは国ごと結界で覆っていたという話もあるぐらいだ。
 聖女がかけるヒールはどんな傷でも癒えてしまい、無くなった腕や足も生えてしまう。
 そんな絶大な力を持っている女性が聖女だ。

 「何言ってるの、そんなわけないじゃない」
 
 「これから言うことは機密事項だ、絶対に漏らさないで。今国を守っている聖女はかなりのお年を召されている。力も弱まり結界が解けかかっているんだ」

 「そう」

 「そこで聖女様はあんたを探せと言ったきた」

 「っ?!」

 「アルビノの白い髪を持つものが次の聖女だと。探すのは意外と簡単だったよ、白い髪の人なんているはずがないのにこの村に1人だけいるっていう噂があったんだから」

 そういわれても信じることなどできるわけがない。

 「悪いけど、あんたには一緒に聖女様のところに行ってもらう」

 「行くわけないじゃない、私が聖女だという証拠はあるの?」

 すると彼は笑い出した。

 私は何も変なことは言っていないはずよ。

 「この森全体に結界を張ってるのはあんただよね?」

 「ええ、それが何よ」

 「これも機密事項だけど仕方ないな。この世界で結界魔法を操れるのは聖女様だけなんだよ」

 ……どうやら私は初めから自分の首を絞めていたらしい。

 「……仮に私が聖女だとして、なぜあなたたちの言う通りに動かなければいけないの?結界が破れようが魔物があふれてこようが私にはどうでもいいことなの」
 
 「…この国の人たちを見捨てるの?」

 「その言い方はずるいと思うけど、まあそうね。弱い人間から死んでいくのよ」

 たぶん私はひどいことを言っているのだろう。
 
 心が麻痺しているのは前世から変わらないわね…。

 「あんた、それでも人間?」

 「一応はね、でもいやだったら化け物でもなんでも好きに呼ぶといいわ」

 なぜか彼は私の瞳を凝視している。

 私の顔は無表情なはずだ。
 聖女だといわれても嬉しいとも思わないし、心無い言葉をぶつけられても私は傷つかないのだから。

 普段はそうでもないのに人と話すと反射的に顔が無表情になって心が凍てつく。
 悪い癖ね……。

 普通の人たちはたいてい私に嫌悪を抱く。
 でも彼は初めも今も私に嫌悪のまなざしを向けていない。

 「じゃあ、あんたの名前を教えて」

 っ…。
 
 そんなことを聞かれるとは思わなかったから少し驚いた。

 「………アイリーン」
 
 「そう、俺はエドガー。彼らは護衛の意味で連れてきた俺の部下」

 だから何だっていうのよ、名前くらいどうでもいいはずよ。
 彼の行動が謎だわ。

 「じゃあ行こうか」

 「私は行かないわよ」

 「実力行使でも?」

 「ええ」

 そう答えると彼の部下たちは腰に下げていた剣を前に構えた。

 …仕方ないわね。

 私も腰に下げていたレイピアを抜き相手の出方をうかがう。

 鞘から抜いていないということは私を傷つけるつもりはないというかしら。
 それとも女だからと油断している?
 なめられたものね。

 向かってくる彼らの剣を一人ずつ受け流し、剣の柄で急所を突いて気絶させていく。
 地面には四人の男たちが転がっている。

 残りはあのエドガーとかいう男だけね。

 視線を向けると彼は苦笑していた。

 「アイリーンって、見かけによらずすごく強いね」

 「私、弱いのが嫌いなの」

 もう誰にも私を傷つけさせない。

 「残ったのはあなただけよ、私と戦うか、それともあきらめて帰るか、選ばせてあげる」

 そういうと彼は笑った。
 
 「どちらでもない、俺は戦わずにあんたを連れていく」

 そういうと私の懐に駆け込み彼が手に持っていた石が砕け散った。
 
 ?!

 気づいた時にはもう遅かった。
 あたりは光に覆われ見ず知らずの部屋へ全員転移させられている。

 ……やられたわ。
 彼の狙いは最初からこれだったのね。

 不本意ながらも私は聖女様のところへと連れていかれたのだった。
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