私立白百合女子高校〜百合の花束とアイソトープ〜

初瀬四季[ハツセシキ]

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ゆりとリリー

ユリリリー

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「ねぇリリー」

 緩くウエーブがかった金髪をたなびかせながら、窓際で文庫本を開くリリーに話しかける。
 リリーは、ちらとこちらにその切れ長の目を向けたかと思うと、すぐに文庫本に視線を戻す。

「リリー?」

 無視されたことに気づきながらも、めげずに話しかける。
 彼女がつれないのはいつものことだが、今日はいつもより機嫌が良くない。
 
「あの日かしら」

 つい溢れたわたしの呟きに、リリーがパンッと音を立てて文庫本を閉じる。そして、頬を染めながら、非難するようにわたしを睨みつける。

「ゆり。私がなんで怒っているかわかる?」

 リリーはわたしの顔を真っ直ぐ見つめながら、わかりきった答えを言わせようとそう質問する。
 その流れに乗るのもシャクなので、リリーの目を真っ直ぐに見つめながら茶化す。

「しかたないわ。みんなイライラするのは同じよね。それはあなたのせいじゃない。人体の神秘なのよ」

「なんの話よ⁉︎ 私が言ってるのは、あなたの過失の話! 私の体調の問題じゃない!」

 リリーがその白い肌を真っ赤に染めながら、抗議するように言葉を続ける。

「ゆり言ったよね! お昼休みは一緒にお弁当を食べようねって! 私ずっと待ってたのに!」

「しかたないわ。先生に呼び出されていたんだもの。それに、わたしだってお昼ご飯食べられなかったわ」

 わたしの言葉をうけてリリーは唇を尖らせる。

「それにしたって、連絡くらいしてくれてもいいじゃない。そしたら私だってーー私のこと嫌いになったのかな。とかーーあなたに何かあったのかな。とか悩まなくてもすんだのに・・・・・・」

「わたしのことずっと考えてくれていたの? 授業中も? 今までずっと?」

 リリーはコクリとうなずく。

「授業はちゃんと聞かないとダメじゃない」

 リリーは口をパクパクと何か言いたげに動かすと、プイっと顔をそらす。

「知らない! ゆりの馬鹿!」

 そんなリリーを愛おしく見つめながら、鞄から包みを取り出す。

「ずっと待っててくれたなら、お昼ご飯まだでしょ? 一緒に食べよう?」

「知らない!」

 ヘソを曲げたリリーのお腹がクーっと鳴る。パッとお腹を押さえたリリーが恥ずかしそうに下を向く。
 わたしはニヤッと笑うと、包みを開きタマゴサンドを一つつまみ、リリーに差し出す。

「はいっあーん」

 リリーはムーっと暫く躊躇していたかと思うと、小さく口を開けタマゴサンドに口をつけようとする。
 それをサッと避け、タマゴサンドを口に咥える。

「あっ」

「どうしたの? ほら、ここだよ?」

 リリーはわたしの顔とタマゴサンドを交互に見つめると、抗議するように私を見つめる。
 リリーは、ニヤニヤと挑発するようなわたしの肩を掴むと、タマゴサンドをわたしの口から奪いとる。

「美味しい?」

「ーーうん」

 リリーは、パッとわたしから離れると、鞄から小さな弁当箱を取り出す。

「おかえし」

 フォークで卵焼きをわたしの口へねじ込む。

「もぐぅっ⁉︎」

「美味しい?」

 それは溶けるように甘かった。
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