アルビノをもつ聖女は自由に生きたい

月影

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3話

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 あの部屋から転移した私はまず、一番近くのダンジョン付近へ転移し結界を張り直しに向かった。

 約束したからには守らないと。

 この街に来ても相変わらず私の白い髪を見ると嫌悪を隠そうとしない。

 ……めんどうね。
 
 私は物陰で魔法を使い、白色の髪を茶色に変えてから歩き出した。

 だが私はダンジョンにつくなり足を止めることになる。

 …なに?

 中からものすごい爆発音が聞こえてくる。

 「それは置いておくとして、今のうちに結界を張り直さないと」

 腕を前に広げて結界を構築していく。

 幸い、ダンジョンの大きさは私が暮らしていた山とあまり変わらない大きさだったのですぐに張り直すことができた。

 「ここまで来たんだし私も入ってみようかしら」

 そんな出来心で私はダンジョンへと足を踏み入れたのだった。


 ここは王都より東に位置するダンジョンだ。
 
 「たしかこのダンジョン、貴重な薬草がそろってるって有名だったはずよね?」

 だが中を見ると、薬草がちぎられた跡が多くあった。

 …それに燃えてる?
 魔法を使える人が中にいるということね。

 周りには焼かれた魔物があちこちに転がっている。

 奥に進むにつれてその有様はだんだんひどくなっている。

 やっぱりおかしい、普通の冒険者のパーティーはこんな戦い方をしない。
 それに知性がある中ランクや高ランクの魔物まで倒されている。
 並大抵の実力者じゃないわね。

 普通ダンジョンには5人のパーティーを組み連携して戦う。
 それ以上人数を増やすことはギルドで禁じられているし、連携も取りにくい。

 足跡も多すぎる…。

 私は慎重に奥に進んだ。

 そして見えてきたのは国の騎士団がこの森のボスであるシルバーヴォルぺを集団攻撃していることだった。

 「っ…なんてことを」
 
 その人数はおよそ50といったところか、さすがのシルバーヴォルぺでもかなりの傷を負っている。

 私の目にはそれが討伐ではなく、集団でいじめをしているようにしか映らなかった。

 あの人たちは弱っているシルバーヴォルぺを見てあざ笑っている。

 こんなこと絶対してはいけないはず、生態系が壊れてダンジョン自体がつぶれてしまう。
 だからギルドは人数に制限を付けているのだ。
 ダンジョンのボスが狂ってしまった時でしか集団討伐は行わない。
 
 それなのに国の騎士団がこんなことをするなんてありえない。

 このダンジョンに来たのも戦争で使う薬草を採取しに来たからだろう。
 
 それもすごく雑だったし、ここまでする必要はないはず。

 よく見るとシルバーヴォルぺの後ろには他の魔物が集まっている。

 そうか、あの子たちを守ってるから反撃できなかったんだ…。

 そこで私はもう怒りを我慢することはできずに前へ飛び出した。

 「やめなさい!」

 「誰だお前!」
 「邪魔をする気か!」
 「俺たちは国の騎士だ、歯向かっていいと思っているのか!」

 権力をかさに着て一人を、いえ、一匹を集団攻撃するなんて極悪非道もいいところだわ。

 「そんなの、いいに決まっている!」

 私はレイピアを抜き、風を操り加速した。

 「なんだこの女!」
 「邪魔する者は切り捨てる!」
  
 一人、また一人と地面に倒れていく。

 「っ?!この女強すぎる!」
 「なに女相手にてこずってやがるんだ!」

 「うぐっ!」
 「ば、化け物だっ!」

 我に返ると全員地面に伸びていた。

 「……ちょっとやりすぎたかしら」

 まあこのくらいがちょうどいいでしょう。
 あなたたちがした行為、私は絶対に忘れない。
 こんな人たちを守る価値なんてないと思うのだけど…。
 本当にオレリア様の気持ちがわからないわ。
 
 私はシルバーヴォルぺたちに向き直り、ヒールをかけた。

 苦しそうに息をしていたシルバーヴォルぺたちはみるみる傷がふさがり元気になってくれた。

 よかった…。

 そのとき私は自然と笑えていた気がする。

 そんなわけないか……。
 
 そのとき、いきなり頭上から声が降ってきた。

 「私たちとこの森を助けていただき感謝する」

 その声はこの森のボスであるシルバーヴォルぺからだった。
 
 「気にしないで、私が好きでしたことよ」

 「それでも助けていただいたことは事実。この森を代表して礼を言う。本当にありがとう」

 「とっても律儀な狐さんね、どういたしまして」

 シルバーヴォルぺは白銀に輝き九つの尾をもっている。
 
 「できればあなたの名前を聞かせてくれないか?」

 「いいけど、私はアイリーン。あなたの名前は?」

 聞かれるとは思ってなかったのだろう、目が丸くなっている。

 「すまないが私には名がないのだ」

 悪いことを聞いたわね…。

 「そう気にするな」

 「じゃあ私がつけてもいい?」

 名前がないと不便だしね。

 「ああ」

 「今日からあなたはシリウスよ」

 その瞬間、私とシリウスの体が光りだした。

 なにっ…?

 次第に光は収まりいつもどおりに戻っていた。

 「これで眷属の契約は済んだな」

 「そんなこと聞いてないわよ」

 「?知らなかったのか?」

 「…知ってるわけないでしょう」
 
 こんなこと、一度も聞いたことはなかった。
  
 「こんな大事なこと簡単に決めていいの?私があなたの主になるのよ?」

 だが彼は満足そうに微笑んだ。
 
 「そなたがいいのだ」

 …っ少しうれしいと思ってしまった。
 もうこんな感情なんて残ってないと思ってたのに。
 私がシリウスに感謝しないとね…。

 「…ありがと」

 すこしそっけなくなってしまったがお礼を言うことができた。

 すると、私たちのやり取りを見ていたほかの魔物たちがシリウスの後ろから出てきた。

 「ボスの主は俺たちの主ってことだよな?」
 「これからよろしくね~」
 「助けてくれてありがとな!」
 「何か困ったことがあったら次はこの森の住民たちが力になるぜ!」

 ……どうやらこのダンジョンの魔物たちに好かれてしまったらしい。

 まあ、悪い気はしないけど…。

 ダンジョンに住んでいるものは魔物と呼ばれているがほとんどのものが知性を持っている。
 基本人間が侵略さえしてこなければ穏やかなのだ。

 「じゃあ私はそろそろ帰るわね」

 ここは居心地がいいけど、今日の宿も探さないといけないしそろそろ出ないと。
 
 「私もついていく」
 
 「え?」

 いきなりそんなことを言い出したシリウスを見るとなぜか人間の姿になっている。

 「その恰好、どうしたの?」

 「ボスクラスになると魔力を使い人間や半獣の姿になることなど簡単だぞ?サイズも自由に変えられる」

 そんなことがあっていいのかしら?
 まあそれは置いておこう。

 「でもこの森のボスがいなくなるじゃない、また攻め込まれたらどうするの?」

 「心配いらない。薬草は十分採取しているだろうし、この状態だとまともな反撃はできないだろう」

 シリウスは地面に伸びたままの騎士たちに目線を映しながら答えた。
 
 「それもそうね」

 この人たちを片付けないと…、ついでに一応オレリア様に報告しましょう。
 それにシリウスから、あきらめる気がまったく感じられない…。
 
 「じゃああなたたちのボスを借りるわね」

 「主がいいなら大丈夫だよ~」
 「ボスをよろしく頼みます!」

 「ええ」

 そして私とシリウスは騎士団全員を連れてもう一度オレリア様のところへと転移した。
 
 
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